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猫の目時計はどこですか?

ついに米沢へ到着。

ね、猫の目時計はいずこ??

 自動車専用道路を降りて、道の駅で昼食をとりました。天ざるそば、1200円(税込み)。

 そして、喜多方を通過(喜多方って米沢の隣だったんだ←下調べをしよう!!)、ついに米沢へ突入! 

 しかし、対向車なし・後続車なし。

 山の中をひた走る我がノートくん。ナビくんも「この先しばらく道なりです」と言った後は沈黙を続けています。back numberの曲が流れるなか、山の間を進みます。

 時おり渡る陸橋(?)は隣の山と比べると中腹ぐらいなので、かなり高い場所を走っているのだと察します。そしてとにかくトンネルが多いです。


 ……米沢へ来たけれど、しょうじき自分チというか、岩手県内と大差ないような……。その思いは民家が見えてからさらに深まります。

 どのお宅も基礎が高いのです。一メートルはあるでしょう。そして玄関には風除室が標準装備。

 どちらも冬の対策です。基礎が高いのは雪が深いことを、風除室(玄関の前にガラスの小さな温室みたいなのがついている)があるのは、室内に冷たい空気が入らないようにするため。北国ならでは光景ですが、岩手でも豪雪地帯の西和賀とそっくりです。

「……共通項が多いなあ……似てるなあ」

 だからなのかも知れないと思いました。


 米沢を訪れたいと思ったのは、漫画家・ますむらひろしさんの生まれ故郷だからです。

 高校時代に、ますむらさんの『アタゴオル物語』を読んだ私は衝撃を受けました。

 あまりにも、「自分が求めていた物語」だったからです。

 ヨネザアド大陸のアタゴオルに住む、二足歩行の猫と人間たち。当時、ファンタジーといえば欧州やギリシャ的な豪華絢爛でフワフワしたものが主流だったのに、ますむらさんが描く世界は無国籍で泥くさく、でもなぜか懐かしさを感じさせるものでした。


「これは、賢治の世界だ……」


 花巻に生まれ、身近にありすぎて賢治アレルギーだった私は、どうしてだかアタゴオルに賢治の世界を見ました。

 素行不良のデブ猫のヒデヨシ、親友のテンプラ(美少年ポジ?)・パンツ(インテリな雰囲気を漂わせる猫)。そのほかにも、頼りになるタクマ(もしやシスコンか? 妹の椿ちゃんを可愛がってる)、バイオリンの音色でカニを操り床屋を営む猫の唐あげ丸親方と弟子のヒデ丸。たまに登場する、超カッコいいギルバルス♡


 花巻ともよく似た環境で育った作者の作品だから、懐かしく感じたのかも知れません(ますむらさんが賢治のコアなファンであることを知ったのはずっと後)。

 ぼんやりした高校生のわたしは、たちまちアタゴオルの虜になりました。サンコミックを買いそろえ、何度も何度も読み返し、放課後は高校の場所に近い愛宕町の自販機の裏を覗いてはアタゴオルへの入り口を探しました。

 ……どんだけ頭がメルヘンなんだよ、自分。

 でも、私にとってはアタゴオルは実在してして、ただ私がそこへ行く方法を見つけられないだけと半ば本気で思っていたのでした。


 ああ、いつか米沢へ行きたい。


 循環バスや移動図書館車には、ヒデヨシたちのイラストが描かれていると聞く。そして、作中に出てきた猫の目時計が実際に作られて設置されている!! 

 見に行かねば。車はすでに市内の中心部に近づいているようです。民家の他に商店も混じるようなってきました。ようやく車もたくさん走っている状態に。

 やたら『上杉』が目立つのは、米沢といったらやはり『上杉家の城下町』だからなんでしょう。

 ……でもワタクシ、まったく詳しくないのであった。

 う、上杉鷹山?? えーと、米百俵の逸話とか……それくらいしか。

 なので、まずは駅だ。駅を目指せ。


 ナビくんの指示に従うと、素直に駅に着きました。と、なんて立派な駅舎なんだろうと見ほれます。レトロな外観だわー…なんて見ほれていたら、対向車線を市内循環のアタゴオル号が過ぎていく!! あああああ!! 写真、写真、うわー間に合わない!! 

 悔しさを噛みしめ、ぜえぜえしながら、駅横の駐車場へ車を止めました。時間はほぼ二時。


 猫の目時計は?


 駅から見えるところにはなさそう……あ、それもそうだけど、つぎの循環バスの時間を調べないと、と国の重要文化財に指定されている山形大学工学部の旧本館を模した駅舎の前を横切ってバス乗り場へ。

 うーむ。なんだか中途半端に時間がありすぎるダイヤだわ。

 バスはいったん置いといて、「猫の目時計の場所を調べないと」と駅内の観光案内所へ引き返しました。

 駅は建て替えられたばかりということで、とても明るくて立派でした。そして観光案内所の美人なお姉さんに聞きました。

「あの……猫の目時計はどこですか?」

 ドキドキしました。もしも、そのお姉さんが

「猫の目時計? えー……それって何ですか」

 とか、聞き返されたらどうしよう……とオタクな小母さんはヒヤヒヤしたのですが、そんなのは杞憂でした。

「猫の目時計はですねー」

 と、市内観光用のA3サイズの地図を取り出し、込み入った商店街のとある箇所に赤ペンで◯を付けました。

「ここです」

 わー、やっぱり結構聞かれるんだ。すんなり答えてくれたもん。さすがアタゴオルは米沢に浸透していると心の中で喜びの舞。ついでにそこで駐車場の有無を事前確認(ノーモア飯盛山)、地図をいただいて車に戻りました。


 場所は図書館のそば、駐車場は道路を挟んだ隣にあるとのこと。

 そういえば、前日に調べた米沢市の図書館は建て替えたばかりでかなり立派なようでした。図書館には郷土の作家として、ますむらさんのコーナーが絶対にあると踏んでいたので、効率よく見られそうでヨカッタと思いました。


 米沢の古い商店街は、良くも悪くも花巻と似たり寄ったり。閉じたシャッターが目立ちますが、地方都市の商店街はこんなもんでしょ、と思っていたら前方に近未来的な建物が現れました。ガラス張りのぴかぴか光る外壁、整備された外まわり。その建物の周りだけ異空間です。

 市立図書館、すげー!! くすんだ(失礼)商店街に出現した超立派な建物。ヒャーと開けた口が閉まらないまま、手前のビル型の駐車場へ。有料ですが、図書館で無料駐車券が発行されるようです(時間制限アリ)。

 金曜の午後でも利用者は多いみたいです。けっこうな数の車が駐車されています。出口の扉に近い場所へ停めて、いざ猫の目時計探索です。


 地図とにらめっこしたまま歩きました。歩いて、歩いて……あれ? 次のT字路まで来てしまいました。正面にはジオラマで組み立てたようなお茶屋さんがあります。

 どう見ても、行き過ぎたようです。でも、時計は見当たらなかった……地図読めない女か、自分。いやチガウ。方向音痴でもなければ地図が読めない馬鹿でもない、と根拠なく自分に言い聞かせて今来た道を回れ右。

 よく見て確認。時計はミートピアってお肉屋さんの向かいにある、はず。それで慎重に通りを戻ると、ありました! ミートピアが。シャッター閉まってます。だから見落としたんだ。じゃあ、ここにある?

 と、視界を上に向けたらありました!


 緑色の猫の目時計が。


 チビは下ばかり見てしまうのだ(143cm)。背筋を伸ばせ、時計はここだ!!

 やったー!! 猫の目時計だ。一人でカチドキをあげます。

 思ったより小さくて高さはありません。そのぶん近くに見える。昔ながらの柱時計のような形、文字盤に当たる部分に猫の目の一つ目がギロリンと。振り子の部分には長い舌が伸びています。裏表で二個あります。それぞれ時と分を分けて表示されているのです。


 マンガの中では、猫の目時計づくりを任されたヒデヨシが時報を録音するときに「みゃーおろろろ」と入れずに「フフフフフフ」ってやってしまうというくだりがあるのですが、現物は前者で鳴くようです。

 ふふふふふふっと嬉しさがこみあげます。一人で写真撮りまくり。さいわい通行人はあまりおりませんでした。


 満足して、すぐ近くの図書館へGO。

 図書館は複合施設で、一階はイベントホールやカフェがあり図書館は二階です。

 階段をのぼった先にあったものは、SF的な空間でした。四階相当の吹き抜けのフロアに圧倒というか度肝を抜かれます。そして二階から四階は壁に沿って本棚がぐるりと整列してます。

「ほあああ」とあんぐり口を開けたままの小母ちゃん。

 新刊図書、特別展示にイベント展示。

 はあー…ため息が出ます。

 そして、ますむらさんのコーナーもしっかりありました。自分でも持っているくせに、本を手に取ってニヘニヘ。だって、初めて見る著書もあったんですよ。


 ほんと、すごいわー。これはぜひとも写真に収めたいと思いましたが、勝手に撮るわけにはいかない昨今。職員さんの手がすいたところを見定めて声をかけました。

「あの、写真撮ってもいいですか?」

 すると

「構いませんが、利用者の方は映さないでください。それから、ネットにアップするときには許可を得たことをコメントしてください」

 と、お許しを頂き、その職員さんと同伴で撮影させていただきました。

 ああ、こんなところで働きたい。やはり図書館って好きー。


 そんなこんなでお礼を言って、階下へ。駐車券を頂く前にこじんまりしたカフェで一休み。

 いいよね、図書館にカフェ。

 我が町の図書館が建て替えるときには、ぜひカフェを作ってほしい……とアイスコーヒーで一息入れました。


 さて、次はどこに行こうか。観光案内所でいただた地図とにらめっこです。


 やはり、上杉神社でしょう。ここまで来たなら。よく知らないけど。


 ホテルのようなロビーで駐車券をいただいて、またノートくんへと戻るのでした。




 

次回、「歴女に非ずな小母ちゃんは……」

残り二話ですm(__)m


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