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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
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クエスト44 おじーちゃん、子猫に笑顔で『おはようさん』

 海辺の街キルケー近郊にある『蒼碧の洞窟』。そこに潜んでいたPK『亡霊猫ファントム・キャット』こと、志保ちゃんの双子の姉――鍵原かぎはら 嘉穂かほちゃんとの一件が済み。彼女と二人、『洞窟』最奥のダンジョン――『蒼碧の水精遺跡』の中に入って。転移結晶でいりぐち近くの台座で疲労困憊状態の儂らがログアウト休憩して、再びログインしてからAFO内時間で早2日。


 わずかな休憩の間を置いてすぐログインし直した儂とは違い、黒髪褐色肌の猫耳幼女の現身アバターは、今も変わらず台座にて一人、静かに眠りについており。現実であれば、意識不明の少女を地べたに寝かせるのもどうかと思われたが……そこはそれ、ここはゲームのなかであり、気絶状態の彼女の身体は単純にログアウト中なだけで、ことさら手厚く保護しておく必要は無く。


 いつ彼女がログインして来ても良いように――できるなら笑顔で出迎えてあげられるように――儂はあれからずっとログアウトはせず。さりとて、蓄積疲労が原因で強制離脱とならないよう、できる限り意識レベルを落とし、脳の疲労を最低限に抑えたりといった工夫をしたうえで、わざわざ台座近くの水に浸かり続けているのは、


[ただいまの行動経験値により【水泳】のレベルが上がりました]


 と、この通り。要は【スキル】のレベル上げのためであった。


 これに加えて、ほかのダンジョン同様、全体的に薄暗いので【暗視】のレベル上げも目を開けているだけでできていたわけじゃが……それはさておき。


 志保ちゃんたちからのメッセージに曰く。儂らがダンジョンに入ったあとでダイチくんたちとクラン『漁業協同組合:おとこ組』の連中は話し合いのすえに意気投合。未知のダンジョンこと『蒼碧の水精遺跡』をすこし調査してくれたようで。


 その結果、このダンジョンに出現するモンスターは、迷宮都市エーオースにあるそれとは違って、台座のある広場同様、通路から何からすべてのエリアが水に浸かり。儂の身長で言えば半身を浸すほどの水位があることが判明。


 加えて、出現するモンスターもゴブリンなどではなく、人間のような四肢をもつ魚人で。キルケー周辺に出現する『レッサー・フィッシャーマン』に似ているが、明らかにそれらより強力そうな外見をしており。おそらくは『レッサー』ではない『フィッシャーマン』だろう、と。そして、他のダンジョンに出現するゴブリンなどと同様、その魚人は最低でも3体、多いときで一度に5体の出現が確認されたという。


 これに、どうにも1階に出現するモンスターのレベルからして外の『洞窟』と段違いだったようで。【水泳】や『水場適性』の特徴のある装備を持っていなかったせいか、ダンジョン内全体が水場というのが魚人連中の脅威度を引き上げる形となり、あの敏捷値特化のダイチくんより素早く動けていたと言うのだからたまらない。


 加えて、魚人たちの攻撃力に至っては、単なる銛の突き込みで儂と大してレベル差の無い壁役タンクのHPを、アーツや盾などの守りのうえから平気で削ってくるそうで。おそらくは、嘉穂ちゃんが使っていた最大威力のアーツ――『流星槍』に匹敵するほどという。


 つまりここは、通常攻撃がすでに『丈夫』を上昇させていないプレイヤーを一撃死させる威力をもち。回避も逃亡も許さぬ移動速度をもったモンスターが複数体同時に出現するダンジョンだろう、と。……そう報告され、それでもなお、こんな危険な場所で『カルマ』を減らすためのモンスター狩りを行おうなどとは思えるわけもなく。HP全損が即ちキャラクターデータの消滅を意味する儂らとしては、できれば外の『蒼碧の洞窟』で雑魚狩りをしたかったところじゃが――そういうわけにもいかない。


 儂と嘉穂ちゃんのような頭上の三角錐シンボルを赤く染めたプレイヤーは、他のプレイヤーからしたら絶好の標的で。『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』と『漁業協同組合:おとこ組』という2大クランへ話を通したとて、その他多くのプレイヤーの意向など分からず。ゆえに、ダンジョンの外には迂闊に出られない――という理由だけではなく。


 AFOの仕様には、『レベル差が10以上あるモンスターを倒しても、経験値がほとんど入らない』といったものがあり。即ち、レベル30以上の嘉穂ちゃんでは平均してレベル20前後しか出現しない『洞窟』内のモンスターを倒したところで『カルマ』を大して減らせないんじゃないか、と。〈漁師〉が『水棲モンスター以外を倒しても経験値を得られない』仕様なのもあり、嘉穂ちゃんの場合はこのダンジョン内にこもって魚人狩りをした方が効率的なんじゃないか、と。


 志保ちゃんとしても不本意だったのじゃろう。儂や、姉である嘉穂ちゃんを心配するような文面でありながら、できれば『蒼碧の水精遺跡』内にこもってシンボルを青く染め直してほしい、とあり。そのために、まずは出現するモンスターの正確なレベルが知りたいから【看破】のレベル上げをお願いしたい、と。


 そういった理由もあって、ここ2日以上もの時間をほとんど〈運び屋〉に就き、何もせずとも【スキル】のレベル上げができる『スキル設定』――【強化:筋力】、【収納術】、【暗視】、【水泳】、【聞き耳】の5つにして。泳ぎ周るようにして意識的に【水泳】のレベル上げをするのはもちろん、休憩時にもただ水に浸かっていれば保有する【スキル】の合計レベルを上げられる状態を保ち。


 あるいは、〈学者〉に就いて『副職』を〈商人〉に設定。≪マーケット≫の出品リストを視続けることで〈学者〉と【看破】のレベル上げをしてきた。


 その結果、


[ただいまの行動経験値により【収納術】のレベルが上がりました]

[ただいまの行動経験値により【慧眼】を得ました]

[取得可能なスキルの上限を突破しました。【慧眼】の取得を諦めるか、いずれかのスキルを経験値に還元するか選択してください]


 などという、またも未見にして未知の【スキル】取得を告げるインフォメーションが来たりもして。……このときは、【慧眼】の効果がわからなかったゆえに、直前に取得していた【潜伏】を一度、経験値に還元したりもしたが、あらためて【慧眼】を【解析】で視てみたところ――



〇【慧眼けいがん


・取得条件:スキル【直感】、【解析】、【看破】

・効果:対象の種族、レベル、状態、価値、文章や単語の意味を調べようとする行動にプラス補正。また、察しがよくなり、感じようとする行動にプラス補正。



 ――と、どうやら『複合スキル』3種類を合わせた効果を持つ【スキル】のようで。


 これ1つで3つの【スキル】の効果を得られるのなら、それだけ『控えスキル』の枠が空けられる、と。そのぶんだけ、これから先、嘉穂ちゃんと二人だけで【害悪】を解除しないといけない状況が有利となろうから、この【慧眼】の取得はとてもありがたいものではあったが……この効果を先に知っていれば、効果の被っておる【解析】ないし【直感】を還元して、【潜伏】を残したものを、と。そう残念な気持ちになったりもしたが、『副職』を〈狩人〉にして数時間ぼんやりとしていただけで再び【潜伏】を取得できたから、まぁ良し、と。


 もっとも、これまた≪掲示板≫でもその存在が明かされていないだろう【スキル】を取得したことで、報告時に志保ちゃんに呆れられそうだ、という懸念に関しては……メッセージにて現在の≪ステータス≫と【慧眼】の効果や取得条件などを明記して報せた結果、予想通りの反応を頂戴できたわけで。


 曰く、そもそも誰かを回復させることで経験値を加算させていく〈治療師〉は、現在、就いているプレイヤー自体が少ないそうで。パーティでの回復役ヒーラーは、基本、【回復魔法】を使えるプレイヤーのことを指し。就いているのも〈魔法使い〉か、ポーションなどの効果を上げる〈薬師〉がせいぜいで。〈治療師〉固有の取得可能【スキル】だろう、『ただ対象の状態やHPを知れる』だけの【診察】はハズレ扱い、と。


 【鑑定】にしても一部の〈職〉に就くもの以外で取得するものは居らず。【解読】を取得できるのが判明している〈学者〉にいたっては、未だ≪掲示板≫にも情報があがっていない、と。そもそも、【解析】の時点で取得者が儂だけだったろうに、その『複合スキル』の【慧眼】などは言わずもがな、といった状況のようで……。終いには、『きっとまたミナセさんには驚かされることになりそうなので、何かあればその都度、ステと情報をメッセしてください』という文面を頂戴することに。


 ……うぅむ。これは儂が悪いのかのぅ?


 他のプレイヤーにも、某『検証班』氏のような突飛な発想と行動力でもってAFOの新事実を発見、報告するような者もおるわけで。……それと同列に扱われるのも甚だ不本意なところでありはするが、それでも儂の振る舞いはそこまで他者に驚きと呆れを与えるような突飛さは――




[おめでとうございます! ただいまの行動経験値により称号【水の妖精に好かれし者】を得ました]




 ――と、そんな儂の疑問に答えるようなタイミングで流れたインフォメーションに遠い目になりつつ。そっと≪ステータス≫を開いて【慧眼】で確認。



〇称号【水の妖精に好かれし者】


・取得条件:50時間以上連続で液体に身を浸し続け、濡れた状態を保つ。

・効果:水場での行動にプラス補正。また、水属性の攻撃の威力と効果を上げ、ダメージを減少させる。



 ……ふむ。なるほど、この称号の効果もあって嘉穂ちゃんの『洞窟』内での戦闘力はあれだけ高かったのか。


 まえに見せてもらった嘉穂ちゃんの≪ステータス≫。そのなかにあった、【水泳Lv.22】の恩恵はもちろん、【忍び足Lv.25】に【潜伏Lv.23】という『索敵系スキルから身を隠すスキル』の効果も、フィールドが水場であったことで称号【水の妖精に好かれし者】の『効果:水場での行動にプラス補正』が効いたのだろう。加えて、彼女の使用していた武器は、そのほとんどが水棲モンスターからのドロップアイテムと、それを『強化』の素材としたものばかりで『属性:水』の特徴をもっておったしのぅ。


 つまりは、偶然にしろ、必然にしろ、少女が寝る間も惜しんで半身を浸す『洞窟』内に潜み続けたことには意味があり。彼女が最強のPKとして儂らが訪れるまで全プレイヤーを教会送りとし続けられたのは、行動の善悪はともかく、努力のたまものであったわけじゃな、と。そう思い、瞳を細めて思案すること数分。


「ぇ、あ……!」


 果たして、ログアウトの眠りについてから50時間以上のときをあけ、ようやくと言おうか、ついに嘉穂ちゃんのアバターは瞳を開けた。


「うむ。おはようさん――というのも変か?」


 ログインしてすぐ見慣れぬ薄暗がりの天井を目にしてか半ば怯えたように身をすくめた少女に、そう声をかければ、彼女はみるみる体から緊張感を解いていき。泣きそうに歪んでいた表情が花咲くように笑顔に変わり、「ミナセちゃん!」との呼びかけとともに飛び込んでくる嘉穂ちゃんを、儂は抱きとめ。抱きしめて、その頭をそっと撫でた。


「あのねあのね! お父さんとお母さんとね、お話してね! 志保ちゃんとも一緒にね、みんなで! わたしのアバターもね、『十二歳いま』の志保ちゃんと同じにしたの!」


 そう元気いっぱいに、まさしく『誰かに聞いてほしくて仕方ない』と全身から発して話しだす少女に瞳を細め、相槌をうちながら「……はて?」と内心で首を傾げる。


「お母さんね、わたしと志保ちゃんが喧嘩してね。志保ちゃんに負担かけてたのに気付いてね。わたしも拗ねて『志保ちゃんに会いたくない』って言っちゃったから、それでずっと会わせないようにしてて……ごめんなさい、って。志保ちゃんね、ずっとわたしに会いたいって言っててくれたみたいでね」


 それでそれで、と。話し続ける少女の活舌が妙に良いような? それに一人称も『わたし』?


「久しぶりに家族が揃ったの! みんなでお話したの! ミナセちゃんのおかげで! だから、いっぱい、い~っぱい、ありがとうなの!!」


 そう言って頬を摺り寄せる嘉穂ちゃんに「なに、おまえさんががんばり続けたからじゃよ」と返しつつ。……視界隅に流れたハラスメント防止機構の警告メッセージに、内心でだけ冷や汗を流しながら、考える。


 ふむ。つまりは、これが嘉穂ちゃん本来の姿、か?


 出会ってすぐの、ログアウトを挟むまえの彼女は実年齢の割に幼過ぎるように感じていたが……思えば、それは度重なるストレスから一時的に幼児退行していたから、か?


 あのときの嘉穂ちゃんは、言動もそうじゃが、かなり情緒不安定のようであったし……。過労と睡眠不足の状態では確実にあったろうし。あるいは、十二歳げんざいの志保ちゃんの姿を複写トレースした現身アバターを纏い、十分な休息のあとで大人たちと触れ合ったことで成長した?


「それでね! わたし、今は本当に幸せで……! だから、そのお礼とね、ミナセちゃんと一緒に遊びたくってね、ログインしたの!」


 ……ふっ。まぁ、なんでも良い、か。


 あれだけ泣いていた少女が、こうして笑顔で楽しそうにしているのだ。『めでたし、めでたし』で今は良いのではないか、と結論し。……そろそろ接触警告のカウントダウンがマズイことになってきたのもあって、そっと嘉穂ちゃんの身を離した。


「ならば、さっそく。一緒に狩りに行こうか?」


 そう笑顔で言って、≪インベントリ≫を開き。久しぶりにアキサカくんたちが造ってくれた甲冑――『デスティニー作クラブアーマー』を纏い、『クラブシールドセット』と『特殊武装:斧槌』も装備する。


 ……今日までは〈運び屋〉と【収納術】のレベル上げのために『初級服』姿じゃったからのぅ。称号【水の妖精に好かれし者】も得たことじゃし、これまでレベル上げをし続けた【水泳】との相乗効果により、戦闘装束を纏っての動作がどれだけ変化したのかをとりあえず確認してみることに。


 果たして、結論から言って水場での行動が予想以上にスムーズに、そしてただ地上を行くよりよっぽど素早く動けるようになっていることに気づいて、思わず唸ることに。


 うぅむ……なるほど、さすがはゲームと言ったところか。物理的には有り得ないことじゃが、動き難い甲冑を纏ってすら、水中での行動に対して体感時間への補正が強く、地上より素早く動けそうで違和感がすごいのぅ。


 しかし、まぁ別段困るような仕様でもなし。これからを思えば、悪くはない、か。そんなふうに無理やり納得することにした儂は、ふと、即興で演武じみた動きで動作確認をしていたのを「おお……!」と目を丸くしながら見て、拍手する嘉穂ちゃんを範囲知覚で『視つけ』。その瞳がキラキラと輝いていることに内心で苦笑。


 せっかくなので、最後に、儂の知っているなかでも見栄えだけは良さそうな演武もどきを披露し。少女に向かって優雅にお辞儀をして締めれば、


「おおおおおおお!! すごい! ミナセちゃん、すごい! カッコいい!!」


 パチパチパチパチー、と。大興奮そのままの様子で拍手喝采する嘉穂ちゃんに瞳を細め、「さて、行こうか?」と片手のひらを向けて告げれば、「うん!」と。黒い猫耳を生やす褐色肌の幼女は嬉しそうに笑って儂の手をとり、歩き出す。


「ああ、そうじゃ。嘉穂ちゃん、すこし良いかの?」


 ダンジョンに入ってすぐの、転移結晶のある広場は安全地帯セーフティゾーンで。モンスターの出現はおろか侵入すら無いのじゃが、そこを出れば当然、ダイチくんのような全プレイヤー中でも最強の一角だろう青年や、水場を主戦場とするクラン『漁業協同組合:おとこ組』――その最精鋭だろう面子をして、何人も教会送りにしたという凶悪な魚人が複数同時に出現する危険地帯で。


 おそらくは、ずっと孤独に戦い続けて来た彼女なら言わずともこうした戦闘のまえには『スキル設定』を移動用ないし奇襲用にセットし直しているだろうが、「ん? なーにー?」とニコニコ笑って首を傾げる嘉穂ちゃんには、「戦闘用と、それ以外での『スキル設定』なんじゃが」と、いちおうは話しておくことに。


「嘉穂ちゃんの戦闘用の『スキル設定』は、おそらく【収納術】、【忍び足】、【潜伏】、【槍術】、【投擲術】、【水泳】の6つなんじゃろうが……このなかの【潜伏】と【忍び足】を【暗視】と【漁】に代えてはくれんかの?」


 これは、少女がログアウト中に、儂が儂なりに考えていたことで。相手がレベル30以上の、推定35レベルということであれば、儂の攻撃ではダメージを大して与えられないのは明白。


 と、なれば。削り役(ダメージ・ディーラー)は潔く彼女一人に任せるとして、儂は全力で敵意を引き続ける、と。移動時は【収納術】、【忍び足】、【潜伏】、【水泳】に【聞き耳】と【察知】のセットでも良いが、戦闘時は僅かでもダメージ量が増す【暗視】をセットしてほしい、と頼んでみる。


「うん……? じゃあ、【漁】はなんで?」


「ああ、それは――」


 曰く、このダンジョンに出現するモンスターは、【漁】をセットしたうえで倒すと『魚人の死骸』というドロップアイテムが手に入るのだそうで。


 それ以外では他のダンジョンに出現するゴブリンなどのモンスター同様、魔石がドロップするのだが……稀に【漁】の効果でその死骸系の素材アイテムに加えて『魚人の銛』という、『蒼碧の洞窟』などで手に入る『劣魚人の銛』の上位互換とも言える武器系のドロップアイテムも手に入るのだとか。


 ゆえに、これから先、嘉穂ちゃんと組んで魚人狩りを行うのなら、装備の更新も狙える【漁】をセットしたうえでの戦闘の方が良いだろう、と語り。加えて、以前に見せてもらった彼女の≪ステータス≫の、その【スキル】のレベル合計が175で。これまでに『合計50以上』と『100以上』で何かしらの達成報酬を貰えたことから、次は『200以上』でも報酬があるかも、と。可能なら確認してほしい、と志保ちゃんに頼まれた件を告げれば、少女は「うん、わかったー」と笑顔で了承。


 ついでに、儂の持つ称号【時の星霊に愛されし者】の効果で、死骸系のような時間経過で劣化するタイプのアイテムも時間経過を気にせず保管できる旨も伝え。パーティを組んでのドロップアイテムの受け取りを儂に設定することも特に考えた様子もなく了解してもらったが……この子は本当に大丈夫じゃろうか?


 嘉穂ちゃんのこうした『疑うことを知らなすぎる』ような振る舞いに『危うさ』を感じるのは、提案した側の儂としたらおかしいのかも知れんが……いずれにせよ、二度と少女が邪な思惑で食い物とされんよう気をつけよう、と。儂は密かに決意し、そして安全地帯を出てすぐにある3つに分かれた分岐路で、


「あ、ミナセちゃん。【察知】に反応……右の通路の先に4匹、左が3匹、かな?」


 ――【察知】系の、モンスターなどの敵性存在やNPC、プレイヤーなどの存在をいち早く察知できる索敵系の【スキル】は、≪メニュー≫にある≪マップ≫や視界端の『ミ二マップ』と連動しており。何かしら見つけた場合は、その地図上に赤や緑、青といった相手のシンボルと同じ色の点を表示して報せてくれる。


 ゆえに、嘉穂ちゃんの【聞き耳Lv.13】に【察知Lv.16】と称号【水の妖精に好かれし者】の効果の合わせ技は、優に儂の知覚しえる範囲を越え。儂もいちおうは移動用にとセットしておいた【聞き耳Lv.5】と【慧眼Lv.1】では何も察知できん距離の相手をも判別してくれた。


「ふむ。で、あれば。まずは3体を狩って様子見、かの?」


 そう言って左の通路へと歩きだし、『スキル設定』から【聞き耳】と【慧眼】を外して【忍び足】と【潜伏】をセット。可能な限り相手からの発見を遅らせる構えを取り、そう言えばと思いだして隣の嘉穂ちゃんに『フレンドコール』をかける。


「ふえ? え、え!? な、なんで、この距離で――」


「会話を聞かせんように、というよりは話しながらでも相手に気づかれんように、かの」


 果たして、そこからは少女と『フレンドコール』越しに会話をし。だんだんとこのダンジョンに出現する敵性存在モンスター――魚人フィッシャーマンに近づきながら、戦術についての最終確認をして。


 そして、


「行くぞ、嘉穂ちゃん!」


『う、うん……! き、気をつけてね、ミナセちゃん!』


 儂らはついに、このダンジョンにおける初戦闘の火蓋をきるのであった。

2章終了時はAFO稼働4日目の14時過ぎで、3章スタート時は5日目の早朝。


そして、イベント開始は稼働7日目の24時(8日目の0時)です。

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