表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
74/127

クエスト52 おじーちゃん、しばらくぶりの『ログアウト』?

 『蒼碧の水精遺跡』の第6階層以上から出現するようになった、『フィッシャーマン』の上位種。


 板状の硬い鱗の盾と湾曲刀シミターを持った『フィッシャー・ガードマン』。薙刀を持つ、ほかの魚人に比べて俊敏な動きができる『フィッシャー・ランサー』。小さな弩を持ち、基本的に遠距離戦を仕掛けてくる『フィッシャー・アーチャー』。そして、魔法が使える『フィッシャー・マジシャン』の4種類が『水精遺跡ここ』の6階から9階までに見かけた魚人の上位種で。……最後の『魔法使い』は半日駆けずり回って1体しか出会っていないので、さておき。ほかの3種の上位種は、かねてからの予想通り、1体1体が単なる『フィッシャーマン』の3倍以上『カルマ』を減少させられるモンスターたちで。


 これら上位の魚人たちを撃破することで『カルマ』を効率的に減らせるとわかってからは、儂らのモチベーションもいや増し。可能な限り素早く、大量に、狩って狩って狩り続けた。


 すべては、美晴ちゃんたちと揃ってイベントを迎えるために。……子猫が笑顔で友だちとイベントを行えられるように、儂らは『水精遺跡ダンジョン』内を駆け回った。戦い続けた。


 ……思えば、焦りから少女には無理をさせてしまったかも知れない。


 なにせ装備が揃い、火力が上昇。戦闘時間が短くなり、各々の武装の耐久値が減り難くなったことで『修復』などによる休憩時間が減り続けていたからのぅ。制限時間タイムリミットのこともあり、嘉穂ちゃんまでがすっかりログアウト休憩をせんようになっていたし……。彼女の役割ポジション的に、そこまで1戦1戦の精神的な消耗が少なかったおかげもあったのじゃろうが……保護者の立場として、もう少し気遣ってやるべきじゃった、と。になって少し後悔している。


 今――もう何度目だろう、戦闘終了によるドロップアイテムを報せるインフォメーションを尻目に。まずは装備の耐久値を視て、次の戦闘までに『修復』するかどうかを思案する儂に、嘉穂ちゃんが突然飛びついてきて。


 震える体で。声を震わせて。


 少女は、言った。


「み、ミナセちゃん……! か、カホ、『今の』で……『称号、得ました』って! カホ、やっと……。シンボル、青く……!」


 そんな涙ながらの報告に――……不覚にも、儂まで泣いてしまいそうになった。


 儂にしがみつき、ついには「わー、わー!」と声をあげて泣きだした子猫をそのままに。思わず顔を上げて眉間に皺を寄せ。今日までの、少女と行ってきた魚人狩りの日々を回想して……嗚呼、それもついに終わったのか、と。独り言ちる。


 ……嗚呼。これで本当に、子猫の頑張りが、ようやく報われた。……もう、少女が不安に瞳を濡らす日々は終わったのだ、と。そう実感したせいか、自然と躰からちからが抜け。儂の胸にすがりつく嘉穂ちゃんごと『ばしゃん!』と勢いよく後方に転げ、一瞬だけ二人揃って水路に沈み。


 そして、


「ぷっ……! あは、あははは! もう、ミナセちゃん、なに転んでるの?」


「ふふっ。そうじゃな。スマン、ちからが抜けてしまってな」


 儂らは笑みを交わす。


 万感の想いを抱いて、少女と微笑みあう。


 ……嗚呼、肩が軽くなった気がするな。ははっ! 思ったより儂も追い込まれておったのじゃな、と。今さらに気づき、それが余計に笑えてきた。


 いやはや、まったく。ここ最近は、本当に『退屈』など感じる暇も無かった。AFOをやるようになってからは本当に、『自身の存在理由』に疑問を感じることも無くなった。そのことが、何より嬉しく――『嬉しい』と感じる自分が、誇らしい。


 そして、今日まで苦労を共にした子猫の、なんと愛しいことか。なんと誇らしいことか!


 それから、


「……さて、どうする嘉穂ちゃん? 今すぐ『水精遺跡ここ』から出たいのであれば、できるが」


 少女のシンボルが青くなった今なら、〈探索者〉の『緊急回避』を使って一緒に、すぐにでも『水精遺跡ダンジョン』の外へと出られる。


 ……もっとも、ここ最近はほとんどログアウト休憩をとっておらん嘉穂ちゃんが疲れているのは間違いないじゃろうから、『外』へ行ってもすぐに転移魔方陣広場からログアウトしてもらわねばじゃが。それでも、この日のために頑張り続けて……PKとなってからは望んでも帰ることのできなかった街のなかに入れるのじゃから、望むならすぐにでも転移いどうする。と、あらためて少女に問えば、


「えっと……。ミナセちゃんは、イベントまでどうするつもりだったの?」


 そう儂の意向を窺う子猫に、『これは言っても良いのか?』という疑問を抱かんでもないが、正直に答えることに。


 ――現在の時刻は、現実世界の20時過ぎ。


 イベント開始が24時からだとして、その30分まえに『できれば』――嘉穂ちゃんのシンボルがそのときまでに青く出来ていれば――迷宮都市エーオースの転移魔方陣広場で合流しよう、と美晴ちゃんたちと約束しており。それから、お礼をしに『運☆命☆堂』に行って。美晴ちゃんたちの装備もこの際、アキサカくんたちに頼もうかと考えていた、と。


 ゆえに、嘉穂ちゃんが望むならいつでも『緊急回避』を使って『水精遺跡ここ』を出るし、それでもかまわないが……もし、合流時刻である現実世界の23時半までログアウト休憩をとるのであれば、もう少しだけ『緊急回避』を待ってほしい、と。せっかくなら、今居るここでしか手に入らないドロップアイテムを土産に、今回世話になったダイチくんやダストン親分さんたちに礼を言いに行きたいから、面倒かも知れんがログアウト休憩をするなら『広場セーフティゾーン』でしてほしい、と。


 そんなふうに今考えておるプランを正直に話せば、子猫は「わかった」と頷いて。疲れているだろうに、儂の計画に乗ることを了承して。ログアウト休憩を『広場セーフティゾーン』でしてくれることに。


 そして、


「……あのね、ミナセちゃん。ありがとう」


 『広場セーフティゾーン』に着き。『水精遺跡ここ』で数少ない水から上がれる部屋の隅に腰掛けて、子猫は言った。


「今日まで、ありがとう。……本当に、ありがとう、ございました」


 そう畏まって頭を下げる少女に、「……ふむ。お礼を言われて悪い気はせんが、シンボルを青くできたのは嘉穂ちゃん自身の頑張りがあってこそ」と告げて。「ゆえに、そうまで畏まらんでも――」と言って頭を上げるよう促そうとする儂に、


「ミナセちゃんだったから、だもん」


 顔をあげた少女は――泣いていた。


「ミナセちゃんと、だから、カホは頑張れたんだもん……!」


 嘉穂ちゃんは涙をポロポロと零しながら、言った。


「ミナセちゃんが、カホを止めてくれた……。志保ちゃんを攻撃しちゃったとき、ちゃんと守ってくれた……」


 カホのために、怒ってくれた。戦ってくれた。


 同じ赤いシンボルになって、いっしょに『ここ』に籠ってくれた。


 カホを一人にしないようにしてくれた。


 だから、


「ずっと……お礼、言いたかった」


 ミナセちゃんがずっと傍に居てくれたこと、嬉しかった。心強かった。


 ミナセちゃんがずっと一緒に居てくれたから、寂しくなかった。笑っていられた。


「今日まで、いっぱい不安もあったけど……楽しかった。ミナセちゃんと一緒だったから、楽しかったよ」


 ……それに。ミナセちゃんと一緒だったから、カホはAFOを嫌いにならなかった。


「だから、『ありがとう』だよ」


 そう笑って言い、そっと片手を上げる嘉穂ちゃんに「……儂の方こそ、ありがとうの」と笑いかけ。彼女が望むハイタッチをしてあげながら、


「嘉穂ちゃん。おまえさんと『遊んだ』ここ数日は楽しかった。嘉穂ちゃんとだったから、儂もAFOをより好きになれた」


 少女の手のひらにあてた手を、そのまま指を絡めるようにして握り。彼女の大きな金の瞳を見つめて、「ありがとう」と告げる。


 そして、


「ほれ、覚えとるか? 最初の儂は『足手まとい』で。嘉穂ちゃんの強さに頼りきりじゃったろ?」


 ――この『蒼碧の水精遺跡』に来てすぐの頃は、とくにレベルが低かったこともあり、嘉穂ちゃんの火力に頼りきりで。


「違うよ! ミナセちゃんが護ってくれるから、カホは戦えたの! だから、ミナセちゃんは『足手まとい』じゃないの! あのときだって――」


 ――最初の頃は1戦1戦が命懸けで。1戦1戦に心血を注ぐようにして戦って。


 儂は弱く。……拙く。


 それでも、単なる役立たずで居続けたくなくて。足らない頭で必死に考えて。


 話し合って。工夫して。


 そうして、ようやく二人の戦術が形になったと思ったら、頼みの綱であった嘉穂ちゃんの【投擲術】がレベル0になって……。子猫には内緒じゃが、あのときは儂も軽く絶望しかけたものじゃが……諦めるという選択肢など無かったゆえに、また必死に無い知恵を振り絞って考えて、考えて、考えて。


 嘉穂ちゃんの【投擲術】頼りが出来なくなって……。だけど、それでも、と頑張って……。少女の自信喪失を早急にどうにかしようと焦って……無理して。


 一瞬の油断から嘉穂ちゃんを失いかけて……。あのときは本当に肝を冷やしたものだが……それで少女の装備の充実をいっそう強く考えるようになって……。称号【水の妖精に愛されし者】の進化を狙うことを考えて……。


 アキサカくんたちに嘉穂ちゃんの装備を造ってもらって……。1階をぐるぐる周りながら、不安がる子猫に悟らせぬよう何度も『これで良かったのか?』と自問自答し続けて……。本当に、レベル40以上の出現する階層から魚人の上位種が出るのか、と……。その上位種を倒すことで『カルマ』を効率よく減らせるのか、制限時間内に少女のシンボルを青くできるのか、と。儂だってずっと不安に感じて……迷い、悩み続けていた。


 だから、本当に上位種が居た時は……恥ずかしいことに、儂は本心から歓声をあげて。『カルマ』を効率的に減らせると知って、残り時間内に嘉穂ちゃんの『カルマ』の値を『0』にできると分かってからは、ただただ時間に追われるように魚人を狩って、狩って、狩り続けて……。


「そう言えば、嘉穂ちゃんはすっかり泳げるようになったな」


「うん! それだってミナセちゃんが教えてくれたからだよ!」


 ――果たして、会話は続く。


 今日までの思い出を。苦労話を。楽しかったこと、嬉しかったこと、ドキドキしたことを語り合う。


「……今じゃから言うが、あのとき嘉穂ちゃんに『流星槍』を誤射させられたときは、『これは死んだか!?』と焦ったものじゃ」


「あ、あはは……。あ、あのときは本当に『ごめんなさい』でした」


 ――会話のネタは尽きない。


 なにせ、それだけ長く一緒に居た。一緒に遊んだ。


 泳ぎ方を教えて、算数を教えて。映画を観て、感想を言い合って。


 何度も笑いあった。何度も話し合った。そうして何十、何百という戦闘を共にしてきた。


 ゆえに、思い出話は尽きない。それこそ、終日話し続けられるだけの苦楽を共にしてきた。


 ゆえに、


「……まったくもう。ミナセちゃんは無理しすぎ! 『お土産作戦』は良いけど、ミナセちゃんもしっかり休んでよ?」


 そんな苦笑交じりの言葉を最後に、子猫は自ら会話を終えることを選択し。疲れていた、というのもあったのじゃろうが……おそらくは優しさからだろう、「それじゃあ、ちょっと……おやすみなさい」と言って気絶ログアウトする嘉穂ちゃんに、儂もまた苦笑して「おやすみ」と告げ。


 とりあえず、関係各所に少女のシンボルを無事に青くすることが出来たとメッセージにて報告。予定通り、儂ら二人は現実世界でいう開始30分まえにログインする旨を伝えたうえで、儂は「……さて」と言って踵を返し。嘉穂ちゃん命名『お土産作戦』のために、今少し『水精遺跡ここ』で駆けずり回ることに。


 ……アキサカくんたちによれば、今、この『蒼碧の水精遺跡』の攻略がAFOでもっとも流行っているのだそうで。そのせいか『水場適応』の特徴が与えられ、水属性の攻撃に対して防御力の高い防具が造れる『水精遺跡ここ』のドロップアイテムの需要が高まっているのだとか。


 ゆえに、儂らしか満足に狩れておらんらしい上位種の素材アイテムは特に喜ばれ。ゆえに、≪マーケット≫にそれらを出品すれば即座に売れるような状況になっておるようじゃったが――つまりは、それら上位種の素材アイテムを大量に持って帰れれば、それだけで喜ばれる、と。


 ……幸いにして、嘉穂ちゃんと上位種狩りをしとる間に『職歴』に登録しとる〈職〉のレベル合計100以上も達成できて。その達成報酬で『1時間の間、取得できる経験値が増加する薬品ポーション』――『経験値増加ポーション』が手に入り。それを使ったことでレベル上げが捗った、というのはさておき。同時に〈職〉と【スキル】の両方で合計レベル100以上達成の報酬で得られた称号【武芸百般を修めし者】がここに来て大変助かる。


 …………いや。儂もまさか『達成報酬』で、『称号』を得られたのは予想外に過ぎたのじゃが。とりあえず、その称号を【慧眼】で視たところ、



〇 称号【武芸百般を修めし者】


取得条件:〈職〉と【スキル】の合計レベル100以上を両方とも達成。

効果:『職歴』の登録可能数プラス5。また、『控えスキル』の総数プラス5。



 ――と、驚くべきことに、保有できる【スキル】の総数が5つ増えたのである。


 おかげで、これまで『副職』に〈漁師〉を設定していたとき、空きが無いために取得する度、経験値に還元し続けていた【漁】と【投擲術】を無事に保持できるようになり。……嘉穂ちゃんの『流星槍』のように儂の『ブーメラン・アックス』も【投擲術】で威力を増せるようになったのは良いが、そこまで『スキル設定』に空きが無かったし、【投擲術】のレベル上げをしている暇も無かったゆえ放置しているが。とにかく、【漁】を保持し続けられたおかげで、嘉穂ちゃんがログアウト中でも【漁】の効果が得られるようになった。


 もっとも、【投擲術】と同じで戦闘時にセットし続けられるほど『スキル設定』に余裕は無いが……それでも、今までのように『出逢った敵は、すべて最速撃破』をする必要は無く。狙うは、『量より質』――と言うか、すでに『量』はかなりため込んだ状態で。嘉穂ちゃんではないが、最近の儂は【収納術】を外せん状態になっており、それがまた余計に戦闘中にセットしておける【スキル】の総数を圧迫しているのじゃが、それはさておき。


 今回、儂が『お土産』にと考え、狙っているのは、嘉穂ちゃんと儂の二人が半日駆けずり回って1体しか見かけなかった、魔法を使う魚人――『フィッシャー・マジシャン』で。


 その稀少性から、上位種の魚人のドロップアイテムですら需要が高い現状、特に喜ばれるじゃろう、と。そう思って、これから数時間ほど、なるべく戦闘を回避して『魔法使い魚人』を探すことに。


 とりあえず、最低でも志保ちゃんとダイチくんたちにダストン親分さん用にで3つ。欲を言えばアキサカくんたち用と、儂も欲しいので5つ。……うち、今のところ1体は撃破して素材アイテムを得ているので、残り4体を探して6階から9階までを高速で泳ぎ周ることにする。


 ……いつだかにダイチくんたちから聞いたダンジョンの仕様に、『その階層にプレイヤーが居なくなった場合、モンスターは再配置される』というものがあり。階層を移動し続ければ、外のように『倒して再出現を待つ』必要も無く出現するモンスターを選り好みすることができると言う。


 ゆえに、『見敵必殺』で『カルマ』を減らすために『出逢った端からすべてのモンスターを狩り続ける』必要が無くなった今、それまで以上に稀少種を見つけられる確率は上がる、と。


 ゆえに、残り時間の許される限り、とにかく泳ぎ周れば――見つけた!


 ……そして。


 以前に出逢ったときは嘉穂ちゃんと二人で、割と速攻戦で『フィッシャー・マジシャン』を最初に沈められたから気付かなかったが――こやつの魔法が、ものすごく痛かった。


 痛覚的な意味ではなく、HPダメージ的な意味で。……思えば、魔法を喰らったのが初めてだったから威力を計れなかったのじゃろう。それなりに『丈夫』にSPを振っていたのに加え、魚人の魔法が『水の属性魔法』だったのが幸いして称号【水の精霊に好かれし者】の効果でダメージを減らせた。そのおかげで一撃死は免れたが……防具や器用値の高さに依存する物理的な防御力を無視してくる魔法は、本当に痛い。


 現状、儂の『ステータス補正』で『魔力』に一切SPを消費していなかった、というのに加えて、『ドワーフ』の裏ステ的に魔力値がかなり低いというのも大ダメージとなった理由じゃろう。……それでも、今日まで『魔法を使うモンスター』と出逢わなかったゆえ、そこまで苦にしておらんかったが。しかし、称号【水の精霊に好かれし者】の効果でダメージを大幅に減らしたうえで最大HPの大半を吹っ飛ばされては考えさせられる。


 すなわち、これからの『ステータス補正』を考えるうえで『魔力』にもSPを消費していくか否か。


 とりあえず、『丈夫』に振れば物理・魔法問わずダメージを減らせるし、最大HPも増やせるゆえ、一発で教会送りとはならずに済むし。初見で、魔法によるダメージを喰らったことのなかった時分ならいざ知らず。今の儂なら魚人の魔法を受けるまえに【盾術】のアーツ『ワイドガード』を使って障壁で防ぐなり、『魔力』にSPを全振りした〈治療師〉に転職ジョブチェンジして受け止めるなり、相応の対処ができる。


 そして、魔法による『初見殺し』さえ無ければ、たとえ儂単独ソロでも複数体の上位種を相手にしても負けはない。……まぁ、相応に苦労し、時間もかかるが。それでも、今日まで大切な相棒と鍛え上げてきた儂が、二人で稼いだ『お土産』を大量に抱えた状態でHPを全損させられるわけがない。


 ゆえに、悩むのはこれから先のこと――『イベント』以降でのことで。


 これまで通り、〈治療師〉などの魔法を使う〈職〉以外では『魔力』にSPを振らないままでいるか。どの〈職〉でも魔法ダメージを減らせて、最大MPの底上げになるよう種族レベルの上昇で得られたSPも『魔力』に消費するか。


 ……もちろん、イベントの内容を知ってから悩むべきじゃろうし。なんなら美晴ちゃんや志保ちゃんたちにも相談するべきなのかも知れんが……パーティ戦の場合、こうまで魔法に打たれ弱い壁役タンクも問題なのでは? と、気づけば思案に暮れてしまう。


 それだけ、初めて受けた魔法ダメージの多さに衝撃を受けた、ということなのじゃろうが――とりあえず、必要最低限の『お土産』が揃ったところで嘉穂ちゃんの眠る『広場セーフティゾーン』に戻ることにして。


「なんにせよ、終わった――いや、これから始まる、のか……」


 ……次に目覚めるときは、イベント開始直前で。準備やらお礼参りやら、嘉穂ちゃんと二人、またいろいろとせんといかんな、と。


 かくして、最後に苦笑交じりのため息を一つ。儂はしばらくぶりのログアウト休憩をとることにするのじゃった。



これにて第三章の子猫とダンジョン籠り編は終了。次話からはついにイベント編開始! ……の、まえの準備回がすこし続きますw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ