近頃の子供
その夜、僕は熱を出して、布団で寝込んでしまった。
「なれない環境のせいだろう。日本でいう処の、知恵熱だな はは」
知恵熱ってなんだろうって考えてる間に、僕は寝てしまった。
熱はなかなか下がらず、5日目にしてやっと 元気になった。
もちろん、その間、クラウス先輩は、お仕事。
「よ、ニコ、やっと元気になったな。明日は朝から東京へ行くけど、
一緒に来れるか?」
「もちろんです。邪魔にならないようがんばります」
5日ぶりに見る先輩に、東京での様子を聞いた。
「東京では雪が降って、もう大騒ぎだったな。電車は止まる。
道路は事故車で渋滞。歩く人は転んで怪我人続出だった。
ま、おかげで、”プレゼント”は、そこそこもらえたけどな」
先輩は得意そうに、見せてくれた。15個もあった。
「すごい、どうやったんですか?」
「どうもなにも、困ってる人を普通に助けただけだ。
例えば、立ち往生してる車の後押しをしたりとか、雪の横断歩道で困ってる
お年寄りをおぶったりとかな。後は、年越しの炊き出しかな。」
サンタランドの冬は、雪が深い。
電車というのもないけど、ソリで移動できるし、冬用の靴で雪道は滑らない。
東京には、5cmの雪があったそうだけど、こっちは50cm以上は積もる。
まあ、今は秋だから、そうなるのはもっと先の話しだけどさ。
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今日は、どこか小さな公園についた。
今日が始業式らしい。学校帰りの子供の声がする。
小学生くらいの子供たちの元気な声が聞こえてくる。
あれ?女の子の泣き声が聞こえたような。
小学生の男子・女子が5人ほど。泣いてるは真ん中の女子だ。
周りの子のうちの一人が、泣いてる子の鞄を奪ったんだ。
「へへ、お前っち貧乏なんだな。ランドセルもだいぶボロボロじゃん。
お母さんのおさがり?それともゴミ捨て場から拾ってきたとか」
「・・返してください。それはお姉ちゃんが、昔、使ってた大切なもの」
「絵真って、なんか見ててムカつくんだよね。トロイし。グズだし。
それに、なにこの筆箱。これってお菓子入れの箱じゃん。やっぱ、
ゴミ捨て場から 拾って来たとか?。」
その言葉をきっかけに、絵真ちゃんの鞄の中身は、ばらまかれ、足で
けられ、遠くに投げられたした。
ひどいな・・絵馬ちゃんは、もう泣くばかりで何もできないでいる。
「ちょっと君たち、どこの小学校か、名札を見せなてくれないかな」
後ろから歩み出た男性が声をかけてきた。
メガネに背広、髪型は7:3.薄いコートを羽織ってる。
って、クラウス先輩だ。今度は何になったんだ?
鞄をとりあげ、絵真ちゃんを苛めてた子供たちは、
「遊んでたんだよ。」
「そうそう隠しっこ」
「お前こそ誰だ」
「今、はやりの”ふしんしゃ”って、やつかも」
そういうなり、全速力で走りさっていった。
待てよ、お前達、絵真ちゃんを苛めてたんじゃないか。
僕は、憤然として追いかけようとしたら、先輩に襟首をつかまれ、
途端に、視界が低くなった。鼻が俄然、きくようになった。
うわ、また何かに変化させられた。この間は猫だったけど。
後ろを振り返ると、おばさんが立ってるだけだった。
「ごめんね、ニコ。おばさんが犬の散歩をしてる という設定よ。
不審者に間違われたら、面倒だからね。私たち」
普通のおばさんの姿だ。誰もが着てるようなコートで買い物袋を持ち、
手には犬の散歩用のリード、もちろん、僕につながってる。とほほ。
「もしもし、あなた大丈夫?どこか怪我はない?」
先輩が、そ知らぬふりで絵真ちゃんに声をかけた。絵真ちゃんは、泣き止んでるけど、
途方にくれてる。
そりゃ、そうだよな。俺は幸いにして、そんな目にあった事がなけど、
あんなひどい事されたんじゃ・・
とりあえず、絵真ちゃんの鞄を探そう。
僕は、「ワンワン (探すから離して)」と先輩に吠える。
鞄、鞄と・・あ、っと見っけ。
僕は口で加えて、絵真ちゃんに渡した。僕は背の低い犬らしく、ちょっと
ひきづってしまったけど。
その姿が、おかしかったのか、絵真ちゃんはやっと 笑顔になった。
「おばさん、この犬、コーギーね。足が短いもの ふふふ」
「そうそう、ニコっていうのよ。ニコ、他のものも探しなさい」
3人、見た目は二人と一匹は、散らばったものを集めだした。
最後に僕が、この低い身長をいかして、茂みの下におちていた消しゴムを
拾って終了。
「これで 全部揃ったかしら?」
「おばさん、本当にどうもありがとう。ニコちゃんもお手伝いありがとう。
この筆箱。本当にお菓子の入れ物だったの。働いてるお姉ちゃんのお土産」
かわいいでしょ?大事なものなの」
それは、白いブリキの箱に かわいいウサギの絵が描かれていた。
僕のうちも貧乏だったからわかる。
小学校3年の時、僕の欲しかった筆箱は、かっこよくてクラスで流行してた。
欲しいけど、贅沢はできなかった。そこで父が手作りで似たものを作ってくれた。
でもクラスでからかわれた。取り上げられたりはしなかったけど。
生活費に心配のない今でも、その筆箱を大事に使ってる。
「今度、こんな目にあったら、警察に言うのよ」
「え?先生じゃなくて?」
「う~ん。先生の事、おばちゃん知らないからし。
学校よりも、交番のほうが近い時ってあるじゃない」
「そっか~。それじゃ、もう私帰ります。今日はありがとう」
ちょうどお昼の時間だった。
そだ、今日は、”ありがとう”って3回言われたので、プレゼント3個かな?
「都合のいい事、考えるんじゃありません。おバカ犬ね。一回につき一個よ」
と、頭を叩かれた。
あいたた。まじ叩くかな、普通。