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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第二章 全プレイヤーに先駆けて最強PKを攻略せよ!
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クエスト21 おじーちゃん、はじめての『蒼碧の洞窟』DEATH?

「あ、そうだ。お父さん――と、あとチー姉にも今のうちに教えとくとね。えっと、じつはね……なにを隠そう、私、お父さんと美晴以外にももう一人、AFOに誘った子がいるの」


 それはAFOにログインするまえ。いつものログハウスを模したデザインの、儂のよく使う応接室のようなVR空間にて、娘の小春はひどく唐突にそんなことを言いだした。


「……いきなり、なんの話?」


 対して、一通りの話し合いも済んだものとしてログアウトしようとしていた長女の千春ちはるが操作のためだろう動かしていた指を止め、怪訝顔になって隣の次女を睨む。


「そもそも貴女が誰にゲームを勧めようと私には――」


 関係ない、と言いかけて。そこで「……まさか」と何かに気付いてか眉尻を寄せる姉に視線を泳がせまくる妹。……理由はよくわからんが、この二人は本当に変わらんのぅ。


「あ、あははー……。そ、その、じつはその子もね、『あっち』の時間でだけど……今、24時間以上のログイン中みたいで、ですね……。もしかしたらお父さんのようになっちゃう可能性も無きにしも非ず、みたいなー……?」


 彼女の言う『あっち』というのが電子仮想世界――AFOの中だとして。今や完全に顔をしかめ、小春を睨みつけている千春の反応と『24時間以上の連続ログイン状態』という台詞から、おおよそ『あの子』とやらの事情を察した。


「ふむ。つまり、その子は――儂と同じ、『からだ』を持たぬ『あたま』だけの存在、ということかの?」


 この二人が揃って気に掛けるような者というのだからそうだろう、という儂の読みは「あ、あははー……」と乾いた笑いだけあげて視線を逸らした小春の反応と千春のため息で当たったことを確信。


「……小春」


「あー、あー、ごめんなさいチー姉! そ、その、お小言はあとで聞くから、ちょっとお父さんに先にお願い、良い?」


 ふむ? 儂にお願い、とな?


「えっと……あのね、お父さん」


 果たして、小春は告げる。曰く、現在、≪掲示板≫にて称号【粛清を行いし者】の情報とPKを狩ることによる利点が志保ちゃんの書き込みによって拡散傾向にあり、併せてシンボルが赤いプレイヤーが劇的に減少しつつある、と。


 そして、そのこと自体は別に小春個人や運営側としても問題は無かったのだが……しかし、どういうわけか件の『あの子』とやらがよりにもよってPKとなってしまったことで静観しているわけにもいかなくなった。


 ――シンボルが赤くなったプレイヤーは街に入れない。


 加えて、儂らのもたらした情報によって積極的に狙われるようになっただろうPKがログアウトを渋るのは当然で。そして儂と同じ『あたま』だけとなっているのなら、使用しているVRデバイスからして終始ログイン状態でもAFO内でしっかりと休憩できれば問題は無い。


 ……そう、休憩をしっかり取れれば問題は無いんじゃが、儂がすでに失敗しておるからのぅ。これでまた『過労で強制ログアウト』などになる患者を増やせば、さすがに同じ主治医だろう千春も黙っていまい。


「運営側の人間としては、本当はあんまりプレイヤーに干渉するのはよくないんだけどねー……」


 しかし、そうは言ってもこれ以上儂と似たような理由で『強制ログアウト者』を出すわけにもいかず。なにより隣に座す千春からのプレッシャーに怯えてか、小春は儂に件のプレイヤーのことをある程度話すことにしたらしい。


 で、その子は現在、海辺の街『キルケー』付近の洞窟の一つを根城にし。そこに来るプレイヤーを誰彼かまわず、何時いかなるときであってもPKしていると言う。


 そして≪掲示板≫でついた綽名が、曰く『亡霊猫ファントム・キャット』、と。


「『あの子』のプレイヤーネームや、どうしてPKなんてやることになったかは教えられないし、お父さんもできれば他の人には内緒オフレコでお願いしたいんだけどねー」


 私個人としても、「ぜったい、楽しいから!」と自信を持って勧めた手前、放っておくわけにはいかないしー、と。そう苦笑し、


「あ、それでお父さんに無理させて倒れられたら、そっちの方がヤバいから『なるべく』で良いの。それこそ美晴たちと遊んでないときに『気にかけて』くれるだけで」


 仮に、儂以外の誰かに『彼女』とやらが先に倒され、キャラクターデータを失うことになっても、それは仕方ない、と。そして、「運営側の人間としては問題かもだけど、私個人としては、できれば『彼女』のことを助けてほしい」と、小春は頭を下げた。


 ゆえに、「まかせよ」と。そう返すのは当然で。儂の研究と娘たちの研鑽によって生み出されただろう、現実世界では儂と同じく『からだ』を持たぬというPK――『亡霊猫ファントム・キャット』を放ってなどいられるものか。


 ……もっとも、何をもって『彼女の救い』となるかはわからんし。≪掲示板≫ですでに判明している『亡霊猫ファントム・キャット』の情報ぐらいしか小春も開示できないと言っていたが。


 なににせよ――会って、話す。


 そのために、


「ふむ。ここが『蒼碧の洞窟』かの?」


 あらかじめ、件の『亡霊猫ファントム・キャット』嬢の潜むエリアの名前は小春に聞いていた。……まぁ、小春あれはその名前だけしか教えんかったから、まずはここ――海辺の街『キルケー』の冒険者ギルドを捜索。散々歩き回ったすえにギルドの職員におおよその場所は聞いて、また小一時間ほどの時間迷いはしたが、どうにか目的地である『蒼碧の洞窟』を見つけた。


 ……ふむ。なるほど、名前の『蒼碧』は淡く光る鍾乳洞の、その光の色からきているのか。


 幻想的と言えば幻想的であり、蒼碧の仄かな光を発する鍾乳洞は綺麗であった。が、それに見とれている暇は無い。いい加減、歩き疲れたような気分でもあったので、さっそく戦闘を主眼に置いた【スキル】に『セットスキル』を変更。見たところ薄暗くはあるが【暗視】が必要というほどではないようなので【強化:筋力】、【盾術】、【斧術】の3つにした。


 装備は、『山間の強き斧』に貰った『量産武器:手斧』にPK討伐時に手に入れた未使用の『練習用武器:盾』。これに加えて、『ポーチ』には予備の『剣』や『槍』に『盾』、HP回復ポーションを幾つか用意してきたが……やはり懸念材料は『斧』系統の武器が予備に無いことか。


 いちおう、前回の長時間の攻防で【槍術】と【剣術】がそれぞれ1レベルありはするが……まぁ気休めだろう。【斧術Lv.6】に馴染みの手斧が通じないようなら、もう逃げるしかないじゃろうしの。


 ……もっとも、洞窟に足を踏み入れるごとにだんだんと足もとの水位が上がっていっていることから、そもそも逃げ切れるかすら怪しくなっているが。


 まだ入って数メートルというのに、当初は膝下だったものが既に腰に届かんばかり。とてもではないが裾の長いローブを纏ってなど居られず、毛皮の鎧にしても水を吸って重く。かと言って、攻撃を避けられないだろう現状、『見習い服』では不安だったので『見習いローブ』こそ脱ぐが『小兎と森狐の毛皮鎧』は脱げない。


 ……不意打ちによるHP全損もある程度視野に入れ、インベントリ内のアイテムは無くして来たが――


「もしかしたら、件の『彼女』のもとに辿り着けんかも知れん、なぁッ!」


 突如、飛来してくる銛。それを『視て』盾で弾き――その一撃だけで未使用の『練習用武器:盾』が砕け散ったことに目を剥き、そちらとは別の方向から飛び出してきた『人の手足生やす魚のようなモンスター』を手斧で迎撃。


 突き出された粗末な銛を、顔を横にして避け。体当たりこそ手斧による横薙ぎで軌道をずらして直撃こそまぬがれたが、


「くッ!? 足が滑って踏ん張りが……!」


 上体が逸らされる。足が地を離れ、半ば尻餅をつくような形になって水中を泳ぐような状態に。


 ……まずい。鎧が重い。動き難い!


 飛沫を上げて再度飛び出してくる魚人を『ポーチ』から出した予備の盾で受け、衝撃を受け流すようにして逸らす。が、それによってさらに姿勢が崩される。


「敵は……2体かッ!!」


 背後からの銛による攻撃を斧で弾き。盾で受け止めた、眼前の魚人による噛みつき攻撃を再び盾で受け流し、蹴りつける。


 それで、どうにか距離を離そうとするが――水の抵抗もあって上手くいかない。


 片や銛で。片や噛みつきや引っ掻き攻撃で。最悪なことに挟まれる形で対峙させられてしまった現状、無傷での生還は絶望的か。


「これは、仕方ない、かッ!」


 ――さきの、たった一撃で未使用の盾が粉砕されたことを鑑みるに下手に攻撃を受けるわけにはいかない。


 敵は複数で。そのうえ、地の利がある。


 対して、こちらは装備も含めて戦場に嫌われた状態。できるなら逃走したいが……もとより足の遅い『ドワーフ』で逃げ切れるはずもなく。敵の攻撃力からしてレベル差は確実にあり、生還は絶望的、と。


 ゆえに、


「――知覚加速アクセル!」


 叫んだ、その瞬間――世界が、動きを緩慢にさせる。


 小春に曰く。別段、この『任意の体感時間の加速』はAFOの仕様上、問題ない。が、そこはそれ、あとで問題があったときなどに『活動記録ログ』を見直しやすくするため、使うのなら使うで直前に『アクセル』と声に出して欲しいのだそうだ。


 ゆえに、当然、この体感時間の操作にアーツの起動のような『特定の単語を実際に声に出し、言葉にして発しようとする思考行為』――通称、『ボイスアクション』は必要ないし。正直、他人の目のあるところでは使いたくなかったが――今は問題ない。


 知覚を加速し、感じる時間がひどくゆっくりとなった世界において。体感時間にして1秒にも満たない短い間だけであったが、それでも自身の『設定』を切り替えることはできる。


 まずは、知覚できる範囲を常のそれより狭くし。次いで、『色』や『音』、『匂い』などの不要な情報を棄却。ゆっくりと、しかしながら確実に動く時間のなかで2体の魚人との戦闘に必要だろう情報だけを収集、精査、認識するように変更。


 これによって加速された時間軸での予測演算シミュレーションは元より、平時における戦闘行為に伴った情報処理の負担を減らし。そのうえで、直近に迫った敵の攻撃を無理なく把握し、自身の態勢を直しつつこらからの動きをおおよそ決定してから――


 知覚加速アクセルを、解除。


 果たして、それで世界が再び元通りの時を刻むようになったなか、切り替わった『視界』で突き出される銛を、体を半身に捻り、脇を開けることによって避け。その円運動を利用して盾で受け止めた魚人の方へと斧を振るう。


「――――ッ!!」


 たまらず眼前の魚人が悲鳴を上げるかのように口から空気を震わせているようだが、『音』は聞こえないように弄ったので聞こえず。無視し、三度目の斧による振り下ろし。


 背後からの銛は、相手に半身を向けて受ける面を減らしたことで攻撃地点を絞り。どこに攻撃されるにしても、少し状態を倒すだけで避けられるようにした――が、それによって銛を突き出す『点』の攻撃を止め、棒を振り下ろすような『線』の攻撃に背後の魚人が切り替えることにしたらしいのを『視て』、眉をしかめて体を反転。


 銛に対し、盾をすくい上げるようにして迎撃。攻撃を逸らし、再び噛みつこうと飛び出してくる、これまで斧で攻撃していた方の魚人を、斧の柄の部分で顎をかち上げるようにして防ぎ――それでも背を引っ掛かれるのは防ぐことは出来ず。たったそれだけの攻撃でHPが3分の1以上削られるのを見て眉間の皺を深くする。


 ……これは、本当にマズイのぅ。


 三度の斧による攻撃で倒せない時点でこの魚人たちが格上の相手だというのは確信していた。それも、前回相対したPKたちなどよりよっぽどレベルが高い、と。


 ゆえに――覚悟を決めよう。


 銛持つ魚人に背を向け。そちらからの攻撃を最低減の回避にとどめ、


「悪いが、おまえさんだけは――もらって行くぞッ!!」


 果たして、そう叫んで斧を振るうこと更に六度。途中、思いつきで『体感時間の操作中にアーツを使えるのか』を試し。結論から言って、アーツは無事に加速された時間軸のなかで発動したいと強く念じたタイミングで起動した。


 このとき、『アバターの声帯を震わせて発声、言葉にする』まえというか、に『アーツが起動する』という現象が起き。考え、感じ取る時間を引き延ばしているから仕方ないんじゃが、既にアーツが起動しているのにも関わらず肉体アバターはゆっくりと発動したいアーツの名を口にし続けている、という些か間の抜けた状態に。


 ……まぁ、不発よりはマシじゃし。実際にアーツの名を『すべて口にし終えてから発動する』といった仕様でなかったぶん良かったのじゃが。


 さておき、実験の際には『チャージ・アックス』という【斧術Lv.3】で使えるようになった『TPを一定時間消費し続けることで次の一撃の威力が上がる』アーツを使い。最後などは『アックススラッシュ』――【斧術Lv.1】で使用可能になるアーツで、『TPを消費することで次の一撃の威力を上げることができるが、攻撃終了時に技後硬直として一定時間アバターの動作停止』という効果をもつ――まで使って、どうにか1体、魚人のモンスターを倒すことはできたが……同時に、儂のHPも全損。アバターは光となって砕け散った。


 そして、


[ただいまの行動経験値により素体レベルが上がりました]

[ただいまの行動経験値により【斧術】のレベルが上がりました]

[ただいまの行動経験値により【盾術】のレベルが上がりました]


 瞼を開き、変更した自身の設定を戻しつつ視界端に流れたインフォメーションを見るとはなしに見て、思う。……これは、まいったのぅ。まさか最初に出会ったモンスター相手すらHP全損覚悟で1体撃破がやっと、では……とてもではないが、その奥を狩り場にするプレイヤーになど鎧袖一触も良いところで『話し合い』の席に着けるかどうかも怪しい。


 ……しかし、まぁ。とりあえず今はSPを消費して、『丈夫』を上げておこうかのぅ?


 まともに動けない洞窟内では回避するにしても限界がある。ゆえに、防御力と最大HPの値に直結するらしい『丈夫』がもう少し欲しい。加えて、できれば水場での戦闘にある程度対応した防具が欲しいが……。


 なにはともあれ、まずは≪ステータス≫とコマンド。SPを消費して『丈夫』を上げ、あらためて眼前のウィンドウを睨む。




『 ミナセ / 戦士見習いLv.12


 種族:ドワーフLv.6

 職種:戦士Lv.6

 性別:女

 状態異常:【虚弱】



 基礎ステータス補正


 筋力:2

 器用:5

 敏捷:2

 魔力:0

 丈夫:2



 装備:見習い冒険者ポーチ、小兎と森狐の毛皮鎧、量産武器(手斧)、量産武器(盾)



 スキル設定(3/3)

【強化:筋力Lv.1】【盾術Lv.3】【斧術Lv.7】



 控えスキル

【交渉術Lv.4】【収納術Lv.4】【暗視Lv.1】【槍術Lv.1】【剣術Lv.1】



 称号

【時の星霊に愛されし者】【粛清を行いし者】    』




 『状態異常』の【虚弱】は、たしか公式ホームページには『AFO内で6時間、ステータスが半減する効果をもたらす』とあった。ゆえに、これからすぐにまた戦闘でレベル上げを、とはいかないが……さて、どうしたものか。そう悩みつつ上体を起こし、あらためて辺りを見回す。


 ……ここは、どこかの?


 現在地を示すインフォメーションに曰く、[ここは、アイギパン 星霊教会 復活の間です]とあり。そう言えば、プレイヤーの復活地点は最後に冒険者登録した街の教会だったと思い出す。


 ゆえに、


「――おや? ミナセさん……まさか、PKに?」


 『復活の間』を出るや顔見知りの神官NPC――ジャッジさんと再会し。その頭上の緑の三角錐シンボルをまえに苦笑せざるをえない。


「いや。情けないことに、洞窟で最初に遭遇したモンスターにHPを全損させられての」


 ため息を一つ。それから、ふと、思う。


「ところで、『蒼碧の洞窟』という場所が腰もとまで水に浸かるような状態なんじゃが……その辺をどうにかできる手は何か無いかの?」


 ダメでもともと。単なる話題転換のため、なんとなく儂が今、頭を悩ませている地形的不利をどうにかする手を知っているか、と。そうあまり期待せずの問いかけに、


「……そう、ですね。まず考えられるのは、着ている鎧を水場での戦闘を想定したものにする、とかでしょうか?」


 ジャッジさんは思いのほか真摯に返す。


「『キルケー』周辺で出現するモンスターを討伐して手に入る素材アイテムを用いた鎧等を新しく買うか……あるいは、水場での戦闘を有利にするとされる【水泳】の【スキル】を得るか。これで水棲モンスターを相手するだけなら【水泳】が取得可能な〈漁師〉に就くのも勧められますが……残念ながら〈漁師〉は水場に住むモンスター以外を倒しても経験値が得られませんからね」


 ミナセさんたちはアイギパンを主な狩り場にしてくださっているようなので合わないでしょうし。あとは、洞窟などの仄暗い場所なら【暗視】も有効ですね、と。そう予想以上に詳しく教えてくれる彼に内心では目を丸くしながらも表面には出さず。腕を組み、思案顔を作りながら、


「光源は、不十分ながら光る鍾乳石もどきがあったが……それでも【暗視】があった方が良いのかの?」


「そうですね。『エーオース』にあるという迷宮などもですが、光源の少ないエリアでは【暗視】のあるなしでダメージに差が出るそうなのでお勧めではあります」


 ……ふむ。で、あれば。


「理想としては水場に対応した装備を纏い、【水泳】と【暗視】をセットして〈漁師〉に就けば『洞窟』内の戦闘では有利に働くのじゃろうが……」


「そうですね。あとは単純に、装備の質を上げる、でしょうか?」


 なるほど。言われてみれば、儂の装備はどれもアイギパン冒険者ギルドで手に入るものばかり。『山間の強き斧』に貰った手斧こそそれなりの品じゃろうが、やはり盾も信頼を置けるものが欲しい。……未使用で一撃でも良いのを貰えば壊れる、というのは立ち回りで気をつかわされて無駄に疲れさせられるからのぅ。


 戦場となる洞窟の状態を考えるまでもなく、完全に格上のモンスターと相対するのにも準備不足はなはだしいものだろう。


「ふむ。ならばレベル上げもじゃが、資金調達のこともおいおい考えてみるべきか?」


 良い装備を買おうと思えばそれなりの資金が要る。加えて、【水泳】は欲しいから〈漁師〉には一度就くとして。とりあえず、日が昇ったら『キルケー』の武器防具屋を覗いて見ようか。


「あるいは、私などではなく『キルケー』の冒険者ギルドの職員などに訊ねてみるとか。彼らなら出現するモンスターや狩り場などに関してよく知っているでしょうし、一度試しに伺ってみるのも手かも知れません」


 果たして、その言葉は目から鱗が落ちるようで。『冒険者ギルドの職員に訊ねる』というのは、言われてみればなるほど、とても良い案に思われる。が、その発想は無かった。


 有体に言って、ギルド職員のことは何か用があったときに『利用する』NPCとしてしか見ておらず。現在、こうして話している神官の彼を含め、なんとなくその役割にあったこと以外は役立たずなのかと思っていたが……なるほど。冒険者が利用するギルドの職員ならばたしかに周辺のモンスター事情に明るい、というのも頷けるし、装備関係の相談も受けてもらえるかも知れんな。


「それから――ミナセさんに1つ忠告を」


 そう言って、教えられた内容にウンウンと頷くようにして思案する儂に、ジャッジさんは真剣な顔を近づけて、


「私が今、語った内容は、どれも最初に冒険者ギルドの職員にでも確認すれば教えてもらえただろうもので――決して、命を1つ消費したあとで訊かれるものではないと思います」


 告げる、その内容に――今度は胸を刺される思いになる。


「……プレイヤーの方々はたしかに生き返れます。それを利用してのトライ&エラーで未知のエリアを探索する、というのもプレイヤーならアリなのでしょう」


 しかし、と。神官たる青年は語る。


「それで事前の調査や準備を怠って良い、とは思えませんし。生き返れるからと命を粗末にするような振る舞いを私たちNPCからどう見られるか……ミナセさんなら想像できるのではないですか?」


 ……うぅむ。まさしく彼の言う通りだと思うし、我ながら浅慮にすぎたのぅ。


「どうかご自愛を。ミナセさん」


 そう言って柔和な笑みを浮かべ一礼するジャッジさんに、


「……うむ。参考になった。そして――ありがとう」


 儂もまた彼に頭を下げ、そしてようやく教会を後にするのだった。



参考までに、おじーちゃんのSP振りを下に。


『筋力:2(素体1)(戦士1)

 器用:5(素体2)(戦士3)

 敏捷:2(素体1)(戦士1)

 魔力:0

 丈夫:2(素体1)(戦士1)』

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