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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第一章 制限時間内に目標を殲滅せよ!
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クエスト7 おじーちゃん、これまでの『お使いクエ』を語る

『 ミナセ / 戦士見習いLv.1


 種族:ドワーフLv.1

 職種:戦士Lv.0

 性別:女



 基礎ステータス補正 ▼



 装備:見習い服、見習い冒険者ポーチ、見習いローブ



 スキル設定(3/3)

【強化:筋力Lv.1】【交渉術Lv.4】【収納術Lv.4】



 控えスキル

【暗視Lv.1】    』




 美晴ちゃんと志保ちゃんを伴い、彼女たちの『チュートリアル1:冒険者登録をしよう!』をこなすため冒険者ギルドへと向かう道すがら、まずは儂の現在の≪ステータス≫を二人に見せた。


「……ねーねー、志保ちゃん? 【交渉術】ってNPCと話せるだけのスキル、だったよね? それをおじーちゃんが2日でレベルを4まで上げてる件について……」


「それと【収納術】は――あった。『【収納術】はインベントリの容量が増えるスキル』?」


 果たして、儂の≪ステータス≫を見て美晴ちゃんは呆れ顔になり、志保ちゃんは≪掲示板≫あたりでも覗いて確認したのだろう。そのあとで、表情こそ大した違いはないが、それでもどこか呆れているような雰囲気を纏って儂を見つめた。


「……ふむ。なにかおかしかったかの?」


 首を傾げる儂。それに二人は一度顔を見合わせてから、


「そもそも、おじーちゃんはなんで2日あってレベルが上がってないの?」


「【交渉術】はともかく、【収納術】のレベルをここまで上げているのがとても不思議なのですが……」


 ふむ。そう言えば、この≪ステータス≫の表示では【スキル】以外のレベルが最初期のもののように映るのだな。


「じつのところ、二人と合流するまでは〈運び屋見習いLv.5〉だったんじゃがの」


 ――あの日、物資運搬の依頼を受けることになった儂に『山間の強き斧』の頭脳労働担当アットマーが勧めた『転職』。その転職先に勧められたのが〈運び屋〉だった。


「…………ねーねー、志保ちゃん? おじーちゃんの言ってる〈運び屋〉っていうの、職スレで検索したら『荷物の運搬によって経験値を得る便利職』って出てきたんだけど? 『戦闘職』でも『生産職』ですらないんだけど?」


 儂の言葉でなぜだか呆れの度合いを強くする美晴ちゃん。そのセリフから彼女もまた≪掲示板≫で検索して調べたうえで呆れているようなのだが、


「……なるほど。つまり、ミナセさんは『お使いクエ』をやっていたんですね」


 逆に、どうやら志保ちゃんの方は儂の今日までの行動をおおよそ察したようだった。


「うむ。じつは、ギルドに登録するやプレイヤーのインベントリをあてにした物資運搬の依頼をされての。その運びさきが遠く、また道中が危険ということもあって儂は複数人のNPC冒険者に道中を護衛してもらっていたのじゃが……」


 まったく、なにをどのように見間違えたら『逆ハー』などと誤解するのやら、と肩をすくめて告げる儂に、「あー、それで〈運び屋〉……」と納得の声をあげる美晴ちゃん。


 志保ちゃんも「なるほど、〈運び屋〉なら戦闘せずの『お使いクエ』でもレベル上げが可能ですね」と頷いており、やはり二人ともがそれなりにAFOの仕様を理解しているのだと知れた。


 それと言うのも、AFOでは『〈職〉は、その〈職〉ごとに対応した行動によって経験値を蓄積させていき、レベルを上げられる』からである。


 それは、たとえば〈戦士〉であれば武器をもっての戦闘であったり。〈魔法使い〉であれば魔法を使うことで経験値を蓄積させていく、といった具合で。今回、アットマーが儂に勧めた〈運び屋〉は『たくさんの荷物を運ぶか、この世界にとって重要な物を運送する』ことでレベルを上げられる、らしい。


 ゆえに、今回の依頼のような『下手な戦闘行為厳禁、かつ大量の荷物運び』の場合、『戦闘不要でもレベルが上がる』というのは、レベルの上昇で手に入るSP――消費することで『任意のステータス補正を増やせる』それを『筋力』にふることでインベントリの容量をさらに増やせることもあわせて極めて合理的であり。加えて、〈戦士〉が『武器戦闘に対してプラスの補正がかかる』という特性に対して〈運び屋〉は『運べる荷物の量が増え、運送行為にプラスの補正』という特性をもち、ただ〈運び屋〉に就くだけでインベントリの容量が増えたこと。そして、この〈運び屋〉に就いて運送行為を続けることで【収納術】という『持てる荷物の量が増えるスキル』が得られることも開始早々に彼が転職を勧めた所以か。


 ……もっとも、『SP消費で任意のステータス補正を上昇』というのはプレイヤーだけで。NPCの場合は『レベルアップでステータスが上昇する』という程度の認識であったようだが、それはさておき。AFO開始直後で手持ちが乏しかった儂の懐事情を慮ってか依頼終了後の〈戦士〉への再転職費用は出すとまで言ってくれたのだ。そのときの儂が断る理由が思いつかなかったとして、とくに不思議もなかろう。


「うーん……、でもでも、それならやっぱり『パワレベ』してもらうべきだったんじゃないかな?」


 そう不思議そうに問いを重ねる美晴ちゃん。その『パワレベ』というのがわからず首を傾げる儂に、「『パワーレベリング』の略称で、要はレベル上げの手伝いのことです」と軽く説明してくれる志保ちゃん。つまりは、『儂のレベル――この場合は〈職〉の方ではなく素体レベルの方だろう――を上げるのを彼らに手伝ってもらった方が良かったのでは?』という問いかけなのだろうと理解した儂は、なるほど、と内心で首肯する。


 なにせ、AFOの仕様上、素体レベルの上昇によって得られたSPで上げたステータス補正は何の〈職〉に就いていようとも反映される。


 逆に、〈職〉のレベルアップで得られたSPは、その〈職〉に就いているときにしか使用できず。〈職〉ごとにSPを消費して上昇させたステータス補正も、これまたそれぞれの〈職〉に就いているときにしかステータスに反映されない。


 ゆえに、〈運び屋〉のレベルをどれだけ上げ、SPやステータス補正を増やしたところで〈戦士〉などの他の〈職〉に就けばステータスに反映されず。こうして〈戦士〉へと再転職することがわかっているのなら彼らに素体レベルの上昇――つまりは『モンスター退治による経験値稼ぎを手伝ってもらべきだったのでは?』という指摘は半ば正しいと思える。


 が、しかし。


「いや、じつを言えば、彼らにもそれを提案されたのじゃが……儂はそれを断った」


 なぜなら、


「儂としては、できるなら美晴ちゃんたちとレベル上げをしたかったのでな」


 はじめての戦闘。はじめてのレベル上げは、孫たちとしたかった。


 ゆえに、今もって素体レベル1。


「あー……うん。ち、ちなみにおじーちゃんの言う通りなら『お使いクエ』って安全な割に稼ぎは良いんじゃない?」


 今、いくら持ってるの? と、どことなく恥ずかし気な様子の美晴ちゃんに内心で首を傾げつつ、「3780Gかの」と≪メニュー≫のなかの『所持G』の項を開きながら返す。


「最初の――いわゆる『行き』のクエストで1200G。次いで『帰り』のが2000G。加えて、道中で儂を護衛してくれとった者たちが狩ったモンスターの素材を運搬して、それを売った代金が580Gじゃったか」


 これは良い稼ぎなのかの? と首を再び傾げる儂に、


「……はい、かなり良い稼ぎかと」


 と、やはり感情の色に乏しい顔をこちらに向けて、志保ちゃん。


「ここ、アイギパンの冒険者ギルドで出されている依頼で最初期に受けられそうなのは『小兎狩り5羽100G』、『森狐狩り5匹200G』の討伐依頼と『薬草採取』の一袋30Gなので……ミナセさん、下手したら現在の個人収入額でトップかも?」


「しかも、素体レベルが1のまま、モンスターとの戦闘0でってことでしょ? ……書き込むと≪掲示板≫荒れそうじゃない、これ?」


 ふむ。そういうものなのかのぅ?


「なんにせよ、じゃ。さきにも言うたように、儂はその物資運搬の依頼を受けて護衛のNPC冒険者とともに行動してはいたが、これといって他者に誇れぬ振る舞いなどはしていないとわかってくれたかの?」


 もっとも、道中であらかたの荷物を持てるようになってからは儂自身も彼らに背負われ、『荷物を入れた荷物』状態じゃったが、と肩をすくめて冗談半分といった雰囲気をつくって告げれば、美晴ちゃんは「あはは! おじーちゃん、『アイテムバッグ』扱いだったんだ」と笑い、志保ちゃんにしても表情の変化こそわかり難いもののわずかに苦笑するように口もとが動いたのが見えた。


 ……ふむ。さて、これで誤解もあらかた解消した、と判断して良いかの?


 で、あれば――


「ときに、二人は【スキル】はどうしたのじゃな?」


 儂のことは話した。ゆえに、ここからは彼女たちのことを聞こう、と話をふる。


「あ、わたし、『練習用武器』は『槍』で【槍術】とったよー。で、もう一つの【スキル】はおじーちゃんや志保ちゃんと相談してから決めようと思って、まだ『チケット』のままー」


 からり、と。空気を入れ替えるがごとく明るい笑みを浮かべて美晴ちゃん。


「私は、みはるんが『獣人』で〈斥候〉、ミナセさんが盾になってくれると学校で聞いていたので【属性魔法:風】と【付与魔法】の2つにしました」


 こちらも表情こそ変わらずぼんやりとしたものだが、纏う雰囲気だけは明確に真面目なそれへと変えて志保ちゃん。


 片や、美晴ちゃんの選択が『経験者の意見を実際に聞いてから』という判断のものであるのに対し、志保ちゃんの【スキル】選択は明らかに自身のスタイルを意識してのものだろう。


「ふえー……【属性魔法】に【付与】?」


「そう。【属性:風】は『敏捷』のステに対応してて、【付与】持ちの私の魔法で味方の素早さを上げたりできるってわけ」


 要は、バフは任せて、ってこと。そう、気持ち胸をはるようにして美晴ちゃんに言う様は、さすがはβ版をプレイした経験者。【属性】付きの魔法と、それに対応したステータスのことなど、同じ【付与魔法】もちの〈魔法使い〉――『山間の強き斧』のアットマーとの話では聞けなかった情報だ。


「ふむ。【強化】系統の【スキル】をとらなかったのは?」


「……『チケット』がもう1つあったら【強化:魔力】は欲しかったですね」


 でも、【強化】系は大器晩成タイプなので、と。使用により経験値を蓄積させるものとは違い、セットしたままプレイした経過時間によってレベルアップするタイプの【スキル】ゆえ、敢えて選択しなかったと語る志保ちゃん。


「ああ、でも3つ目は【回復】という選択もありでしょうか?」


「あー……わたしの犬の『獣人』と『ドワーフ』のおじーちゃんは、そろって魔力の裏ステが低いって話だもんねぇ」


 そう語りあう二人は、たった48時間ほどプレイしただけの、この手のゲームに不慣れな儂よりAFOの仕様に詳しそうで。なんとも会話についていくのにすら難儀する現状は……すこし、寂しくはあった。


「いずれは【回復】もパーティに一人は欲しいけど……まあ序盤は『ポーション』で賄えると思うよ? 私の魔法は『被弾率の低下』を念頭においたものでもあるし」


「なるほど! 当たらなければ【回復】要らず、なんだね!」


 わたしは【スキル】どうしよっかなー? と、頭を捻りつつ、ギルドの受付に並ぶ美晴ちゃん。


 彼女たちの交わしあう言葉や≪掲示板≫を覗いていたと知れるさきのやりとりを思えば、あるいは儂にできる助言など無いのかも知れんが――


「〈斥候〉なら、おそらく『チケット』を使わずとも【察知】、【聞き耳】、【忍び足】といった最低限必須とされる【スキル】は行動経験値で取得できるじゃろうからの。いっそ『複合スキル』を取りにいくのを目指すのも面白いやもしれんぞ?」


 ――まぁ、それならそれでかまわない。


 儂は別段、情報通を気取りたくて先んじてAFOをプレイしていたわけではなく。ただ、あとで合流する孫たちと一緒に楽しめれば、それで良かったのだ。


 ゆえに、


「はい? 『複合スキル』?」


 儂の持つ情報に価値が無くともかまわない――と、思っていたのだが、


「……ふむ。もしかしたら≪掲示板≫とかでは違う呼び方をしているのやも知れんがの。要は『複数の、特定の【スキル】をもっている』ことで取得できる『幾つかの【スキル】の効果を複合させたかのような【スキル】』のことを、知り合いのNPCはそう呼んでいたのじゃが」


「…………志保ちゃん?」


「……だめ、【スキル】系のスレにも情報無い」


 どうやら、儂にも彼女たちに役立てる情報があったらしい、と。そのことをわずか以上に喜んでいるらしい儂は、


「おじーちゃん、おじーちゃん! なにそれ、くわしく!!」


「わ、私にも、できれば教えてください……!」


 ――どうやら、儂自身の思っていたよりずっと彼女たちとのAFOを楽しみにしていたようじゃった。

SPやステ振りに関しましてのご指摘を受けて少しだけ加筆修正。解り難いようでしたら気軽にご指摘などくだされば幸いです。

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