part3
思わず変な声が出てしまった。
「あ、あ、あ、あの、美玖ちゃん?」
「はあ……もういい、もう隠すのやめよう、だめだ、素直になろう」
突如、美玖ちゃんの様子がガラリと変わって、私はただただ硬直してしまう。
「美玖……ちゃん? いつもと雰囲気が……」
「あのねニナちゃん、私だって、ありがとうって言いたい事はいっぱいあるの」
「そ、そうなの?」
「たとえば、この前風邪の時お見舞い来てくれたの、ありがとうって言いそびれてた。ありがとね、すっごく嬉しかったのに、つい、帰れって言っちゃって……ほんとごめん」
「いやいやいや、美玖ちゃんがうつるから来るなって言ってくれてたのに、押しかけちゃったのは私の方だし、ま、まあ大好きな美玖ちゃんの危機だったから、つい……」
「あと、いっつも私と一緒にいてくれて感謝してる、ありがとう」
「あ、それはお互いさまというか、こっちこそありがとう」
何この、すっごく恥ずかしくて、すっごく嬉しい時間。
「それとね、すごく大事なお話があるの、これどうしても聞いてほしい、……いいかな?」
「あ、はい、聞きます! えっと、なにかな?」
「えっとね、えっと……ごめん、ちょっとだけ時間ちょうだい」
「ど、どうしたの? み、美玖ちゃん、顔真っ赤だよ……? 大丈夫?」
美玖ちゃんは私の問いかけには答えず、追い詰められたような表情でうつむいた。まるで何かを覚悟してるかのようだった。息を何度も吐き、そしてついに、意を決したように顔を上げると、私の瞳をじっと見つめ、口を開いた。
「えっと……その……、あああああ! うじうじすんな私! ほんと、ニナちゃん見習えっての! えっとね、ニナちゃん、好きって言ってくれるの本当に嬉しいから、心の底から感謝してるから! どうしてって、その、私もニナちゃんが好きだから! い、以上!」
美玖ちゃんは言うだけ言って、顔を真っ赤にして俯いてしまった。それを見て私は、ただ口をあんぐりと開ける事しかできない。え、待って、今美玖ちゃんは何を言ったの……?
今のって告白じゃないの? え、私のただの自惚れ? でも好きって、え?
「美玖ちゃん……?」
「……っ」
「ねえ美玖ちゃん、今の言葉もう一回聞かせてもらっても……」
「無理だって……っ」
「お願い! もう一回聞きたいの、ちゃんと聞きたいの!」
「あああああ、もう! じゃあこれで分かって!」
突然、私の顔に美玖ちゃんの顔が覆いかぶさったかと思ったら、唇にふわりと柔らかい感触が押し付けられた。ふんわりと柑橘系の匂いがして、すぐに離れていく。
「これで、分かった?」