頼らさせて下さい
朝の散歩
朝が来た、今日は、大学もバイトもお休み、
マックスの世話と、長老の散歩が済んで、これから庭の掃除をする所だ。
なんか、ここの所、うちの庭にはタバコの吸い殻が多い。
どうやら吸い殻を捨てていく人がいるらしい、まったく、ちゃんとマナーは守ってもらいたい。
庭の掃除を終えて、ゆっくり家で過ごすかな。
などと、この時は考えていた。
しかし今日はこれから、大変な事に巻き込まれていく。
■深刻な朝食
朝食を取ろうと台所に降りてきたら、お母さんとお父さんが居た。
ちなみにお父さんは県議会議員をしていて、今日はお休みです。
でも、普段とはちょっと違う、お父さんが頭を抱えて険しい顔をしている。
何か仕事でマズイ事でも有ったのだろうか?
「どうかしたの?」
お父さん
「すまない、やられた、最悪の事態だ」
「何があったの?」
お父さん
「先日、たまたま学生時代の同級生と会って、居酒屋で飲んだんだが、
その場面を、フリーの記者に写真を撮られてしまった。
その同級生が建築会社の社長でな、談合疑惑という記事で凸凹出版の雑誌社に売り込むらしい」
「そんなのでっち上げじゃない」
お父さん
「そうだ、捏造だな、だがマスコミは話題になればそれで構わないだろう。
しかも記者が最低な奴で、私に口止め料を要求してきた、
口止め料を払えば『雑誌社への持ち込みは辞める』と言ってきた」
「払う必要ないよ、お父さんの方が正しいんだから」
お父さん
「ああ、私は談合などしていないから、口止め料の支払いは拒否するつもりだ、
しかし下手をすると、県議会議員という職を失うかもしれない」
お母さん
「あなた、家の事は考えずに、正しいと思う事をして下さいね」
「僕ももしもの時は、大学を辞めて働くよ」
お父さん
「ああ、すまないな」
こうして、重苦しい空気で朝食を取った。
朝食をなんとか終えて、部屋に戻ろうとした時に、
クロが声を掛けてきた。
クロ
「話は聞いていたぞ、大変な事になったな」
「どうしよう、僕に出来る事はあるのだろうか?」
クロ
「長老に相談しよう、何か助言をくれるかもしれん」
藁をも掴む思いで、長老の元へ行く、
そして、ここまでの出来事を説明した。
長老
「うむ大体の話は解った、これは一人では解決できんな」
「そんな」
長老
「『一人では』といったじゃろ、周りの力を頼りなさい、
みんなで協力すれば、解決できるかもしれんぞ」
「なるほど」
長老
「まずは、その記者の連絡先か名前じゃな」
「お父さんが教えてくれるかな」
クロ
「どうかね、まあ駄目な時は俺がなんとかするさ」
「???」
とりあえず、お父さんの所へ行こう。
リビングへいくと、お父さんは、携帯をじっと睨むように見つめたまま、そこに居た。
多分、記者からのメールを見て、考えているんだろう。
「お父さん、その記者ってなんて名前ですか?」
お父さん
「なぜ知りたい? お前、変なこと考えてるんじゃないだろうな?」
「いえ、そんな変な事じゃないです、教えてください」
お父さん
「お前は何をやらかすか解らないからな、教えられん
気持ちはありがたいが、大丈夫だ、部屋に戻りなさい」
と言って、携帯を僕に見せないように遠ざける。
しかし、遠ざけた先にはクロがいて、携帯を覗き込んでいる。
「分かりました戻ります」
僕はすごすごと部屋に戻った、その後をクロが付いてくる。
クロ
「『田中ケビン』だそうだ」
「字も読めるの?」
クロ
「普通の動物は読めないぞ、俺は文字を読む練習をしたからな、簡単なヤツなら読める」
「すごい、いつ練習したの?」
クロ
「主が漢字を覚えるの苦手だっただろう、
何度も音読しながら、書き写している様子を見ていたら覚えた」
「うぐっ、まあその事は置いて、記者の名前をネットで調べよう、フリーの記者だから・・・・・・
やっぱり、ツイッターやってる、フェイスブックもある」
「まずは日記を見てみるか、この写真に写っている駅は、家の最寄り駅だな、こっちの写真も、
ここら辺の写真が多いな、近くに住んでいるのかな?」
クロ
「その顔の写ったヤツは、印刷して置いた方が良いぞ、使えそうだ」
「そうだね」
さて、この辺りには住んでいそうだけど、どうしたものか、
長老に意見を聞いてみよう。
長老
「うむなるほどのう、とりあえず、その男の写真を周りの者に見せて
聞き込みをしてみてはどうじゃろう」
「分りました、聞いてみます」
クロ
「俺も付いて行く、主だけでは心配だからな」
■協力をお願いします
外に出ると、ちょうど、カー太郎、カー次郎、がやって来た。
カー次郎
「餌をくだせえ」
持っていた餌をあげつつ、聞き込みを開始する
「実は、大変な事になりそうなんだ」
カー次郎
「なんです? ウチラで協力出来そうなことなら手伝いやすぜ」
「この写真に写っている男しらない?」
カー次郎
「わかりませんねぇ」
カー太郎が小鳥たちにも声を掛ける
「お前らも旦那に協力しろ」
雀A
「なんで俺達まで」
カー太郎
「この餌場、存続できてんのは、旦那のおかげだろ」
雀B
「関係ないだろ」
カー太郎
「少し前、隣町の餌場が無くなったのは知っているだろう、
それは糞害で苦情が来たから、餌を置けなくなったんだぜ」
カー次郎
「旦那が掃除を引き受けて無かったら、この餌場も無くなっていたかもな」
雀A
「分ったよ、協力するよ」
メジロ
「ちょっと写真を見せてみな」
といってメジロが写真をジロジロと見る。
メジロ
「コイツか、覚えてる、タバコの吸い殻を、俺に投げつけて来やがった」
雀B
「俺にも投げて来やがった、あいつか」
ウグイス
「このスーパースターの俺様にも投げて来やがった
こいつ、バイクに乗っていたぜ、かなり派手だ」
雀B
「紫色でラメが入ったバイクだ、近くの公園とか、空き地でよく見るぜ」
「ありがとう、もし見かけたら教えて」
ウグイス
「そのくらいの事なら、協力してやろう」
雀B
「少し探しておいてやるよ」
「ありがとう」
どうやら家の周りで、お父さんのスクープを狙って張り込んでいたらしい、
タバコの吸い殻を投げつけた事もあって、それを小鳥達が覚えてくれたようだ。
『記事のネタを探して、近くの議員の家を張り込んでいた』といった所かな。
カー太郎
「ここら辺の創作は小鳥達にまかせて、うちらは旦那に付いて行きやすぜ」
メジロ
「お前らが付いて行くのか、もし先に見つけたら合図をくれよ」
カー太郎
「分ったは、ではここら辺の捜索は頼んだ」
「ところで、合図ってなに?」
カー次郎
「叫ぶだけでさぁ、条件が良ければ1kmなら届き増すぜ」
「そうか、そうね、カラスは声でかいもんね」
手始めに、マックスの所へ行ってみる。
マックス
「どうしたんだ?」
「実は大変な事になっていて、かくかくしかじか、
という訳で、この写真の男かバイクを知らない?」
マックス
「いや知らないな、俺は目より鼻の方が良いから、
そいつの臭いがするモノでも有れば分るかもしれない」
「そうか」
マックス
「俺も付いて行くぜ、この鼻が役に立つかもしれない」
「ありがとう」
小鳥達は公園のそばで見たと言っていたな、次は野良猫公園でも行ってみるか。
ドラ太
「なんだ、お前ら、そんな団体で」
「実は面倒な事になっていて、かくかくしかじかという訳で
この男か、紫色でラメの入ったバイク見なかった?」
ヒゲマユゲ
「男の方はしらないが、趣味なバイクがある場所は知っているぜ」
「本当? どこにあるの?」
ヒゲマユゲ
「案内するぜ、ついてきな」
ヒゲマユゲの後を付いて行くと、とあるアパートの駐輪場へとたどり着いた。
ヒゲマユゲ
「いつもはココに置いて有るんだが、今日は無いみたいだ」
「そうか・・・・・・ マックス、臭いで追えたり出来る?」
マックス
「すまない、バイクに乗ってしまうと臭いで追うことは出来ない」
「ここで手詰まりかな・・・ いや待っていれば帰ってくるか。
あれ、オイルの漏れた後がある、あのメーカーのバイクなのか?」
クロ
「どのメーカーだ?」
「おそらくカワサ・・・・・・、ゴホン、ゲフン、ここはメーカーの断定はしません」
マックス
「オイルが漏れていると話は別だ、俺の鼻で出来るだけ追ってみよう」
ドラ太
「うちらも付いて行こう」
ミケ子
「そうね」
ヒゲマユゲ
「そうしますか」
カー太郎
「ウチラは空から見張ってます、何か見つけたら教えやす」
こうして、マックスの追跡が始まった。
オイルの臭いは、かなり強烈らしく順調に追跡は進んでいった。
しばらく歩くと、カー次郎が、真っ先にバイクを見つけた。
カー次郎
「500m先に、紫色でラメなバイクを発見、止まってます」
カー太郎
「(大声で)バイク、見つけました」
「500メートル? そんな距離から見えるの?」
カー太郎
「旦那は見えないんですか?」
「わからない、たぶん100mくらいは近寄らないと分らないかも」
ドラ太
「うちらなんて、30mくらいだぜ」
マックス
「俺も30mくらいかな」
カー太郎
「みんな目が悪いんですね」
「まあ、とにかく近づこう」
■ターゲット確認
バイクはカフェの横に止まっていた。
カフェを見ると、オープンテラスで男がコーヒーとドーナツを食べつつ、
ノートパソコンを広げてくつろいでいた。
片隅にはカメラが置いてある。
その人物は、写真の男、フリーの記者、田中ケビンだった。
「さて、見つけたのは良いけど、この先どうしよう?」
ミケ子
「まかせて、ちょっと近づいて、様子みて来るわ」
そう言うと、ミケ子はすらすらと歩いて近寄っていき、
記者から5mほどの距離を取って座った。
男は、ミケ子に興味を示したらしく、カメラを構えて写真を撮ろうとしている。
カー次郎
「今ならヤレますぜ」
クロ
「やってくれ」
カー太郎
「了解」
「なにをするの?」
僕が聞くよりも早く、カー太郎とカー次郎は飛び出して行った。
低空を滑るように飛ぶ、その先の狙いはあの男・・・・・・
ではなくてテーブルの上にあるようだ。
カー太郎
「まずは、コイツは頂いておこう」
カー太郎は、ドーナツを取ると同時に、コーヒーをひっくり返した
そしてノートパソコンの上にコーヒーをぶちまける
カー次郎
「更に追い打ち」
カー次郎が、そのノートパソコンを引っかけて、机から落とした。
記者
「うわぁ」
バリッと、落ちた時に変な音が聞こえた
記者
「マジかよ、電源は付くかな・・・・・・ 駄目だ死んでる」
男はしばらくノートパソコンをいじっていたが、駄目だったらしく諦めたようだ。
記者
「最悪だ、でもまだ・・・・・・モゴモゴ(小声で聞き取れない)」
しばらくすると、ミケ子が戻ってきた
「あの記者、なんて言ってた?」
ミケ子が
「『まだ、カメラのメモリカードに映像が残ってるから平気だ』ですって」
クロ
「カメラをどうにかすれば良いんだな?」
「うん、そうだけど・・・・・・」
クロ
「ここは任せてもらおうかな」
■奪取作戦
小鳥達、ウグイス、メジロ、雀が寄ってきた
「ここに居たのか、見つかったんだろ?」
クロ
「ああそうだ、ちょうどいい、みんな、主以外のみんな集まってくれ」
みんな
「おう」
みんなで円陣をくんだ、僕の除いたメンツで・・・・・・
クロ
「これからだが、ああして、こうするのはどうだろう?」
ドラ太
「それで良いんじゃないか」
マックス
「それで大丈夫だろ」
クロ
「じゃあ、その流れで行こう、細かい所は各自に任せる」
「なに、なにを話しているの?」
クロ
「主は途中の橋のところにいて、動画を撮っていてくれ
場所はヒゲマユゲに案内をさせる」
「なんで」
クロ
「考えがある、あと何が有っても動くなよ、うちらを信頼しろ」
「分った、信じるよ」
ヒゲマユゲ
「さて、先回りするぞ」
「うん」
僕は、ヒゲマユゲの後をついて移動した。
この先の話は謎です・・・・・・
と言うとお話にはならないので、
どのような事をしていたのか、後からクロに聞きました。
補足しながら話を進めますね。
ウグイス
「男が動き出した、バイクに乗ってそちらへ向かっている」
雀・メジロ
「我々も追跡する」
クロ
「了解、一端帰宅する為にこちらへ来たか、予想道理だな」
記者が、いったん帰社・・・・・・
もとい帰宅するようだ、カメラから写真のデーターを保存する為だろう。
バイクにまたがり、道路を移動する、帰宅する為には川を渡らなければならない、
バイクはオフロード車で川の中を豪快に突っ切っていく・・・・・・
わけではなく、もちろん普通に橋を使って渡る。
橋の数は限られていて、カフェと自宅のバイク置き場の位置を考えると、
僕の居るこの橋を渡らないと、かなり遠回りになるだろう。
と、ここまでは僕の推理道理だ。
・・・・・・すいません、嘘です、クロの考えた、推理道理です。
ウグイス
「そろそろ橋に到着、仕掛けるぞ」
雀A
「準備出来てます」
ウグイス
「私の糞には、美容効果がある受け取れ」
雀A
「そんな効果はないが、これでもくらえ」
記者のヘルメットのバイザーに糞が引っかかる。
記者
「うお、鳥の糞が、きったねぇ、前が見えにくい」
おもわずスピードを緩めてふらつく。
ドラ太
「頃合いだな」
待ち構えていたドラ太が横切る。
記者
「うあ、猫が、よけきれない」
スピードを緩めて、少し不安定になっていたバイクは制御できず、
ズシャーっと、転倒して横滑りした。
ドラ太
「俺は簡単によけられるけどな」
一方、ドラ太はひらりと、しなやかに回避した。
記者
「いてて、尻うった」
記者の方の、怪我は大したことは無さそうだ、
せいぜい擦り傷くらいだろう、ただし・・・・・・
記者
「あぁ、バイクに傷がぁ、くそがぁ」
あまりバイクには詳しくないけど、塗装代とか、
お金がかなり掛りそうな、引っかき傷が付いていた。
記者
「うわ、もう最悪だよ」
と、バイクの傷を確認している記者を尻目に、
マックスがカメラをひょいと咥えて走り出した。
記者
「あ、俺のカメラ、なんなんだ今日は」
慌てて走って追いかけるが、大型犬のマックスの足は速い、
とても人間の足では追いつかない。
と、ここまでがクロから聞いた話です。
当日、僕の目から見た視点だと。
「『橋の動画を撮れ』だなんてクロは何を考えているんだよ」
ヒゲマユゲ
「まあ、細かいことは気にしなくていいぜ、おっと来たみたいだ」
マックスが走ってやって来た、そのかなり後ろを人間が追いかけてくる。
「マックス、何か口に咥えているね」
ヒゲマユゲ
「上手くやったみたいだな」
「何を? あ、マックスが橋から何か落とした」
バシャンと、けっこう大きな音を立てて、そのモノは川の中に消えていった、どうやらカメラらしい。
後ろから追いかけてきた人間が、慌てた様子で川を覗き込むが、しばらくすると諦めたようだ。
マックスはその場で、じっとしている。
すると、とつぜん、その人間はマックスに蹴りを入れた。
「ギャン」と悲鳴に似た鳴き声が響き、ここで僕はたまらず飛び出し・・・・・・ ません
動物の言葉が分ってなかったら飛び出してたけどね、
蹴りを入れられた時、マックスは何て言ったと思う?
マックス
「そんな蹴りが当たるかよ、うすのろ」
だってさ、蹴りを食らった振りをしただけみたい。
その後は、記者はしばらく呆然としていて、そのうちトボトボとバイクを手で押して帰って行った。
ちょっと悪いことしたかな。
■ありがとうございました
動画を撮り終わった僕は、みんなと合流しました。
「みんなありがとう、無事に何とか出来たよ
僕一人だと何も出来なかったと思うよ」
クロ
「実際に、主はなにもしてないけどな」
マックス
「まったくだ」
「ひどいな、僕だって・・・・・・」
ミケ子
「何をしたの?」
「なにもしてないかもねw」
カー太
「ちがいねぇw」
クロ
「無能な主で、みんなすまんな」
ヒゲマユゲ
「気にするな、また何かあったら声かけてくれ」
ウグイス
「その時は、このスーパースター様も手伝ってやるよ」
雀A・雀B
「手伝ってやるぜ」
「ありがとう、みんな助かったよ」
ドラ太
「気にするな、困った時はお互い様だ」
「うん、みんなも何か困った時は、声を掛けてね」
クロ
「さて、帰ろうか主」
「そうしますか」
さて、これで何とかなったのかな? なんとかなってそうだけど。
■確認作業
長老
「戻ってきたか、どうじゃった?」
「無事に証拠隠滅しました」
長老
「そりゃちがうじゃろ言葉に気をつけろよ、
隠滅ではなく、捏造記事を阻止しただけじゃろ?」
「そうですね」
長老
「念の為、親父さんに確認をして貰うかの?」
「どうやって?」
長老
「こう伝えれば大丈夫じゃ・・・・・・」
長老の助言を聞いた僕は、お父さんに確かめに行く
「お父さん、ちょっと良いですか?」
お父さん
「なんだ?」
「その記者に、写真を抑えた事を確認してほしいのじゃ!」
お父さん
「のじゃ? なんだその言葉の使い方は、年寄りみたいだな」
「間違いました『確認して下さい!』」
お父さん
「まあ良いだろう、記者にメールを投げておこう
『例の写真の確認させて貰おう、話はそれからだ』
こんな感じでどうだ?」
「それでOKです」
メールをなげて10分くらい経っただろうか、
返事のメールが返ってきた、その文はこうだ!
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すいません、メールのアカウントのっとられちゃって
もしかして変なメールが届いちゃいましたか?
送ったメールの内容は気にしないで貰って結構です、すいませんでした。
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お父さん
「お前、なにかやったのか?」
「いえ、僕は何もしてませんよ、僕はね」
お父さん
「何か含みのある言い方だな、まあいい助かったよ、ありがとう」
「どういたしまして」
写真のデータの消去には成功したみたいだ、平穏な日々が我が家に戻ってきた。
■後日、ランチタイム
後日のランチタイム、昼下がり、ゆったりとした時間の中で
真理子さんと、ブルと、カー太郎、カー次郎で、先日の事件の話題を話していた。
「真理子さん、ちょっと話を聞いて、実は先日大変だったんだよ」
真理子さん
「何、クロが風邪にでもかかったの?」
「違うよ、家のお父さんが、地元の建築会社の社長と飲んでいる所を
フリーの記者に写真に撮られちゃって」
真理子さん
「ええ」
「その記者が談合事件の記事として、凸凹出版の雑誌社に売り込もうとして、大変だったんだ」
真理子さん
「へえ~、でも事実では無いんでしょう?」
「ただ、普通に飲んでいただけだからね」
真理子さん
「つまり、それって捏造よね?」
「そ、そうだね、そうなるかな」
真理子さん
「あの雑誌社、パパの知り合いがちょっとした株主なのよね
その記者の事、ちょっと報告して置くわ」
「そ、そう別に報告しなくても大丈夫だよ」
真理子さん
「いいえ、こういうことはキッチリしないとね」
ブル
「・・・・・・相変わらず、おっかねぇ」
カー太郎
「お前の主人は、えげつないな」
カー次郎
「ありゃ鬼だな」
「君たち、ちょっと言い過ぎではありませんか」
ブル
「じゃあ、お前はどう思うんだ?」
「怖いです、はい」
真理子さんの、ちょっと以外な一面が垣間見れた。
■後日、葉矢水
事件後、葉矢水と初めて会う、僕はここぞとばかりに、あの事件の話をした。
「・・・・・・という事があってさぁ、大変だったよ」
葉矢水
「へえ、でも何で動画とか撮影したの?」
「いや、なんでだろ?」
葉矢水
「その動画、見せてくれない」
「いいよ」
あの時の、橋の上の動画を葉矢水に見せた。
葉矢水
「その動画、俺にコピーをくれないか、悪いようにはしないぜ」
「分った、任せるよ」
葉矢水
「おう、任された」
こうして葉矢水とは分かれた。
この日はバイトがあったので、バイトを終えて家に帰ると、
葉矢水からメールが来ていた。
そのメールには、動画サイトのリンクが張られていた。
リンクを見ると、マックスに蹴りを入れるシーンだけ切り出したものが、
『動物虐待男』というタイトルで公開されていた。
もしやと思い、あの記者のツイッターとフェイスブックを覗いてみたら、
すでに炎上していた。 とても大変そうです。
さて、今回の事件を振り返ってみてみると、ハッキリ言うと嬉しかった。
いや、記事をすっぱ抜かれそうになった事ではなくて、
動物たちが僕に協力してくれた事が、なにより嬉しかった。
僕を仲間として認められていた事が、嬉しかった。
「こうした日々が、いつまでも続きますように」
僕は心から、こう願った。
でも後から考えれば、あの時の僕は、なんで願ったのだろう?




