クエスト27 おじーちゃん、新しい『称号』を狙ってみる?
「ふむ。まぁ、これから何をするにしても、とりあえず二人にはさきに儂の≪ステータス≫を見せておこうかの」
≪ステータス≫、オープン。そうコマンドし、出現したウィンドウを二人に示す。
果たして、そこには――
『 ミナセ / 戦士見習いLv.15
種族:ドワーフLv.7
職種:戦士Lv.8
性別:女
基礎ステータス補正
筋力:2
器用:5
敏捷:2
魔力:0
丈夫:5
装備:見習い冒険者ポーチ、小兎と森狐の毛皮鎧、見習いローブ
スキル設定(3/3)
【強化:筋力Lv.1】【収納術Lv.4】【鑑定Lv.2】
控えスキル
【交渉術Lv.4】【暗視Lv.2】【盾術Lv.3】【斧術Lv.7】【解読Lv.2】
【翻訳Lv.2】【鍛冶Lv.2】【槌術Lv.4】【漁Lv.1】【水泳Lv.2】
称号
【時の星霊に愛されし者】【粛清を行いし者】 』
と、儂として大して不思議でもなんでもない表記だったが。しかし、それを見て「ちょっと待とうか、おじーちゃん!」と再度美晴ちゃんから物言いがつくのであった。
「な、なんか思ったよりレベル高かった、っていうのも驚いたけど……それよりなによりツッコミどころの多そうな【スキル】リストっぷりががが!」
ねぇ、志保ちゃん? と美晴ちゃんが同意を求めるように隣をいくエルフ少女に声をかければ、
「あの……【解読】って、たしか以前にミナセさんがおっしゃっていた『知らない文字の意味を理解させられるスキル』ですよね? 【翻訳】などのNPC専用だと思われている【スキル】もですが……いったいどうやって取得を?」
志保ちゃんはそう具体的に訊いてくれたので彼女たちが何を不思議がっているのかに得心がいった。
「ああ、なるほど。もしかして〈学者〉の情報自体がまだ≪掲示板≫には無いのかの?」
そう問い返しつつ、まだパーティを組んだだけだった二人に『パーティチャット』の申請を送る。……今さらかも知れんが、これ以上の話を余人に聞かせないように『パーティを組んだ者同士でしか声を聞こえなくする』仕様を使った方が良かろう。
「ほいほい、申請承認――って、〈学者〉!? え、なにそれ、そんな〈職〉あんの!?」
「……検索してみたけど、やっぱり無い。ミナセさん、その〈学者〉って就くのに何か条件が?」
ふむ。志保ちゃんの言葉で腕を組んで思案顔を作り、「おそらくじゃが」と念を押したうえで、
「これは〈学者〉に限らず、幾つかの〈職〉はNPCないしこのAFOにおける『信頼度』や『貢献度』、もしくは『善徳』などの数値如何で就くことができたり、できなかったりするのではないか、と儂は考えている」
それと言うのも、儂自身、最初は〈学者〉の名が転職可能なリストに無かったこと。そして3つの街の冒険者ギルドが管理する『資料館』――その貴重な資料を閲覧できる〈職〉ならば、当然、冒険者ギルドないしNPCにそれなりに信用されていなければ就くことを許されないのではないか、と思えたからこその推論である。
加えて、今の転職可能な〈職〉のリストに〈神官〉の名前が新たに加わっているのも、『善徳』などの数値が関係しているのでは、と予想しているのじゃが、どう思うかの? と、首を傾げて問えば、
「ストップ! すとーっぷ、おじーちゃん! ……って、え!? なに、その『資料館』って!? しかも〈神官〉に転職できるの、おじーちゃん!?」
なにやら大慌てで静止する美晴ちゃんに、おや? と、再び首を傾げる儂。もしや『資料館』――ギルドの管理する書籍や古文書のような貴重な資料を補完する場所のことすら≪掲示板≫に無いのか?
ふと、このなかでもっとも情報通だろう志保ちゃんを見れば「……あー、また≪掲示板≫に無い情報がー」と遠い目をしていた。……ふむ。これは、思ったほどプレイヤーの持つ情報は少ないのやも知れんな。
しかし。そういうことであれば――
すこし、厄介だの。
ため息を一つ。いったん立ち止まり、
「――志保ちゃん。さきに話した儂の推論や〈学者〉については、おそらくNPCからしたら『常識』。ギルドの職員に聞けば『資料館』のことも〈学者〉に就けるかも教えてくれるでな。ゆえに、あとでまた折を見て≪掲示板≫に情報を上げといてくれんかの?」
言いつつ、どこまでも表情を真剣なものに。
「二人の反応を見るに、どうにも幾つかの〈職〉は秘匿されているのか、あるいはその辺を調べているものが少ないのかは知らんが……なんにせよ、また儂らが情報の発信源となるのはマズイ」
一度だけならば、いい。
しかし、『姫プレイ』がどうので注目を集めたうえで『複合スキル』や『称号』についての情報をあげてもらった。そのうえで、また新たな情報を発信するのはマズイ、と。これ以上は要らん僻みを集め、楽しくAFOをプレイしようとしている儂らの妨げとなる可能性が高い、と語る。
「……そうですね。今はまだ、内緒で行きましょう」
果たして、儂の懸念を正しく察したらしい志保ちゃんはそう呟き、ため息を一つ。「ん? どゆこと??」と、こちらを不思議そうな表情で見る美晴ちゃんをチラリと見て、「さすがに、これ以上の『特別』は、いろいろと面倒そうで嫌だよね、って話」と説明してくれた。……うむ、本当に苦労をかけるな志保ちゃん。
「それにしても……〈職〉によっては、就くのに『善徳』の要素が絡んでくるかも、ですか」
なるほど、と。そう思案顔になって呟く志保ちゃん。「……ミナセさんの主観時間において4日以上はまえに見たリストを正確に覚えていた件についての突っ込みは置いといて」と誰にともなく小さな声で言ってから、
「〈学者〉はともかく、狙っているプレイヤーの多い〈神官〉に就く条件は――もしかして、『称号』も関係してたり?」
「あー……【粛清を行いし者】とか『ぽい』かもー。それに、『教会』の名前って正確には『アイテール星霊教会』だし? もしかしたら【時の星霊に愛されし者】の方も関係してるかも?」
そう頭を悩ませ、語りあう二人の論には、なるほど、と思わせるものはあるが……。
しかし。そういうことであれば――さらに、マズイ。
「……たしか、『称号』については、もう≪掲示板≫にあげてしまったのじゃったか?」
「はい、すでに。とは言え、【時の星霊に愛されし者】の方はまだですが……」
儂の懸念に対し、そう返してくれる志保ちゃんはさすがである。
なにせ、【時の星霊に愛されし者】は小春曰く『かなり特殊な個人技の発現』が取得条件らしいからの。今のような『称号を持っていること』自体が珍しいなかにあって、さらに特別な資質によってしか取得できない称号など安易に報せられるわけがないし、これからさきも秘匿案件となろうが……しかし、【粛清を行いし者】の存在は露呈しておるんじゃよなぁ。
以前、志保ちゃんは言っていた。『称号』などβ版では無かった要素であり、その効果がなんであれ、そんな『特別な要素』のことを報せればこぞってそれを狙う輩が現れるだろう、と。ゆえに、【粛清を行いし者】の存在と、その取得条件を開示すればシンボルの赤いプレイヤーが称号狙いで狩られるようになるだろう、と。
これに加えて、人気でありながら就職条件が判明していない〈神官〉に、『もしかしたら就けるようになるかも?』なんて事まで知られれば、確実にPKを討伐しようとする輩が増えるじゃろう。
そして、そうなれば――儂が頼まれた『亡霊猫』と称されるPKへの接触も、より早い者勝ちの様相を呈してくることになり。狙われることの多くなる『彼女』側も余計に警戒するようになって、儂のしたかった『話し合い』もより困難となろう。
ゆえに、
「……のぅ、二人とも。できれば、その推測は≪掲示板≫には――」
「はい、まだ書き込むつもりはありません」
果たして、志保ちゃんは儂の思いを知ってか知らずか、そう簡潔に返し。美晴ちゃんも「まぁ、これもヒンシュク買いそうな内容だしねー」と肩をすくめて告げ、
「――あ、そうだ。ところで、おじーちゃん?」
桃色ロングの犬耳少女は、ふと思い出したとばかりの様相で、
「おじーちゃんって、もしかして【七色の輝きを宿す者】の称号も狙ってる?」
なにやらそう、不可思議なことを問うた。
……はて? なんの話じゃ? と、首を傾げる儂に、我らが情報通のエルフ少女に曰く。
「じつは先日、検証班を名乗るプレイヤーが『とりあえず就ける〈職〉すべてに転職してみた』そうで。しかし、それでは何の変化もなかったので、次に『〈職〉のレベルを1まで上げて転職し続けてみた』そうです」
転職1回につき100Gかかるというのに、ずいぶんとまた……。と、志保ちゃんの言葉に儂などは呆れもしたが、その結果「7つの〈職〉でレベル1以上になれた段階で称号【七色の輝きを宿す者】を得られたそうです」と続けられてしまえば呆れより感嘆の息が口をついて出た。
まさか、こうなることを予測していたのか? ……いや、『何かある』と予想してこその行動か。なんにせよ、称号【七色の輝きを宿す者】が『取得後、≪メニュー≫に≪ジョブチェンジ≫の項が加えられ、任意で「職歴」にある〈職〉に転職可能』という効果を持つと聞けば、その『検証班』氏には頭が下がる思いである。
ちなみに、ここで言う『職歴』とは、『1度就いてレベル1以上になった〈職〉が載せられたリスト』のことだそうで。『検証班』氏に曰く、その上限は現在のを含めて10個までが記録でき、それ以上の〈職〉に就いてレベル1以上にした場合、任意でその記録を消せるのだそうだ。そして、この『職歴』の情報を消した場合、次回の転職時には以前にレベル1以上にしていようともレベル0からのスタートとなると言う。
……ふむ。なんであれ、いつでも転職できるようになる称号か。ほしいな。
「うん、うん。だから今、ちょっとした転職ブームだったりするんだよねー」
「なるほど。で、あれば……儂も狙ってみようかの、称号【七色の輝きを宿す者】」
現在、儂が就いたことのある〈職〉は〈戦士Lv.8〉、〈運び屋Lv.4〉、〈学者Lv.2〉、〈鍛冶師Lv.3〉に〈漁師Lv.3〉の5つ。ゆえに、称号【七色の輝きを宿す者】を取得できるようになるにはあと2つの〈職〉に就けば良いわけじゃが、さて、何に就くべきか?
ちなみに、何かおススメはあるか? と二人に訊けば、
「あ、それなら! おじーちゃん、〈探索者〉やらない!?」
「私としては〈商人〉などもおススメです」
美晴ちゃんたちはそれぞれ異なる〈職〉を勧めてくるのだが……はて? その両方が儂の転職可能な〈職〉のリストには無かったんじゃが?
「みはるんの言う〈探索者〉は迷宮都市『エーオース』限定で転職可能な〈職〉で、エーオースの街外れにある迷宮に挑むには必須と言われる〈職〉です」
曰く、『ダンジョン』とはモンスターが出現する一種の異世界で。高い塔のような遺跡の入り口にある『転移結晶』に触れることで侵入。脱出もダンジョン内にある結晶に触れることで可能なのだが、逆に言えば結晶に触れなければ脱出不可能と言う。
対して、〈探索者〉の『緊急回避』というアーツを使えば、24時間に一度だけ、いつでもどこからでも最後に使用した転移魔方陣広場へ転移可能で。ゆえに、エーオースのダンジョンを主な狩り場としているプレイヤーの場合、『緊急回避』がパーティ全員を対象とした効果なのもあって、できれば仲間内に一人は欲しい〈職〉なんだとか。
そして、その〈探索者〉を勧めてくるということは――
「つまり、二人は狩り場をアイギパンからエーオースに移したい、ということかの?」
少なくとも、その『ダンジョン』とやらでしか使えんアーツであり〈職〉のようじゃが、と問えば、二人は顔を見合わせ。ややあってから美晴ちゃんは苦笑し、志保ちゃんは困ったような雰囲気をまとって、
「――っていうか、じつはもう志保ちゃんと二人のときはエーオースでダンジョンアタックしてたり?」
「私とみはるんも、あのPKKの件で注目度が上がってまして……。二人だけだと、すこし……怖かったので」
曰く、『ダンジョン』は侵入の際に組んでいたパーティごとに違う世界で。中では他の無関係なプレイヤーと遭遇しない仕様なんだとか。
聞けば、儂がダウンしとった間の、二人きりでAFOにログインしていたときにも今日のように見知らぬプレイヤーに声をかけられたり、絡まれかけたりすることが何度かあったようで。それらの対応として『ブラックリスト』の仕様に加えて、ダンジョンの仕様をも利用して他のプレイヤーやPKなどとの接触を避けていたと言う。
「本当はもう少し【直感】のレベル上げしたかったから、しばらくはアイギパンのがよかったんだけどねー」
「まぁ、アイギパンの森エリアなんかは〈斥候〉の【察知】系の【スキル】のレベル上げに向いてるしね。……いつか私も〈狩人〉に就いて【直感】を取りにいこうかな?」
などと殊更に明るく告げる二人の言葉に思案する。
……ふむ。そう言うことなら、これからしばらくは『ダンジョン』とやらを主な狩り場とすべきか。儂一人のときに絡まれても面倒じゃし、美晴ちゃんのおススメでもあるから〈探索者〉に就くことに――
「うーん……。でも、それって今すぐ転職するより〈魔法使い〉と素体のレベルが10を越えてからの方が良いんじゃない?」
「……そうね。そのあとでなら【付与】、【属性】に【直感】と、なんなら【弓】とか【罠】なんかも一緒にセットできるし、その方が良いかな?」
…………ん?
「のぅ、お二人さんや。もしや〈職〉と素体レベルが10を超えると――『スキル設定』の総数が増えるのか?」
果たして、そう恐る恐る訊けば二人はキョトンとした顔になり。顔を見合わせたあとで、「え? おじーちゃん、知らなかったの!?」と美晴ちゃんには逆に驚かれ。志保ちゃんには「素体レベルが10以上で1つ。〈職〉の方でもレベルが10を越えれば1つ増えますよ」と返され、儂は目を丸くした。
「おお……! そ、それならばもしや取得可能な【スキル】の上限も……!?」
「えっと……たしか『スキル設定』の最大数プラス10個が上限らしいので、結果的にですが増えますね」
おお! そういうことならばレベルをさっさと上げてセット可能な【スキル】の数を5つにしよう! それで、『蒼碧の洞窟』攻略時には【暗視】、【水泳】、【強化:筋力】等の補助に加えて【斧術】か【槌術】に【盾術】をセットできそうじゃ!
うむ、それだけの【スキル】をセットし、一緒にレベル上げできるようになればいろいろと捗りそうじゃな――と、それはさておき。
「ちなみに、話を戻すが――志保ちゃんの勧める〈商人〉は?」
これまた、儂の転職可能な〈職〉のリストに無かったんじゃが、と訊けば。志保ちゃん曰く、「〈商人〉は街にある『商人ギルド』という施設で『商人登録』を済ませることで就くことのできる〈職〉なので」とのことで。
果たして、まさかそんな転職方法があろうとは、と目を丸くする儂に、
「それで、〈商人〉に就くとですね。それだけで≪メニュー≫に≪マーケット≫という項が追加されるんです」
曰く、この≪マーケット≫というのは、一種の売買システムで。インベントリ内の『売買可能なアイテム』類を『値段を自分で決めて』出品、≪マーケット≫の『出品リスト』の項に登録可能で。そこに載った登録品は、≪マーケット≫を開けるものなら誰でも、いつでも買って手に入れられる――と、ここまでの説明だけでも随分と便利そうに思えたが、志保ちゃんに曰く、むしろ≪マーケット≫での売買はおまけだそうで。
仕様上、この『出品リスト』に何であれ登録したアイテムは、即座にインベントリから消え、一種の異世界に保管されるようで。そして、そこに保管されている限り、HP全損時でもそのアイテムは吐き出されることはなく。また、時間経過などによる劣化がおきないと言う。
ゆえに、この仕様を利用して、ぜったいに失くしたくないアイテムや、『死骸』系などの時間経過で品質が劣化していくタイプのアイテムを『わざと誰にも買えないような値段』で出品登録し、比較的安全に保管する、等の小技も≪掲示板≫では紹介されており。【七色の輝きを宿す者】の称号の取得が流行っている昨今、いつでも手持ちの不要なアイテムを売ったりできる〈商人〉は人気な転職先の1つなんだとか。
「ただ、いろいろと便利そうな〈商人〉なんですが……その、レベルの上げ方というのが少々特殊でして……」
曰く、〈商人〉はこの≪マーケット≫で手に入れた資金を消費してレベルを上げられるのだそうで。具体的には、『次のレベル×次のレベル×100G』が必要額になると言う。
つまり、最初のレベル0からレベル1に上げるのには100G。レベル2にするには更に400Gかかるそうで、登録に500Gかかるのもあって〈商人〉のレベル上げは戦闘職や生産職等とは違った意味で苦労するだろうという話じゃが……幸か不幸か、ちょうど今なら不要な武装を多く持っており。そのすべてが『修復』により耐久値は全快状態で、どれもこれもが冒険者ギルドで100Gで売られているのと同じもの。
ゆえに、それらを中古ということで80Gなり半額などと少し値下げして出品すれば売れるじゃろうし。なによりそんなレベル上げのための作業を道中の片手間にこなせる、という点が今回の場合は素晴らしい。
ゆえに、
「……ふむ。では、儂はこれから『商人ギルド』に行って〈商人〉に就き。そのあとでエーオースにある冒険者ギルドで〈探索者〉に転職。ダンジョンに行ってレベル上げ、という流れで動こうと思うんじゃが……二人はどうする?」
なんであれば、さきにダンジョンでレベル上げをしていてくれても良いが、と確認すれば、二人は顔を見合わせ。
「逆に訊くけど、おじーちゃんだったらどう? わたしか志保ちゃんが『称号欲しい!』ってなって、『ちょっと歩き回らないとだからレベル上げしてて』って言われても『大丈夫、ついて行く』って言わない?」
そうニマニマ笑っての美晴ちゃんの問い返しに、思わず「あー……」と明後日を向いて答えを濁す儂。たしかに、言われた通り『ちょっと歩く程度なら付いていく』と儂なら返すじゃろうし、美晴ちゃんにしろ志保ちゃんにしろ、一人にはしたくない。せっかくなら三人でいたい、と思ってしまうのじゃが……そう訊くということは美晴ちゃんたちもそう思ってくれとるということで。それがすこし、嬉しかったりもする。
「それに、一度行けば≪マップ≫に登録できますので、〈商人〉にいずれ就くかも知れないことを思えば商人ギルドに行っておくことは無駄にならないかと」
私としも、いずれ余裕があれば〈商人〉に就きたかったですし、と。志保ちゃんは告げ、「そもそも格上のダンジョンへみはるんと二人だけでは行けませんので」と苦笑するような雰囲気になって言葉を継ぐ彼女に儂もまた苦笑で返し。
「……うむ。スマンな、無駄な時間をとった」
さきの問いとは違う、『愚問であったな』というニュアンスでの言葉に美晴ちゃんは笑顔で片手をひらひらさせて応え。志保ちゃんと二人、儂のあとについて歩き出すのだった。




