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キツネをもふれ!!

キツネ、もふれますよ☆

 雨の中、ナビくんの案内で蔵王キツネ村を目指します。時刻は八時半をまわりました(米沢駅でお土産をちょっと買いました)。

 もう、どこを走っていても我が家のあたりと大差ありません! コンビニで買ったホットコーヒーをゆっくりと飲みました。山越えのまえに気を引き締めます。


 山形から宮城・蔵王への道は国道113号線を行きました。七ガ宿街道ともいうらしく、往時の主要街道だったもよう。このへんのことは、後からまたいろいろ調べたいなと思うような趣がありました(基本、山奥が好きなんだよな自分)。

 トラックや乗用車が車列を作っての山越えの後、国道から県道に入ったとたんに車がぐっと減り、終いにはまた後続車・対向車ナシの状態になりました。


 アレ?? デジャヴ?? 昨日もこんなことがあったような。


 事前に集めたキツネ村の情報としては、外国人観光客がネットにアップしたことで人気に火がつき、お客さんは日本人よりも外国人が多いとありましたが。

 土曜日、しかも三連休の初日10月8日。とはいえ、雨。秋口とあって肌寒く感じます。車もヒーターつけてます。こんなんで、お客さんは来ているのでしょうか。ワイパーで霧雨をぬぐいつつ、ひたすら山道を行きました。

 お客さんが誰もいなかったら……そんなさびれたところだったらどうしよう。でもキツネが、キツネがモフりたいんじゃー!! こんなところで怯むな。後続車がないことくらいでビビるな、と自分を鼓舞しているとキツネ村の看板が見えてきました。

 県道からさらに枝道へ。細くうねった道です。ほんと、車は我がノートくん一台きり。

 民家など見当たらないような山の奥まで来ました。看板に誘導されつつ左手の坂道を上がりキツネ村のゲートを潜りました。

 山の斜面なのでしょう。駐車場はさして広くはありません。でも、二ケタに届くくらいは車があります。お客さんがいるんです。なんだかホッとして、ここまでの一時間半のドライブは終わり。昨日は着なかったフード付きの上着とショールを着込み、バッグを担いでいざキツネ村の入り口へ。

 すると、いきなり注意書き。


『免責事項 当村は普通の動物園ではありません。危険です。ケガや物損は保証できません。すべて自己責任です』


 おおおおおーっっ!?

 免責って、保険でお世話になっている言葉がこんなところに。


 ……お客さん、うちはふつうの動物園なんかじゃねえ。そんな甘っちょろいとこじゃないんですぜ……


 どこからか不敵な笑みを浮かべた何者か(丹下団平的なビジュアル)の声が勝手に聞こえたような。

 いや、ビビってはならん。キツネだ、キツネを、キツネを!! 入り口の引き戸を開けて中に入るとすぐに受付カウンターでした。

 小さな女の子を連れた家族らしき先客が切符売りのおばちゃんから説明を受けていました。

「落とし物をすると、キツネに持っていかれます。小さい子はキツネがちょっかいかけたりするので、きちんと手をつないで目を離さないでください。檻の中のキツネは咬むので触らないでください」

 等々。

 可愛らしいキツネと触れ合える夢のような国……というイメージとは違います。かなり硬派です。説明を受けている家族の顔がこわばってきます。とくに女の子。おどおどした瞳でお父さんにぴったりくっついちゃいましたよ。

 そんな感じで説明が終わると、お通夜に向かうような足取りで去っていく親子。それを見送るわたし。

「大人、ひとり」

 と、入場料の千円を払いました。そして同じく説明を聞きました。その後はお土産物売り場のゾーンを通り、プレハブにあるようなドアのむこうのキツネ村へ。


 ドアを開けた先には、キツネがたくさん……ということではなく、まずは山羊がお出迎えでした。な、なんて愛らしいシバヤギが三頭も。山羊スキーなわたしはもうメロメロです。よくよくあたりを見ると、そこは広いウッドデッキでヤギやウサギのコーナーでした。屋根もかかっているので、雨も気になりません。

 ヤギを撫でながら周りを見ると、檻に入ったキツネが何頭か。それは『抱っこ専用キツネ』でした。檻の中で大きな尻尾を枕にして寝ています。

 キツネのゾーンは更に扉があって、そのむこうです。


 ここでも注意書きが。放し飼いにしてあるキツネは絶対に触ってはいけないこと(寄生虫のエキノコックスは駆除してある、というか園内で繁殖したキツネなのでエキノコックスはいないとのこと←定期的に検査済)。


 そして『人がキツネの檻に入るのです』の一文。


 おお、その発想はなかった。つまりは大きな檻の中で放し飼いにされているわけです。扉のこちら側では、何人か見かけた子どもたちが顔を強ばらせています。ま、仕方ないやね。結構ガッツリ指導されたから。

 大人な小母ちゃんはソロソロと扉を開けて中へ。

 山のゆるかやな斜面を大きく囲った形のようです。一応、順路というかコンクリートで細い道が作られていて、その道からは外れないように歩かなければいけないようです。道の両側は芝生だったりむき出しの土だったり、岩や小屋のようなキツネたちが雨や雪を避けられるようなところもあります。もちろん、キツネはもういたるところに。すぐ近くにいるのです。ヒトに対して緊張する様子もなく、のんびりと寝っ転がったり、餌を取り合って喧嘩したり、雨降りでキツネたちも寒いのか固まって寝ていたり……。

 

 見ているこっちもリラックス……でも、触ってもいけないし、服を引っ張られたりもするとか聞いたし、やはり気は抜けません。というか、わたしはとてもに背が低いのでキツネに子どもと間違われるのではないか、と危惧したのですが、さすが野生の勘。小母ちゃんと子どもを見間違えるなんてことはなかったのでした。

 餌やりのできる高床式のロッジがあって、そこから下を覗くと無数のつぶらな瞳が向けられます(餌が欲しくて)。

 すごっ、可愛い。やっぱりキツネかわいいよ!! キャーッと声には出さずひたすらにやけた顔で餌をばら撒く小母ちゃん。

 ふつうの黄色の毛並みのほかに、白や黒もいました。白いキツネは拙作に出てくるキャラみたい、なんて嬉しくなりました。


 檻の中は、ちょっとした森のようでした。雨が木々の葉や枝に溜まり、時おりバラバラと雫を散らします。わたしは上着のフードをかぶり、キツネたちのすぐそばに立っていました。雨のせいでお客さんも少なかったのかもしれません。一人っきりで雨の音を聞きながらキツネと向き合っていると、まるで森の中でキツネに会ったような心もちになりました。

 それはあまりに自然で、童話のエピソードみたいでした。


 キツネたちの余韻にひたりつつ、檻を出たならメインのキツネ抱っこですよ。

 抱っこはいつでもできるわけではなく、時間が決まっているようです。十一時から抱っこの受付が始まりました。

 ちなみに入場料とは別料金。一分間400円です。抱っこできるのは高校生以上から(中学生の娘と一緒じゃなくて良かった。ぜったいにむくれられただろうから)。

 小さくとも大人なわたしは、張り切ってお金を支払いました。わたしの他には、お友だち同士で来たらしいお姉さん二人組、わたしと同年配の小母ちゃんこちらも二人組、そしてロシア人カップルの男性のかた。

 お金を渡すと、蛍光グリーンのウインドブレーカーを手渡されました。言われるままに着るとデカい。ほんとデカい。男性の3Lくらい? わたしなんぞは袋の中に入ったような感じに。

 イスは会議室によくある折り畳み式。それが三個ずつ向かい合わせに並べられています。各々が腰かけてスタンバイです。わたしはバッグからカメラを出して上着のポケットへ。

 抱っこ専用のキツネが檻から出されて、係のお姉さんが抱きかかえてきました。つごう二頭が連れられてきました。


 おおおおおお、モフモフです。見た目、モフモフです。

 三角の耳に、三角の顔。先っちょが黒い太くて大きなしっぽ。


 まずは、お姉さんと小母さんへと渡されます。猫を抱くような要領、かな。顎を腕に乗せるようにして膝のうえに。

 鳴きもせず、だまっています。大人しい大人しい、キツネです。

 皆さん、もうメロメロ。写真を撮るのに忙しい。


 ああ、早く、早く抱っこしたい。

 もう目の前のキツネを触りたいのですが、とにかく我慢です。そしたら、わたしの向かい側に座ったロシア人の男性、キツネを抱っこしてもうとろけそうな微笑みを浮かべていますよ。半袖短パン素足にサンダル(さすが寒さに強い)の彼女が何やら言葉をかけますが、もう返事もないの。彼女さんは呆れたのか、写真をいっぱい撮ってあげてました。

 そして、ようやくわたしの番です。

「肘のあたりにあごが乗るようにしてください」と教わって、おっかなびっくりで渡されたキツネは……。

 フワフワでした。

 ああ……。

 ふんわりしていて、温かくて。

 キツネってこんな感じなんだ。

 でも、たしかに重いです。やっぱり体格相応の重さはあるのです。

「あ、あの、写真お願いします。主に、主にキツネ中心で!!」

 とカメラを係のお姉さんにお願いするわたし。やはりこのへんが一人旅の不自由さ。お姉さんは快く写真をたくさん撮ってくれました。


「もう一分過ぎたのでは」

 戸惑いながら聞くわたし。もちろん、まだまだキツネは離したくありません。

「いいんですよー、そのへんはー」

 ニコニコとわりとアバウトなことを言うお姉さん。そんなお言葉に甘えてもう少しだけ抱っこさせていただきました。

 キツネは気持ちよさそうに目を細めています。わたしは布越しにつたわる、温かみにうっとりしました。ああ、命の重みと温かさよ。

 できるならば、このまま連れて帰りたい。

 小母ちゃんはキツネを堪能するのでした。


 ……そんな夢のような時間はやがて終わって、わたしも園を後にすることにしました。雨脚が強まってきたことと、雲が厚くて薄暗くもあったのです。早めに帰宅した方がいいかなと判断を付けて、お土産を何点か購入し車へ。

 キツネ村を出ると、さっきの県道に戻るまでに何台もの車とすれ違いました。キツネ村の奥にあるのは、日帰り温泉と養豚場くらいなので車の行き先は、キツネ村一択なのかも知れません。時間は十二時近く。便利、とはいえる場所ではないので朝ゆっくり目に出てくるとお昼近くになるのかも知れません。

 来年は娘も高校生になってキツネが抱っこできるから、家族で来よう。キツネを抱っこして、温泉に入って……。そんなのもよさそうです。


 車をインターまで走らせていく間に雨が激しくなってきました。高速へ乗る前に給油しました。

 ナビくんは、帰り道の所要時間は三時間と少し、と教えてくれています。

 白石インターチェンジから下り線へ。さすがに込み合っていますが、手こずるほどでもないので、あまり急がずに行きました。途中、菅生サービスエリアに寄ったら、車が止められないほどの入りで焦りました。ここで最後のお土産とおいしそうな唐揚げがあったので夕飯用に買いました。ああ、すでに帰宅してからすることを頭の中でシミュレーション。


 何度か休憩を繰り返していると、あっという間に一関……岩手です。

 ふだんなら一関まで来るなんてすごい遠く感じるのに、もう旅の終わりをヒシヒシと感じます。

 水沢、前沢、北上江釣子……。

 いつものインターで降りて、いつもの風景の中へ。非日常は幕を閉じ、日常へと戻っていきます。

 高速の癖が抜けないままでアクセルを踏むと危険。スピードメーターを見て確認。

 自宅の周辺も雨でした。


「ただいまー」

「おかえりー」

 帰宅すると、コタツに寝ころぶ夫と娘がおりました。


 午後四時過ぎに自宅に無事到着。走行距離670キロ。


 さて、洗濯をしましょうか。



帰宅して早々に洗濯、夕飯の準備。

いつもと変わらぬ日常に突入しました。


さて、来年はどこに行こうかな。


気持ちとしては、岩手の秘境、国内最後の通電の地「タイマグラ」、あるいは、北上線に乗って西和賀のほっと湯田駅へのいずれも日帰り旅。


それか、奈良京都への二泊三日か。


でも、ドライブ楽しいーーです☆

安全運転でGO


旅行メモ

お土産

二人の父と友人用 4650円

職場用・実家・婚家用お菓子 3024円

自宅の夕飯のおかず(唐揚げ・クリームコロッケ) 1131円

娘のカルパス類 1404円

帰りの給油 15.39L @115 


追記 2017.2

「えっ!? お母さん、山形に旅行したの自分で車運転していったの!? 電車で行ったと思ってた!!!!!」

と、娘に驚かれましたとさ。

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