表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
71/127

クエスト49 おじーちゃん、子猫の『新装備』のために呼んでみた?

 嘉穂ちゃんの『カルマ』の減少値が、どうやっても1体につき『1』しか減らなくなった。


 つまりは、『カルマ』を効率的に減らすには『格上』を倒すのは必須で。レベルが並んでしまった段階で、その階での狩りの効率が激変するのだと知った儂は、再び嘉穂ちゃんに選択を迫った。


 まず、『提案プラン1:諦めて、ここからは遊ぶ』という選択肢を提示すれば、即座に否定が返って来て。ここまで頑張った自分を嘘にしたくない、と言われてしまえば、この提案プランは却下せざるを得ない。


 そして、次の『提案プラン2:2階へと昇り、狩りを頑張る』を提示すれば、それに対して真剣に悩みだし。儂個人としては、称号【水の妖精に愛されし者】に更なる進化があるのかどうかを確かめるまでは1階に留まりたいのじゃが、それをするとイベント開始までにシンボルを青くできる可能性が更に低くなる、と。そう素直に語ったうえで、


「そして、提案プランその3は――」


 儂は、もっとも不確かで。もっとも苦労するじゃろう、最後の提案プランを告げ。


 果たして、そんな3つの提案プラン――と言っても、最初の案は即座に否定されたから、実際は2つの案――をまえに眉間の皺を深くして悩みに悩んで、子猫は決断する。


 提案プランの、3つ目――儂の称号【水の妖精に愛されし者】の変化を確認したうえで、一気に階層を昇っていき。ほかのダンジョンがそうであったように、おそらくは『10レベル刻みで出現するモンスターが変化する』と予想したうえで『そうして変化したモンスターを撃破した場合、「カルマ」の減少値は増える可能性がある』と。そうした不確かで希望的観測に基づいた予測のもと、レベル40以上が徘徊する上階を主な狩り場とする案を嘉穂ちゃんは選択。


 その理由は、「だって、ミナセちゃんと一緒に遊ぶんなら、一番『親友』が得をする未来を選ぶのは当たり前だよ」と。黒髪褐色肌の猫耳幼女は笑顔で語り、その選択に一片の後悔もないと告げるように手のひらを差し出してくるので、


「うむ。では、よろしくの、『親友カホちゃん』!」


 儂はそう言って笑い、その手をとるのだった。


 ――というのが、嘉穂ちゃんがこの『蒼碧の水精遺跡』で目覚めてからおおよそ160時間ほど経過したときのことで。


 儂の称号の進化を確認するまで、まだしばらくは1階を狩り場とし続けることになったわけじゃが……いよいよイベント開始まで、AFO内時間で100時間を切ったこともあり、儂もいろいろと考えた。


 そして、その結論として――ずばり、この機会に嘉穂ちゃんの装備を一新しよう、と。


 ……イベント開始までに嘉穂ちゃんの『カルマ』を『0』へと減らすため、本格的な狩りを行うようになってからも、儂は定期的に、志保ちゃんたち頼れる仲間たちとメッセージによる遣り取りを続けており。


 そのなかでアキサカくんたち『運☆命☆堂』のメンバーには、嘉穂ちゃんが以前、儂の装備それを見て「ほしい」と口にしていたカッコいい衣装――もとい、装備一式を頼み。その素材として、少女がそれまで使用していた『魚人の鱗鎧+10』という、キルケーの冒険者ギルドで売っている『劣魚人の鱗鎧』にこのダンジョンの魚人を倒して得られる素材アイテム――『魚人の死骸』を『強化』の素材として使用し続けたものや、各種いろいろな素材を適当に混ぜて作りだした銛や槍などを『加工』出来ないか訊ねたところ、いちおうは可能なようで。


 曰く、〈細工師〉などで取得可能な『加工系のスキル』――既存の武装の外観を弄ったり、素材アイテムを望む形状に変化させられる【スキル】の総称――ならば、性能はさておき、望む形に変化させられるのだそうで。予め相談して決めていた子猫の新装備一式の素材として、彼女が思い出の品として処分できずに死蔵し続けていたそれらを、この機に一掃しよう、と。その工程を≪マーケット≫を介しての遣り取りでは横取りなどが怖いと言うので、彼らは現地まで――つまり、儂らの居る『蒼碧の水精遺跡』まで来ることになり。


 しかしながら、根っからの生産職組である彼らだけで、レベル20前後が群れで出現する『蒼碧の洞窟』を走破することは難しく。ならば、と儂がいちおうは所属させてもらっているクラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』のメンバーにして、プレイヤーの最前線を行く『攻略組』パーティ――『主人公と愉快な仲間たち』こと、通称『ヒーローズ』に護衛を頼めないか相談し。


 その結果として、意外と言えば意外なメンバーが彼らの護衛を引き受けてくれることになり。後日、アキサカくんたち三人の職人組と一緒に『蒼碧の洞窟』最奥まで訪れてくれたのだった。


「え、えっと……。お、お久しぶり、です……?」


 果たして、アキサカくんたちがダンジョンの入り口まで到着したという報せを受け、彼らを一時的にパーティに組み込み、転移結晶のある広場で待つこと少し。


 『運☆命☆堂』店員三人――その最初の一人として現れたアキサカくんの、濃すぎる外見に目を丸くし。『意外な協力者』こと、クラン『漁業協同組合:おとこ組』――その団長クランリーダーである、ダストン親分の姿を見つけるや、半ば怯えて儂の陰に隠れようとしていた子猫は、しかし、彼らと一緒に転移結晶をくぐって現れたダイチくんの姿を認めてわずかに喜色を浮かべて顔を出し。おずおずとした物言いではあったが挨拶を口にするのだった。


 それに対して、身長2メートルを超す筋骨隆々の巨漢にして小さな子どもが見たら泣きそうな凶相を浮かべた鉢巻き男――ダストンさんが真っ先に反応。視線を嘉穂ちゃんに固定し、その鬼のような形相をそのままに『ばっしゃ、ばっしゃ』と水しぶきを上げて近寄ってきて、


「すまんかった!!」


 見上げる儂と、そんな儂の背に隠れて怯え震えていた嘉穂ちゃんに、波でも起こしそうな勢いで顔面を水面に叩きつけ、土下座を決めたのだった。


 ……え~と? と、そんな彼に驚き、呆然と見つめて返すしかない儂らに対して「今回は――いや、カホの嬢ちゃんからしたら、そのまえから随分と『漢組うち』のわけぇのが迷惑かけてたみてーで……本当に、すまん!!」と、そう言ってまた顔面を水に叩きつける巨漢。……いっそ、このまま無反応で居たら、あるいは窒息死で教会送りにでもなるんじゃないか、と心配するほど頑なに水の中に沈んで土下座を続ける彼に、「あ、頭をあげてー!」と慌てて声をかける良い子な子猫。


 かくして、両者で迷惑をかけたのは自分だから、と謝りあい。泣いて「ごめんなさい」と告げる猫耳幼女と、そんな小さな女の子に対して身内――と言うには、ちょっと違うと思うが。同じクランに所属していただけの、嘉穂ちゃんを陥れて泣かせた連中の行いやら、あの日の暴言の数々を思い出してだろう、おとこ泣きの様相になって「うぉぉおおおおお! こ、こんな良い子に、俺は……! 俺はぁぁああああ!!」と慟哭する筋肉達磨。


 その両者をとりあえず無視して、儂はアキサカくんたちと再会の挨拶を交わし。今回の依頼に対する礼を伝えつつ、事前の話し合いの通りに彼らとはいったんパーティを解散。


 アキサカくんは、『運☆命☆堂』のほかの店員二人を。ダイチくんは、あの日『蒼碧の洞窟』に来て嘉穂ちゃんに教会送りとされたメンバーを、それぞれパーティに加えて。あらためて、それぞれが招待した者たちと挨拶しながら思うのは……志保ちゃんに以前、教えてもらった『裏技』こと、『パーティでダンジョンに入って、解散』から『メンバーそれぞれで新しい面子をパーティに誘う』という、本来はパーティを同じくした六人しか入れないダンジョンに多数のメンバーを招けるAFOの仕様を、まさか使うことになろうとはなぁ、と。あの頃は、美晴ちゃんと三人でやり続ける儂らが六人を上回るメンバーで一緒にダンジョンに潜ることになるとは思わなかった、と内心で呟き。


 ともあれ、少女の新装備一式の材料となる『素材』をアキサカくんたちに次々と『トレード機能』で渡していき。筋力値に優れた『ドワーフ』の裏ステに、『筋力』にSP全振りした〈運び屋Lv.12〉、【強化:筋力Lv.2】に【収納術Lv.16】という状態で『インベントリの容量ギリギリ』という最大強化武装の数々と、今では≪マーケット≫にて『商人ギルド』の買い取り額でもある2500Gで売ってもいる『魚人の死骸』も必要に応じて取り出せる構えとなり。


 職人一同がその量と重さに吃驚仰天といったリアクションを見せ。しかしながら、儂らには無駄にして良い時間が無いことも知っているからか、さっそく『水に浸かることのない台座』のある場所にて座り込み、『加工』作業へ。


 もっとも、いくら時間的な猶予など無いと言っても、彼らは一流の職人にして本物の『ヲタク』であり。そのプライドに賭けて妥協を許さず、造形デザイン性能スペックに拘りに拘って。


 果たして、よそではダイチくんやカネガサキさんのとりなしによってだろう、ようやく落ち着きを取り戻したダストンさんと、人見知りを発揮してまさしく『借りてきた猫』状態の嘉穂ちゃんを上手くリードして会話を進めるローズたちの会話が一段落し。彼ら、彼女らの興味がこちらに移る頃には、子猫の新しい衣装――もとい、防具が完成。瞳を輝かせる黒猫幼女にさっそく『トレード機能』で渡して試着してもらうことに。


 そして、


「うわぁ、うわー! どう、どう!? ミナセちゃん、カホ、似合ってる!?」


 喜び、跳ねまわって水しぶきを飛ばす嘉穂ちゃんに「うむ。よく似合っておるぞ」と笑いかけ。少女の愛らしさに、それぞれの言葉で褒めそやす面々に隠れて『運☆命☆堂』組の三人と親指を立て合う。


 ……なにせ、嘉穂ちゃんがその身に纏う防具コスチュームは、儂と同じ原典もとネタから生み出されたもので。儂の衣装それが『蟹座』のものであるのに対して、彼女のは『魚座』のものであり。白銀の輝きを放つ、光沢感のある甲冑と、ところどころに生える濃い緑色の鱗柄。そして、背中や両腕にある『ヒレ』を模した飾りに、尻尾を思わせる腰から伸びた薄布。それらすべてを範囲知覚でもって全方位から『視て』、頷きを数回。あらためて、三人の職人たちへと内心で賛辞を送る。


 うむ。今回も良い仕事じゃったな。


 今は外装によって隠れておるが、〈服飾師〉にして鎧下インナー担当であった『デスティニー@10Cジャア』こと『ジューシー』さん曰く、今回もしっかりと原作通りの『旧式女児用競泳水着ネイキッド・スタイル』への換装も可能なようで。さっそく試したのだろう、外装を外した『昔の女児用の水着』だけを纏った姿へと着替えた幼女をまえに目を吊り上げる巨漢は、さておき。その完成度と拘りの高さについては脱帽する思いであった。


 そして、防具が完成したら武器の方を――というわけではなく。じつのところ、専用の武器であるところの『デスティニー作トライデント』に関しては『先に出来ていた』と言うか、今なお『造られ続けている』状態で。物ぐさ気味の嘉穂ちゃんが今日まで貯めに貯めた各種最大強化済みの銛や槍を素材に、これまた大量に貯めた『魚人の死骸』をも消費して、現在進行形で造り続けており。


 できあがりしだい、嘉穂ちゃんに『トレード』を申請して渡し。代わりに彼女が抱えている武装や素材アイテムを受け取って。それを『加工』して、トレード機能で『素材』と交換して――と、そんな遣り取りを続けること数時間ばかり。ようやく嘉穂ちゃんが抱えるぶんの武装だけは『トライデント』に換装できたので、泳いで遊んでいた少女と、そんなスク水黒猫幼女を微笑まし気に眺めていた巨漢にその旨を伝え――というか、なぜにダストンさんは『初孫をまえにした好々爺のごとき雰囲気』で残っとるんじゃろうな?


 ダイチくんたちは、ある程度の挨拶と近況報告を済ませるや『水精遺跡ダンジョン』の奥へと試し狩りに行ってしまったようじゃが……。なにはともあれ、ここから先は、再び嘉穂ちゃんとレベル上げをしよう、と。あらためて彼には今日の件についてのお礼をして別れ――


「すまんが、頼みがある」


 ――ようとして、そんな真剣な様子で話しかけてきた巨漢によって予定が変わる。


 なんでも、じつは今回はダイチくんや『運☆命☆堂』の三人以外にも『蒼碧の洞窟』にプレイヤーを連れてきており。転移結晶の外には、現在、彼が率いてきたクラン『漁業協同組合:おとこ組』の団員が数十人居るのだそうで。できれば、儂や嘉穂ちゃんに対して謝罪する機会をくれないか、と。


 そのために儂らに『水精遺跡ダンジョン』の外へと出てほしい、と。ぜったいに、儂らに危害は加えないから頼む、と土下座せん勢いで頼まれたが……正直に言って、困る。


「……わかってる。ミナセの嬢ちゃんがカホちゃんを大事に思ってんのも。俺らを信用できないってのも!」


 だけど、と。再び頭を下げようとする巨漢に「あ~……いや」と困り顔を濃くする儂。少なくとも、これまでの嘉穂ちゃんに対する接し方からしてダストンさんが信用できる男なのは確信しておる。


 ゆえに、その点で渋っているのではなく。もちろん、子猫を外に出すことで不意打ちしてくる輩や儂らの思いを裏切る不届き者が現れるかも知れんという不安も無くはないが……それ以前の話として、儂は称号の進化待ちの状態で水から出られんわけで。


 しかし、この称号【水の妖精に好かれし者】関係の情報は秘匿するよう志保ちゃんから言い渡されているため、これを理由に断るわけにもいかず。……ダストンさんの言う、人数的にいちいちパーティに加えて『水精遺跡ここ』に呼ぶわけにもいかない、というのもわかる。彼らに謝罪する機会を与えたいという団長クランリーダーの思いも理解できんこともないゆえ、眉間の皺が深くなるが――


「…………仕方ない、か」


 ため息を、一つ。知覚範囲に映る子猫の拝むような表情に負けるかたちで、「……ダストンさん。いや、今日からは敢えて『ダストン親分』と呼ばせてもらうが」と後頭部をかきかき、しかめっ面のまま口を開く。


「儂は、わけあってこの場を離れられんゆえ――嘉穂ちゃんを、頼む」


 そう彼の目をまっすぐに見つめ、最後には頭を下げて頼み込めば「……わかった」と彼は重々しい調子で頷き。嘉穂ちゃんには「ダストン親分が裏切るとは思えんが、それでも『外』では何が起こるかわからないからな」と注意して。


 どうせ、外に居るという連中に儂が謝罪されるようなことなど無いし。嘉穂ちゃんもずっと『水精遺跡ダンジョン』内というのも窮屈じゃろう、と。少女のためにも儂とずっと二人っきりというのも良くない、と自身に言い聞かせながら。


「良いか、嘉穂ちゃん」


 傍らに子猫を呼び寄せ、その顔をまっすぐに見つめながら「現実リアルの情報を話してはいかん」や「気軽に『フレンド』になってはならん」、「請われても≪ステータス≫を見せてはならん」、「『外』では『水着姿』を晒してはならん」、「写真スクリーンショットは撮らせんように」などと思いつく限りの注意点を並べ。最終的に「知らん人について行ってはダメ」と言った段階で「あはは! ミナセちゃん、ママみたい!」と笑われ、ハタと気づく。


「……ふむ。たしかに、今の儂は『小うるさい保護者』のように思われるかも知れんが――」


 伝わって欲しい。


 ……たとえ、鬱陶しいと思われようとも。嘉穂ちゃんには無事に帰ってきて欲しい。と、そう思っての儂の言葉を、


「わかってる」


 遮って、少女は笑顔で告げる。


「ミナセちゃんが、カホのことを本当に心配してくれてるの、わかってる。大丈夫」


 わたし、ちゃんと帰ってくるよ! と、そう花咲くような笑顔で言われてしまえば、もうこれ以上に注意を口にするわけにもいかず。


 なにやらご機嫌な調子でスキップし始めた子猫から視線を逸らし、「……こほん」と咳払いを一つ。


 すこし遠くで、今までの遣り取りを微笑まし気に眺めていたダストン親分の方に不機嫌顔を向け。あらためて、筋骨隆々の団長殿に「くれぐれもよろしく」と頭を下げることにする。


 ……ふぅ。どうせ、何をどう倒したところで1体につき『1』しか『カルマ』が減らせんのじゃ。ゆえに、この際、『外』で待機しているらしいクラン『漁業協同組合:おとこ組』のメンバーを巻き込んで、すこし『洞窟』で雑魚狩りでもしてもらおうか。


 なに、彼らは嘉穂ちゃんに謝罪しに来たというのじゃ、罪滅ぼし――と言うには、相手側に過失は無さそうじゃが。とにかく、子猫の味方をこの機会に増やしてしまおう。


 ……大丈夫。今の嘉穂ちゃんのスペックなら、そうそうHPを全損させられんじゃろうし。ダストン親分は信用できそうじゃし、の。嘉穂ちゃん自身も約束してくれたんじゃ、きっと何事もなく帰ってくる。


 ゆえに、大丈夫、と。何度も自身に言い聞かせ、ついには笑顔で手を振り、転移結晶から『外』へと出て行く子猫を呼び止めることなく見送り。……開きそうになる口と、上げそうになる片手を意志のちからを総動員して停止させていただけに、傍目にはいっそう不機嫌そうなしかめっ面に見えたろうが、それは仕方ない。


「え、え、えっと……。そ、そそそ、それでは、ぼぼ、僕らも、この辺で、しっ、失礼、します……!!」


「はい、またのご利用をお待ちしております。姫さま!」


「今回も良い仕事させてもらえて楽しかったッス!」


 なにはともあれ、『運☆命☆堂』の三人もそんな言葉を最後に『緊急回避』を使用して『水精遺跡ダンジョン』から去っていき。……なにげに称号【七色の輝きを宿す者】が浸透しているんじゃな、と。現実逃避ぎみな感想を抱いたりもしながら、すっかり静けさを取り戻した広場を見回し。


「…………ふむ」


 とりあえず、ダイチくんたちのところにでも顔を出しに行くか、と。


 ……決して、急に『ひとり』が寂しいと感じたわけではないが、この『蒼碧の水精遺跡』内では儂に一日の長があるでな。今回の件のお礼として、微力ながら助力しよう、と。うむ、それだけじゃ。


「さて、ダイチくんたちはどこまで潜っとるのかの?」


 ――……なお、余談ではあるが。


 今回の衣装代――もとい、嘉穂ちゃんの防具や武装の改修費用に関しては、これまでに儂らが貯め込んできた『魚人の死骸』数十個と、それらを売って得ていた資金に加えて子猫の同意を得たうえで撮影会を行って代金としており。


 アキサカくんたち職人組はもちろん、この『水精遺跡ダンジョン』が発見されてからこっち、水場での戦闘に適した防具の需要が高まったこともあって、ことのほか『魚人の死骸』払いがうけたようで。キルケーを拠点とするダストン親分たちはもちろん、「いずれは僕らも攻略しに来るよ」と息巻いとったダイチくんたちも喜んでくれた。


 が、それはさておき。後日、今回の子猫の撮影会もどきで撮った写真スクリーンショットを≪掲示板≫で発見した某シスコン軍師殿には苦情のメッセージをもらい。今回来たクラン『漁業協同組合:おとこ組』の野郎どもが犯人だろう、『猫姫ちゃんを見守り続け隊』がどうとかの書き込みがあったとして『保護者の責任』がどうのと苦言を呈されたが……さすがに後者の件は儂のせいではないと思うんじゃが?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ