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日常だった日々

◇◇◇ プロローグ ◇◇◇


■自己紹介しますね


 僕の名前は森川 ゆうと

 周りの人からは、親しみを込めて「森川くん」と呼ばれている。

 君も「森川くん」と呼んでもらって構わない。


 僕は、超イケメンの容姿を持っている大学生だ。

 いや、ちょっと盛りすぎた、イケメンくらいかな。

 言い過ぎた、まあ爽やかなタイプに入るくらいの容姿はしていると思う。

 ……たぶん、平均点の容姿はしていると信じたい。


 話題を変えよう、僕は議員の息子という特権階級なのだ。

 ……いや、まあ、議員といっても県議員で、

世間に影響を与えるほどの特権は、持ち合わせては居ないけど……


 まあ特権とかそんじゃ話題はどうでも良いじゃないか、本題に入ろう。



 そんな僕には、特殊能力がある。

 動物をしゃべらせることができるのだ。

 この能力を、僕は、『ヴェントロキズム』と名付けている。


 『ヴェントロキズム』、カッコイイ響きだと思わないか?

 説明が少し居るかな、解説しよう、『ヴェントロキズム』、直訳すると『腹話術』

よくある例だと、TVとかで、口がパクパク動く人形に合わせて、

口を開かずに喋る、というあの芸だ。


 ……すまない、動物をしゃべらせる、というのは、ちょっと言い過ぎた。

 たぶん、こんな事を、動物は思っているんじゃ無いかなという事を、

腹話術を使って、喋ってるような感じを出しているだけだ。


 だが、僕は、動物の考えている事を、腹話術を使って代弁(だいべん)をしている、

これはもう、動物が喋ってると言っても過言ではないだろうか?

 世界で僕だけが、動物の代弁者といっても良い。


 ……はい、言い過ぎましたね。


 しかし残念なことに、僕はあまり腹話術はうまくないらしい、

周りにバレている事がとても多い。



 ちなみに、今の季節は春。

 僕は大学2年生になったばかりだ。


 これから、僕の日常だった日々を少し話そうと思う。



◇◇◇ 日常だった日々 ◇◇◇


■朝の日課


 トンッ、僕の朝はいつも、この音と

布団越しに掛かる重みで始まる。


 この重みの正体は、僕の家で飼っている黒猫のクロだ。

 いつも朝に、起こしに来てくれる。


「うーん、朝か」


クロ(森川の腹話術)

「ご主人様、朝でございます」


「そうか、まず朝食にしますか」


 僕は台所へと移動する、そのすぐ後ろを、クロが付いてくる。

台所には、既に母さんが居て、朝食の準備をしてくれていた。


「母さん、おはよう」


母さん

「おはよう、朝ご飯できてるわよ」


「ありがとう、さて食べる前に」


 僕には、するべき日課がある、

食器棚に手を伸ばし、猫缶を手に取った。


「クロには最高級猫缶をつかわそう」


クロ(森川の腹話術)

「ご主人様、いつもいつも、ありがとうございます」


「うむ、そこへなおれ」


 といって、猫缶を皿に空けてクロへ与える


クロ(森川の腹話術)

「たいへん、おいしゅうございます、ご主人様、最高です」


 この様に僕は常にクロに、慕われている。

 ……ような気がする。


母が少し諦めた表情でこう言った。

「早く、朝ご飯食べちゃいなさい」


「……わかっております」



 さて、朝ご飯がおわり、身支度をして、大学へと出かける。


 ここで、僕がクロに慕われている証拠を見せよう。 

 揺るぎない証拠をお見せしよう。

 僕が出かける時には、いつもクロが、お見送りに出てくれるのだ。


クロ(森川の腹話術)

 「いってらっしゃいませ、ご主人様」


「それでは行ってきます」


 こうしていつもの朝の日課を終え、僕は大学へと向かう。




■おとなりさん


 家を出て大学に向かう途中、いつも、おとなりさんの庭を覗いてしまう。


 おとなりには、小春おばあちゃんという人がすんでいる。

 小柄で、ほがらかで、いつも笑みの絶えない、おばあちゃんだ。


 このおばあちゃん、小鳥が好きで、庭で野鳥の餌付けをしている。

 いつも何かしらの鳥が、集まっていて、普段は雀や鳩をよく見かける。

 時々、メジロや、ウグイスといった珍しい鳥も見かける時もある。


 庭を覗くと、窓からちょうど、小鳥たちの餌を準備している、おばあちゃんが見える。


雀A(森川の腹話術)

「おばあちゃん、僕たちのために、いつもありがとう」

雀B(森川の腹話術)

「とても感謝してるよ、感謝しきれないくらい感謝してるよ」


きっと、鳥たちは、こんな感じで話をしているに違いない。



そうこうしている間に、

おばあちゃんがちょうど、餌もって出てきた。


「おはようございます」


おばあちゃん

「おはよう、きょうも学校がんばってね」


「ありがとうございます。では行ってきます」


軽くあいさつを交わすと、僕は大学へと歩みを進めた。

後ろからは、雀たちがチュンチュンと会話が続けていた。




■大学での、ランチタイム


 さて、午前中の授業が終わり、ランチタイムになった。

僕のこの時間は、一般の学生とはひと味違う、特別なランチタイムだ。


 その理由を知りたいだろうか?

 知りたいでしょ?

 知りたいよね?

 お願いします、理由を聞いて下さい。



 うむ、その理由とは、学園のマドンナ、

美人コンテストで一位を取った、事もある。

理事長の娘、真理子さんとのランチタイムだ。


 ちなみに、ほぼ毎日この時間に顔を合わせている。

 うらやましいでしょう。



 さらに超スペシャルな理由がある。

 彼女が理事長の娘で、特別扱いなのかは解らないが、

彼女はフレンチブルドックをいつも連れている。常に、大学の中でもだ。

 

 申し訳ない、少し訂正します。

 常にと言ったが、さすがに授業中は例外で、校舎の外に繋いでいるらしい。



 さて、このフレンチブルドックとの触れ合いが、僕の大学での最大の楽しみだ。

 うちでは猫のクロを飼っているが、犬の魅力も捨てがたい。

 でも、うちではもうクロがいるので、これ以上、犬を飼うことはできない。

 出来るなら、犬も飼いたいな……


 おっと話がずれた。

 このフレンチブルドック、名前をブルという。

 ちょっと安直な名前の付け方だとおもうだろう?

 それなら、黒猫のクロも安直な名前じゃないかって?

 残念ながらクロの名付け親は僕では無いんだな。

 既にもらった時からクロという名前が付いていた。


 また話がずれた。

 このフレンチブルドックのブル、とてもおとなしい。

 いいとこの家の犬だから、しつけが良いのかは解らないが、

滅多なことでは騒がない、しかも、どこか気品がある。



 ブルの話から少し離れて、ランチの話に戻そう。

僕と真理子さんは、軽い会話を交わしながら、ランチを終えた。

ランチの話は以上だ、これ以上語る必要はない。


 でも、ランチが終わった後、まだ少し時間が余っている、

ここからが特別な時間の始まり、言わばランチタイムのメインディッシュだ。


 ブルとのスキンシップタイムの始まる。

 まずは、軽くなでる。なで回す。なで繰り回す。


ブル(森川の腹話術)

「思う存分、触ってくれたまえ」


 じっとしていて、微動だにしない。

 しつけが行き届いているんだろうな。

 続けて鞄から、犬用ブラシを取り出して、ブラッシングをする。


ブル(森川の腹話術)

「なかなか心地よいぞ、続けたまえ」


 最後にブルへ、感謝の気持ちを込めて、犬用のおやつを渡す


ブル(森川の腹話術)

「なかなかうまい、また頼むぞ」


「承知つかまつりました」


 ブルが、僕の渡した犬用のおやつをガッついて食べている。

 なぜか、このおやつを食べるシーンだけは、気品が感じられないが、

まあ、動物の本来有るべき姿はこうだよな。


そんな事を思いつつブルを見つめていると、


真理子さん

「森川君は、いつも面白いね」


 真理子さんに褒められた。



 ここまでがランチタイムの日課だ。

 こんな感じを、ほぼ毎日繰り返していた。


 さて、楽しい時間はあっという間に過ぎ、午後の事業となる。




■親友との再開


 午後の授業が始まる。

 この午後の授業では、高校時代からの友人と再会できる。

 友人というより、親友。

 親友というより、大親友かな。


 彼は表裏のない、ナイスガイだ。

 本音と建て前が無い、本音同士でぶつかり合える、数少ない大親友だ。

 数少ないって言っちゃった、いや親友は多いよ、とても沢山いるよ。

 ……いや、まあ、彼ほどの親友は他にはいないかな。


 そんな彼と、久しぶりの再会を遂げる

 久しぶり……、本当に久しぶりの再開だ。


「よう、久しぶり」


大親友

「昨日も会っただろ」


 そう、昨日も会った、だが聞いて欲しい、

時間の経過の感覚は人それぞれ違う、彼には昨日の事のように思えるだろうが、

実は、昨日と今日の間、普通では無い場所に僕は居た。


 別の次元、別の時間、別の流れの中に居たのだ、そこでは1日が何年もの月日のような……

……ごめん、この設定無理があった、嘘です、そんな特殊設定ありません。

 聞かなかったことにして下さい。

 普通に昨日、会ってました。まだ24時間も経過してません。


 あっ、あと、彼の名前、出し忘れてた、名前を『葉矢水』(はやすい)という

以後、ちょくちょく出てくると思うので、できれば覚えて欲しい。


葉矢水

「また、ランチタイムに真理子さんと会っていたのか?」


「うん、いつものように会ってた」


葉矢水

「彼女、理事長の娘で、しかも美人、人生の勝ち組だよな」


「そうだね」


葉矢水

「美人のほうは、美人すぎて変な噂まであるけど?」


「そうだね」


葉矢水

「知ってるのか、整形疑惑って話なんだが?」


「そうだね」


葉矢水

「興味なさそうだな」


「そうだね」


 ……いや、違った

「そんなことないよ、あっ、そう彼女、美人だよね」


葉矢水「おまえ彼女に興味ないだろ?、どうせブルしか見てないんだろ?」


「うっ」

図星をつかれた


「そんなことないよ、ちゃんと真理子さんも見てるよ」


葉矢水

「じゃあ、真理子さんは、今日どんな服を着ていた、服の色は?」


「……相変わらず黒い耳はチャーミングだったし、

鼻は濡れていて、健康状態はよさそうだった、

ただ毛並みは少し荒れていたかな」


葉矢水

「それ、ブルじゃないか、やっぱブルしか見てねーじゃねーか」


「うん、まあ、そうかもしれない、そうとも言うかもしれない」


葉矢水

「おっと教授がきたぞ」


 さて授業がはじまる。

 そして授業が終わる。


 いつになくつまらない授業だった

 授業風景を語る気が、全く起こらないくらいつまらなかった。


「おわった、つまらなかった、長かった、つまらなかった」


葉矢水

「つまらない、2回言ってるぞ、でも必須科目だからしょうが無い」


 必修科目の授業っていうのは、つまらなくても人が集まる、

教授にしたら、安泰だから、自然とつまらなくなっていくのかな?

それにしても、あのつまらなさは酷いな。


 さて、ここまでで何回つまらないと言ったでしょうか?

 あっ、はい、くだらないですね、小学生並にくだらない質問でした。

 話を進めます。



葉矢水

「俺、今日はこれからバイトだわ、じゃあ、またな」


「おう、また明日」


こうして大学の授業を終え、僕は帰路につく

だが、まっすぐは帰らない、いつも寄り道をしている素敵な、すてきな、ステキな場所があるのだ。




■野良猫公園


 大学の帰り、家の近くにある小さな公園へと足を運ぶ。

 小さい公園だが、木々が程よく植わっていて、

程よい陽だまりが、溢れている。そんな公園だ。


 ここでの僕の目的は散歩だ、散歩だけだ、本当の目的は散歩だけだ

小見出しで目的がバレているハズはない

散歩がメイン……、はい、そうですバレてます、本当は、野良猫がメインです。



 僕の鞄には、だいたい、犬猫兼用のおやつが入っている。

これで野良猫を釣ろうという訳だ。


 初めは、絶対に人に近寄らなかった猫たちだが、

僕に対しては違うのだ、試してやろう、見せつけてやろう、そこで見ているが良い


 手に餌を持ってしゃがみ込む


「餌だよ~、おいしい餌だよ~、とてもおいしい餌だよ~」

 すると、気がついた猫が駆け寄ってきた。

 次の瞬間、シャッと、餌だけ奪い去るように持って行った

 そして、かなりの距離を取って、食べ始めた。


野良猫(森川の腹話術)

「別に餌が目的じゃないんだからね、

元気な姿を、あんたに見せにきただけなんだからね」


これがツンデレというヤツか

さてと帰宅しますか。




■一日の終わり


帰宅すると、クロが玄関に駆け寄ってきてくれる。


クロ(森川の腹話術)

「お帰りなさい、ご主人様」


寝る前に、僕には重要なミッションが課せられている。


 それは、

・クロに餌をあげて

・クロと遊んで

・クロをブラッシング

することだ。


 こうして僕の一日が終わる。

「今日も充実した一日だった、実に充実したライフを過ごせた、我は満足じゃ~」


「僕が世界で一番、動物の気持ちがわかるんだ~」

 さてと寝ますか。


 僕は、ベットへと潜り込むと直ぐに眠りに落ちた。

 だが、この日、眠りに落ちる直前に、いつもとは違う声を聞いたような気もする。



謎の声

「・・・ウヌボレルナヨ・・・」



 この日を境に、僕の日常だった日々は終わり、

非日常の日々が始まりを迎えるのであった。


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