魔族の目的。そして、旅立ち
今回、一気に4部投稿しました。
逆に面倒でごめんなさいm(_ _)m 作者より
ノブナガ一行がアンディエル帝国軍第2番隊と対峙した翌朝。
場所はターサが営むレプランのテーブル席。
そこにはスフィも加わったノブナガ一行とターサ、それに警備騎士の団長のガルアークと“風術師”ライデンが円卓を囲むように座っている。
昨日、無事に“鮫”の魔族と第2番隊を退けたノブナガたちは、魔物に襲われないように騎士たちを纏めて戦場の拠点に転移させた。
ちなみに、隊長であったガウルは魔石を破壊した後、人間の姿へと戻って生きていたのでエリーナが回復魔法をかけ、天紋はノブナガが“簒奪”しておいた。
なぜか、“重武人”だけじゃなく“大猩々”まで奪ったのかが謎である……
そして、一晩経った今、ノブナガたちは更なる旅立ちをしなければならない。
その前に、警備騎士には今の帝国の現状を教えておく必要がある。
そして、ターサには、ノブナガたちが何をしようとしているのかを、伝えなければならない。
そうして、今レプランに集まっている。
空気は重くもなければ、明るいというわけでもない。
そんな中、ノブナガは口を開く。
「皆さん、集まっていただいて感謝します。まず、自分たちが何者なのかを明かさなくてはなりません。俺たちは“奪還者”。かつての帝国を取り戻す為に国に反旗を翻す組織です」
ノブナガの言葉に驚いた様子を見せるターサと警備騎士の2人。
そんな2人にこれまでの事を語る。
帝城での事、制度の事、魔族の事。
すべてを話し終えた後には、3人とも信じられないという顔をしていた。
「信じられないかも知れませんが、すべて本当です」
「い、いや……信じていないわけではないのだ……ただ……」
ノブナガの言葉を否定するガルアーク。
その後の言葉を、苦悶の顔と共に言うのをやめる。
なんせ、それほどの事をこんな子供たちだけが背負って戦っている事に、大人として情けない思いなってしまうのだ。
ライデンも同じく、今までノブナガたちが立ち向かって来た困難を想像し、とても苦しそうな顔をする。
それを見て、何が言いたいのか察したノブナガ。
「別に、強いられたとかじゃないですよ?自分たちが、自分たちの目的の為にやってるんです。魔族と戦うのも、戦争を止めるのも、そのついでです」
“奪還者”にいる者すべてが、自己犠牲なんてもので動いていない。
自分がしたいと思って、それをするのだ。
世界を救うなんて大層な事を思う者はいない。
ただ、自分たちの目的の為にする事をしているに他ならないのだから。
「それで、ターサさんに言います。俺はーーあなたの息子はそんな危険な事をしようとしています。きっと、俺の母親である事で今後も狙われるでしょう」
「うん」
「それでも……それでも……俺のお母さんでいてくれますか……?」
「うん。そんなの当たり前じゃない。ハヤトは……ううん、ノブナガは私の息子よ」
ターサの心は変わらない。
そんな死闘を繰り広げながらも、ここに帰って来てくれた息子に慈愛の笑みを浮かべる。
その笑みからノブナガは今まで感じた事のないものを感じる。
イクレの時も思ったが、それでも本当の家族の愛という暖かみとはこういうものなのかと、無意識に感じたのだ。
「それで、これから俺たちは旅立たないといけない。しかも、明日中に、です」
「明日中に?急過ぎはしないか?」
「急がないといけない事が、今起こっているんだよ」
そう言い、ノブナガは“ストレージ”からある資料を取り出した。
それは魔族が使う文字、魔語で書かれたものだ。
「実は、昨日のうちにスフィが翻訳してくれて、さらにそれをザンに翻訳してもらった」
なぜかサムズアップするザン。
それよりも説明しなさい、と視線でいうノブナガに急かされながら、ザンはスフィが翻訳した内容を口にする。
「それは計画書。これからの事や、これまで達成した事がそこに書かれているみたい」
「計画書……」
「最初は4つのダンジョンの封印を解く、と書いてあったみたい」
「……4つのダンジョン……東西南北にある……ダンジョン?」
「そうだと思うわ」
4つのダンジョン、それはこのアンディエル帝国の東西南北に存在するダンジョンの事らしい。
昨日、ノブナガも知った。
東はタルワーリア町から見える火山のダンジョン、例のカレンが半月ほど困っていたダンジョンだ。
南のダンジョンはナルマ街近くの、ザンが封印されていたところだ。
そして、西の方はアンディエル帝国内ではないが、1年ほど前まで攻略されていなかったダンジョンがあるらしく、そこにスフィは封印されていたようだ(昨日聞いて、スフィの単語単語を繋げるとそうっぽい)。
最後の北は、迷宮都市にあるそうだ。
「迷宮都市ババロン。砂漠一帯の都市で、ロクな砦も建っていない都市だが、名前の通りダンジョンを中心に盛んになった都市だ」
「そこは、攻略されたのか?」
「私はそんな話し聞いた事ないけど……」
「私もまだ攻略されたとは聞かされていないな」
ノブナガがそう尋ねると、アリンカもガルアークも首を横に振る。
「それじゃあ、今魔族はそのダンジョンを攻略に?」
「……その可能性は……高い」
封印という言葉がイコール攻略と解釈していいのかはわからないが、少なくともそう考えてもいいだろう。
しかし、翻訳したのはまだ終わらない。
「そして、魔語に気になる言葉があったの」
「気になる言葉?」
「『約束の日はもうすぐ』、って言葉」
約束の日。
そんな不穏な言葉が、店内に響き渡る。
友人から放たれる言葉と、悪者から放たれる言葉とではこうも聞こえてくる怖さが違うのかと思ってしまう。
「……これが、君たちが急いで旅立つ理由か」
「あぁ。具体的な事は何も書かれていない。だけど、魔族たちが、この約束の日の為に動いているのは間違いない」
「……具体的には……どうするの?」
「今日中にお母さんを安全な場所に送ります。俺たちの拠点があるので、避難して貰います。……いい?」
「うん。私は何も出来ないから、ノブナガに従う」
自分が勝手に決めた事なんで、まったく本人に確認を取っていない事に気付いたノブナガ。
ターサにその場で確認を取ってみると、あっさりと頷いてくれた。
「後は、明日の朝にでも迷宮都市に旅立ちます。かなりハードなスケジュールですけど、この際気にしてられません」
「あの、すまないが、1つ頼めないか?」
「なんですか?」
「今、私たちが保護しているラン公国の捕虜なのだが……この人たちも君たちの拠点に連れて行ってくれないか?正直、私たちでは魔族の手から守り切れる自信がなくてな……」
ラン公国の捕虜。
もともと警備騎士で預かっていた人、さらに昨日ノブナガが助け出した人も、今は警備騎士が預かっている。
あの人数の宿を手配するのは難しいので、一晩警備騎士に預かって貰ったのだが、魔族まで出てくると守るのは難しいだろう。
「わかった。そういう事なら、みんなを拠点に避難させる」
「すまない……代わりに、私たちに出来る事はあるか?」
「そうだな……出来る限りでいいから、珍しい鉱物を集めてくれないか?新しい天紋が手に入ったし、武器も作りたいからな」
「わかった。騎士たちを使って掻き集めさせよう」
ノブナガから頼まれた事にガルアークはやる気の声で応える。
一方、エリーナたちはノブナガの『武器も作りたいから』という言葉に、ギョッとした目でノブナガを見ていた。
また新たな凶悪が生まれるのか!とでも言いそうな顔である。
その視線に気づいたノブナガは、エリーナたちに満面の笑みを浮かべる。
エリーナたちはノブナガの目の奥にある凶悪を見逃さなかった。
まぁ、それを言うような雰囲気ではないので言わないが……
「それじゃあ、皆さん。行動開始です!」
**********************
そうして、全員が全員動き回り、翌朝。
レプランの店内に空間の穴がぽかんと開く。
そこから現れたのは、言わずがもがなノブナガさんだ。
ノブナガが潜り終えると“開空”が閉じた。
「よっ、俺」
「よっ、分身体の俺。留守番ご苦労だったな、ありがとう」
自分がここに戻ってくる為に置いた分身体と言葉を交わし、労いの言葉と共に分身体は消滅した。
レプランの扉を開けて、外に出るノブナガ。
「あ……エリーナさん」
「おかえりなさい、ノブナガさん。もうそろそろ帰ってくる頃だと思ってました」
レプランの前には、アーティファクトによって変わった赤髪を靡かせなが立っているエリーナがいた。
驚いたように固まっているノブナガに、優しい笑みを浮かべる。
「ただ今戻りました、エリーナさん。出迎え、ありがとうございます」
「いえ。それより、お母様とはちゃんとお話しできましたか?」
「……はい。昨夜、いろんな事を話しました。今までの自分の事とか、お母さんの事とか、たくさん」
「そうですか。よかったです」
嬉しそうに言うノブナガの言葉に、エリーナはそれ以上に嬉しそうな笑顔になる。
その笑顔を、ジッと見つめるノブナガ。
「あ、あの、どうかしましたか?」
「その……俺がお母さんとちゃんと話しができたのは、エリーナさんのお陰です。ありがとうございました」
「そ、そんなっ。私は何もしてないですよっ!すべてっノブナガさんが頑張ったからで……」
「いえ、怖くて踏み出せなかった俺の背中をを押してくれたのはエリーナさんです。本当に、ありがとうございました」
「…………はい。ノブナガさんの力になれて、嬉しいです」
ノブナガは少し恥ずかしそうに、エリーナは本当に嬉しそうに笑う。
時間も惜しいので、宿に歩き始めるノブナガとエリーナ。
少し沈黙の時間が流れるのちに、ノブナガはエリーナに尋ねた。
「それより、よかったんですか?スフィと契約して」
「はい。私にしかできない事みたいですから。だったら……皆さんの役に立つのなら、契約してよかったと思います」
「そうですか。でも、気をつけてください。通力を消費するという事の結末を……」
「はい。そうはならないように、昨日からザンさんに通力の扱い方を教えてもらっているんです」
(え……俺、そんな事教えてもらったないんだけど……)
ノブナガが心配の言葉をかけたにも関わらず、まさかの事実が返ってきて驚くノブナガ。
なぜ、自分の時は教えたからなかったんだ……と思うノブナガさんであった。
そうこう話しているうちに、ノブナガたちが泊まっていた宿に到着した。
「あ、ノブちゃんだ。お〜い!」
「お帰りなさいッスー!!」
宿の前にはノブナガたちの馬車と一緒に他のメンバーも待っていていた。
近づいてくるノブナガとエリーナに気づき、ザンとカレンが大きく手を振ってくる。
アリンカは腕を組んでやれやれみたいな顔で笑っている。
スフィはというと……相変わらずのデフォルト顔でノブナガの方を向いている。
「待たせた。ごめん」
「まったくよ。北門の方でガルアークさんたちが待ってるみたいだから、早く行きましょう」
「そうだな」
朝一でエリーナたちの下に騎士の人がやって来て、そう伝言されたらしい。
すぐに馬車に乗車し、バズビズに頼んで出発してもらう。
久しぶりの馬車だが、壊れている機能や部分もないので、そのまま北門へと向かう。
数分走ると、北門に到着する。
そこには、門番の騎士と顔馴染みの6人がいた。
「団長と副団長がここに来て大丈夫だったのか?」
「こんな朝一だ。まだ団もまともに活動していないさ」
「そうか。捕虜の人たちはちゃんと拠点に送った。衣食住はちゃんとできるようにもして来たし、面倒も村長に頼んで来た。問題はない」
「ありがとう。これ、君に頼まれたものだ。受け取ってくれ」
そう言って、ガルアークを含めた6人が1個ずつ持っているデカイ皮袋を差し出して来た。
全部の皮袋がパンパンな事に、若干ノブナガの頰が引き攣る。
「すごい量だな。できる限りでいいって言ったのに」
「この国を救おうとしているんだぞ?君たちは。なら、このガラール警備騎士団のすべてを使って叶えるに決まっている」
「そうかい。なんか申し訳ない気持ちだけど、ありがたくいただくよ」
1つ1つ皮袋を受け取るノブナガ。
ゴロゴロ、ドサドサとした鉱物の袋を“ストレージ”に仕舞う。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「あぁ。気をつけて行ってこい」
ガルアークにそう送られ、開けられた門を潜るノブナガの馬車。
女子陣なんかは、馬車の後ろで見えなくなるまでずっと手を振っている。
「よいしょ、っと。さて、迷宮都市ババロンまでは3日かかる。それまで、みんなゆっくりしておくように」
操縦席から移動して馬車の方に移動しながら言うノブナガ。
そう言うノブナガが、1番物騒な物を作ろうとしているのだから、エリーナたちの頰も引き攣ってしまうだろう。
だが、不思議と悪い気はしない。
あの都市でいろんな事があったが、それでもこうしてみんなと要られているのだから。
こうして、ノブナガ一行は城塞都市ガラールを旅立ち、次なる目的地ーー迷宮都市ババロンに向かう。
そこには更なる悲劇と困難が待ち構える。
ーーしかし、この6人であれば、きっと乗り越えられるだろう。
ようやく、城塞都市ガラール編が終わりました……
正直、ここまで長くなるとは思いませんでした。
この章を始めたのが4月の下旬からなので、本当に長かったです。
ハッキリ言うと、ターサもスフィも書き始めた当初は出る予定なんてありませんでした笑
スフィに関しては、投稿する2週間前になぜか思いついたほどです笑笑
作中での『これ以上、濃いキャラはいらないよ!』は自分の叫びです笑笑笑
まぁ、そんな制作している最中に出来たものも楽しんでいただけると幸いです。
次からは『迷宮都市ババロン編』が始まります。
1部、主要メンバーのステータスを整理用に投稿しようと思います(作者自身が整理できてないんです、ごめんなさいm(_ _)m)。
今度は短くなればいいなぁ、と思います(懇願)。
それでは、これからも『奴隷からはじまる下克上冒険』を楽しんでください。 作者より




