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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
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クエスト51 おじーちゃん、魚人の『上位種』見つけてラストスパート

〇 称号【水の精霊に好かれし者】


取得条件:200時間以上連続で液体に身を浸し続け、濡れた状態を保つ。

効果:水属性の攻撃の威力と効果を上げ、ダメージを減少させる。また、水位に応じてステータスが上昇し、水中でも呼吸可能となる。



 ザッと【慧眼】で視たところ、これまでの称号【水の妖精に好かれし者】や【水の妖精に愛されし者】との大きな違いとしてあげられるのは、『水場での行動にプラス補正』の一文が消え。代わりに『水位に応じてステータスが上昇し、水中でも呼吸可能となる』という効果が得られたようじゃが……後者の『水中呼吸可』というのはともかく、前者のそれは今までの『水場での行動にプラス補正』と似たようなものじゃろう、と予想。


 とりあえず、軽く動作の確認をしたところ――結果論ではあるが、累計200時間以上『アバターを濡らし続ける』ことで称号【水の妖精に愛されし者】が変化するのか否かの確認を済ませてから、1階よりうえに上がろうとしたのは正解だったのだろう、と。それを確信するに足る、これまでの比ではない身体能力ステータスの上昇効果を実感し、あらためて嘉穂ちゃんの選択に感謝した。


 さらに、今回追加された『水中でも呼吸可能』という効果を試すために潜ってみたところ、『完全に全身を水に漬けた状態』となった場合の身体能力ステータスの上昇効果は、もはや身体強化ブースト魔法マジックをかけられたとき以上のもので。現状、水中での移動速度に限って言えば、儂が全プレイヤー中最速だろうと呆れ混じりに思わせられた。


 なので――


「GO! ミナセ号!!」


 前方を指さし、そんなことを言って笑顔を咲かせる子猫を背に。儂自身は完全に水の中へと没して、嘉穂ちゃんを背に乗せ、彼女には『シールドセット』を掴んでもらったうえで儂は泳ぎ周るようにして移動することに。


 ……なにせ、称号【水の精霊に好かれし者】を得てからこっち、完全に潜った状態の儂は、称号【水の妖精に好かれし者】を持ち、レベル30相当の【水泳】を備えた嘉穂ちゃんすら置いて行きかねない速度で泳ぎ周れるようになったのでな。移動時間の短縮にもなるうえ、魚人を見つけたら背中の子猫には手を離してもらうだけで儂は最速で接敵でき。これまで通り、嘉穂ちゃんに投擲攻撃でダメージを与えさせ、儂は終始水の中にいることでステータスが劇的に増加。上がった敏捷値を活かして暴れ回り、殲滅。と、そんな戦法をとれるようになったことで移動に戦闘などの時間をかなり減らせるようになった。


 おかげで――と言うのも、すこし違うが。この『蒼碧の水精遺跡』も、迷宮都市『エーオース』近郊のダンジョン同様、2階以降は『トラップ』が設置されているようで。


 ダストン親分たちクラン『漁業協同組合:おとこ組』の精鋭ほか、クラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』に所属するプレイヤーに、『最前線』に憧れたのだろうプレイヤーたちが挑戦して持ち帰った情報によれば、この『水精遺跡』には『落とし穴』や『不意打ちで発射してくる矢』、『落ちる天井』といったエーオースのダンジョンと同じものはもちろん。通路を満たす水に流れが発生し、それが立っていられないほど急激なものになったうえで魚人と戦闘させられるなどの『水精遺跡』ならではの罠もあったと言う。


 ゆえに、狩り場をレベル40以上が出現する6階以降とするのであれば、〈狩人〉に就くことで取得できる【罠】は必須であり。また、所持している【罠】のレベルが低いと隠された『トラップ』の発見は困難で。たとえ、事前に『トラップ』を見つけられても相応の火力を持たないプレイヤーでは『罠を不発のまま破壊できない』とあって、現状、ほとんどのプレイヤーは以前の儂ら同様、1階でのレベル上げに終始しておるようじゃが……儂らの場合は、少々、事情が異なる。


 なにせ、【罠】の有る無しに関わらず、儂の場合は範囲知覚で『トラップ』の位置を見破れるのでな。おそらく、ほかのプレイヤーでも『注意深く観察していれば違和感に気づける』仕様なのじゃろう。そして、発動まえに発見するなり、『トラップ』を発動させてしまうなりして【罠】を持たないプレイヤーでも【スキル】の経験値を得て、【罠】を取得、レベル上げするのじゃろう。


 ゆえに、称号【水の精霊に好かれし者】を得てからは、とにかく上を目指すことにして。『副職』に設定した〈狩人〉で【罠】を取得するまでは、『トラップ』を発見しても放置。


 そして、【罠】を得てからは、『トラップ』の上に赤い三角錐シンボルが見えるようになり。その三角錐シンボル選択クリックすることで出現する『トラップの解除を行いますか? YES ・ NO』という選択肢ウィンドウが浮かびあがってくるのじゃが、これに『YES』と返答コマンドすると――次に、眼前に儂の身長と大差ない大きさの『赤い正八面体の結晶オブジェクト』が出現し。結晶これを制限時間内に破壊することでAFOの『トラップ』は解除されるのじゃが……正直、これら『トラップ』の解除に関する仕様を志保ちゃんに聞いてすぐのときなど「なんてゲーム的な仕様なんじゃ」と呆れ半分、どこまでも他人事といった感想を抱いていたものじゃがな。まさか、解除それを狙ってやる日が来ようとはのぅ……。


 なにせ、AFOの仕様上、どういうわけかこの『トラップ』の解除作業で経験値を得られるようで。……百歩譲って【罠】の【スキル】を得られる〈狩人〉のレベル上げになる、というのは納得しよう。が、まさか種族レベルの方も上がるとはのぅ。しかも、同じ階層に出現する魚人より多く経験値を得られているようなのが複雑と言うか何と言うか……。


 もっとも、こうして『トラップ』の解除による経験値を狙うようになったと志保ちゃんに報せ、「どうしてこんなにも経験値を多くもらえるのか」を問えば、もう何度目のことか「……現状、『水精遺跡そこ』の『トラップ』の解除とか、ミナセさん以外にはできそうにない件について」という呆れ混じりの返答が。


 曰く、『トラップ』の解除は仕様上、【罠】を取得して解除しようとしたプレイヤー単独でのみ挑戦可能なもので。ゆえに、解除しようとするプレイヤーの『DPS』――『Damage Per Second』の略称で、つまりは『1秒間に与えられるダメージ』のことであり、単純に『攻撃力』や『火力』といった言い方の方が分かりやすいか――が最重要であり。高いレベルのモンスターが出現する階層は、総じて制限時間や正八面体結晶オブジェクトのHPが高いことが多く。挑戦できたとしても成功率が低い、という話じゃったが……まぁ、言われてみればたしかに、儂も初挑戦時には制限時間内の解除が無理そうだとみて子猫を抱えて逃げ出した口ではあるし。難易度に合わせて得られる経験値が増減する、というのはわからない話ではない。


 ……しかし、『トラップ』の解除は『開始タイミングを任意で選択できる』うえに正八面体結晶オブジェクトは動かず、反撃も無く。ダメそうなら逃げられるわけで……やはり得られる経験値が多すぎるように思える。と、疑問を呈した儂に対して、情報通のエルフ少女は、「エーオース近郊のダンジョンならいざ知らず。『蒼碧の水精遺跡』の『トラップ』の解除で得られる経験値が低かったら、やってられない」のだそうで。


 大前提として、『水精遺跡ここ』は必要とされる【スキル】や装備が特殊過ぎる、と。水場に適した防具は当然として、【水泳】も必須。薄暗い場所ということで【暗視】もいるじゃろうし、『トラップ』の解除には【罠】が無ければ話にならず。そして、『水精遺跡ここ』で『トラップ』の解除をしようとすれば、それは最低でもレベル36以上のモンスターが出現する階層で……。その難易度は、推して知るべし、と。


「そもそも【水の精霊に好かれし者】持ちのミナセさんが準備万端の状態で、両手のヌンチャクを振り回しながらTPをガンガン消費してアーツを連続発動して『なんとか制限時間内に解除できる難易度』の『トラップ』とか……なにそれこわい」


 普通のプレイヤーには無理ゲーです、本当にありがとうございました――などという返答メッセージをもらったことで、そう言えば現状、称号【水の精霊に好かれし者】はもちろん、称号【水の妖精に好かれし者】ですらその取得方法が≪掲示板≫では不明とされているんじゃった、と思いだす。


 ……ふむ。儂の【罠】のレベルが低い状態でも解除できるとあって難易度的には『そこまで難しいか?』と疑問じゃったが……たしかに称号【水の妖精に好かれし者】の系統を持っているかどうかは大きいじゃろうし。称号【水の精霊に好かれし者】を持っていてなお苦労させられる難易度だと思えば、得られる経験値が多くとも不思議ではない――の、か?


 なんにせよ、慣れてからは『器用』にSPを全振りした〈狩人〉でも安全に、膨大な経験値が得られるようになったのじゃから良しとするべきか。……もっとも、仕様上、嘉穂ちゃんには経験値が入らんようじゃし、『カルマ』を減らす助けにもならんゆえ、積極的に探すようなことはせず、道中で見つければ解除を行う、といった程度の心持で良さそうじゃが。


 とにかく、儂らの目的は一貫して少女の『カルマ』を減らすことで。そのために、減少値が増すであろう6階へ。


 出現するモンスターのレベルが40となれば、エーオースのダンジョンがそうであったように上位種が現れる可能性があり。1体ごとの強さが増し、戦闘における危険性が増えることになるのじゃろうが……その分、1体撃破ごとの『カルマ』の減少値も増すじゃろう、と。


 これらは、最初は儂の単なる予想でしかなかったし。情報通の志保ちゃんはもとより、全プレイヤーが観測していない未確認情報で。もはや、後の無い儂らの最後の希望でもあったそれは――




 居た。




 見つけた。


 予測通り、6階で。『フィッシャーマン』の上位種を!


「っ!! み、ミナセちゃん、『あれ』!!」


「うむ! 賭けに勝ったぞ、嘉穂ちゃん!!」


 ――今日まで、レベル40以上のモンスターが出現するだろう階層で、ゴブリンが出現する他のダンジョン同様、『フィッシャーマンの上位種が出るようになるかも知れない』というのは、所詮『儂らの希望的観測』でしかなく。


 イベント開始の時刻が迫り、残り時間が減っていくごとに焦りと不安が増していき。嘉穂ちゃんばかりか儂まで心に余裕が無くなっていた矢先に、辿り着いた『蒼碧の水精遺跡』の6階。


 そこでようやく見つけた、フィッシャーマンの上位種だろうモンスターの4体をまえに、儂らは一瞬、戦闘準備を忘れて喜色満面で歓声をあげあい。……すぐに、喜ぶのはまだ早いと気づき、背中の子猫に注意して。


 いつものように『フレンドコール』を繋ぎ。『移動用のスキル設定』から戦闘用のそれに変えるまえに、ちらり、【慧眼】でもって未確認のモンスターを調べ――ようとして、『総合レベル+スキルレベル』が40未満だったせいで種族を確認できず。……そう言えば、そんな仕様じゃったなぁ、と。モンスターを調べようとすること自体、久しぶり過ぎて失念していた仕様を思いだし、【慧眼】と【看破】を交換。


 あらためて、もっとも前方に居た2体の『硬い鱗でできた盾を装備した魚人』――その頭上の三角錐シンボル選択クリックし。それらの種族名が『フィッシャー・ガードマン』だというのを確認。


 次に、『薙刀のような鋭利な武装を持った魚人』を調べれば、『フィッシャー・ランサー』という名が。『弩を持った魚人』が『フィッシャー・アーチャー』と判明し。……これらの情報は、あとで志保ちゃんに報告メッセージするとして。


 今はとにかく、


「嘉穂ちゃんはいつも通りに! 儂は、突っ込む!!」


 背中の少女に声をかけ。その場に下ろし。『チャージ・アックス』を発動。


 収束するようにエフェクト光の光量が増していく斧槌を片手に、潜行。なるべく通路の底を行くように先行する儂に対して、『ガッテンだーっ!』との返事の後――放たれる、三叉の鉾による雨霰。


『「ブレイクアップ」! 「ブレイクアップ」! 「ブレイクアップ」!』


 ――【投擲術】のレベル15で使えるようになる、『投擲した武器を10倍に増やす』効果を持つ『ブレイクアップ』というアーツは、『投擲した武器を中心とした円形の空間に均等に広がる』性質を持っている。


 ゆえに、しっかりと狙ったうえで、高速で殺到する投擲武器の群れをまえに避けるのは難しく。『1つ1つの攻撃力が激減する』効果こそあれ、PK時代の嘉穂ちゃんは主に群れで現れる雑魚モンスターへの『面攻撃』と、集団の『足止め』に多用していたわけじゃが――じつはこのアーツには、この『蒼碧の水精遺跡』だからこそ有用そうな、『なかなかに面白い性質』も有していた。


 誰より使い続けているだろう子猫と、情報通の軍師殿に曰く。『ブレイクアップ』の効果によって『分裂』が発生する範囲は、基本、投擲した最初の武器を中心としたものではあるが――本来であれば分裂して広がるはずの範囲に壁や床、水などがあった場合は『それらを除外した範囲で分裂した武器が発生する』性質があり。おそらく、壁や床すれすれを投擲したときなどに『ブレイクアップ』の効果で発生するはずだったそれらが減らないように、という配慮なんじゃろうが……この性質のおかげで、最近はかなり楽をさせてもらっている。


『「ブレイクアップ」! 「ブレイクアップ」!』


 ……なにせ、『潜っているだけ』で儂は避けられるんじゃからな。


 嘉穂ちゃんをある程度魚人たちから離れた位置に下ろし。そこから『ブレイクアップ』の連打でもって魚人の足止めを行ってもらって。その間に水底を這うようにして儂が移動し、接敵。


 1本あたりの攻撃力こそ10分の1まで減少させられていようとも、投擲している『トライデント』の元の攻撃力が並大抵のものではない、というのもあって儂が肉薄するころにはけっこうHPが削られており。儂が魚人へ近接戦闘を仕掛けられるまで近づいた段階で嘉穂ちゃんには『ブレイクアップ』での牽制をやめてもらい、『流星槍』と『スローダウン』で準備を開始。


 接敵した儂が『ヘイトアピール』で注意を引きつつ暴れ。準備が整った嘉穂ちゃんが数を減らす――というような戦闘が、ここ最近の対フィッシャーマン戦における主流で。こうして子猫に『すべてのモンスターに攻撃させ、なるべくトドメを刺させる』ことで『カルマ』の減少値を増やす立ち回りを行ってきたわけじゃが……さて、この上位種たちにも有効か否か。


 とりあえず、嘉穂ちゃんが『ブレイクアップ』で発生させた投擲攻撃の散弾は、狭い通路を埋め尽くすように滑空し。慌てて前へと出て、文字通り『盾』となるべく『フィッシャー・ガードマン』2体が固そうな鱗でできた板を掲げ。そこに次々と『トライデント』が命中していくのを範囲知覚で『視て』、今のところはこれまでの戦術も有用そうじゃと確認。


 ……これなら、通常の『フィッシャーマン』たちがそうであったように、儂が接敵するまで嘉穂ちゃんには『ブレイクアップ』を使ってもらって問題ない――と、思った矢先に、


「ッ! 嘉穂ちゃん、ストップ!!」


 あとわずかで儂が接敵できる、というタイミングで。弩を持つ『フィッシャー・アーチャー』が盾役の魚人たちの間から矢を放とうとするのを見て嘉穂ちゃんを止め。その狙いが、確実に後方で『トライデント』を投げ続けていた少女に向けられているのを見てとり。ここで、今さら『ヘイトアピール』で敵意を集めたところで遅い、と瞬時に判断。


 背中から引っ張り出した盾を掲げ、【盾術】のアーツ――『ワイドガード』を発動。放たれた矢を、掲げた盾の先に発生させた不可視の障壁で弾き。そのまま突撃。


 前衛の盾持ち魚人2体を、見えざる壁を押し込むようにして進むが、それもすぐに後方から突き出された『フィッシャー・ランサー』の薙刀に貫かれ、消滅。……まぁ、『ワイドガード』で生み出した障壁の耐久値は、使ったときの使用者の防御力に依存すると言うからの。さすがにレベル40の、魚人の上位種たちの攻撃を真正面から受け止めては耐えられんか。


 もっとも、わずかでも盾持ちの態勢を崩せただけで十二分。


 2体の『フィッシャー・ガードマン』の間に滑り込むようにして肉薄。それまで貯め続けていた『チャージ・アックス』を片方に叩きこみ、さらに相手の陣形を崩し。あらためて『ヘイトアピール』を発動。4体の魚人すべての敵意を集めながら、後方に下がろうとする弩持ちに追撃――しようとするが、間に薙刀の刃先が滑り込むようにして割り込み、回避行動へと動作を変更。


「……ふむ。残念じゃが、下の魚人どもと違って『盾持ち』と『弩持ち』が居る構成では『ブレイクアップ』だけでは接敵するまで保たんか!」


『「流星槍」っと、そうみたいだね。「スローダウン」! の、準備に移るね』


 そんな『フレンドコール』越しでの会話はさておき。わずかに苦しい態勢となった儂に、左右の盾持ちが、掲げた盾をそのままに突撃してくるのを範囲知覚で『視て』。このままでは退路を断たれたうえで『フィッシャー・ガードマン』が盾と一緒に持った湾曲刀シミターで斬りかかられるか、すっかり後方に下がった弩持ちの矢に撃たれるか、相対する魚人の薙刀に貫かれるか、そのうちのどれかになりそうじゃが――残念。称号【水の精霊に好かれし者】を得てからこっち、潜水中の儂の敏捷値はちょっとしたものでな。


 突き出された薙刀を避けるついでに潜り。上昇した敏捷値を活かして態勢を立て直し。……範囲知覚で『視た』ところ、潜水中であれば完全武装であってなお上位の魚人たちより速く動けるようで。盾持ちの鈍重な突進攻撃など余裕で避けられるが、『フィッシャー・ランサー』だけが辛うじて儂に追従できる速度で動けるようじゃから、単独戦闘時などはこやつだけ注意する必要がありそうじゃな。


 もっとも――あいにくと、今の儂には頼りになる相棒が居るでな。


「『ヘイトアピール』! 『グランド・バースト』っと、嘉穂ちゃん?」


『ん! 「流星槍」の準備かんりょー! 「弾幕」も発射、3! 2! 1!』


 儂単独ソロではたしかに厳しかったろう相手も、嘉穂ちゃんと二人がかりでならば問題ない。


『「流星槍」発射ーッ!! からの、「クイックアップ」! 「クイックアップ」! 「クイックアップ」!』


 迸る閃光。殺到する投擲攻撃の雨霰。


 対して、直前まで儂を狙って子猫に背を向けていた『盾持ち』はもちろん、どうにか儂に対して攻撃を当てようと躍起になっていた『薙刀持ち』と『弩持ち』も満足に防御姿勢をとれずに被弾。


 なかでも『流星槍』を受けた『薙刀持ち』を狙って『グランド・バースト』で追撃し。慌てて嘉穂ちゃんの放つ『弾幕』に対して鱗盾を掲げる『盾持ち』と、その陰に隠れようとする『弩持ち』はいったん無視して、『フィッシャー・ランサー』をこの機会に仕留める、と。『フレンドコール』にて、『クイックアップ』で加速させた投擲攻撃に『ブレイクアップ』を混ぜるよう子猫に指示しながら追撃の手を強める。


 ……幸か不幸か、嘉穂ちゃんの『面攻撃』も『盾持ち』が防いでくれるでな。『フィッシャー・アーチャー』が再び子猫に弩を向けんよう注意せんとじゃが、『フィッシャー・ガードマン』が『弾幕』を防ぐために儂に背を向けとる現状、『薙刀持ち』と『弩持ち』の2体は儂を止めんと『盾』を失いかねんからな。位置的にも『盾持ち』以外は儂を狙わんと『詰む』――そんな状況に持ち込めた時点で儂らの勝ちじゃ。


「ふっ。嘉穂ちゃんはそのまま『ブレイクアップ』で『弾幕』維持を!」


『ガッテンだー! 「ブレイクアップ」! 「ブレイクアップ」!』


 かくして、そこからの戦闘は一方的なものとなり。


 儂が薙刀を振り回す『フィッシャー・ランサー』をアーツの連打で消し飛ばし。『弩持ち』を斬り捨て。『盾持ち』を相手に時間を稼ぎ、嘉穂ちゃんが『流星槍』を放って順番にポリゴンの破片へと変えて。


[ただいまの行動経験値により【斧術】のレベルが上がりました]

[ただいまの戦闘により『盾魚人の死骸』を得ました]


 そして、


「……ミナセちゃん、どう?」


 戦闘終了後。不安に揺れる金の瞳を向けて問う嘉穂ちゃん――その頭上の三角錐シンボルをクリックして、先の一戦での『カルマ』の減少値を調べたところ、


「1体撃破の平均減少値は――『17』!」


「ッ!! そ、それってつまり……!?」


 儂らは互いに笑顔を浮かべ、頷きあう。


「希望は繋がった。ゆえに――さぁ、ここから本気でスパートを掛ければ間に合う! 頑張るぞ、嘉穂ちゃん!!」


「ガッテンだーッ!!


 ――イベント開始まで、現実世界で残り14時間。


 儂らはそこから必死に駆けずり回るのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒャッハー、祭りじゃー、ラストスパートじゃー!!
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