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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
幕間 第三章終了時までの短編など
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チュートリアル とある廃神ちゃんの場合

ブクマ1000件突破感謝短編です。

 『ガチ勢』や『廃人プレイヤー』、『攻略組』に『最前線組』など呼び名はいろいろあるけど……たぶんオレは、『それ』だ。


 家には長時間ログイン可能なVRデバイスがあって、試験版からAFOでのプレイ時間は多い方だと思うし。β時代じゃあ『ヒーローズ』の連中にこそ遅れをとったが、ソロプレイヤーの中じゃ頭一つ抜けてるレベルで終えられたと思う。


 だから、正規版AFOでだって上位陣になる。なってみせる。そのために、βでは〈戦士〉だったけど、正規版では〈狩人〉を初期職に選択した。


 ……何もわからない状態からスタートだったβでは、ほかの多くのプレイヤーと同じく『とりあえず戦士』チョイスでダンジョンのトラップに苦労させられたものだけど。〈狩人〉は、主武装が『弓』以外選べない代わりにソロプレイヤーなら欲しいと思える【スキル】が揃ってるからね。それ以外の、正規版で追加された〈職〉にも興味は尽きないが……〈職〉選びで冒険はしたくないから〈狩人〉が無難だろう。


 そして、初期の【スキル】は【強化】の『器用』、『敏捷』、『丈夫』をそれぞれ『スキル変換チケット』2つとβからの引継ぎ特典で1つ取得した。……≪掲示板≫じゃあ【強化】系の【スキル】を2つ以上持ってる奴は地雷、なんて書き込みもあるけどな。試験版みたいな少ない時間しか出来なかったのと違って正規版なら【強化】系の【スキル】を複数持つのは基本になる――と思う。少なくとも未来では。


 オレが思うに、【強化】系の【スキル】は『サブ職』みたいなもので。それぞれのレベル1つごとにSP1つぶんの強化になるのだから、『スキル設定』に空きのあるときや休憩時なんかにはセットして少しでもレベル上げしておくべきで。3つあれば『レベル1の段階で総合レベル3つ分』、『レベル2の段階で総合レベル6つ分』上がった状態になれるのだから、1つだけ取得するのなら複数取得して同時にレベル上げするべきだと思う。


 ……ただ、≪掲示板≫で言われてる『スキル変換チケットB』が手に入る【スキル】の合計レベル50以上を早期に目指すためには、たしかに【強化】系の【スキル】は邪魔だろうし。幾ら総合レベルに上乗せできる【強化】系の【スキル】でも戦闘補助系の【スキル】――【剣術】とか【盾術】みたいなの――ほどモンスターとの戦闘を有利にできるものではなく。『スキル設定』できる最大数を増やせるようになる種族レベルと〈職〉のレベル10以上を早期に成すためには、最低でも1つは戦闘補助系の【スキル】は取得しておくべきだとオレも思う。


 だから――っていうんじゃないけど、正規版スタート直後は、選べる街のなかでも比較的慣れている『迷宮ダンジョン』という狩り場が近いだろう迷宮都市『エーオース』を選択し。βと違って、当たり前だけど『街』として最低限の家屋を設定したのだろうそこで少しばかり迷いながら『冒険者ギルド』を探し。……ゲーマーのさがか、微妙に穴あき状態の『ミニマップ』が気になった、というのもあって、序盤の狩り場として良さ気な場所が発見されるまで『エーオース』の街なかを≪掲示板≫を横目にぶらぶら散歩。


 『迷宮都市』というだけあって最初に行けるダンジョンが4つもあったらしいことは予想外だったけど……多数の犠牲者のもと、一番レベルの低いだろうダンジョンを特定したようで。『ミニマップ』の穴埋め作業にも飽きてきたこともあり、早速、ダンジョンに凸ることに。


 ……ちなみに、初期配布で貰った『練習用武器交換チケット』で選んだ練習用武器は『槍』。


 これは〈狩人〉の〈職〉には対応していない――というか、〈狩人〉は弓を使った戦闘を補助する【弓術】以外の【スキル】は取得できないから、槍をどれだけ使用しても【槍術】は得られない。が、βではずっと槍を振り回していたから戦闘補助系の【スキル】のない最初期の装備として槍を選ぶのは、そこまで間違った選択だとは思えない。


 ≪掲示板≫によれば、最初期から持っている100Gで買える武装が『冒険者ギルド』にあるというし。とりあえず、初戦闘のときだけは練習槍こいつを振り回すことにした。


 その結論として――……やっぱ、『練習用武器』はダメだ。


 まぁ、オレが乱戦中にゴブリンの攻撃を練習槍で受け止めちゃったのも原因だろうけど……それでも、まさか初戦でぶっ壊れるとは思わなかった。


 ……ちっ。まいったね、本当に。


 最弱だろうゴブリンを4体相手するだけで壊れる武装じゃあ、いくら耐久値が自動回復するといっても効率が悪すぎる。……と言うか、まさかゴブリンを素手でブン殴るはめになるとは思わなかったぞ、おい。


 本当は100G稼げるあてを見つけてから冒険者ギルドで買えるっていう装備に買い替えるつもりだったけど……仕方ない。あるいは、正規版では冒険者ギルドで100G装備を買ってからがスタートなのかもしれない、と思うことにして。〈狩人〉でやっていくうえで不可避だろう、弓使いとしてのデビューが早まったと思って『量産武器:小弓』を買うことに。


 あとは小弓こいつが壊れるまえに『魔石』を1つでもドロップすれば良いんだが……試験版のときと同じで、たぶん『レベルの低い相手ほどドロップ率が低い』仕様のままだろうから、ダンジョンの1階で周回してるだけじゃあ厳しいかもしれない。


 ――なんて不安と不満を抱えて、しばらく最弱のダンジョンの1階をぐるぐる周っていたわけだが。


 小弓が壊れる頃には、『魔石』が手に入って。その『魔石』を売って小弓を買って。また小弓が壊れるころに『魔石』をどうにか拾って。売って。買って。壊して。……それを繰り返して。【弓術】ほか、【罠】以外の〈狩人〉で取得したかった【スキル】をすべて取得できた頃に、また思った。このままじゃダメだ、と。


 大器晩成を覚悟して、意地で【強化】系の【スキル】3つをセットし続けていたが……とりあえず、〈職〉のレベル10まで1つ、2つは戦闘補助系の【スキル】をセットして、とにかく自転車操業で資金の溜まらない現状を打破しよう、と。それに加えて、弓が合わない、ってのもあって――AFO稼働2日目にして、オレは転職を決意した。


 ……なんて言うか、試験版だと〈職〉の変更なんてしたくても出来なかったからな。正規版では出来る、ってのは知っていても『今の〈職〉に不満がある』から『転職しよう』に思考が行かなかったと言うか……今の〈職〉で如何に対処するか、ってのが念頭にあって弓に対する不満も我慢し続けてしまったが、≪掲示板≫を見るに正規版で初出の〈職〉に関する情報もいろいろとあがっていたし。ダンジョン内のゴブどもと違ってフィールドのモンスだと確定でドロップアイテムを得られると知って、転職を決意。


 選んだのは、オレの慣れている槍が有効に働く【槍術】が取得できて、現地のモンスを倒した際に高く売れる『死骸系』のドロップアイテムを得られるようになる【漁】を取得できる戦闘職――〈漁師〉。


 この時点で種族レベルも3まで上がっていたから、【強化】系の【スキル】3つもあって【槍術】を得るまで魚人を狩るのに練習槍だけで戦えたが……なんと言うか、『魚人5体撃破で100G』という依頼形式の報酬が本当にありがたい。エーオースの冒険者ギルドだと無かったと思うからな、依頼これ。レベル1ゴブだと5体倒しても『魔石』を拾える可能性低いし。


 なにより、群れを相手に孤軍奮闘が基本のダンジョンと違って、1対1を選べるフィールドでの戦闘は新鮮で。あらためて、ダンジョンがパーティ戦推奨なのがよくわかった。


 で、練習槍を壊してからはキルケーの冒険者ギルドで『量産武器:槍』を買って。【強化:丈夫】を外して【槍術】をセットしたうえで魚人狩りを再開。【漁】と【水泳】を得てからは、戦闘中に限って【強化】系の【スキル】すべてを外して。とにかく『死骸系のアイテム』を売って装備を充実させていき――AFO稼働3日目までは、本当に順調だった。


 この時点でのオレの主戦場だった『蒼碧の洞窟』に、まさか正体不明の敵性存在が現れるとは……。≪掲示板≫を見ても『相手』を見たってのは居なかったし。やけに気配隠蔽系の能力が高いのと攻撃力が馬鹿げたレベルの火力だってことで『潜伏不意打ち型のフィールドボス説』があがってたが……なんにせよ、オレにはどうしようもない。


 もちろん、ゲーマーとして『誰も正体を知らない敵』とか『初出のフィールドボス』を初撃破するのを狙いたい気持ちはあった。が、オレの『設定スキル』的に『潜伏ハイド系のモンス』は相性が悪い。【強化】系の【スキル】2つと【槍術】に【水泳】と【漁】が基本形で【聞き耳】や【察知】などの索敵系の【スキル】は持っていてもレベルが低いし、オレは回避型のアタッカーだから不意打ちで一撃死確定という……。


 そんなわけで、これを機会にオレは≪掲示板≫で話題になってた称号【七色の輝きを宿す者】を取りに行くことに。


 やはり、武装の耐久値を視たり、『修復』や『強化』のためにも〈鍛冶師〉と【鍛冶】は欲しい。プレイヤーメイドの装備を気軽に買えるようになる≪マーケット≫を使えるように〈商人〉と【鑑定】も。ダンジョンでの狩りを再開するつもりだから〈探索者〉に転職ジョブチェンジできるようにしておきたいし、と。これに最初の〈狩人〉に、〈漁師〉で5つが確定として……あとはレベル上げが楽そうという理由で〈戦士〉と〈斥候〉をレベル1まで上げて、さっさと称号【七色の輝きを宿す者】を取得ゲット


 奇しくも≪掲示板≫で〈職〉の合計レベル50以上でSP1を得られるという情報もあがっていたので、〈狩人〉と〈探索者〉に〈戦士〉、〈斥候〉を順々にレベル上げすることにして――気づけば、『洞窟に潜む正体不明の敵性存在』こと『亡霊猫ファントム・キャット』なんて呼ばれてるPKは退治だか説得だかされて。件の『洞窟』最奥で『蒼碧の水精遺跡』なんていうダンジョンが見つかった。


 ……いや、正直まいったね。


 自称ガチ勢の廃人プレイヤーとして、こうまで後塵を拝するってのはキツイ。件のPK『亡霊猫ファントム・キャット』の所業を止めて、新しいダンジョンを見つけたのが仮想好敵手として設定していた『ヒーローズ』の『主人公リーダー』だったってのがまた……。β版以上に間を開けられたみたいで、かなり心にキたぜ……。


 だけど、今日まで――AFO稼働5日目まで、オレは『水精遺跡さいぜんせん』の攻略のための準備運動をし続けたんだ、と。そう思うことにして、オレは『蒼碧の洞窟』に帰還することに。


「ははッ! 帰ってきたぜ、『蒼碧の洞窟』!!」


 そんなことを人知れず零しながら、脇に浮かべた≪ステータス≫をちらり。



『 廃神あすたろっと / 初級狩人Lv.26


 種族:人間Lv.12

 職種:狩人Lv.14

 副職:漁師

 性別:女



 基礎ステータス補正


 筋力:0

 器用:10

 敏捷:16

 魔力:0

 丈夫:0



 装備:初級冒険者ポーチ、劣魚人の鱗鎧+1、蒼蝙蝠の投槍+2


 スキル設定(5/5)

【強化:器用Lv.1】【強化:敏捷Lv.1】【強化:丈夫Lv.1】【水泳Lv.9】【強化:筋力Lv.1】



 控えスキル

【聞き耳Lv.7】【察知Lv.8】【忍び足Lv.8】【潜伏Lv.4】【槍術Lv.10】

【漁Lv.8】【鑑定Lv.2】【鍛冶Lv.2】【槌術Lv.2】【罠Lv.2】



 称号

【七色の輝きを宿す者】   』



 ……う~ん。やっぱり【スキル】の合計レベル50以上で貰えた『スキル変換チケットB』を使ってまで【強化】系の【スキル】を増やしたのは『やりすぎた?』感はあるけど、ここで【強化】系の【スキル】を増やさないのはオレの初期思想に反するってことで、意地で選択した。


 でも……残る1つの【強化:魔力】は要る、か? ただでさえ軽装回避型のスタイルだから『丈夫』が腐り気味なのに、魔法使えないオレが『魔力』の補正を増やしてどうするんだ? って疑問はあるが……ここまで来たら無駄でも取るべきだよな、【強化:魔力】。


 それに、最初の構想では要らないと思ってた【強化:筋力】が、装備の質を向上させるのやTP増加によるアーツの使用回数増加で思いのほか役に立ってるし。次にどうやれば【強化】系の【スキル】を得られるかわかんないけど、取得する頃には【強化:魔力】だって役に立ってくれている……はずだ。たぶん。


 とにかく、


「――お? あの子、可愛くね?」


「あのロン毛のロリっ子? ……いや、さすがに中学生以下はやめとけよ」


 ……ちっ。やっぱ、話題の『水精遺跡スポット』なだけあって無駄に人が多いな。オレが狩り場にしてた頃は閑古鳥が――って、誰が中学生以下だコノヤロー。


 たしかに鏡を見る度にオレも『スゲェちんちくりん』だと思う。が、少なくとも中学までは……背の順で一番前を譲ったことはないが、しっかりと成長してたぞ? ゆっくり、着実に。……ミリ単位、グラム単位でだが。


 し、しかし! 今のオレには成人したことによる大人の色気ってやつが――


「ん? もしかして、あの白金髪プラチナブロンドの幼女も2姫のリアフレとかか?」


「ああ、なるほど。じゃあ、あの碧眼幼女もリアルJSか?」


 意外と十二歳さいねんしょう組多いな、AFO――なんて言いつつオレのことを生温かい目で見るプレイヤーに、さすがにブチっとなる。


「だ・れ・が! 現実リアル、女子(J)小学生(S)だゴラァ!! オ・レ・は、女子(J)大生(D)だッ!!」


 覚えとけよボケェ!! と、両手を上に伸ばして威嚇しながら吼えたのに、なんで観衆の視線が余計に生温かいものになってんだよ!?


 ……くそ! だからオレは他人ひとと関わりたくないんだよ、バカヤロー!





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[一言] 廃神ちゃんに生暖かい目を送る……がんばえー!
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