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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第二章 全プレイヤーに先駆けて最強PKを攻略せよ!
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クエスト41 おじーちゃん、クラン『漁業協同組合・漢組』の代表と相対す

 ことはすでに個人と個人との諍いで収まる次元には無い。


 それを示すように、クラン『漁業協同組合・おとこ組』の代表だろう筋骨隆々のスキンヘッドにハチマキを巻いた巨漢――プレイヤー名『ダストン親分』という男は、背後に精鋭だろう三十人以上のプレイヤーを控えさせ、一人、儂らのもとまで悠々と歩み寄ってきた。


「――よお。まずは、はじめまして、と。一応は挨拶から入らせてもらうぜ」


 おそらく、まずはクランの代表同士での話し合いをご所望なのだろう。


 若干の不躾さはともかく、彼なりの誠意のようなものを感じさせる『はじめまして』の挨拶をもらい。そして、それに対してダイチくんが一歩まえに出て、


「こちらこそ、はじめまして。僕は迷宮都市エーオースの迷宮攻略専門クラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』の団長クランリーダー、ダイチです」


 そう柔和な笑みを浮かべ、どこまでも自然体で2メートルを優に超えているだろう巨漢に挨拶できるのは、さすがはAFO屈指の大手クランの代表と言ったところか。……もっとも、実際は彼の固定パーティのメンバーに似たような筋骨隆々の男が居るから、ある意味この手の威圧感のある相手にも慣れているだけか。


 儂にしても『主人公と愉快な仲間たち』と組んでダンジョンに潜っては、ことあるごとに「デカいなぁ」と思っていた壁役タンクのドークスが自然と脳裏を過っていたし。どちらも立派な筋肉の持ち主であり、本来であれば子どもを怯えさせるだろう凶相だが……何となく愛嬌抜群の筋肉男児のことが先に思いだされたせいでそこまでプレッシャーを感じずにすんでいた。


「おう。俺は海の街キルケーを拠点としてるクラン、『漁業協同組合・おとこ組』の代表リーダー、ダストン親分だ。っても、『ダストン』だけで良いぜ」


 おめーらはうちのクランのメンバーじゃねーし、と。そう告げる彼に、「うん。では、ダストン、と。僕のことも『ダイチ』で構いません」と笑顔で返すダイチくん。


 ……見たところ、『ダストン親分』という名のプレイヤーの、その設定外見年齢アバターは40代半ばか、もうすこし上か。漲る覇気というか鎧の上からも窺える筋肉と巨体から発せられる威圧感に、なるほど、さすが一つの街の最大クラン――その片翼の代表リーダーか、と納得し。こちらを睥睨する三白眼と「海賊だ」と名乗られれば信じていただろう無精ひげだらけの強面は、あるいはこの場に嘉穂ちゃんが居たら泣き出していたかも知れんが……儂や志保ちゃん、そして彼から向けられるプレッシャーを一身に受けながら微笑をたたえているダイチくんにしろ、余裕がある。


 加えて、知覚範囲をいったん、彼の背後へと広げ。ダストンに率いられてきたのだろう、この『蒼碧の洞窟』に潜む正体不明の敵性存在――『亡霊猫ファントム・キャット』討伐を目的として集められたらしいプレイヤーたちを『視て』、彼らの小声を拾えば、


「うわ、マジで『主人公』だ。……つか、マジで主人公ってロリコンだったんだな」


「あんな小さな子たちばかり連れて、こんな人気のない暗がりに……。変態か、変態なんだな、あのイケメン」


「AFO最年少組二人に手ー出すとか、真性の屑か。……死ねよロリコン」


 ……とりあえず、彼らのなかのダイチくんに対する誹謗中傷というか汚物を見るような視線を向ける連中は無視するとして。さきに六名だけで嘉穂ちゃんを殺しにきた、彼女にPKをするように仕向けた二人を確認。


 やはりと言うか、彼らは予想通りクランの精鋭を頼り、嘉穂ちゃん――ではなく、今や儂を狙って舞い戻ってきたのだろう。周りのプレイヤーがダイチくんに対してのみ敵意を向けるのに対し、彼らだけは儂を一心に睨みつけているが……ここはちらりと一瞥して鼻で笑っておこうか。……おーおー、怒っとる、怒っとる。


「それで? ダストンたち『漁業協同組合・おとこ組』のプレイヤーがこんなにも集まって、今日はレベル上げですか?」


 そう、まずはとぼけて用件を聞くダイチくん。……まぁ、訊かなくてもだいたい予想通りだろう。それでも、こうまでたくさんの聴者が居る場では様式として、まずは言葉で用件を窺うのが大事なのじゃが――


「や、ヤバいッスよ親分! たぶん、連中は仲間を何人かダンジョン内に潜ませてるんス! だから――」


「うるせぇ! 今はまだ挨拶の途中だ、だぁってろ!」


 わかっていない愚か者に、大衆を率いる者にとっての面子の大事さをわかっているからこそ青筋浮かべて怒鳴る団長ダストン


 そして、


「ハッ! 俺としちゃあ、それで終わっても良いかって思ってたんだがな。いちおう、俺も1つのクランのかしらだ。だから、幾つかお前さんに確認しねーといかねーんだわ」


 そう軽く笑い、ズイ、とダイチくんに顔を寄せるダストン。それだけの動作で山が動くかのようなプレッシャーを感じさせる彼に内心で感心しつつ、対する青年も変わらず微笑をうかべたままで。こちらもまた、1つのクランの代表リーダーとして情けない姿を見せられないのだろう、傍目にも気合を感じさせる背中が何より眩しく映った。


「……俺らはよ。ここしばらく、この『蒼碧の洞窟』を根城にして、このフィールドに立ち入ったプレイヤーを片っ端から教会送りにしてるモンスターだかPKの、『亡霊猫ファントム・キャット』? ってのを討伐しに来たんだわ」


 うちのクランだけじゃねー、多くのプレイヤーに迷惑かけてんだから、そろそろ正体確かめて排除しようってのは当然だろ? と、そう告げるダストンの言葉に「なるほど」とダイチくんも頷き。ここでようやく青年も微笑から苦笑へと浮かべる仮面を変更して、


「だけど、申し訳ない。さきに僕たち、クラン『薔薇園の守護騎士』のメンバーで話をつけて(・・・・・)しまいました」


 もっとも、その戦闘でこちらも四人、教会送りになってしまいましたが、と。肩をすくめて、まるで最初はもっと多くの人員を――それこそ『おとこ組』と同じく、精鋭を数十人連れてきていたように思わせるよう告げれば、「そうかい」と。ダストンはいったん顔を遠ざけ、腕を組み。


「まぁ、別に俺らも初回撃破やPKKの権利を主張するほどガキじゃあねーし。こうして件のユニークモンスターだかPKにフィールドの最奥まで来て襲われてねーんだから、そうなんだろうとは思ってたけどよ」


 それでもいちおう、確認しねーとなんだわ。面倒だけどよ、と。そう肩をすくめ、ニヤリと笑ってみせるダストンは、言葉の通り、ここまでは「いちおう」の、単なる確認で。


「で、だ。そのPKがもう居ないってんなら……お前さんの言う通り、こっからはみんなで適当にレベル上げでも、ってなるだけの話だったんだがな」


 そう、ここからが本題だ。そう告げるように表情から笑みを消し、これまでのプレッシャーがそよ風に思わせる本気の敵意を全身から発して、彼は告げる。


「おい、『薔薇園』のあんちゃんよぉ。さすがにそんなちっちぇー子に手ーだすのは男としてどうなんだ? ああ!?」


 …………おや? てっきり、儂がクランメンバーだったのだろうプレイヤーを四人、問答無用でPKしたことに対して抗議するのだろうと身構えていたのじゃが……なにやら予想外の方向からダイチくんに言葉の攻撃が。


「俺も男だ。この手のVRゲーで惚れた女を口説いたり、暗がりに連れ込んで押し倒したり、なんてこともした。だから、わけもんがフィールドの奥に女ー連れ込んで、そこで乳繰り合ってようが野暮なことぁ言わねーがよ」


 だけど、こんな幼いのに手ーだすんは、人としてどうなんだ? と、青年の傍らに居る儂と志保ちゃんとを指さして、ひどく場違いで明後日の指摘をするダストン。


「え、えーと……? て、てっきり、彼女がそちらのメンバーをPKしたことを責めに来たんだと思ったのですが……」


 対して、あんまりと言えばあんまりの言葉こうげきに、浮かべた微笑の仮面にヒビが入ったような表情でダイチくん。……うむ、どうしてこうなった?


「ハッ! せっかく惚れた男と二人っきりで良い雰囲気にでもなってたんだろうとこを邪魔したんだ。そりゃあ、嬢ちゃんだって怒るし、思わずぶっ殺そうとしたって俺ぁ別に責めねーよ」


 むしろ、問題はてめーだ、と。頭突きするような勢いで再び青年に顔を近づけるダストンに、今度こそ気圧されるように顔を後ろに引くダイチくん。


 そして、


「……いいか、ロリコン野郎。てめーの性癖にとやかく言うのも関わるんも本当なら嫌なんだが、今回は『漢組うち』のわけしゅうが教会送りにされたんだ。だから言わせてもらうが、こんなカッとなったら簡単にPKに走っちまうような幼い子に手ーだすんなら、しっかりと手綱ぁ握っとけ」


 てめーだってクランの代表リーダーなんだから知ってんだろ? 一度、シンボルが赤くなっちまったら、多くのプレイヤーに狙われる。そんで間違って殺されでもしたらキャラクターデータを失っちまうんだ。わかってんのか、と。


 ……つまり彼は、見ず知らずの幼女わしのことを想い、善意で言ってくれているのだろう。


 きっと、裏表なく言葉の通りに。たとえ、嫌悪する変態性癖の相手でも幼い少女のために。彼は今にも殴りかかりたいのを、腕をきつく組んで必死に我慢しながら。大人として、同じ男として、不器用で乱暴な言葉使いでダイチくんに説教しているわけで。


 それがわかったのだろう。善良で、ロリコンでもない青年は若干涙目でこちらを見て。……何故か、あれだけ話し合い、苦労して描いた『脚本シナリオ』がいきなり崩壊しかけているのぅ、と遠い目になって静観している場合でもなくなったようなので、予定には無かったがここで儂が口を挟むことに。


「おい、コラ。てめぇ、俺の話を聞いて――」


「ちょっと待ってくれんか」


 正直、未だかつてここまで困っているダイチくんを見たことがない儂は、だからこそ即座に彼とダストンとの間に手を差し入れるようにして、物理的にいったん距離をとらせることに。


「あン? ……おい、嬢ちゃん。今は大人同士の話ーしてんだ。わりぃが、ちょっと向こうで待ってて――」


 果たして、いきなり身を挺して割って入った幼女わしに目を白黒させつつダストン。見た目からは信じられないほどの慈愛というか、優し気な雰囲気をこちらに向けて何かを言おうとしていたが「ふむ。良い筋肉じゃな」と。儂がそう言ってペタペタと無遠慮に彼の腕や腹筋をさわり、見上げるように微笑めば……流石に彼も毒気を抜かれたようで。


 それまでの圧し潰すような雰囲気を霧散させ、呆然と立ちつくす巨漢に、


「さて。はじめまして、ダストン殿。儂は『ミナセ』じゃ」


 よろしくの、と。そう言って、また年相応だろう微笑みを浮かべて見せれば、「お、おう……」と、唖然呆然の体で返すダストン。……ふむ。なにやら罪悪感というか、我ながらあざとい仕草と表情に嫌悪感を抱かんでもないが……今は『作戦シナリオ』の修正が第一じゃろう、と。人知れず気合を入れ、


「ところで、どうにもひどく誤解しているようなので儂の口から直接言わせてもらうがの。儂は別段、ダイチくんのことが好きなわけではないぞ?」


 無論、人として好意は覚えておるし。これまでのことに感謝もしておるが、と。青年の方をちらり、一瞥して告げ。


「ダストン殿がどう聞いているのかは知らんが、儂とダイチくんはただこれからのことを話していただけ。ここには、そもそも『友だち』に会いに来ただけで――ダストン殿のとこのプレイヤーをPKしたのは、まったく別の理由じゃよ」


「……あン? 別の理由、だぁ?」


 っつか、『殿』をつけて呼ぶな。仰々しい、としかめっ面で告げる巨漢に「では、ダストンさん、で」と言って頷きを一つ。


 そして、


「その理由じゃがな、連中はここまで来て『幼女わしの友だちの悪口』を言い、『笑いながら殺してやる』と『意地悪をして泣かせていた』から、儂は頭にきてな」


 その言葉。それを発した瞬間から――空気が一変する。


「つい、カッとなって、というのはまぁ間違っていないんじゃが……勝手に子どもの『恋心の暴走』なんて勘違いはしないでくれるとありがたい」


 それまで、この場に満たされていたダストンさんたち『漁業協同組合・おとこ組』のものだろう、どこか雄々しく熱い空気が『幼女の友だちの悪口を言い、意地悪をして泣かせた外道』が居て、それに怒った幼女わしが思わずPKしてしまったという告白に温度を失い。


 ついには白い目を『被害者面をしていた外道』二人に向け、わかりやすく距離を置いた。


「ああ? 嬢ちゃんの友人ダチを俺んとこのわけぇのが、泣かせただぁ?」


 対して、聞いてねーぞ、と。儂の言葉に、逆に熱気を宿すように全身から再びプレッシャーを放つダストンさん。その形相と、振り向いただけで精鋭数十人を一歩退かせる威圧感は、さすがはクランの代表リーダーと言ったところか。


「おい! そこんとこ、どうなんだ!? ……まさか、てめーら、こんなちっこい子の友人ダチ虐めて喜ぶような屑じゃあねーだろうなぁッ!?」


「ひぃぃい!? そ、そんなこと、してないッス……!」


「お、俺たち、誓ってその子とは初対面ッス! だ、だから、たぶん、人違いとか勘違いじゃないかと……!」


 ……うむ。まぁ、そうじゃろうな。


 いくらダストンさんに凄まれ、怯えていようと、確かに『儂とは初対面』で。儂の口にするそれがどこまでも『幼子の理屈』であり、言っていることに身に覚えが無かったとしても、「ふざけんな! そんな子供ガキの理屈でPKされてたまるか!」と、この場面で怒りを童女わしに向けるは愚策ぞ?


 加えて、「なんなら、あいつらにも確認してみろよ!」と吼えてくれたのは、こちらとしても上々で。「……って、言ってるが、どうなんだ嬢ちゃん?」とこちらを窺うダストンさんに対して、「さすがに勘違いで四人もPKするほど愚かではないし、そっちで苦笑しとるリーダーも『儂の友だちが泣かされていたのを見ている』からのぅ」と返せば、ほぼほぼ『詰み』。


 そうなのか、と。青年に向き直るダストンさんに「うん。すごい泣かせてたね」とダイチくんは軽く頷いて返し。そのことで再び外道二人が怒鳴ろうとしたのを、


「じゃあ、確認してもらえる? そこの二人と一緒に居た四人に、この子の友だち――『カホ@くろネ子』ってプレイヤーネームの子の悪口を言ったかどうか。きみたちがカホちゃんにPKするよう仕向けたのか、ってさ」


 遮り、告げられた青年の提案は、言うなれば『チェックメイト』の宣言の如く。


「ダストン。僕は――僕らクラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』のメンバーと彼女たちが、今回、この『蒼碧の洞窟』に来たのは、『亡霊猫ファントム・キャット』の討伐が目的じゃない。ここで『友人が、何故かPKなんてしている』と知ったミナセちゃんと、スィフォンの二人を彼女のもとに送り届けるために、僕らはわざわざ『最前線』のメンバーも込みで来たんだ」


 そう告げて、一歩、ダイチくんは真剣な表情を浮かべてダストンさんへと近づき。その瞳をまっすぐに見つめて、


「ここでずっと、頭上のシンボルはおろか姿すら誰にも見せず、孤独にPKをし続けてきたカホちゃん。彼女がどうしてそんなことをすることになったのか――その理由は、そっちの二人と、ミナセちゃんが教会送りにした四人なら知ってるんじゃないかな?」


 そう肩をすくめ、「やれやれ」とでも言いたげな様子で頭を振ってから顔をダストンではなく、件の男たち二人に向けるダイチくん。


 それから、


「きみたちは知らなかったんだろうけどね。じつは、ミナセちゃんとカホちゃんは同じ病院に入院してる患者同士で、こっちのエルフの子――スィフォンはカホちゃんの実の妹なんだ。だから、この子たちはカホちゃんのことをすごく心配してたし、わざわざ彼女と話すために――どうしてこんなところでPKなんてしているのかを訊くためだけに、今日までレベル上げをして、装備を整えて。僕たちに何度も『助けてください』って頭を下げて」


 だから、僕はこうしてこの場に居る、と。ついには睨みつけるように目に力を宿して、


「きみたちは『ふざけるな』と、『そんな子供の理屈でPKされてたまるか』なんて言うけどね。だったら、なんであんな良い子にPKなんてさせたのかな? カホちゃんの悪口を言い、称号のために殺すと笑いながら言って、今日までたくさん泣かせていたのに――おまえたちこそ、ふざけるなよ」


 ついには、明確に怒気を放ち。その両手に自然な動作で剣をもって、


「いいか、よく聞け。あの子は、そしてこの子たちは、僕たちクラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』の仲間メンバーだ。だから、僕は――僕らは、誰に何と言われようと、この子たちを守る!」


 文句があるのなら、かかってこい、と。そう体現するように双剣を掲げて仁王立つ青年に、儂はひそかに瞳を細め、


「――それで? 確認は済みましたか?」


 果たして、ここで感情の色を限りなく削ぎ落としたかのような声と表情で、志保ちゃん。一歩、前に出て、ダイチくんに並び立って『おとこ組』の一同を見回して、


「ところで皆さんは、今≪掲示板≫で、ミナセさんが教会送りとした面々が何て喚いているか知っていますか? ……なんとビックリ、彼らはミナセさんのことを『亡霊猫ファントム・キャット』だと言ってるんですよ」


 笑っちゃいますよね、と。無表情、無感動に言う少女に彼らは気圧され、息を飲み。


 そして、


「だ、ダストン親分! そこの女の子に教会送りになった連中の一人に確認とれました!」


「こ、こっちも! その、PKやらせたかどうかについても確認できました!」


 いよいよ、志保ちゃんが言っていた通りに『我が身可愛さに他人を売った正直者』たちの証言が揃い。嘉穂ちゃんをPKとしたことが公となって、件の二人を孤立させることに成功したわけじゃが、


「ふ、ふざけんな……! 知らねー……知らねーよ、そんなこと!」


「お、俺たちは、違う! つーか、その『カホ』なんて奴、知らねーから!」


 それでもなお、白を切り。この期に及んで『嘘』を口にする彼らに、


「――だ、そうだけど。どうなの、お姉ちゃん?」


 エルフ少女は容赦なく次の一手を――今しがたダンジョンの出入り口である転移結晶を輝かせて登場した、連中からしたら既に存在しないはずの少女に注目を集めるよう仕向け。


 対して、これまでのおおよその流れを妹との『フレンドコール』にて教えられ、出てくるタイミングも『メッセージ』で伝えられていたのだろう、本物の『亡霊猫ファントム・キャット』であった少女は、ただただ自身に集まった注目に怯え、震えつつもダイチくんの隣まで歩いていき。


 そして、


「あ、あのあの……! ご、ごめんなさい!」


 果たして、この場すべてのプレイヤーをまえに大声で謝り、頭を下げるのであった。

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