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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
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チュートリアル 頂上決戦!? 自称・最強VS他称・最強

自称・最強くん視点

 ――すべては『あの日』から狂いだしたんだ。


 それは、あの頃の僕からしたら『優勝して当然』の大会で。実際、決勝で『あいつ』とやりあうまでは、僕の敵なんていなかった。……ついでに言えば、あのときの戦いにしたって、僕は決して『あいつ』に劣っていたわけじゃない。たまたま、偶然に、奇跡的なことに、『あの日』の決勝戦では『あいつ』の方に『運』があった。それだけだ。


 なのに、『あいつ』――『大地・A・ローゼンクロイツ』は……! 優勝後のインタビューで安っぽいお涙頂戴のコメントなんてしやがって! おかげで優勝候補筆頭だった僕は、それ以降、単なる『かませ犬』扱いだ! あんな奴の物語を彩る、ただの負け役扱いとか……ふざけんな!


 くそ! なにが『主人公』だ! お前なんか、ちょっと現実世界でも『見れる顔』だったってだけの、ただのボンボンだろ!? 甘やかされて育った、苦労知らずのクソガキだろう!?


 それなのに、世間の馬鹿どもはあんな奴を持ち上げやがって……!! どいつもこいつも頭沸いてやがる!!


 ――なんて思っていた僕だったが、少なくともAFOのβ版で奴を見つけたのは偶然だった。


 と言うより、昨今では珍しいほど当選倍率の高かったAFOの試験版をプレイできるようになったのは、僕にしたって大変で。たまたま偶然、当選券を『快く売ってくれる』っていうプレイヤーが見つけられなかったら、きっと無理だったろう。


 それなのに、あいつと来たら普通に試験版に当選しやがって……! どころか、他ゲーでつるんでた連中まで平然と連れてきやがって、本当に不愉快な奴だ。


 あと、試験版で不愉快と言えば、あのリアルJSらしい無表情女もだ! あのガキ、僕の誘いは断っておいて何であんな奴と一緒にプレイしてんだよ!? お前、ソロでやるんじゃなかったのか!? なんのためにテメェを孤立させるよう大枚叩いて何人ものプレイヤーを雇ったと思ってんだよ!? ふざけんなよ、くそ!


 ……ああ、ムカつく。


 なにが『主人公』だ。なにがクラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』だ! お前なんてなぁ、『あの日』、たまたま僕に勝てただけの、ちょっと運が良かっただけのクソガキじゃねーか。それが何を、僕を差し置いて『AFO最強プレイヤー』なんて呼ばれてんだよ。ふざけんなよ。本当に、どいつもこいつも頭おかしいんじゃねーの?


 まったく……これは、わからせてやる必要があるよなぁ。


 とりあえず、正規版ではいつになく気合を入れて――具体的には、いつもの何倍もの額を払ってアバターを造らせ。当面の間、一緒に活動することになるメンバーを雇って――あいつのクランに対抗して、僕の、僕が如何に凄いプレイヤーなのかを知らしめるためのクランを――『月光ムーンライト・聖騎士団パラディーン』を立ち上げた。


 って言っても、あのガキが造った『薔薇園』と違って、僕のクランは完全な少数精鋭。いつか奴らを見返し、有象無象どもに誰がAFO最強かを知らしめるために、僕が考えた育成プランでもって『1日最低16時間ログイン』っていう超・超・超廃人プレイを強要して鍛えた。


 それから、何人かのプレイヤーを敢えて奴のクランに入団させて、逐一、連中の動向を探らせた。……くくく! 賢い僕はお前らなんかと違って情報の大事さを知っているからな! せいぜい人数だけは多い『薔薇園』の奴らには、良い情報源とアイテムの供給源として活躍してもらうさ。


 それで……まぁ、機会があれば、スパイとして送り込んだ奴らを回収しても良いか、とも思っていた。って言うか、思ったより人数の多さっていうのは便利そうだからな。有象無象でも、やっぱり数が集まればそれなりに使えるってことだろう。


 だから、来たるべきときには、奴のもとに集まった愚者どもを根こそぎ奪ってやるのも良いか、と。そんなふうに思っていた僕に、スパイの一人が変な情報を寄越してきた。


 曰く、『攻略組』の『最前線』メンバーであるところの、奴が率いるパーティ全員で一人の少女を――それも、≪掲示板≫なんかでは『姫プレイ野郎』なんて呼ばれてた、リアルじゃ病院に長期入院中らしい女子小学生をわざわざパワレベした挙句、PKKのために『蒼碧の洞窟』まで一緒に行った、だぁ?


 ……意味がわからない。


 いや、あいつが馬鹿で愚かで、どうしようもないのは知っていたが……なんで『迷宮攻略専門』を掲げるお前たちがPKK? そりゃあ、称号【粛清を行いし者】なんて珍しいからな、欲しがるのもわかる。まぁ、僕みたいに頭の良い人間からしたら、いちいち野生のPKなんて狩りに行かなくても『交渉』するだけで『PKを作って、それを殺す』だけの『作業』になるんだけど……あいつは、いったい何を考えてやがる?


 ――そう、ここで『引っかかり』を覚えて詳しく調べるように指示した僕は、さすがである。


 奴らが狙っているPKが、当時は正体不明の、『最強』のPKなんて呼ばれている奴で。どうにも≪掲示板≫なんかで語られる『物語』は、如何にも奴らが好きそうな『お涙頂戴』の、誰が見たってわかるだろう『嘘っぱち』の作り物で。なるほど、奴らはまた無駄に人気を高めるために『俳優エキストラ』として、当時はそれなりに有名だった女児プレイヤーを雇ったってとこか。


 いや~、そうまでして名声が欲しいのかねぇ。ホント、呆れた執念だけど……お前ら、『攻略組』だよな? なに、もしかしてエーオースのレベル15開始ダンジョンが全然攻略できないからって、そんな『お芝居』までして人気取りに走ったわけ?


 ……無いわー。


 有り得ない。馬鹿じゃねーのか、こいつら。……っていうか、そんな見え透いた『お遊戯』を、さも真実のように語ってる連中が≪掲示板≫に一定数居るってのがまた、救えない。本当に、どいつもこいつも頭沸いてるわー……。


 ――ここは、やっぱり真の『最強』たる僕が、愚民どもの目を覚まさせてやる必要があるね。


 そう決意を新たにした僕だけど……件の『俳優エキストラ』として雇われただけのJSの動きが妙だ。


 試験版では、その奇天烈な造形と語りでもって話題になった〈鍛冶師〉の『デスティニー@アキサカ』に取り入って≪掲示板≫に珍妙な格好をした画像データを貼って、馬鹿な男どもを釣ったり。かと思えば、海辺の街を拠点にしてる最大クランの片翼――クラン『漁業協同組合・おとこ組』の奴らを堕として味方につけて……。当然、あいつの『薔薇園』だってこのガキの味方だろうし……いったい、何が狙いだ?


 まさか、とは思うが……こうまで必死に人気取りして、大多数のプレイヤーを味方につけての狙いは――僕と同じ、『AFOの頂点』か!?


 ……くそ! それじゃあ、奴なんかよりよっぽど邪魔じゃないか!


 僕の考えた、クラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』の転覆計画は、完璧だ。……でも、ここまでノーマークだった『姫プレイ野郎』に関しては完全に後手に回ってるぞ、どうする!?


 厄介なのは、このメスガキが『クラン』なんていう縛りに囚われず、所属した『薔薇園』だけでなく他所のクランすら手玉にとっているところだ。……ったく、仮にも『人数だけはAFOのなかで一番多いクラン』の代表のくせに、あの馬鹿は! なに、僕が動くまえにメスガキなんかに騙されて良いように使われてんだよ!?


 ……くそ! ホント、どいつもこいつも馬鹿ばっかりだな!!


 とにかく、このメスガキの――『ミナセ』ってプレイヤーネームの『姫プレイ野郎』の動向は要監視対象にして。まずは、直近に迫ったイベントのために1つでも多くレベルを上げる。それしかない。


 ――そして、ついにイベントが開始された。


 そう、このAFO最初のイベントこそが僕がずっと狙っていた、真にAFOの頂点を決める舞台であり、この日のためにいろいろと画策してきたわけだけど……くそ! クラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』への仕込みはともかく、あの『姫プレイ野郎』の動向が、やっぱり意味不明だ!


 そもそも、イベントが始まる直前にクラン『漁業協同組合・おとこ組』を集めて出迎えさせる、って――お前、そこまでやるのか!? ここまで徹底した人気取りっぷりは、敵ながら天晴れというか、一種の畏怖さえ覚えるぞ……。


 しかも、このガキの固定パーティっていうのが、また……。AFOでも極少数だろう、最年少リアルJS美少女――に、外見アバター上は見える――を集めやがって。そこに現実世界でも有名なVR戦技選手である『水無瀬の寵姫』までイベント開始と同時に呼び込みやがって……この野郎、どこまで本気で頂点を狙ってやがる!? ぼ、僕だって、さすがに『あの』水無瀬家の姫にまでは手を出せないって言うのに……。


 と、とにかく。僕の狙いは、こいつじゃない。……そうさ、あくまで狙いは、あのエセ主人公だ。


 だから、そう。このガキの狙いがAFOの頂点なら……くれてやる。その代わり、クラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』と、その代表メンバーはお終いにしてやる!


 だから――くそ! 邪魔すんなよ、クソガキ!!


 せっかく連中の動向を探って、先手、先手で僕が『薔薇園』の名声を落としに行っているのに、このガキは……! なんでそこでイベントとは関係ないエーオースのレベル15開始ダンジョンを攻略しに行く!? そのうえ、なんでお前みたいな『姫プレイ野郎』の名前が、僕らが苦労に苦労を重ねて刻んだイベント最難関ダンジョンの『最速走破者』なんて場所にある!?


 しかも、単独走破だと!? 有り得ない!! 『最多撃破数』や『総合ポイント』のランキングにしたって、そうだ! 普通に考えてイカサマをしているのは明白で――馬鹿にしているのか、このガキ!!


 それで、なんで≪掲示板≫の連中は、未だにこのガキの肩をもつ!? 人がせっかく多くのプレイヤーを雇って『薔薇園』の連中共々『姫プレイ野郎』の評判を落としにかかってるのに……なんで、ことごとく削除されてやがる!?


 ……くそ。ムカつく。


 できることなら、このガキもAFOから消し去りたいところだが……ここまで有象無象を手玉にとって、≪掲示板≫というプレイヤー間における『世論』を押さえられたら仕方ない。


 だけど――もはや、クラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』の失墜は成った。


 それこそ、あらかじめ『薔薇園』に派遣していた連中はもちろん、途中から交渉してきた元・幹部だって言う女プレイヤーが良い働きをしてくれたからな。今回のイベントで奴らは何の実績も残せずに、最後は多数のプレイヤーのまえで盛大にイベントボス討伐を失敗したんだからな。ざまぁみろ、ってやつだ。


 あとは、買収したプレイヤーに襲わせて、あいつが特に気にかけてるらしい妹や、『薔薇園』で唯一【属性魔法:闇】を持ってる女プレイヤーをぶっ殺してやったのに、それに激高しながらも『赤点野郎』にできなかったのは残念と言えば残念だったし。この時点で『総合ポイントランキング』で3位になってやがった『姫プレイ野郎』を『教会送り』にしてやろうとしたけど……ちっ!


 ああ、もう仕方ない。こうなったら、本当に不本意ではあるけど……僕自ら、お前みたいな毒婦を迎えに行ってやるよ。


 ほら、これでお前の狙いだったAFOの頂点も掴めるだろう? なにせ、僕たち『月光ムーンライト・聖騎士団パラディーン』こそが、今のAFOの頂点なんだからな。そこに、『チート』だか『信者』だかを使ってだろうけど、いろいろと『偉業』を成し得たお前が加われば、名実ともに僕たちが頂点だと誰もが認めるだろうさ。


 ――なんて、内心の憤りを隠して、お前たちが好きそうな『お芝居』を演じてまで誘いに来てやったのに、どうして断るんだ!?


 くそ! 本当に、なんなんだ、このガキ!!


 そもそも、あれだけのプレイヤーに襲われても平然としやがって。そのことで、逆にこいつが『チート使い』なのは確信したし、見物客にも示せた。なのに――なんで誰もこの『チーター』を糾弾しない!?


 あと、お前は『友人を馬鹿にされたからキレてPKになった』んじゃなかったのか!? その『設定』を踏襲したうえで挑発してやったのに、なんでそこで斬りかかってくるのが水無瀬家の『抜刀鬼』なんだよ。しかも、止めるのかよ!? こ、こいつら、何がしたいんだよ、本当に……!!


「――決闘を、申し込みますわ」


 …………はぁ? この狐耳のドリル女は、いったい何を言ってやがる?


わたくしたちが負けたら、貴方あなた方の要求を1つ飲みます」


 ……へぇ。なるほど、なるほど。


 くくく! 読めたぜ、『姫プレイ野郎』の狙いが!! なるほど、こうやって『味方の暴走が原因』で、っていう理由なら、たしかにお前の名声は落ちることなく僕たちのクランに移れるわな。はは、本当にいろいろと考えてやがるよ。


 まったく、『敵』に回すのにこれほど恐ろしいと思ったのは初めてだぜ、と。そんなふうに思っていたからこそ、今回の『決闘』に『観戦者』として『薔薇園』の代表メンバーやクラン『漁業協同組合・おとこ組』に、どういうわけか一緒に居たクラン『水精の歌声』の副代表サブリーダー一行までが、舞台となる『試合会場』――外観としては、『可能性の間』と似たような、『コロシアム』を模した造りで。直径20メートルほどの舞台と、その円周を囲うようにして設けられた観客席が特徴的な、『決闘デュエル』システムにある『PvP』の会場としてはもっとも一般的なステージ――に、『姫プレイ野郎』の応援として招かれたところで問題視せず。


 どころか、こうして大衆に、しっかりと最後までアピールする用意周到なこのガキが、これを機に仲間となるのだと思えば……まぁ、悪い気はしなかった。


 もっとも――それはそれとして、いい加減、連中の態度には頭にきていたので、今回に限っては本気でぶっ潰しに行くつもりだけどね。


 くくく! せっかく、クソガキどもがここまでお膳立てしてくれたんだ。観客として僕らが招いた、『薔薇園』を抜けて『月光聖騎士団うち』に来るって連中ともども、真に誰が『最強』なのかを見せつけてやるよ!


「みんな、わかってるな? ……本気だ。手加減の一切ない、本気の本気でもって教えてやれ!」


 そうさ、僕らが――僕こそが、このAFOにおける『最強』! 僕こそ、全プレイヤーの頂点なんだ!!


 それを見ているが良いさ、負け犬の『薔薇園』の代表リーダー! この日、この一戦をもって、僕は以前の敗戦を払拭してみせる!!


「さぁ、いつも通りに行くぞ!」


 舞台の上。10メートルほどの間を空けて対峙する女児たちを視界の端に。ただ、試合開始のカウントダウンを告げる、中空に大きく表示された数字を見ながら告げる僕に、『月光聖騎士団うち』の最強メンバーだろう五人のプレイヤーが「応!」と力強く応え。


 そして、数字が『0』となり。


 戦闘開始を告げるファンファーレの音が響き渡った、その瞬間に。


「付与魔法、急げ! それから――」


「第一射、行きま――」


 そんな、僕らの掛け声をかき消すように――




 視界を覆い尽くす、煙。




「なッ!? こ、この煙は――」


「落ち着いてください! これは、『ケムリ玉』の煙です!」


「大丈夫です、ダメージも状態異常も与えられていません!」


 なんだ!? なんなんだ、と混乱する僕に、そう声を掛けてくる仲間たち。……ええい、くそ! そんなことより、さっさとこの煙をどうにかしろ! と、僕が怒鳴るまえに、




 ――飛来する、数十本もの槍の雨。




「ぐ、ぼっ!?」


 こ、これは、【投擲術】の!? と、愕然とした思いで被弾した味方のダメージを慌てて確認。た、たしか、件の『亡霊猫ファントム・キャット』とか呼ばれてた、黒い猫の獣人娘が強力無比な【投擲術】の使い手だったはずだ、と。混乱しつつも懸念していた相手の最大火力だろう攻撃を思いだす僕はさすがと言っていい。


 だけど……くそ! 聞いてたほどのダメージが無いのは、まぁ僕のようなトッププレイヤーと有象無象の連中とのレベル差や装備の違いのせいだろうけど……忌々しい! な、なんなんだ、この煙幕と投槍の雨は!?


「ひ、卑怯者が……!! 仮にも『決闘』というのなら、正々堂々と戦えないのか!?」


 回復まだか!? 盾職の二人は何をやっている!?


 ……ええい、煙が鬱陶しい!! くそ、なんで僕らのパーティには【属性魔法:風】の使い手が居ないんだ!? こ、これじゃあ、一方的に攻撃されて終わりじゃないかッ!!


「『ヘヴィ・ガード』、『ワイドガード』と。この程度の威力なら耐えられます! なので、今のうちに全力で煙幕から抜けましょう!!」


「! そ、そうだな!」


 そ、それなら、全員、飛んでくる槍に対して左側に駆け出せ! それと、盾職の影に隠れて移動しつつ、範囲回復を急げ!


「……ええい、くそったれ! なんなんだ、これは!!」


 あのメスガキ、負けるつもりで『決闘』を挑んだんじゃないのか!?


 ……まさか、本気であんな寄せ集めの、それもイベント新規組や【虚弱】付きのような雑魚どもで僕らに勝つ気か? こ、この僕を――『月光聖騎士団ぼくたち』を自身の宣伝材料にする気で、この『決闘』を!?


「ふざけるなよ、クソガキが! お前らなんかがちょっと頭を使った程度で勝てるほど、僕らは弱く――」


 ない、と。そう言い切るまえに、




 一本の、流星の如き光を纏った槍が飛来し、煙幕を消し飛ばした。




「――――ッ!?」


 目を剥く。


 その攻撃が、何なのかわからなかったから――じゃない。この攻撃こそが、件のPK『亡霊猫ファントム・キャット』の脅威を思い知らせ、【投擲術】の地位を向上させた、【槍術】とのコンボアーツ――『流星槍』だと言うのは一目でわかったし。この一撃でもって盾職が掲げていた不可視の力場たてが砕け散ったのも、仕方ないと思える。


 しかし、


 この『流星槍』で吹き払われた煙の向こうに、




 ――飛んでくる、真なる最高火力の投槍りゅうせいを目にして、思わず固まった。




「んな……!?」


 果たして、そんな驚愕の声をあげたのは誰だったのか。


 それを疑問に思う間もあらばこそ。閃光を纏って飛来した、2本目の『流星槍』に対して僕らはなんの反応も示せず。


 結果――『決闘』開始早々にして、僕のパーティにおける回復役ヒーラーはポリゴンの破片に変じて消滅した。


「……そ、そんな馬鹿な」


 有り得ない。


 僕らはAFO最強のパーティで……。いくら回復役ヒーラーが『器用』や『丈夫』の補正値が低く、防御力や最大HPが一番少なかったと言っても、レベル40以上だぞ? そいつが装備できる最高ランクの防具を纏っているんだぞ!? それを、一撃?


 ……ふざけるなよ。それじゃあ、まるで≪掲示板≫に書き込まれてたっていう『亡霊猫ファントム・キャット』相手に成すすべなく蹴散らされた有象無象と一緒――って、なんだ『あれ』は?


「お、おい、『あれ』は――」


 2本の『流星槍』によって完全に晴れた視界の先で。少し前まで対峙していたガキどもが居たはずのそこにあったのは――『闇』。


 それこそ、『可能性の間』から行ける夜間フィールドと違って、しっかりと明かりがあり、昼間のごとく視界を遮る影などあるはずのない舞台上にあって、異質とも言える暗黒の『もや』。


 ……あれは、もしかして【属性魔法:闇】のレベル1から使える魔法マジック――『ダークネス』か? あの、『使用者を中心に、直径3メートルほどの空間を暗闇で覆う』なんて使えない魔法の?


 っていうか、あのクソガキが『ダーク・プリースト』を倒して得た『魔導書』は、『薔薇園』の代表メンバーの魔法使いに取り上げられたんじゃなかったのか!?


「……ああ、もうくそったれ! 本当に、なんなんだよ、あの『ミナセ』ってガキは!!」


 などという僕の、心の底からの叫び声に答えたわけではないだろうが――理解不能なクソガキたちの攻撃は、そこから一層、その激しさを増していくのであった。


じつは黒幕だった。


黒幕、なんだけどなぁ…

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[気になる点] え?なにこの小学生未満の思考力のガキ大将……
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