クエスト76 おじーちゃん、少女のために『アーテー北の迷宮』の攻略開始
「――≪ステータス≫、オープン」
そう言って眼前に表示されたウィンドウ。そこには――
『 ミナセ / 初級戦士Lv.45
種族:ドワーフLv.19
職種:戦士Lv.26
副職:勇者
性別:女
基礎ステータス補正
筋力:4
器用:13
敏捷:11
魔力:2
丈夫:15
装備:初級冒険者ポーチ、薔薇柄のスカーフ、デスティニー作女番長セット
所有資格
【運び屋・壱】
固有技能
【収納術】【暗視】【聞き耳】【槌術】【呪歌】
スキル設定(7/7)
【強化:筋力Lv.4】【看破Lv.21】【慧眼Lv.9】【忍び足・弐Lv.9】
【潜伏・弐Lv.8】
控えスキル
【盾術Lv.29】【斧術Lv.29】【翻訳Lv.8】【鍛冶Lv.22】【水泳Lv.25】
【回復魔法Lv.23】【罠Lv.21】【漁Lv.11】【投擲術Lv.13】【調薬Lv.18】
【二刀流Lv.4】【槍術Lv.14】【属性魔法:光Lv.4】
称号
【時の星霊に愛されし者】【粛清を行いし者】【七色の輝きを宿す者】【水の精霊に好かれし者】【贖罪を終えし者】【武芸百般を極めし者】【闇の精霊に好かれし者】 』
――と、ついにココ、『アーテー北の迷宮』のボスモンスターやその取り巻きと同じ総合レベル45という数字が。
で、それはさておき。【投擲術Lv.13】と【槍術Lv.14】が残念でならない。もう少し鍛える時間があればそれぞれレベル15で使えるアーツが増えたはずなんじゃが……この期に及んで『ないものねだり』はできん、と。
加えて、懸念事項として挙げるとすれば【盾術Lv.29】と【斧術Lv.29】の2つ。これらは言ってしまえば儂の有する【スキル】の中でも特別思い入れのあるものじゃが……どちらも、おそらく今回の戦闘で最大レベルであるレベル30になるじゃろう。
で、そのあとは? 『上位化』か『固有技能化』か。……これに関してはとりあえずボス戦を終えてから改めて悩むとして。
とにかく、今は――
「おう。準備は良いか、赤毛っ子」
――『アーテー北の迷宮』の最上階へと続く階段まえで。≪ステータス≫を開いて最終調整をし始めた儂に、ドークス。
ちらり、わざわざ分かりやすく視線を向け。態度でもって「なにかようか?」と、頭をガリガリと掻いて言いづらそうにしておる『視ながら』本題を促せば、
「あー……。なんだ、その……。今回は、悪かっ――」
「残念、不正解じゃ」
ため息を一つ。にやり、と笑って遮り。
そんな儂に目を白黒する巨漢の重戦士に、あらためて体を向け――
「気にするな――と、言ったところで無理じゃろうがな。どうせ合流してすぐに『初走破』は逃していたと聞いていたとして、今回の流れは大して変わらなかったろうよ」
つまり、おまえさんの『回復薬』による『的当てゲーム』タイムは一緒じゃった、と。そう冗談めかして告げれば「うげ……!」と、思わず顔をしまえてうめくドークス。
それに「ハハ!」と笑って。「なに、深く考える必要などない」と告げながら、軽く肩をすくめて見せて。
「物事というものは往々にして単純にできておるでな。要は『儂のしたことは無駄ではなかった』と――謝罪は良いから行動で示せ、ということじゃな」
おまえさんの壁役としての働きを期待しておるぞ、と。そう笑って告げれば、喜色を前面に浮かべて「おう! まかせとけ!」と力強く頷いてくれて。とりあえず、決戦まえに士気を損なうことなく済ませることができた、と内心で安堵の息をこぼしていると、「ん。じゃあ、そこ筋肉が役立たずだったら『的当て』追加で」なんて言って儂のことを後ろから抱きしめてくるちぃお姉ちゃん。
「ああ、それは……辛いですわね」
「辛いね。がんばれ、ドークス」
む? そこの兄妹も、なぜにわざわざ士気を下げに行くのか、と。そっちの巨漢も、なにを『絶望した』とでも言いたげな顔をしているのか、と。……しかし、あれだけ簡単に、安全に、効率的にレベル上げを手伝ってやったと言うのに、そんなに辛かったのか?
「……ふむ。しかし、あれ以上に『楽してレベル上げする方法』が良い、と?」
今度、志保ちゃんに相談してみようか、と。腕を組み、眉間に皺を寄せてそう呟けば「やめてください、お願いします」という言葉が複数人から寄せられ、「?」と首を傾げることに。
「――さて、それじゃあみんな。準備は良いかな?」
果たして、最後の階段を上った先で。いわゆる『ボスフィールド』と呼ばれる別世界と『アーテー北の迷宮』の最上階とを隔てる『扉』のまえにて、ダイチくん。この場における代表にして最高責任者としての顔で最終確認の言葉を口にする彼に、それぞれの言葉で肯定の意を返し。
「よし。それじゃあ、作戦通りに――ミナセちゃん、アイチィ。アーツのチャージ開始! ローズ、エリーゼは付与魔法!」
「オッケー、『チャージ・アロー』」
「うむ、『ツイン・チャージ・ハンマー』」
「『ブーステッド・アクア』、『エンチャント・アクア』! それから『ブーステッド・ウィンド』と。頑張ってね、ミナセ」
「『ブーステッド・アクア』、『エンチャント・アクア』! それから無理はなさいませんように、『プロテクション』」
最後に、瞳を閉じて深呼吸を一度。それから、瞼を開いて周りを――この場に一緒に居る仲間たちの顔を見回して、頷き。頷き返され。
そして、
「行くよ。作戦――開始ッ!!」
ダイチくんの号令一下、即座にドークスが『扉』を蹴り開け。あらかじめ『敏捷』にSPを全振りした〈斥候Lv.15〉に就き、敏捷値の補正が20に称号【闇の精霊に好かれし者】と『ブーステッド・ウィンド』の効果によって引き上げられた瞬足でもって駆け。『扉』を潜った瞬間に範囲知覚から『扉』が消滅。壁によって覆われた広大な空間へと変化するのを『視まわし』ながら加速。
一秒でも速く。一歩でも前に。光源の一切存在しない暗黒の中、とにかく儂の『侵入』と同時に出現したらしい、この階層の守護者まで――『スケルトン・ウォリアー』4体を前衛に、『スケルトン・ソーサラー』2体の、さらに後ろ。『固有技能化』したレベル30相当の【暗視】によって良く見える、初めて見たボスモンスターへ向けて一直線に駆けて行き。
……ふむ。真っ暗闇に居るため色彩が判然としないが、どうにも暗褐色の神官服のようなものを纏った、酷く顔色の悪い男性型。で、手には『杖』を持ち、血のように赤い瞳を不気味に輝かせて――と、せっかくじゃから頭上の三角錐をクリック。【慧眼】でもって彼奴の名前が『ダーク・プリーストLv.45』であるのを確認。写真を撮って、志保ちゃんへの土産を確保、と。
それはさておき。儂の突撃に対して連中が動き出して。『スケルトン・ウォリアー』がそれぞれの得物を手に前に。儂の接近を阻害するのを第一とするような動きを見せる骸骨兵の背後で『スケルトン・ソーサラー』と『ダーク・プリースト』の杖の先が不気味に輝き出すのを『視て』、「なるほど、このボスモンスターは『後衛魔法使い』型か」と一人呟き。
「ハハッ! たった4体の骸骨兵ごときで止められるものなら、止めて見せよ!!」
そう嘲笑って告げ。振り下ろされる武器に立ち塞がろうとする連中をフェイントを交えて躱し。なるべく速度を緩めずに最大目標――ではなく、その直前にて魔法を行使しようとしていた骸骨魔法使いの内の一体へと接敵。それまで背中に隠していた、『ツイン・チャージ・ハンマー』と『エンチャント・アクア』のエフェクト光を発する両手のヌンチャクを振りぬき。
その攻撃が接触するまえに――「『知覚加速』と呟き。体感時間を操作して世界の歩みを疑似的に緩やかなものに変質させ、〈狩人〉に『転職』。瞬時に敏捷値SP全振りから器用値補正全振りへとなって、時の歩みを戻し。骸骨魔法使いに1撃。2撃。3撃目を叩きこむまえに【槌術】のレベル7で使えるようになる『TPを消費し、次の一撃の威力を上げる。また、周囲一帯に衝撃波を放つ』という効果のアーツ――『グランド・バースト』を起動。
とにかく1体。ボスモンスターとの本番のまえに『スケルトン・ソーサラー』を削ろうとしたが、残念。いくら後衛魔法使い型で防御力が低く、HPが低めと言ってもアーツ3発で沈まないあたり、さすが腐ってもレベル45か。
加えて、この一瞬の攻防の間に彼奴等の魔法の発動準備も整ったようで。骸骨魔法使い2体とボスモンスターによる魔法が起動――する直前に、また「『知覚加速』と呟き。早くも二度目の体感時間の操作と『転職』。で、足下の魔方陣から噴き出る漆黒の奔流は、おそらく『任意の場所に「闇」属性の魔法の壁を制作する攻撃魔法』――『ダーク・ウォール』か。同時に離れた位置から飛んでくる黒い槍の雨は、同じく『闇』属性の攻撃魔法――『ダーク・ランス』じゃろうか。
まぁ、なんにせよ。今回、儂が就いたのは『魔力』にSPを全振りした〈治療師Lv.22〉。加えて、『特徴:属性(闇)』付きの防具に称号【闇の精霊に好かれし者】で食らっても致命傷にはならんじゃろうが、この機会に『スキル設定』を操作。【二刀流】を外して【属性魔法:光】をセットし、『副職』を〈勇者〉から〈魔法使い〉に変更したうえで体感時間を戻し。敵側の攻撃魔法を受け止めながら範囲回復魔法を発動。
ダメージを受けた端から回復。の、ついでに、効果範囲内に居る死霊系モンスターに――つまりはボスモンスター以外の全員に『魔力』補正24に【回復魔法Lv.23】と〈治療師〉に〈魔法使い〉の服地効果によって強化された疑似・魔法ダメージを与え。
加えて、【属性魔法:光】のレベル3で使えるようになった『ライト・サークル』を発動。自身を中心として地面に不浄なるものが触れるとダメージを与える魔方陣を生み出し、これまで真っ暗闇に包まれていた戦場を足下からの『発光する幾何学模様』の白い光でもって照らしだして――
儂の眼前に居た『スケルトン・ソーサラー』がちぃお姉ちゃんの放った矢によってHPを散らした。
「ハッハーッ! 行くぜー、ドリルっ子! 『ヘイトアピール』!!」
「はい、『ヘイトアピール』――って、誰がドリルっ子ですの!?」
果たして、ようやくと言えばようやく。時間的には数秒の間を空けて、ついにボスモンスターたちとの集団戦が開始された。
……ふむ。緒戦でどうにか『スケルトン・ソーサラー』の片翼は墜とせたが、次は予定通りボスモンスターに向かうべき、か?
しかし、儂に魔法攻撃を飛ばしてきたのは骸骨魔法使いの2体だけ。初見で能力不明の『ボスモンスター:ダーク・プリースト』が使った魔法は――奴の眼前に『湧き出すように出現した』数体の『スケルトン』と『ゾンビ』を生み出した? 要は『イベントボス:堕ちた太陽の申し子』と似たような『召喚魔法』でも使うのか?
「『スラッシュ』! っと。カネガサキさん、新手のモンスターのレベルは!?」
さておき。駆け寄ってきたドークスとローズの壁役二人がそれぞれ『スケルトン・ウォリアー』を1体ずつに召喚されたらしい死霊系モンスターを数体、『ヘイトアピール』でもって引き取ってくれた。
「『スケルトン』と『ゾンビ』、共にレベル20!」
ゆえに、儂に対する攻撃の手が緩んだ今のうちに、再度、世界の歩みを引き延ばし。〈戦士〉へと『転職』。≪ステータス≫を開いて『副職』と『スキル設定』を弄り、≪インベントリ≫も開いて装備一式も変更。
かくして、『お色直し』に伴う淡いエフェクト光のあとで。通常の体感時間――と言ってもAFOの仕様で現実世界のそれと比べても10倍じゃが――の中、新調した『クラブアーマー』と『シールドセット』を初披露。それぞれ『闇蟹アーマー』に『闇蟹シールドセット』と名前を変え。一緒に預けた旧『特殊武装:斧槌』改め『闇蟹武装;斧槌』とともにデザイン的には大した変化はなく。ただ全体的な色彩が大きく変わり。これまでの赤7:金2:深緑1だったのが黒6:赤3:金1ぐらいの割合となって、全体的に黒い外殻に赤と金の模様や縁取りがついた感じへとなった新武装組は、ひとえに使用した素材に『闇』の属性を加えたから――という理由ではなく。
これまた単なる『原作』再現の一種であり。色合いの変化こそ『闇』の要素が大半なように見えて、その実、使用した素材には上位魚人のものを多用したようで、しっかりと『水』の属性も内包し。お陰様で称号【水の精霊に好かれし者】に【闇の精霊に好かれし者】の2つの効果を1つの武装で両方受けれるようになった、と。
「ハッ! つまりは『イベントボス』の予行練習用のボスってかぁ!?」
……もっとも。現状、『鎧下』込みで旧作同様『水場に適応している』特徴も『水』の属性ダメージを軽減する効果も腐っておるわけじゃが――背後から迫っていた2体の骸骨兵による剣の袈裟斬りに槍の刺突を背中の『闇蟹シールドセット』から左右の手に『黒い蟹のハサミを模した盾』を引き寄せ。攻撃を逸らし。弾いて。
ついでに、今まさに攻撃魔法を飛ばしてきた骸骨魔法使いに盾を向けて、『ワイドガード』を使用。不可視の障壁で敵の『闇槍』を防ぎ。誰も居ない方に跳躍。いったん、距離をとって開いたままの≪インベントリ≫のウィンドウを視線で操作。右手に『混沌大鎌』を装備して、物理攻撃を大鎌で、魔法攻撃に対しては『ワイドガード』の障壁で防ぐことに。
そして、そんなこんなをしている間にも『ダーク・プリースト』は死霊系モンスターをポンポン生み出してくれているわけじゃが……ふむ。どうにもこの、背教者だか邪教徒だかのボスモンスターは、『まずは手勢を揃えること』を第一として動くようで。儂がそちらを『視つつ』、骸骨兵の物理攻撃を弾き、骸骨魔法使いの魔法を耐えたうえで範囲回復魔法でもって回復と攻撃の両方をこなす間も、彼奴はせっせと新しい骸骨と腐乱死体を召喚し続けており。それこそドークスの言の通り、この『ダーク・プリースト』は、あの『堕ちた太陽の申し子』の劣化模造品のようで。なるほど、運営もなかなか儂らプレイヤーのことを慮た配役をしてくれる。
「『エリア・ヒール』! っと、ダイチくんよ。いっそ本当に、ここで『イベントボス戦』の予行演習でもするか?」
」
2体の骸骨兵と残った骸骨魔法使い1体の連続攻撃を逸らし、弾いて、防ぎ。そんな提案を冗談交じりに大声で告げれば、我らが代表殿は果敢に邪神官が昇格し続ける死霊系モンスターを斬り捨て、専属の壁役として配した妹ともに格上の骸骨兵と切り結びながら「はは!」と明るく笑い。
「魅力的な提案だけど……残念、うちの可愛い妹の睡眠時間をこれ以上削りたくないので『却下』かな!」
「『ヘイトアピール』! って、お兄様!? か、かわかわわわわ……!?」
果たして、そんな兄妹の遣り取りに、未だ予断を許さぬ状況にありながらも戦場には笑い声が上がり。
「『ヘイトアピール』! っと、なんだぁ勿体無い。せっかく、大好きなお兄様にワンツーマンでレッスンしてもらえる機会なのになぁ」
「『アロー・レイン』! っと、これだから『筋肉』は。睡眠不足はお肌の大敵だし、仕方ない」
「『ブースト』! 『エンチャント・アクア』! って言うか、ミナセも元気ねぇ」
「『ヒール』。それから『エリアヒール』、っと。本当に、なんで一人だけボスほか数体を相手に、あれだけ余裕があるんでしょうね」
とりあえず、経過時間的に再度『ライト・サークル』を使って効果時間を延長魔方陣し――ようとして、最初の魔方陣が上書きされるように消えていくのを見て、内心で舌打ちを一つ。……ちっ! そういう仕様ならそうとあらかじめ説明文に明記しておいてくれんかのぅ、と心のうちで愚痴りつつ。傍目には、ことさら明るい表情を取り繕ったまま。
「『ヘイトアピール』! っと。うむ、そうじゃな。すでに『延長戦』に入っておったな」
大鎌を振り回し。随時、背中の盾を引き寄せ。アーツを、マジックを使って捌きながら、試案する。
……【慧眼】によって見た限り、この迷宮の最終目標には他所の連中同様にHPを示す横棒が5本あり。これまでのボス戦とダイチくんたちと交わした情報と予測から、少なくも横棒を1本削りきるまでならば大して行動ルーチンに変化は無いとして。このまま時間をかければ問題無くボスモンスターのHPの5分の1――最初の1本程度なら削りきれるじゃろうし。これまたドークスの言の通り、『最前線』での戦闘には不慣れな壁役見習いのお嬢様には現在、ダイチくんによる直接指導という得難い経験を与えられている。
加えて、このボスモンスターが直接戦闘を行うタイプではなく、取り巻きを召喚し続ける『言ってしまえば特殊なギミックを有する置物』であったおかげで、儂以外の『本来であれば絶望的なレベル差』をもひっくり返せる目が出て。供給され続ける取り巻きのおかげで、良い経験値を稼ぎの間になっているゆえ、可能ならギリギリまで余裕のある現状を維持し続けてのレベル上げを行いたいところじゃが……如何せん、儂らの手持ちの『回復薬』の量にも限りがあるし。何より、ダイチくんの言う通り、無駄にローズの睡眠時間を減らすわけにもいかない。
「と、なれば。ここらで賭けに出るべき、か」
懐かしの『初級冒険者ポーチ』に戻り、防具の重量からして武装を瞬時に切り替えることができなくなった現状、≪ステータス≫と≪インベントリ≫の内容を表示したウィンドウを浮かべ続け。視界の一端を占拠されること引き換えに、戦況に合わせて随時、思考と視線によるクリック&ドラッグで『ちょっとした変更』程度なら体感時間を操作せずとも行えるようにしているが……ふむ。ここらで1つ、試してみよう。
「エリお姉ちゃん! 付与魔法変更! 『ブースト』、『プロテクション』、『エンチャント・アクア』――で、それを掛け終わったら水属性範囲攻撃魔法も儂を中心によろしく!!」
「はいはい、了か――ぃい!? え? 本気で、ミナセちゃん!?」
儂の言葉に目を剥いてなお麗しき付与魔法使いのお姉さんに「当然!」と叫んで返し。彼女が「もう! どうなっても知らないわよ!」とプンスカしながら言う通り付与魔法を掛けてくれる『頼れるお姉ちゃん』に笑みを浮かべ、
周囲のモンスターと自身の立ち位置を調整し、
タイミングを計って――
「行くよ、ミナセちゃん! 『ハイドロ――」
「――『知覚加速』」
呟き、世界の歩みを再び操作する。