旅立ち
超短いです。 作者より
ノブナガがザンと契約し、ハルサーマンを倒した翌朝。
ナルマ街の南にある人に整備された街道に、3つの人影があった。
もちろん、ノブナガたちである。
あの聖剣の部屋で“剣聖”ハルサーマンを倒したノブナガは、エリーナにハルサーマンを死なない程度に回復魔法をかけてもらった。
そして、天紋を“簒奪”する事もなく、ノブナガたちは聖剣を持って街に戻った。
街に戻り次第、ノブナガたちは早急に旅の準備を始めた。
エリーナの足りない物はノブナガがお金を出して、朝すぐにでも街を出られるようにした。
ノブナガは剣も買い、翌朝を迎えた。
お世話になった宿の人や、タイヤン夫妻に別れの挨拶をして街を出たのだ。
「ノブナガさん。今更なんですけど……本当にいいんですか?」
「なにがです?」
「この国を敵に回した事、です」
(本当に今更だな……)
エリーナの言う事が本当に今更である事に苦笑するノブナガ。
成り行きで聖剣を手に入れ、旅に出たんだと思っているのだろう。
しかし、それはまったくの杞憂だ。
「いいに決まってますよ。俺はエリーナさんを手伝う。言ったじゃないですか?」
「でもっ、私がしようとする事はとても危険な事なんですよ?」
「なら、なおさらエリーナさんを手伝います。エリーナさん1人じゃ、もっと危険です」
「で、でも……」
エリーナは申し訳ない気持ちが拭えず、暗い顔になる。
そこにもう1人、入ってくる。
「ホントに気にしなくていいよ?エリちゃん。ノブちゃんはエリちゃんの目的に感化されて、エリちゃんと一緒にいるんだから」
「ザンさん……」
もう1人とは、ノブナガが契約した精霊ザンガルドーーザンだ。
ノブナガが精神世界であった時と同じ、12歳ぐらいの長い桃髪の少女。
旅服を着ているが、間違いなくザンである。
ザン曰く、人の姿が本来の姿らしく、こっちの方が疲れないとの事なので、普段は人の姿でいるようだ。
もちろん、ノブナガが戦うとなれば剣へと変わる。
「ザンの言う通りですよ。俺は俺の目的の為に、エリーナさんといるんです。だから、気を遣わないでください」
「ノブナガさん……」
エリーナは足を止める。
エリーナより少し進んだ所で、ノブナガもザンも足を止めて振り返った。
「私は前のアンディエル帝国が好きです。今のこの国は間違っていると思います。だから……ノブナガさん、ザンさん、私に力を貸してください。私と一緒にこの国を変えてください。お願いします」
エリーナはノブナガたちに頭を下げる。
そんなエリーナにノブナガは目を点にする。
なぜなら、ノブナガが説教をしたわけでもなく、エリーナから“我儘”を言ってきたからだ。
ノブナガはザンと顔を合わせる。
ザンもノブナガと顔を合わせ、お互いに笑い合う。
どうやら、答えは同じのようだ。
「はい。エリーナさんの望みに応えます」
「わたしもー」
ノブナガたちがそう言うと、パッと顔を上げるエリーナ。
その顔は、まるで花が咲いたように可愛い笑顔だった。
「ありがとうございます!」
「さて、早く行きましょう。野宿するにも、それなりに進んでおかないといけませんからね」
「エリちゃん、行こ!」
「はい!」
街道を歩く3つの影。
行き先は南の辺境の村、セインズ村だ。
かくして、元奴隷にして転生者のノブナガは旅に出た。
2人の仲間と共に、彼はこれから何を見て行くのだろうか。
ようやく冒険に出られました。
当初の予定では、エリーナもザンも出ない予定だったので、正直驚いています……
次回もお楽しみに〜 作者より




