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公園の炊き出しを手伝う

買い物は、細い路地にある商店街ですませた。

僕は日本語は勉強した事がないけど、そういえば、会話には不自由しなかったな。


「それがサンタの特殊技能の一つ。あと魔法が少しとね。とあと変換能力。

学校で、サンタの能力について習わなかったのか?」


サンタの特殊能力って、そういえば、入学試験はヘンな検査が多かった。

簡単なやり取りを延々と続けたり、相手の持ってるカードを予想したり。

「言葉はわかります。字は読めないけど。魔法は使えません。

僕は、”魔法・その歴史”と”魔法入門”を勉強しましたが、

魔法は使えませんでしたし」


クラウス先輩が、ため息をつき

「あのな、もう一度説明するな。サンタの能力のうちで一番大事で欠かせないものは・・」

と言いかけた所で、威勢のいい声で、僕らは立ち止まった。

前方の小さな店から、年配のハゲのおじさんー多分この店のご主人ー

が、先輩の肩を叩いた。


「クラウス君、1年ぶりか。又、今年も炊き出しの手伝いに来日したのかい?

ご苦労様だ。これ、店のあまった豚肉だけど、よかったら、使ってくれな。」

「こんなにたくさん、ありがたく、いただきます」


先輩、仏頂面をひっこめ、満面の笑顔を装着。

そういえば、さっきネギを買った時には、店主のおばさん、売れ残りの

野菜を無料でくれたし、豆腐店では 頼んだ倍の数の豆腐を買う事ができた。

(僕は”買い物上手”だったのかな?)

僕は、荷物持ちつったったまま、ふmと考えてる間、

先輩は、さっきの肉屋の主人と世間話をしてる。


「毎年の寄付、感謝しております。何のお礼も出来ませんけれど、

よろしければ、炊き出しのトン汁を食べに来てください」

「いやいい。その分、お代わりする人にでも上げてくれ。

俺は、多く寄付したわけじゃない。あまり物で、原価で1000円ほどだ。

ほんとにささやかだけどな。この1年間の罪滅ぼしが出来たと思ってるんだ。

俺もいろいろあったしな。

こっちこそ礼をしなきゃいけないくらいだ」


先輩は、主人にまた丁寧にお礼し、振り返り僕に得意げに言った。


「わかったか?こういうのが、サンタの来年のクリスマスまでの仕事だ。

クリスマスは、まあ、なんつうか サンタの勤労感謝の日 のようなもんよ。

俺たちは、基本、年中無休だ」


「炊き出しで豚汁を作るのがサンタの仕事ですか?」

と僕が聞いたら、思いっきり頭をはたかれた。え~ん


「クラウスに後輩指導は向かないね。説明が足りなすぎる。

それにニコ君は、まったくサンタの仕事を知らないようだよ」


いつのまにかミシェル先輩が、後ろから僕に抱き着いてきた。

かばってくれてるの?ばかにされてる気もする・・


「・・・まじか、言われてみれば さっきの言葉も冗談じゃなく

真面目だった。こいつ、な~んにも知らないんだな。きっと。

まったく、アカデミアは何をやってるんだ」


何もしらないって、それは言いすぎ。

「僕だって、サンタがクリスマスにプレゼントを配るくらい、しってます。

僕は、こう見えて、手が器用ですから プレゼント用の木の玩具作りには自信があります」


先輩二人は、僕の顔を見て、二人で顔をあわせ、ため息を一緒についた。

僕、間違った事、言った?


「あのね、ニコ君、そもそも第二回サンタ公会議で決まった事なんだけど、

いまから1000年くらい前に・・」

「ストップ、ミシェル。俺たち買い物の途中なんだ。ミシェルもグズグズ

してたら、地下アイドルの公演の時間に遅れるぞ。」


そうだ、僕たち、買い物を頼まれてたんだ。

でも、ミシェル先輩の地下アイドルってなんだろう?


「おっといけない。ニコ君、今度、教えてあげるからね」

そう言うと、ミシェル先輩は、金髪碧眼男子から、ツインテールの目のクリっとした

かわいい顔の日本人の女の子に 変身した。魔法を使ったんだ。すごいや。

フリフリのミニスカートをはずませながら、先輩は、駆けて行った。


「まったく、あいつのやり方も、偏ってるよな。ほぼ趣味だな」

「やり方って?」

「ニコ、後で教える。今は炊き出し部隊に全力疾走な。」



それから、あわててトン汁の追加を調理。僕は調理はできないけど、

野菜をきったり、洗ったり 物を運んだり、ゴミを片づけたりと、

周りから言われるままに、働いた。

炊き出しを待つ人の数が、ひと段落したころだ。


「さあ、今度はテントのほう、周るわよ」

リーダー格らしい女性の一言で、豚汁は、大き目な容器に小分けされ、お握りは

二個入ったケースにいれ、それを何十個と袋にいれられた。


「あ、あのこれからどこへ行くんですか?」

「ああ、君はクラウスの弟のニコ君ね。よろしく。私は袴田。

炊き出しの副リーダーってとこかな。

これから、路上でテントで暮らす人達で、炊き出しこれない、

例えば、足が悪いとか体調が悪いとかね。

そういう人達に、直接 豚汁とお握りを届けます。


君の兄さんのクラウスのほうは、佐田君と一緒に 車で回ってる。

うちらの担当は、すぐそこだから、徒歩ね。荷物、重いだろうけど、よろしくね」




副リーダーの袴田さんのもと、20分くらいの所で、青いビニールとダンボールで

出来た”家”が多くある処に到着。

ここでは、僕は豚汁の入ったプラスチック容器を、この家の住人達に手渡しする役目

をもらった。最初は緊張したし、熱い容器を落としそうで怖かったけど、

なんとか慣れてきた。これも、サンタ修行のうちですか。。先輩


青ビニールとダンボールの家の住人達は、家・定職・お金がない、

”ホームレス”と呼ばれる、貧しい人達なのだそうだ。

豚汁を受け取る時の反応は、さまざま。

当然のようにうけとる者。逆に怒りだして受け取らないもの。2杯希望する人、

不在の家には、お握りだけ置いておく。

僕が考えてる以上に、炊き出しの場所まで来る事の出来ない人は多かった。

僕は、周りのアドバイス通り、豚汁の容器を渡すとき、相手がおとさないように

手を添えた。


そんな住人達の中に、アカデミアの校長先生よりも年配のおじいさんがいた。

80歳はこえてるだろうか。手が震えてる。手は小枝のようだ。

僕は、渡すとき、おじいさんが容器を持った手を上から包むようにささえ、

テーブル替わりのダンボールの上に置いた。


「すまんのう。でもありがたい。今夜はこれで暖かく寝ることができる」

そして 僕を拝むように手をすり合わせ、何度もお礼を言った。

「暖かいうちに食べて下さいね」

僕は、豚汁は食べてないけど、お腹はすいたけど、胸が一杯になった。

体も暖かくなったきがする。

そして、ポケットに何か入った感触・・・あれ?これって・・


僕らのチームが、上野の炊き出しの場所にもどってくると、大きなヒーターが

ついていて、暖かかった。何人も側で暖をとってる。


「東京とはいえ、冬の夜で外で寝て凍死する人も多いからな。

テントも寝具もないものは、生き残りのため ここ夜明かしだ。」

クラウス先輩が、僕に豚汁とお握りをくれた。


さっき突然、ポケットの中にあらわれた 小さな銀色の包み。

3cm四方の小さなものだけど、リボンもかけてある。

「先輩、さっき豚汁を渡してる最中に、ポッケにこれが出て来たんですけど、

これって、サンタへのプレゼント?すっごい小さいけど」


ほほうって、先輩は小さなプレゼントを もって眺めてる。


「いいか、サンタの仕事は、こういう小さな包みをもらう事だ。

サンタはプレゼントを貰うのが仕事の大半といってもいい」


貰うのが、サンタの仕事?

何かの冗談かと思ったが、クラウス先輩は、大真面目な顔だった。




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