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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
幕間 第二章終了時までの短編など
60/127

チュートリアル テキトー民、〈魔法使い〉やめるってよ?

20万PV越え短編チュートリアルです。

 まずはこいつを見てくれ。




『 テキトー民 / 魔法使い見習いLv.1


 種族:人間Lv.1

 職種:魔法使いLv.0

 性別:男



 基礎ステータス補正 ▼



 装備:見習い服、練習用武器:杖



 スキル設定(2/3)

【属性魔法:火Lv.1】【付与魔法Lv.1】    』




 まぁ、あれだ。ただの俺の最初期のステータスってだけで特別なもんは無いんだが、こいつを覚えてもらっておいたうえで、次に翌日のステを、ドン!




『 テキトー民 / 戦士見習いLv.5


 種族:人間Lv.3

 職種:戦士Lv.2

 性別:男



 基礎ステータス補正(残SP2) 


 筋力:0

 器用:0

 敏捷:2

 魔力:0

 丈夫:0



 装備:見習い服、見習い冒険者ポーチ、見習いローブ、量産武器(戦槌)



 スキル設定(3/3)

【属性魔法:火Lv.3】【付与魔法Lv.3】【槌術Lv.2】



 控えスキル

【感知Lv.1】    』




 ……お分かり、いただけただろうか?


 そう、わたくしテキトー民は、AFOプレイ2日目にして〈魔法使い〉をやめて〈戦士〉となったのです! ……あ、ちなみに残ってるSPは素体レベル上昇分のやつで、ある程度プレイスタイルが決まったら消化予定ってだけで決して振り忘れとかじゃないから。


 うん。とりあえず、〈戦士〉に転職することになった経緯と言うか愚痴を聞いてほしい。


 まず、最初の『スキル変換チケット』で手に入れた【属性魔法:火】と【付与魔法】なんだけどね。俺が最初に選んだ街が森と草原のフィールドに囲まれた街『アイギパン』だったってのもあるんだけど……火の魔法を使うと草のオブジェクトが燃えて大変だったんだ。


 いや、考えれば当たり前なんだけどさ。そりゃ、草原で火とか飛ばしてたら燃えるよね。うん、熱かった。いきなり飛び出してくる角兎の突撃並みに自爆ダメージ食らったし、門番やってたNPCに怒られもした。ゲームの仕様で一定時間経過で燃えるのが収まって、草のオブジェクトが復活しなかったら、今頃俺は街の付近一帯を丸焼けにした大犯罪者となってたかも知れない。


 ってな、わけで。火の属性魔法での攻撃は控えることにした俺氏。不意打ち上等の構えで兎公うさこう相手に初期魔法の『マナ・ショット』と付与魔法の『ブースト』使って頑張ってたわけだ。……火属性の付与魔法『ブーステッド・フレア』? あいつは『筋力』上昇だからね、使えない子なの。残念。


 ともかく、〈魔法使い〉のソロでさ。大したプレイスキルも無いおっさんだけど、めげずに兎とキャッキャウフフしてたのよ。せめて装備の更新代ぐらい稼ごうってね、頑張ってたわけ。


 それなのに――いきなりPKされて心が折れました。


 もうさ、やってらんないわ。HP全損でインベントリ内のアイテムをぶちまける仕様なのは知ってたよ? 死んだら、それまでの稼ぎがパーになるってんでHPの残量に気を付けて、『最初の草むら』だけでちまちま頑張ってたの。それが簡単にパーですよ、一時間以上頑張って貯めたドロップアイテムをどっかのクソ野郎に奪われちまいましたよ、ド畜生。


 もうね、教会で復活してすぐにログアウトからの不貞寝をしたね。せっかく下手くそが下手くそなりに頑張って、やっと目標にしてた装備の更新額に届いたって思った矢先だったし。マジ、やってられないってね。そう思って寝た。


 っていうか、本当に、PKとかよくやるわ。


 AFOの仕様でPKってさ、普通はやらないと思う。つか、試験版じゃあ『PKとかオワコンwww』なんて言われてたみたいだし。それ以前に、この手の小さな子ができるタイプのオンラインゲームで下手に他人の敵意ヘイトを集める行為とかよくやれるよ。成人指定の、それこそPK推奨ゲーとかと違って未成年に対するこの手の行為って、やり方を少し間違えるだけで速攻GMコールからのアカBAN――だけで済めば御の字で。運営側というか、VRゲーの提供側にリアルでブラックリスト入りとかになれば、もう他のゲームやるんでさえ監視やペナルティが付くかも知れんのにさ。


 うーん……でも、普通のプレイヤーってこの手の運営側でのブラリとかって知らないんかね? 俺なんかは結構この手の話を他所の大型情報掲示板とかで見て知ってるんだけど、今どきのライトユーザーなんかはやってるゲームの情報板以外は見ない、とか?


 ……でもなぁ。昨今の世論というかVRゲーが登場してからこっち、この手のゲーム内で招いたプレイヤー間の不和が原因での事件って日常茶飯事だし。粘着ストーカーからの現実リアルで凸とか、ニュースなんかで見たことない? そうでなくても場合によっちゃあ運営に個人情報の開示要求からの損害賠償請求、ってなコンボも普通にまかり通ってるってのに、なんでAFOみたいな『子供から老人まで~』って謳い文句のゲームでPK? 普通にリスクとリターンが釣り合ってないじゃん。馬鹿ですか、マジモンの馬鹿ですか?


 ……ってな悶々とした思いはさておき。ちょっと寝て少し気持ちも落ち着いた俺は考えました。そして、閃きました。


 そうだ、迷宮都市エーオースに行こう!


 ダンジョンなら傍迷惑な他人に襲われる心配も無いし。1階だけをグルグル回ってればトラップの心配も無いって言うし。何より、火の攻撃魔法を使えるってことで、俺はさっそく主戦場をアイギパンからエーオースのダンジョンへと変更。


 そして――出現するゴブリンが基本的に3体以上からって仕様に苦しめられた。


 もうね。ダンジョンて普通にソロを殺しに来てるよね。最低で3体の人型モンスター武器持ちとか、大して上手く立ち回れない中年おっさんには無理です。一回の戦闘で消費激し過ぎです、本当にありがとうございました。


 でも、テキトー民はタダではへこたれない。というか、運よく一発で魔石をドロップさせたんで速攻で100Gゲット! か・ら・の、装備の更新と転職をしました!


 これで所持金は尽きたけど、今回手に入れた『量産武器:戦槌』はね、言ってしまえば安っすい造りのメイスなんだけどさ。これ、『杖』系統の『魔法の発動にプラス補正アリ』の武器で、【槌術】に対応した打撃武器なんだわ。で、〈戦士〉の特徴である『武器を使った戦闘にプラス補正』ってのも合わせて魔法に頼らない戦闘ができるようになる、ってのは勿論のこと。【槌術】のレベル1で使えるようになるアーツがさ、これまで要らない子扱いだった『ブーステッド・フレア』にマッチしてるって言うか、コンボになるって言うか?


 とにかく、『ヘヴィ・ハンマー』っていう『TPを消費することで指定の武器の重量を上げ、次の一撃の威力を上げる』効果と『筋力』を上げてTPの消費を軽減させる効果の『ブーステッド・フレア』のコンボは強い――って、≪掲示板≫にあったからやってみることにしたんだ。


 で、その結果――なにかに目覚めそうです、本当にありがとうございました。


 ヤバいよヤバいよ、人型のモンスターを鈍器でブン殴るのが思いのほか気持ちいいって言うか、日頃の鬱憤が晴れるような爽快感があるって言うか……とにかくキモチイイ。


 これまでの、魔法を使って、その回数を稼ぐことを第一に〈魔法使い〉のレベル上げをしつつHPとMPの管理を――なんて面倒な立ち回りは要りません。ただ、敵を見つけたら殴る。MPとTPに余裕があれば『ブーステッド・フレア』使って強化したうえで『ヘヴィ・ハンマー』の連打。連打。そしてフルスイングってね。これで『バリーん!』って感じにゴブリンをポリゴンの破片に変えんのが楽しいのなんのって……。うん、楽しい♪


 おかげで素体のレベルアップで得たSPを何に振ったら良いか真剣に迷ってます。……あのまま〈魔法使い〉で行くんなら『魔力』か『敏捷』で良かったんだろうけど、鈍器持った〈戦士〉だからなぁ。それも付与魔法使う、一種の『魔法戦士』みたいな?


 【付与魔法】のレベル3で新しく使えるようになった『MPを消費して発動。対象の防御力を上げる』魔法――『プロテクション』もまぁ使えるし。……その火属性魔法バージョンで、『「火」属性の攻撃によるダメージを減少し、「火」属性の魔法のダメージと効果を減少させる』効果の『プロテクション・フレア』は、また要らない子だけどね。きっと、そのうち、火を噴くモンスター相手に役立つって信じてる。ドラゴンとかね。……いったい何時出てくるのかわかんないけど。


 あと【属性魔法:火】のレベル3で使えるようになった『MPを消費して発動。触れると爆発する火の玉を生み出す』という効果の『ファイアーボール』っていう、そのまんまの名前の攻撃魔法も使えるし。開幕とかに集団に『ポイ、どっかーん』で割と格下のゴブリン相手ならけっこうHPを削れるんだよね。


 だから、『魔力』にSPを振る選択肢が無くならない。最大MPと魔法ダメージの上昇は『魔法戦士』的に悪くないと思うんだよね。……もしかしたら、〈魔法使い〉に戻る未来もあるかもだし。AFOも3日目だし、いつまでもSPを腐らせてるのもアレだし。


 ってなわけで、SP2つは『魔力』に振ってみた。


 これに加えて、ちょっと溜まってた資金ゴールドを使って防具を更新。……本当は戦槌メイスも更新したかったんだけど、まだまだプレイヤーメイドの品は個人間の取引だけで店売りされてないみたいだからね、仕方ないね。


 なにはともあれ、装備の更新と『プロテクション』の魔法で防御力を上げて。『魔力』を上げてMPを増やして継続戦闘力も上がったので狩り場を『レベル1開始ダンジョン』から『レベル5開始』の場所に変更。これでまたレベル上げや資金稼ぎのペースが上がったわけだけど……テキトー民、またも悩んでます。


 いやね? そろそろ、オンラインゲームでソロプレイは辞めようかなー、って。というか、ダンジョンの最初の階を周回するのに飽きたんですよ。2階から上はトラップあるから【罠】持ち必須って言うから同じ階をグルグル、ぐるぐる周回ハムってたけど、いい加減上に行きたいって言うかボスを倒したい。だって、ダンジョンだもの。最奥にボスが居るってわかってるんだもの、攻略したいって思うのはゲーマーとして仕方なくない?


 ってなわけで、テキトー民、ソロやめるってよ?


 し・か・も! 野良パーティなんかで変なプレイヤーに絡まれたりするのが嫌だったんでクランにも所属することにした! 迷宮攻略専門クランで、エーオース随一のクランとの呼び声高い『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』ってとこに所属することにしました!!


 いや~、このクランの所属にも悩んだんですよ? だけどね、≪掲示板≫曰く、クランに所属するだけで同クラン所属の生産職が造った装備を専用のメニューを介してだけど買えるって言うじゃない? それで、いい加減に冒険者ギルドで買える1つ100G装備から卒業したい――けど、下手なものを掴まされるのは嫌で。価値や性能を視れるらしい【鑑定】なんて取るのも面倒だし、ってわけで一番信頼できそうな大きなクランのとこで買える装備を、ってね。そういう理由で『薔薇園の守護騎士』を選んで所属。装備も更新したわけなんだけど――おや? あそこに見えるのはいつかのイケメン君だ。


 うんうん、そうそう。たしかイケメン君の綽名は『主人公』……って、え? そのイケメンがこのクランの団長リーダー? しかも、全プレイヤーのなかで最上位組とも言われる『攻略組』の一人?


 …………うわぁ。勝ち組って居るんだなぁ。


 ま、まぁわたくし、テキトー民はテキトーなプレイヤーなんで。エンジョイ勢なんで、彼に関わることもないかな? うん。


 ――って考えてたのに、いきなりイケメン君のパーティメンバー入りしたんですけどーッ!?


 え? なんで? だ、だってクラン専用の≪掲示板≫には『〈探索者〉大量募集。今なら荷物持ちするだけでレベル上げのチャンスも!?』って……。だから「楽してレベル上げできたうえにパーティプレイ初心者の俺にもチャンスかな?」って思って〈探索者〉に転職して待機してただけなのに……まさかの『最前線』行き!?


 訊けば、彼らが本来組む予定だった〈探索者〉がドタキャンかましたそうで。装備はともかく、〈探索者〉に転職したてでクランに所属したのも今さっきということで緊張してた俺に対し、最強の『攻略組』と言われてすらいる彼らは、


「あはは、そう緊張しないでください。大丈夫です、募集要項の通り戦闘に駆り出したりとかはしませんから」


「おうよ。っつか、下手に戦闘にちょっかいかけられる方が逆に迷惑だからな」


「これからもウチで臨時〈探索者〉をしてくださるのでしたら、〈狩人〉や〈斥候〉で取れる【察知】や【聞き耳】、【忍び足】なんかの取得をお勧めします。なにせ、セットしておくだけでもレベル上げできますので」


「あと【罠】や【暗視】もおススメ。変わり種として【鍛冶】や【収納術】とかあると、なお良し」


「とりあえず、ドタキャンみたいな人としてどうかと思える行為さえしなければ良いです」


 どうも、よく居る傲慢な振る舞いをするようなプレイヤーじゃなくて。なんと言うか、迫力みたいなのは感じない? ……まぁ、その辺は俺の『攻略組』に対する偏見なのかもだけどさ。とにかく、思ったほど絡み辛い相手じゃなくって良かった。


 ――なんて思ってたのも、彼らが彼らの戦場とする階層に着くまでで。本気の、いわゆる『ガチ勢』だ『廃人』だと言われる最強のプレイヤーってやつをその目で見て、同じ空気を感じたことで認識を一変させる。


「ドークス、交代スイッチ! 『ツイン・ソードスラッシュ』!!」


「おう! って、ちみっ子、ちょっと下がれ! 『ヘイトアピール』!」


「『チャージアロー』! って、ちみっ子言うな筋肉ばか!」


「『ブーステッド・アクア』! っと、これ以上の支援は敵意ヘイト的にマズい?」


「ですかね? でも、『ヒール』、そして『ヒール』――っと、標的タゲがこっち来たんで『ヘイアピ』お願いします!」


 早く。無駄なく。そして、誰もが怖いくらいに真剣に。


 これまで流されるがまま、なるようになれ的な生き方をしてきた俺からしたら眩しく、雄々しく、何よりカッコよく彼らは見えた。


 ……うん、なんか良いな。この人たちのプレイングって。


 それは、彼らが全プレイヤー中、最上位に位置するパーティだからって理由じゃない。そんな『結果』より何より、どこまでも真剣にアバターを動かし、ただの作り物のニセモノ相手にどこまでも真面目に作戦会議と反省会を繰り返して。考えて、悩んで、挑んで、全員で心の底から真剣に頑張る。そうして培われてきたのだろう絆が見えて……それが眩しくて。何より楽しそうで、羨ましい。


「……俺も、いつか固定パーティ組もうかな」


 なんて、そんならしくない考えを抱き。そして、最後の最後まで彼らイケメン君を筆頭とする最前線パーティ――通称『ヒーローズ』とのダンジョンアタックは予期せぬトラブルも無く過ぎていき。その別れ際には「また機会がありましたら一緒にプレイしましょう」とまでイケメン君――ダイチ君に言ってもらって。年甲斐もなく、その日は寝るまでニヤニヤしてしまうほど舞い上がって。


 そして、あらためて決意する。


「よし、今度の目標は固定パーティ結成だ!」


 目指すは彼らのような信頼しあえる最高の仲間を! だけど、パーティ名だけは普通なものを!


 ……うん。さすがに『主人公と愉快な仲間たち』ってパーティ名は、テキトー民でも「……ちょっと」って思うんだけど、どうなんだろうね?


なお、本編に登場予定は無いもよう?

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