表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

非日常の日々の始まり

■朝の日課


 トンッ、僕の布団の上に重みが掛かる。

 朝だ、クロが起こしに来てくれた。


クロ(森川の腹話術)

「朝でございます……、クソ主人(あるじ)


「ん?」


 いま、クソとか、くそとか、糞とか汚い言葉が出てきた気が……

まあ、気のせいか?


 うわ、なんか、ものすごい寝汗をかいている、

尋常じゃないくらいの寝汗だ。

 体がぐっしょりと湿っている。


 そんな寝苦しい夜では無かったのに、

気温が高い訳でもないし、

湿度が高い訳でも無い。


「なんか体調でも崩したのかな?」


 これは先にシャワーを浴びますか。



 シャワーを浴びに行くために台所を通過する。

台所には母さんがいて、朝食の用意をしてくれている。


「ちょっと、寝汗が凄かったから、朝食の前にシャワー浴びてくるよ」


???

「早く済ませろよ、飯まだなんだから」


 ドスの聞いた、別人のような声が帰ってきた。

どうやら母さんは、機嫌が悪いな、父さんと喧嘩でもしたのかな?

 下手に理由を聞くと、ややこしいことになりそうだ、ここはスルーして置こう。


僕は素早くシャワーを浴びて出てきた。



母さん

「あら、シャワー早かったわね」


「ん?」

 あなたが急がせたんじゃ無いですか?

 まあ、下手に逆らうような事をして、逆鱗には触りたくはない、ここもスルーで。


さてと、クロの朝食も用意しますか。


???

「クソ早くしろ、ちんたら準備してんじゃねーぞ」


やばい、母さんやばい、これはやばい

昨日の夜、確実に何かあったな。

僕は超特急で、クロの餌の準備をした。


クロ(森川の腹話術)

「大変美味でありますが、肉か、今はマグロ味が食いたい気分だが、まあこれで我慢してやる」


「んん?」

変な声が出てしまった。


気のせいか、ヴェントロキズム(腹話術)の調子が悪いのか?

余計な事まで喋らせてる気がする、これはもしかして……


母さん

「ほら朝食出来たわよ」


「はい、謹んで食べさせて頂きます」


そんなことより、母さんがヤバい、母さんの逆鱗に触れる方がヤバい

当分は、控えめにやり過ごそう。



さて、朝食も終えたので、準備をして大学に向かう。


いつも通り、クロが、お見送りしてくれる。


クロ(森川の腹話術)

 「いってらっしゃいませ、ご主人様、途中でくたばるなよ」


「……行ってきます」


 今日はどうも調子がおかしい。




■おとなりさん


玄関を出ると、お隣さんの家に、相変わらず小鳥たちが群がっている。

おばあちゃんが、いつものように鳥の餌を準備していた。


雀A(森川の腹話術)

「おばあちゃん、餌の準備してるよ」

雀B(森川の腹話術)

「すてきな餌ありがとう、早くよこせよ、ちんたらしてんじゃねぇ、オイボレが」


 なんかあかん、あかんな、あかんかも。

 後ろの雀たちの声が、少しでも早く聞こえなくなるように、

早足で大学へと向かった。




■大学での、ランチタイム


午前の授業が終わり、定例のランチタイム

今日も理事長の娘さんの、真理子さんと会う。


いつも、たいした話はしていないが、

今日は、自分の体調の話題になってしまった。


「なんか、今日、喉の調子とか悪いかもしれない?」


真理子さん

「風邪なの?」


「いやそうじゃない、腹話術の調子がおかしいんだよ」


真理子さん

「まあ、そのくらいなら、大丈夫なんじゃないかな?」


「うん、まあそうかな、大丈夫かな、特に喉が腫れている訳でも無いし」


いつもは楽しいブルとの時間だが、今日はちょっと心配だ。

 まずは、軽くなでさせて頂く。


ブル(森川の腹話術)

「べたべた触りやがって」


「あっはい、すいません」


いつもはこれでもか、となで回しているが

今日は早々に切り上げて、ブラッシングに切り替える



ブル(森川の腹話術)

「ブラッシングだけはうまいなこいつ」


「お褒めに預かり、恐悦至極に存じます」

やった、ブラッシングの腕はあるようだ。

ブル様に認めてもらった。


一通りブラッシングをやり終えたら、おやつをやる


ブル(森川の腹話術)

「味は良いが、量が少なすぎる」


「ははー、次回はもう少し、量を増やさせて頂きます」



ちょっと心配そうに、真理子さんが話しかけてくれた。


真理子さん

「森川君、体調悪そう、今日、腹話術やらないの?」


「うん、なんか体調あまり良くないみたい」


真理子さん

「風邪でも引いたの?」


「そういう訳じゃ無いけど、なんか調子が悪い」


真理子さん

「ブルに風邪が移っちゃうかもね」


「そうだね、ランチタイム、未だ少し余ってるけど、今日は早めに分かれようか」


真理子さん

「そうしようか」

「森川くんも、早く帰って寝た方が良いよ」


 さてと、なんか調子が悪くなってきた気もするが……

 体調的には、問題、無さそうなんだよな……

 心の病か?まさか?そんな?ばかな?


 まあ、いいや、そんな事は置いておいて、

必修科目のあの授業だけは受けておくか。


 この体調不良より、あのつまらない授業が、よほど問題だ。




■親友との再開


「よう、久しぶり」


葉矢水

「昨日も会ったろ、って、この挨拶もうそろそろ変えないか」


「そうね、変えたいね~」


と言って、机に突っ伏す


葉矢水

「なんだ、元気ないじゃねーか」


さすが大親友、直ぐに見抜かれてしまった。


「なんかおかしいんだよ、

なんかこう、動物の気持ちが聞こえてきてさ」


葉矢水

「いつも、動物だちの気持ちが解るって言ってるじゃねーか」


「そうだよ、そうなんだけどさ、聞こえてるような気がしてさ」


葉矢水

「いつもどうりじゃん」


「いや、ちがうんだよ、建前と本音と言おうか」


葉矢水

「いつも本音が解るんじゃないのか?」


「そう、本音が解るんだけどね、違うんだよ」


葉矢水

「良くわかんねーな、何が言いたいんだよ、おっ教授がきた」



そして、つまらない授業が始まり、終わる。



葉矢水

「何というか、おまえ、大丈夫か?

体調が悪そうだから、早めに寝た方が良いんじゃ無いか?」


「うん、そうするわ」


葉矢水

「じゃあまたな」


今日は自宅へと、まっすぐ帰宅する事にする。




■野良猫公園


 まっすぐ帰宅する途中、必要最低限の寄り道をする、

野良猫公園への寄り道だ。


 傷ついた心をいやしてもらうため、必要な寄り道だ、

どのような薬、漢方薬、処方箋よりも、動物たちが心を癒やしてくれる。


 この公園に寄ることは、体調不良を改善する事に必要不可欠と言っても良い。

運命が必然的に、この公園へと足を向かせた。


 ……はい、僕が寄りたいだけですよ。

 猫に餌をやりたいだけですよ。



 今日の野良猫達は機嫌が悪いらしい。

 僕の姿を確認すると、プイッと顔をそらして、別な場所に移動する。


野良猫(森川の腹話術)

「おっ、いつもの変なにーちゃんだ、

今日は満腹だから無理して近寄らなくていいや」


 これがツンデレ、いやいや、デレの部分が全くないじゃ無いか

デレ成分は、ゼロだ、むしろマイナス、

ちょっと嫌われてるくらいの感じさえする。


 ええ、薄々解っていました。

 多分、そんな風に思われていると思ってましたとも。


 あれ、目から水が垂れてきた……

 ……さてと帰宅しますか。




■一日の終わり


家に着くと、クロがお出迎えにきてくれた。


クロ(森川の腹話術)

「お帰りなさい、クソ主人(あるじ)


「出迎えご苦労、

ところで今晩は何味の猫缶が食べたい?」


クロ

「今の気分はマグロだな」


「そうかマグロか、って喋ってないか?」


クロ

「じゃべってないよ、というか

聞こえるわけ無いじゃ無いか」


「そうだよな、聞こえないよな」


クロ

「うん、そうそう」


森川・クロ「喋れてるじゃねーか!!!」


 まさかとは思ったが、動物の言葉が解る。

 聞こえていた声は、動物の声だったという訳だ。

 そして、今日一日、動物の声を聞いて、急に不安になってきた。


 非常に気になる質問をする、質問をせずには居られなかった。


「クロは僕の事をどう思ってるの?」


 どんな答えが返ってくるのか、不安だ。

 しかし、今まで築いた信頼関係がある。

 不安と期待が入り交じる。

 頼むから、夢や希望がある、答えが返ってきてくれ。


クロ

「餌をくれる人」


「……もっとあるでしょ」


クロ

「危なっかしいヤツ」


「それどういう意味?」


クロ

「まあ目の離せない子猫みたいなモノだ」


「いや、そんことないでしょ、ほら、毎日遊んであげてるじゃん」


クロ

「あれは、俺が遊んでやっているんだ」


 ……これが、動物たちの、本当の声という訳か



クロ

「ああ、あと便利なヤツだとは思っている」


「そんな、僕の事を道具くらいにしか思ってなかったなんて」


クロ

「いや、家族だとは感じて居るぞ」


「ほんとう?」


クロ

「でも、序列でいったら俺の方が上だがな」


 そうですよね、薄々感じていました、薄々解っていました。



「うわああああぁぁ」


 いろいろと想像していたモノとは違った。

 もっとフレンドリーだと思ってたのに、

 もっと愛されていたと思ってたのに


 僕は自分の部屋に駆け込むと、

直ぐに……


クロ

「ちょっと良い?、俺の飯がまだなんだが」


「ああ、そうだ、何味が良い?」


クロ

「今の気分はカツオだな」


「さっきマグロって言ってたじゃ無いか」


クロ

「今の気分はカツオなんだ」


「じゃあ、カツオを用意するね」


 そういってカツオの猫缶を空けて、クロへ差し出す。

 猫は、まったくもって気まぐれだな。



さて、さっきの続きだ。


「うわああああぁぁ」


 いろいろと想像していたモノとは違った。

 もっとフレンドリーだと思ってたのに、

 もっと愛されていたと思ってたのに


 僕は自分の部屋に駆け込むと、

直ぐに、布団へと潜り込んだ、

そして子供の様に泣きじゃくった


 気がつけば泣き疲れて、寝ていた。




 ~ そして翌朝になる ~


「トン」

 いつもの重みで起こされる


 そうか……

 ……夢だったか

 嫌な夢だった……。

 落ち着いて考えれば、かわいらしい動物だちが、

あんな汚い言葉を言うわけ無いか。


 しかし、今、考え直したら、もったいない事したかな、

クロと話せるんだったら、例え夢の中でも、

もっと色々な会話をして置けば良かった……






クロ「起きたかクソ(あるじ)



 ……夢じゃなかった


 こうして僕の、非日常の日々のが始まった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ