表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
幕間 第一章終了時までの短編など
30/127

チュートリアル 熊の薬屋さん

活動報告SSその5?

 入院することになって暇が出来た。


 そんなわけで、これまで敬遠していたMMORPGに手を出すことに。それも事前に集めた情報で『子供から老人まで一緒に遊べる!』というキャッチコピーの、今どき珍しいレトロなゲームシステムで話題のVRMMORPG――『星霊幻想記せいれいげんそうき~アイテールファンタジア・オンライン~』をやりだしてみることに。


 ……まぁ、暇つぶしだし。つまらなければ、その時点で違うゲームに変えれば良いや。


 そんな思いで始めたVRゲーム――通称、AFO――だったこともあり、キャラクリから名前までかなり適当で。現実世界の外見が190センチに迫る長身にド貧乳。目つきの悪さと相まって敬遠されがちだった見た目を、獣人度を弄って『服を着て歩く細身の熊』にしか見えないアバターにして。口下手で聞き取り難いと評判のボソボソ喋りでも問題ないように【交渉術】という『話す言葉の意味を相手に伝え、未知の言語でも聞き取ることができる』らしい【スキル】を初期にもらった『スキル変換チケット』というアイテムを使って取得。


 これまた初期に貰った『練習用武器交換チケット』で『斧』を選択し。適当に最初の街を3つのなかから選んでゲーム開始。


 ……おお。さすが話題のゲーム。空も空気も、アバターの動きなんかも滑らか。うん、クォリティー高いわ。……いや、ほかのゲームとかこれまで大して触ったことないから、学校のフリーゲームと比べてだけど。それでも、これだけプレイするんにストレスなさそうな処理速度と外観デザインの作りこみようから言って、ハズレじゃあないかな?


 とりあえず、≪掲示板≫っていう、『いつの時代の情報媒体だよ』ってツッコミ入れたいほどレトロなプレイヤー御用達の情報をやり取りする場所を覗いて、初心者がまずしなくちゃいけないのが各街の冒険者ギルドへと登録だっていうので、一緒に貼られてた画像データと≪マップ≫を開いて表示した現在地と視界範囲内を示す地図を頼りに歩き。ほどなく登録完了。達成報酬の『見習いポーチ』を装備して、『常設依頼』が確認できる壁を流し読みして、これまた≪掲示板≫にある『レベル1でも安心してモンスター戦を体験できる』っていう、この街――山林に囲まれた街アイギパン南の草むらに行って、さっそく『練習用武器:斧』を振り回してみることに。


 その結果、わかったことだが……このゲーム、動作補助システムを積んで無かった! せっかく〈戦士〉に就いたのに、『戦士っぽい動き』にアバターの動作を矯正してくれるとか、なんとか2体の兎を倒して得た【斧術】をセットしても『斧を振る、斧を当てる動作を補正』とか、そういう最近では当たり前にあると思ってたサポートがAFOには無いの!?


 え? まさかの素の運動神経のままでモンスター退治とか、なにそれ聞いてない! 私、根っからの運動音痴なんですけど!? 跳んでくるボールを打つとか苦手中の苦手な私が跳びだす兎を斧でホームランとか難しすぎるんですががが!!


[ただいまの行動経験値により【採取】を得ました]


 って、おや? なんかまた【スキル】を得た?


 ――あ。そうだよ、【スキル】! それにたしか『アーツ』ってのが武器戦闘用の【スキル】には設定されていたはず!


 て、ことで。さっそく確認した。≪掲示板≫の『戦闘系スキルのアーツについて』ってスレを覗いてみた結果、私がいくら振るっても跳びだしてくる兎――『スモールホーン・ラビット』という名前のモンスターらしい――に当たらず、絶賛『草刈り』状態だったわけだけど、なんとか取得できた【斧術】をセットし、レベルをどれだけ上げたところで動作の補助はしてくれないようで。その【斧術】のレベル1で使えるアーツも、『当てやすくする』類のものなら良かったのに、『当たったときのダメージ上昇』って……要らないよ!! 熊さんの攻撃なら、基本、兎なんて一撃だもん! 当たればだけど!!


 てかもう、『モンスターに当てるのは基本、本人のセンス』とか……これ、私には無理ゲーな気がするんだけど?


 なにはともあれ、草むらからいったん離れ。≪掲示板≫で、さっき取得したっぽい【採取】って【スキル】を調べてみたら、『草原などで草のオブジェクトを破壊し続けることで〈職〉に関係無く取得できる【スキル】。セットしておくと、以降の草刈りでアイテムを拾うことも?』ってあった。あー、そう言えばモンスター退治以外にも『薬草採取』なんて依頼もあったわ、と思いだし。せっかくなんで【採取】をセットして、『私は採取依頼のために斧を振り回してるのであって、兎に当てられなくって草刈りをしていたんじゃありません』という顔で再び草原に入ることに。


 ……まぁ、今の私の顔、熊なんで。毛むくじゃらの獣顔なんで。普通に表情とかわかんないと思うけど。


 ともかく、最初っから草刈り狙いであったおかげか、無理して跳びだしてくる兎を切りつける必要が無くなったおかげか。それから数時間経って、どうにか『常設依頼』にあった兎狩り5体で100Gの依頼を達成。で、『薬草』っていうのも幾つか拾えたんでドロップアイテムを冒険者ギルドで換金して、けっこう残りHPが減ったこともあったんで一度、ログアウトすることに。


 ……って、現実に戻ってもやることないからVRゲームに手を出したんだけどねー。せっかくだから、今のうちにほかのSNSとか覗いてAFOの情報を集めてみますかねー、っと。


 お、あった、あった。さすがは新進気鋭の話題作。軽く検索するだけで結構な情報があるね。


 ……ふむふむ。


 ふむふむふむ。


 うん、なるほど。よし、決めた! 私、〈戦士〉やめるよ!


 良い具合に時間も経過してたんで、さっそくAFOに再度ログインして。転移魔方陣広場から冒険者ギルドに行って、〈戦士〉から〈きこり〉に転職へんこう。これによって、〈戦士〉が『戦闘でレベルが上がる』のに対して〈樵〉は『植物オブジェクトの破壊で経験値を加算させていく』仕様らしいので、兎に無理にかかずらわる必要が無くなった!


 あと、すっかり忘れてた『チュートリアル』の達成報酬目当てで鎧を新調。これで防御力が増して打たれ強くなったうえに、『チュートリアル』は全部達成! で、その報酬で手に入った『見習いHP回復ポーション』を『ポーチ』にしまった。


 で、これまでプレイスタイルが決まるまでは取っておくつもりだった――決して、兎狩りに熱くなりすぎて忘れていたわけではない――もう1個の『スキル変換チケット』を使って【調薬】っていう、『薬草』を『ポーション』に変えられる【スキル】を取得してみた!


 もっとも、この【調薬】の【スキル】を使うには『器状の物の中で素材となるアイテムを破壊する』必要があるんだそうなので、『小鉢とすり棒のセット』代金100Gも次のドロップアイテムの清算が済んだら買う予定。


 ってなわけで、やってきました、アイギパン南の草原――通称、『最初の草むら』!


 なんかちょっとまえに、ここでPKだかPKKだかのいざこざがあったらしいけど、今はもう解決したっぽいから関係ない。私はただ、草を刈る。それだけだ!


 ほーら、ばっさ、ばっさ。ばっさ、ばっさ、と草を刈り。途中で跳びだしてきた兎も草刈りを続けながら、当たったらラッキーだけど、外れて草を破壊できたら別に良いやーって気持ちで振り回した斧で倒し続け。兎を5体倒せた段階で冒険者ギルドへ清算しに戻る。で、買いたかった『小鉢とすり棒』のセットをギルド近くの『薬屋』で購入、っと。いや~、ボソボソ喋りでも『声さえ届けば意思疎通可能』な【交渉術】さまさまである。


 そして、ふっふっふ。これで念願の【調薬】が使える! というわけで、さっそく、売らずにとっておいた『薬草』をお店のまえに座り込んでグリグリしていると、できた。『HP回復ポーション』! これ、たしか冒険者ギルドで買うと100Gだったけど、売ると幾らになるんだろ?


 なんだかはやる気持ちのまま店の真ん前で作業しだしたせいで若干迷惑そうな顔だった店員のおばあちゃんNPCに「これ、売ったら幾らになります?」って訊いたら、『薬草』1個より安いんだけど、どういうこと!?


 ……え? 『薬草』って時間の経過で劣化していくの!? だから、採取してすぐの方が良い品質の『回復薬ポーション』が出来るって……そもそも『ポーション』にも品質とかあったんだ! ギルドのは一律、同じ品質のものを卸してるから、そもそも買い取ってくれないとか……なにそれ、聞いてない!


 あと、『ポーションを作って売るなら〈薬師〉に就いた方が良い』って教えてくれて。なんなら弟子になるか? それなら転職費用が要らないけど、って言ってくれたので、「お願いします」って頭を下げてみた。


 結果、それまで『ほんわか人の良いおばあちゃん』だったのが『がめつい守銭奴ババア』に超進化! 私の毛むくじゃらな腕を引っ掴んで店の奥に引きずっていき、「まずはここの『薬草』を全部使ってレベルを上げな。で、それが済んだら消費したぶんの『薬草』を〈樵〉に戻ってでも良いから採取っておいで」って、いきなり超ハード!?


 しかも、ギルドに卸せるレベルになるまで造った『ポーション』は私に買い続けてもらうって、そんな!? 大丈夫、仕入れ価格のままだから、って。そこはそもそもお金をとるところじゃないと思うんですけど!?


 ……ま、まぁ、でも。いくら現実では超のつく不器用っ子な私でも〈職〉と【スキル】にステの補正があれば問題ないよね? ……え? 熊の獣人は、基本、器用値が低い? そんな~……。




 ――かくして、後にアイギパンで『熊の薬屋さん』と呼ばれるようになる『ポーション』造りのスペシャリストは、こうしてこの日、人知れず産声をあげたのであった。




 あ、いや。ですから、師匠、私そろそろ寝ないと――え? プレイヤーは24時間起きて動き続けられる、って誰に聞いたの!? い、いや、専用のVRデバイスを使えばたしかに――って、だから私には無理です! 私、じつは病人で、入院を――いや、嘘じゃないんです、逃げようとしてるわけじゃないんです、信じてください~!

……つづく?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ