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自己紹介してます

■夜の集会


 夜になると、クロが『連れていきたい場所がある』と言って来た。

 僕は、クロの後について出かける事にした。


「クロ、どこに行くの?」


クロ

「近くの公園あるだろ?」


「野良猫が、よく集まっている公園?」


クロ

「そうだ、あの場所で今晩、集会がある」


 俗に言う猫の集会というやつだろうか?

 どんな事が行われているのか、気になる。非常に気になる。


「まあ、大した事では無い、

あの公園を根城(ねじろ)にしている猫は、今は3匹いる、

紹介をしておこうと思ってな」


 おっと、話しているうちに、公園に到着する。

 到着すると、既に猫が3匹並んでいた。


 少し、太っちょの虎猫が、こちらを見るなり、

威嚇するような、大きな声で話しかけてくる。

「どうした、人間と一緒なんて」


クロ

「お前らに紹介したくて、連れてきた、

どうやら先日から、我々の言葉が解るようになったらしい」


 少しやせ気味の、斑猫(ぶちねこ)が嫌そうに、口を開いた。

「うそだろ、冗談はやめろ」


 三毛猫が呟く

「その人、いつも独り言を喋ってる人でしょ、たまたま会話が成立しただけでしょ?」


クロ

「本当だ、事実だからしょうが無い、

試しに喋ってみるか、その方が早そうだ、(あるじ)みんなに挨拶をしろ」


「どうも、森川ゆうた、と申します、以後よろしくお願いします」


クロ

「さて、あの一回りデカイ虎猫が、この公園のボスの『ドラ太』、

あそこに居る、斑猫が『ヒゲマユゲ』、黒い模様が髭と眉にみえるだろ?、

そして、三毛猫の彼女が、『ミケ子』だ」


「よろしく、ドラ太、ヒゲマユゲ、ミケ子」


ドラ太

「話が通じている様だな……」


ヒゲマユゲ

「……俺は信じないぞ」


クロ

「俺も、最初は信じられなかったが、通じるモノはしょうが無い、

ちょっと試そう、少し復唱をしてみてくれ」


「分かった」


クロ

「僕はクロ様の下僕です、何なりとご命令下さい」


「『僕はクロ様の下僕です、何なりとご命令下さい』」


ミケ子

「私はミケ子さまの忠実なる下僕です」


「『私はミケ子さまの忠実なる下僕です……』なんてこと言わせるんだ」


ミケ子

「餌はくれる?」


「餌はあげますよ」


ミケ子

「毛づくろいは?」


「ブラッシングさせて頂きます」


ミケ子

「マッサージは?」


「マッサージもさせて頂きます」


ミケ子

「お願い事は、聞いてくれる?」


「できる限り、お願い事にお答えしますよ」


ミケ子

「じゃあ、下僕じゃない」


クロ

「まあ、端から見れば下僕だな」


「ぐぬぬ」



ミケ子

「話が通じるとして、なんでココに連れてきたの?」


クロ

「もちろん、紹介もあるが、何か困った事があれば、

こいつを頼ってくれ、どうにかしてくれるだろう」


「そんな話、聞いてなかったけど?

急に頼られても困ってしまうんだが……」


クロ

「では、主は頼りに出来る存在か、頼りにならない存在か、どちらだ?」


「頼りになる存在です、そうです僕を頼って欲しい!」


ヒゲマユゲ

「……ちょろいな、その人間、

でも今は、困っている事は特にないけどな」


ドラ太

「餌は、近所に居るおばさんから貰っているから、

今のところは大丈夫だ」


「ああ、噂にはなってます、通称『猫おばさん』っていう人ですよね?」


ヒゲマユゲ

「そう、ただ最近はちょっと体の調子が悪いらしいけどな……」


ドラ太

「まあ、もし何かあったら、頼りにするかもしれん」



「そういえば、他に動物の話が解るとか、そんな話聞いたことありますか?」


ドラ太

「俺は知らないが、そういった話は、長老に聞くのが良いだろう」


「長老?」


ヒゲマユゲ

「この界隈では、一番の物知り、

まあ結構な年の老犬がいる。

彼を訪ねてみるのが、早いと思うぞ」


「じゃあ、長老に話しを聞きに行くかな」


クロ

「今、どこに居るか知ってるヤツは?」


ドラ太

「そういや、最近、長老の姿を見ないな」


ヒゲマユゲ

「かなり年食っているから、くたばったかもな」


ミケ子

「マックスのヤツなら知っているかもね」


クロ

「そうだな、マックスの所へ行ってみるよ」


 さて、こんどはマックスという人物?が出てきた。

どんな人?だろう。


クロ

「さて主、マックスの所へ案内しよう」




■空き家の番犬


 公園を出て、マックスという人物? に会いに行く途中

クロから話しかけられた。


クロ

「ところで主、少しお金持っているか?」


「なんで?、何か欲しいものでもあるの?」


クロ

「これからマックスという、犬に会いに行くんだが、

出来れば差し入れを持って行ってやりたい」

「途中にコンビニにでも寄って、餌を買っては貰えないだろうか?」


「いいよ、とびきり旨いやつを買うよ」


クロ

「いや、質より量で頼む、大型犬だからな。

あと、おやつじゃなくて、飯を頼むぞ」


「解った、じゃあちょっと店に行ってくるね」


 という訳で、途中でコンビニに寄って、犬の餌を購入する。

 質より量という話だったので、一番デカイやつを買った。


 猫の餌と比べると、かなり安かった。

 本当に安かった、こんなに安くて大丈夫かと、そのくらい安かった。

 何が入っているのか、解らないくらい安かった。

 それは本当に肉かというくらい……


 はい、しつこいですね、話を進めます。



 犬の餌を購入したあと、クロについて歩いて行く、

 徒歩10分も歩かないうちに、ある家にたどり着いた。


クロ

「この家だ」


 その家には、『売り家』と書かれていた。

 夜なのに明かりは一切付いていない。

 人の気配は、まったくしない。空き家だ。


「本当に、この家なの?」


クロ

「ああ、間違いない、入るぞ」


 クロの後をついて行く、家の脇を抜けると、そこは裏庭だった。

 大型の犬がそこには居た、犬の種類は詳しくないが、多分ボクサー犬だと思う。


 普通なら、かなりのプレッシャーを感じると思うが、

そこまで威圧的では無かった、その理由は元気が無い様に見えたからだ。

 体つきも、若干痩せていた。



痩せ気味の大型犬

「近寄るな、殺すぞ」


クロ

「殺すとは、穏やかではないな、

まあ、今日は良い話を持ってきた」

「主、餌を頼む」


 僕は、空の餌の容器に、買ってきた犬の餌を移す。

 空き家の水道は、まだ使える状態だった、飲み水も用意しておく。

 これで、食べやすいハズ。


クロ

「まあ、とりあえず食べてくれ」


痩せ気味の大型犬

「施しなど要らぬ」


 強がっているが、涎はダラダラと垂れていた。

 かなり空腹状態にあるのだろうが、プライドがそうさせないのだろう。


クロ

「まあそういうな、ところで主、この犬の名前はマックスという」


マックス

「何を喋っている、人間に何を言っても無駄だろう?」


クロ

「主は、普通とはちょっと違う、何か困った時には、こいつに頼め」


マックス

「その間抜けそうな人間か」


「はい、間抜けです」


マックス

「ん、こいつ自分で間抜けとか言いやがった、本当に間抜けだな」


クロ

「ニヤッ」


「はい、本当に間抜けな人間です」


マックス

「……」


クロ、森川

「ニヤッ」


マックス

「こいつもしかして、言葉通じている?」


「はい、もしかしてな人間です」


クロ

「『普通とはちょっと違う』と言っただろう」


マックス

「馬鹿な、我々動物の言葉は、人間には通じないハズ」


クロ

「そう、人間は知能が高いからな、普通のヤツには通じない、

でも主には話が通じる」

「なんで会話が通じるのか、ひとつ仮説を立ててみた」


マックス

「どんな仮説だ?」


クロ

「知能の差に隔たりがあると会話できない、つまりだ、

知能が我々と同じレベル、つまり動物並みの知能同士なら

会話できると思わないか?」


マックス

「なるほどな、一理ある」


「酷いな、そんな風に考えていたのかよ?」


クロ

「冗談だ」


「よかった冗談だったか」


マックス

「先の発言、『本当に間抜』という発言は訂正しないぞ……」


「???」


マックス

「猫に言いくるめられて居るじゃ無いか、解らないのか!」


「なにか言いくるめられた?」


クロ

「そんな、主を騙すような事は言ってはいないぞ」


「だってさ」


マックス

「はぁ、もういいや」



クロ

「ところで、長老の居場所知っているか?」


マックス

「いや、最近は見ていないな」


クロ

「餌を袋ごと置いておくから、もし長老に会ったら食わせてやってくれ」


マックス

「分かった、見かけたらそうするよ」



「ところで、なんでこんな事になっているの?」


マックス

「こんな事とは?」


「家が留守のようだけど、かなりの間、人が居なさそうだけど……」


クロ

「一言で言えば、捨てられたんだ」


マックス

「まあ、そういう事だな、

家を移る、『引っ越し』と言うヤツだな

引っ越し先では犬は飼えないんだと言っていた」


「酷い」


マックス

「そう言うな、主にも色々とあるんだろう」


「うちに来ない、うちの犬にならないか?」


マックス

「申し出はありがたいが、ここでもう少し待ってみるよ」


「そうか、でも気が変わったら何時でも家に来てね」



クロ

「少し変わってるだろ?」


マックス

「ああ、少し変わっているな」


「???」


クロ

「あと、餌が無くなったら知らせてくれ、主が買い足すから」


「餌は安かったから、いくらでも食べてよ」


マックス

「すまないな、少し甘えさせて貰うよ」



 こうして、マックスとの信頼を、ちょっぴりだけ勝ち取った。


 しかし、いくら安いとはいえ、

この先、色々と、お金が要るかもしれない、

バイトでも始めてみようかな。


 さて、とりあえず今日は、家に帰るか。


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