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頼られすぎる存在です

■朝の日課

 トンッ、クロが起こしに来た、今日も朝が始まる。


クロ

(あるじ)、今日も朝から来客だ」


「公園の3人だね、解ったよ、今行く」


 餌を片手に表に出ると、公園の野良猫たち、

ドラ太、ヒゲマユゲ、ミケ子、が居た。


「きょうも、餌をくれるおばさんは、家に戻ってないのか、

直るまで、もうちょっと時間が掛るかな?」


ヒゲマユゲ

「すまねぇ、餌くれるか?」


「気にしないでよ」


 持ってきた餌を振る舞う、いつもクロにやっているのと同じ餌だ。


ドラ太

「また、高い餌を……」


「気にしないでったら、それからバイト、

まあ、ちょっと働こうかと思ってるから、お金も入ってくるよ」


ミケ子

「うちらの餌を安くすれば、働かなくてもいいんじゃないの?」


「そういう考え方もあるね、あるけど、

今後の事も考えて、ちょっと働こうかと思ってるから」


ドラ太

「でも、働かない方が楽だろ?」


「うん、まあそうだけどね」


ドラ太

「やっぱり、餌のランクを落とせば良いんじゃないのか?」


「せっかくだったら、おいしいの、食べて欲しいじゃない。

たとえ、僕が働いてでもね」


ヒゲマユゲ

「変わり者だな、お前」


ミケ子

「まあ、ちょっとした変人(へんじん)だわね」


「変人は酷くない?」


クロ

「変人だぞ、自覚しろ、主」


「ひどい」


クロ

「さて、うちらも飯にするか」


「そうしよう」


 食事中の、野良猫達を置いて家の中に入る。


「また何かあったら言ってね」


ドラ太

「ああ、お願いするよ」


 さて、うちらも飯にしますか。



 朝食はすでに、お母さんが用意してくれていた。


お母さん

「もう出来ているわよ」


「ありがとう、では、頂きます」


 朝食を食べながら、昨日書いた履歴書を確認する。


「お母さん、帰りにバイトの書類だしてみるよ、

そこの角のコンビニに応募してみるよ」


お母さん

「意外と急なのね、まあ、あそこのコンビニだったら安心だわ」


 手早く食事と、身支度を済ませた。


「うん、じゃあ、出かけてきます」


お母さん

「行ってらっしゃい」


「もしかしたら、遅くなるかも」


クロ

「まあ、働いてきな」


 そんな、面接当日から働くなんて事は無いと思うけど、

もし働く事になるなら、けっこうブラックなコンビニかもしれない。

 まあ、そんな事にはならないだろう。


「うん、じゃあ行ってきます」


 家を出ると、いつものように、小鳥たちが、

お隣の庭に集まっていた。




■小鳥に挨拶


 タイトルが、『小鳥に挨拶』ときた、

とても爽やかなイメージがする。


 会話の内容を考えなければ……



 小鳥たちに声を掛ける


「昨日の件よろしくお願いしますね」


雀A

「糞は、お前の家で(ふん)するという件だな」

雀B

「約束どうり、お前の家を糞まみれにしてやるよ」


「そういう事で、ひとつよろしく、では出かけてきます」


雀A

「……あいつ馬鹿だな」

雀B

「そうとうな馬鹿野郎だな」


 うーん、自分から面倒を買っているので、

馬鹿というのも一理ある、あまり反論できないな。

 もう少し良い方法もあったかもしれないけど……

 まあ、あの時は、この考えしか思い浮かばなかったから仕方ないか。


 帰ってきたら、家の掃除を頑張るかな。




■ランチタイム


 さて、午前の授業も終り、ランチタイムだ。

 真理子さんとのランチを早々に済ませて、

ブルとのスキンシップタイムの始まりだ。


 おっと、ブルの様子が少しおかしい


ブル

「ちょっとトイレに行きたいんだが、散歩に連れ出してくれるか?」


「真理子さん、ブルが散歩行きたいらしいんだ、

ちょっとそこら辺、出かけてきてもいいかな?」


真理子

「いいわよ、散歩が終わったら、いつもの場所に繋いでおいてくれる」


「かしこまりました、さあブル、行こうか」


ブル

「早く、急ぐぞ」


 引っ張られるように、校門を出ると、最初の電柱でブルが用を足し始めた。


「いや長いね、出すね、多いね、すごいね」


ブル

「昨日は散歩して無かったから、溜まってたんだよ」


「散歩しない日なんてあるの?」


ブル

「いつもは、家のお手伝いさんがしてくれるんだが、昨日は休みだったからな」


「真理子さんは散歩とかはしないの?」


ブル

「しないな、俺の世話は、ほとんどお手伝いさんに任せっきりだな」


「普通の家では毎日、散歩はするよ」


ブル

「そうなのか? あと、飯を少しくれ、昨日から食ってない」


「それは、ちょっと酷いな、毎日餌をもらえないの?」


ブル

「いや、貰えないときもあるだろう?」


「普通の家では、毎日貰えるよ」


ブル

「そうなのか、まあ、よそはよそ、うちはうちだ」


「いいの、真理子さんに抗議しようか?」


ブル

「しなくて良いよ、大丈夫だから、

ちょっと想像してみてくれ、まだ犬が野生で、人の世話になっていない時、

そんな時代は、自分たちで狩りをして、餌を確保していた」


「うん」


ブル

「でも、得物が必ず見つかるとは限らないだろ、狩りに失敗するときもある

少しくらい食べなくても平気なんだよ」


「……わかったよ、真理子さんには何も言わない、

でも、僕に言ってくれれば、そのときは餌を多くあげるからね」


ブル

「分かったよ、その時は頼むよ」



真理子さんは、以外と怠け癖があるんだな。

ちょっと酷いと思ったけど、ブルはあまり気にしてない様だから、

これ以上、騒ぎ立てるのは良くないかな。


今日は午後の授業がない、しかしやることがある。

うん、まあ、正確に言うと、やることが出来るかもしれない。




■バイトの面接へ


 大学の授業が終り、一端帰宅して直ぐに出かける。

家のそばのコンビニへ行く、ただ買い物へ行くのでは無い、

その目的は秘密、トップシークレットなのだ。

 はい、バレてますね、バイトの面接を受けようと思ってます。


 昨日も確認したけど、求人の張り紙をふたたび確認してから、店員さんに声を掛けてみる。


「すいません、バイトの面接を受けたいんですが、よろしいですか?」


店員A

「あ、はい、店長を呼んできますね」


 店の奥に、一端引っ込むと直ぐに人を連れて出てきた、店長らしき人だ。

 見た感じは、少し大柄で、笑顔が優しい、そんな印象を受ける。

 まあ、接客業だから、人当たりがよさそうなのは、当たり前かもしれない。

 ちょっと緊張してきた。


店長さん

「君がバイト希望の子? 履歴書とかある?」


「はい、書いてきました」


書いてきた、履歴書を渡す。


店長さん

「では、ちょっと軽めの面接をするよ、あまり緊張しなくても平気だよ」


「はい、よろしくお願いします」


店長さん

「ではちょっと付いてきて」


コンビニのスタッフ専用のドアを通ると、ちょっとした個室になっていた。

休憩室にもなっているようで、テーブルと椅子が数脚おいてある。


店長さん

「そこに座って、さて、うちのコンビニを選んだ理由は」


「すいません、これといった理由はありません、近いから選びました」


店長さん

「うん正直だねw、バイト選ぶ基準とか、まあそんなものだよね」


本当は『前々から、このグループのコンビニで働くのが夢でした』

とか言ってポイントを稼ぐのも手かもしれないけど、

ちょっと『コンビニのバイトが夢』とか、無理があるなと思った。

まあ、正直に話すのが良いと思う、たぶん正直なのが一番だ。



店長さん

「バイトの仕方、どういう風に働きたいかだけど、確認するよ?

ちょっと短めの時間、といっても4時間とか6時間とかでも大丈夫?」


「ええ、構いません」


店長さん

「休日とかはどう、出られる?」


「大丈夫です」


店長さん

「じゃあ、採用ねw」


「早いですね、良いんですか?」


店長さん

「いや、ちょっと、今は人手が足りてないんだ、バイトの穴埋めで、

いつもはオーナーが出てくれるんだけど、ギックリ腰やっちゃっててね」


「それは大変そうですね」

 ギックリ腰?どこか最近、聞いた気がする?


店長さん

「この後、時間空いてる? 空いてるなら少し働いていかないか?」


「大丈夫です、時間は空いています、

ですが経験の方が、なにぶん未経験なので……」


店長さん

「分かってるよ、今日は簡単なレジうちと掃除くらいで良いから

分らない事は全部、私か、先輩に投げてくれれば良いから」


「分かりました、できる事はさせてもらいます」


 という事で、初日から働く事になってしまった。

 心の準備は出来てなかったけど、働き出すのが数日早まったと思えば良いかな。


 そして、バイトが始まる、まずレジの打ち方(基本編)を教わった。

 間違えた時の商品のキャンセルの仕方が面倒い、

有無を言わさず、買わせてしまえば良いのに。

 一度レジを通した商品は、何が何でも買って貰う……


 はい、訴えられますね、訴訟を起こされますね。

 僕が手順を覚えれば良いだけの話です。


 そして清掃、まあ、これは大丈夫だ、家でやっているのと大差なかった。


 こんな感じで、ドタバタとしていると、

あっという間に時間が過ぎて初日のバイトは終わった。


 そして、明日は土曜で大学は休日。

 休日という事で、さっそくシフトを入れられてしまった。

 もしかしたら、ブラックな環境のコンビニかも?


 まあ、でも、店長さんは、優しそうな感じで良かった。

 あの人の下なら、このバイトは続けられそうな気がする。

 続けられるかどうかは、人間関係とかの方が重要だと感じました。


 さてと帰りますか。




■帰還


 つかれた、立ちっぱなしだと、やっぱり疲れる。


 本当なら庭の掃除、鳥の糞の掃除をしなきゃならないんだけど、

さすがに暗すぎる、明日、明るくなったらやろう。



「ただいま、つかれた~」


母さん

「バイトどうだった、もしかして初日から働いたの?」


「うん」


母さん

「どう、続きそう?」


「今のところ、まだ始めたばかりで分からないけど、続けられそうな気がする」


母さん

「そう、まあしばらくは頑張ってみたら」


「そうするよ、ところで父さんは凄いね、こんな感じを毎日か……」


母さん

「でもあなたも社会人になったら毎日こういった日々を送るのよ」


「そうだね、少し慣れる為にも、バイトは悪くないかな」



自分の部屋に戻って、ぐったりとしていると、クロがやって来た。


クロ

「来客だぞ」


「野良猫公園の3匹かな」


クロ

「そうだ、おそらく餌だろうな」


「分かった、今行くよ」



庭に出ると、野良猫達が待っていた。


「遅れてごめんね、餌かな?」


ドラ太

「そうだ、悪いないつも」


「気にしないで、それより今日から働く事になったから、

これから帰りが遅くなるかもしれない」


ヒゲマユゲ

「うちらの為だったら、わざわざ働かなくても良いぜ」


「いや、半分は自分の為だから気にしないで、

近くのコンビニで働くんだけど、分かるかな?」


ミケ子

「あそこか、分かるわよ、いつも餌貰ってた場所のひとつだからね」


「そうなの?」


ミケ子

「今はギックリ腰で入院しているけど、餌をくれるおばさんは、

あそこで勤めているわよ」


「そうなんだ、会ったら挨拶でもしてみようかな、そうだ

もし家にいなかったら、コンビニの方へ顔を出してくれる?」


ドラ太

「良いぜ、頼りにしてるからな」


「任せて、僕に全てを頼ってよ」


ヒゲマユゲ

「でも、頑張りすぎるなよ」


ドラ太

「特にギックリ腰は酷いからな、お前も気を付けろよ」


「分ってますって、そんなに無理しないから大丈夫」



『頼りにしてる』なんて言われちゃった。


 しかし、人脈も広がったな。

 人じゃないので、人脈って言い方が、おかしいかもしれないけど。


 まあ、とにかく世界が広がった気がする。

 それに伴い、責任も増えた気もする。


 とりあえず、バイトとか色々と頑張りますか。


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