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会話が出来るという事

■動物との会話ができるようになったのだが・・・


 僕の名前は、森川ゆうた。

 昨日の朝から、なぜか動物の言葉が解るようになってしまった。


 その理由は、きっと神さまが、

この能力にふさわしい、優しい心の持ち主である僕に、

必然的に与えてくれた力、としか思えない……


 ……嘘です、まったく解りません。身に覚えもありません。

 神様、できる事なら教えて下さい。



 しかも、動物たちは想像とは違った事を喋っていた。

 なんというか、こう、冷たいのである。無慈悲なのである。


クロ

「クソあるじ飯をくれ」


ほら、こんな具合に。


「何味の猫缶がいい」


クロ

「なんでもいいよ」


「じゃあ、マグロね」


クロ

「いや、今は、マグロの気分じゃない」


「じゃあ、カツオね」


クロ

「いや、今は、カツオの気分じゃない」


「じゃあなに?」


クロ

「鳥肉でいいや」


「それなら最初から、鳥肉って言ってよ」


クロ

「聞かれるまで考えてなかったからな、

しかし会話ができると便利だな」


鳥肉の猫缶を空けて、クロに差し出す。

さてと、僕も朝食にしますか。

母さんが作ってくれた朝食を食べ始める。


母さんが心配そうに声をかけてきた

「なにか、独り言が多くなっていない?」


「大丈夫だよ、ちゃんと会話になっているから」


母さん

「そうなの?」


母さんは、納得の行かない顔をしていた。

まあ、そうだね、そうなるよね。

おかしな人に見えるよね。



猫缶を平らげるとクロが話してきた。


クロ

「そうそう、いつも会っている犬くらいには、会話ができることを

伝えて置いたほうがいいんじゃないか?」


「どうして知ってるの、犬に会ってるって?」


クロ

「いつも犬臭いだろ?」


「そうか犬臭いのか、まあ伝えてみるよ」


食事を終え、朝の身支度を済ますと、僕は大学へと向かった。


「母さん、クロ、では行ってきます」


クロ

「行ってこいよ、帰ってきたら少し話しがある」


「なんだろう? わかったよでは改めて、行ってきます」


母さん

「……あの子ちょっとおかしいわね、いよいよダメなのかしら?」




■おとなりさんの鳥模様


 家を出ると、相変わらず、おとなりさんに野鳥が集まっている。


 今日は、ちょっと珍しい鳥が来ている、メジロだ。


 緑色で、小型でかわいらしい体をしていて、

ちょこちょこと、動いている。

 名前通り、目の周りは白くなっていて、

ちょっとチャーミングな感じがする。


 そのメジロが、庭の中央の餌場で、一羽で食事を取っている。

 ほかの雀や鳩たちは、周りでその様子を見ている。


 一見すると、ほほえましい光景だろ?

 だが、真実はちょっと違った。



メジロ

「スターである、このメジロ様が、

今年もこの、しょっぱい庭にやって来てやったぜ!」


 だいぶ横柄な態度を取っているようだ……


メジロ

「俺みたいなスターが来るから、ここに餌が用意されるんだぜ!」

「そして、おまえら、どこにでも居る格下の鳥たちが、

おこぼれの餌にありつける訳だ、

心の底から、このスターであるメジロ様に感謝しな!」


雀A

「ぐぬぬ、言い返せない」

雀B

「悔しいが、ヤツが食い終わるまで我慢しよう」



……鳥の世界も、あまり楽ではないらしい。




■ランチタイム


 ランチタイムは、真理子さんと、いつも通りのランチを取る。

今日は必須科目の授業がないので、午後は少し時間が空いている。


 ここで、真理子さんに、とある提案する、とても重要な提案だ。

 サプライズ発表と言っても良い。


「午後、少し時間があるんだけど、ブルの散歩してきて良い?」


真理子さん

「いいわよ、いつもブルを、繋いでる場所わかる?」


「わかるよ」


真理子さん

「じゃあ、散歩が終わったら、その場所に繋いでおいてくれる?」


「了解しました、ではブルとの散歩に行ってきます」


 この隙に、ブルに言葉が解るようになったことを伝えて置きたい、

伝えた結果、どうなるか、解らないけど……



ブル

「おっ、散歩か、ちょうど、しょんべん行きたかったんだ」

 ブルがグイグイとリードを引っ張っていく

 僕は逆らわずに、ついて行く。


「ところで、ブル、相談があるんだけど」


ブル

「おっ、出たな、いつもの独り言」


 ブルは電柱にオシッコをかけ始める


 いきなり、本題を切り出そう。

「僕、動物との会話ができるようになったんだ」


ブル

「だから、いつもの独り言だろ?」


ブル(森川の腹話術)

「『だから、いつもの独り言だろ?』」


ブル

「ん? まさかな」


ブル(森川の腹話術)

「『ん? まさかな』」


「ちゃんと、聞こえてますよ」


ブル

「なんだって、しょんべん止まっちまったじゃねーか」


ブル(森川の腹話術)

「『なんだって、しょんべん止まっちまったじゃねーか』」


ブル

「いや、そこは、繰り返さなくていいだろう?

会話の流れに関係ないし」


「ですよね、僕もそう思ったんですが、

もしかしたら重要な意味を含んでいるのではないかと思いまして」


ブル

「本当に重要な意味が含んでると考えているのか?」


「いえ、思いません……」


ブル

「反省しろよ」


「反省します」



ブル

「はぁ、しかし本当に会話ができるんだな。

ところで、いつから喋れるようになったんだ?」


「おそらく、昨日です」


ブル

「何が原因で喋れるようになった?

何か思い当たる出来事はあるのか?」


「それが、ないんですよね

他に動物と喋れるような人いました?」


ブル

「居るわけ無いだろう、初めてだよ」


「ですよね、僕も動物と会話が出来る人なんて、知りません」


ブル

「そうか? 以前の、喋れなかった頃のおまえも

『動物と会話出来る』って自慢してたじゃないかw」


「それは言わないで!」


痛いところを突かれてしまった。

しかし、こんな感じでブルと打ち解ける事ができた。

思ったよりも、この事実を、冷静に受け止めてくれたみたいだ。



ここで、気になることがある、とても気になる質問だ。

聞かずにはいられない。


「ブルは、真理子さんの事、どう思ってるの」


ブル

「絶対的な主人、絶対的な支配者と言って良い、

絶対に逆らえないよ」


「したっているのかな?」


ブル

「慕ってるというより、支配下といった方が正しいかな、

犬の世界だと、上下関係は絶対だからな」


「いろいろと、あるんだね」


ブル

「色々と、あるんだよ」


「猫とは違うね」


ブル

「あいつらは自由だからな、そういう所は、ちょっとうらやましい」


おっと、そろそろ真理子さんの授業が終わる、戻らないと


「そういえば、もし、僕で良ければだけど、

何かあったら相談に乗るよ」


ブル

「ああ、何かあったら相談するかもな」


こうしてブルと打ち解けた後、僕は大学を後にする。

いつもの寄り道の場所へと向かう。

 



■野良猫公園


今日は、猫がいない、おっと一匹いたけど寝てるな

無理に起こすのは悪いから、そっとしておこう。


朝、出がけにクロが「帰ってきたら少し話しがある」と言っていたし、

今日は早く帰るか。




■自宅にて調べ物


「ただいま~」


母さん

「お帰りなさい」


 今日は、クロのお出迎えは無いようだ。


「母さん、クロどこに居るか知っている?」


母さん

「リビングで寝ていたわよ」


 朝、出がけに「帰ってきたら少し話しがある」と言っていたが

お構いなしに寝ている。猫は気まぐれだ。

 まあ、起こすのも悪いし、ちょっと調べたい事もあったから、

そっちを優先にするか。


「母さん、自分の部屋に居るから、クロが起きたら伝えておいてくれる?」


母さん

「……分かったわ」



僕は自室に行くと、パソコンを立ち上げた。

ちょっと調べたい事がある。

動画検索サイトを開くと、まず、『猫 会話』と打ち込む。


 猫が喋っているような動画が表示される。

 さっそく再生してみる。


「ニャーニャー、ニャー、ニャニャニャー」

 なるほど。


 続いて、『犬 会話』と打ち込む。

「ワンワン、ワワワン、ワン」

 なるほど。


 続いて、『鳥 会話』と打ち込む。

「オハヨウ、オハヨウ、コンニチハ」

 なるほど、ってこれはオウムが普通に喋ってるな、

これじゃあない。


 『鳥 鳴き声』と打ち込む。

「チュン、チュン、チュン」

 なるほど。


 まったく何言っているのか、サッパリ分からない。

 そういえば、クロと会話して居るときも、鳴いている訳ではないな。

 どういう理屈なのかな?


 考え込んでいると、クロが起きてきた


クロ

「珍しく、なにやら考え込んでいるな?」


「珍しいは余計でしょ、それよりちょっとコレを見てくれる?」

といって、猫が鳴いている動画を見せる。


「なんて言っているか分かる?」


クロ「分からん」


「猫同士でも分からないのかぁ」


クロ

「鳴き声からでは、分からんよ、その場に居ないとな」


「うーん、会話というより、どっちかと言うとテレパシーみたいな

超能力に近いのかな」


クロ

「そうだな、どちらかというと感覚的なモノに近い、

ただ、考えが分かる、筒抜けになる、という訳では無いぞ、

こちらに伝えるという意思がないと、伝わらない

そこら辺は声に出して喋る時と同じだな」


「ふーん、ところで話が通じるのは、猫同士だけなの、

犬とか他の動物の間でも通じるの?」


クロ

「通じてるよ、猫、犬、鳥の間では通じている

そこら辺はあるじもいっしょだろう」


なるほど、動物たちの間では、会話が出来ているのか。

すると、ふと嫌な事を考えてしまった。


「あっ、ちょっと聞きにくい事なんだけど」


クロ

「なんだ?」


「猫と鳥の間でも会話出来るんでしょ?

猫って、鳥とか狩りをして食べるじゃない……」


クロ

「そうだな俺は餌を貰っているから、狩りはしないが、

野良猫の中には食べるヤツもいるな」


「なんか、嫌な気分にならないの?

感情的というか、なんというのか……」


クロ

「ああ、要は、これから食べる相手が喋るという話か、

もちろん、嫌な気分にはなるさ、

罵倒されたり、時には命乞いもされるらしい」


「そこら辺、なんとかうまくやれないのかな、こう、もっと平和的に」


クロ

「……例えばの話をしよう、ごはんが喋ったとする、命乞いをしてくる。

腹が膨れている時は、見逃そう、という気分にもなるだろう」


「うん」


「だが、何も食わずに2日、3日と過ぎて来ると話は違ってくる、

このまま行けば、飢え死にをするだろう。

その状態で、『ごはんが喋っているから可哀想で食べられません』

と言えるだろうか?」


「……無理だと思う、多分食べるよ」


クロ

「まあ、そういう事だ」

「それに鳥肉なら、主も食べているだろう?」


「なるほどね、そうだよね」

少し考えさせられた。



クロ

「それより、この後、ちょっと主を連れていきたい場所がある、付いてくるか?」


「うん、付き合うよ」

さて、どこへ連れて行かれるのだろう?

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