キセキ
ねえ、聴いておられますか?
生とは実に素晴らしいものだとはお思いにはなりませんか。
数多の中からの蹴落としあい、その果てに、晴れて育まれる事が出来る。そして、漸く陽の目を浴びる事となって、情を一身に注がれていくのも束の間、新たなる生存戦略の只中へと放り込まれていく。
荒波だとか、レールの上だとか、色々と揶揄などございますが、生きていく以上は、食物連鎖の鎖の一欠片でしか無いわけでございまして、さながら、弱き者は強き者の糧にしかならないという摂理。
しかしながら、更に面白いのは、幾ら力を持とうと、権力を誇示しようと、金銭をばら撒こうと、生命尽きればそれまでという、一致した結末。
あれらをどんなに突き付けようとも、三途の川の渡し賃にすらならいないのですよね。
ある種のタチの悪い悪戯とも伺えますよね。
何に対しても、絶対的な平等。
普遍であり不変。
実に素晴らしいでしょう?
あら、まだあなたはお解り下さらないようですねわね。
まあ、構わないですわ。
ですから、どんなにあなたが抗おうとも、この予約されたキセキを回避することは、残念ながら出来ないのでございますから。