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ニコの決意

「詳しくは言えないが、ニコル君、君に生れについてだ。」


生れって、僕はサンタランドの貧しい農家の長男。

双子の弟妹がいる。今は母が暮らしを支えてる。

父はある時、”北に出稼ぎに行ってくる”と、出て行ったままだからだ。


”家出だ””他に好きな人が出来たとか?””自殺かも”

父が、帰ってこないので、当時、興味半分の噂がとびかった。

僕は、父は生きてどこかで働いてると信じてるけど。



「こちらでは、たまに、ごく小さいうちに、ゆり籠から下界に落ちてしまう子もいる。

サンタランドにも何人かいる。

死んでしまう事が多いのだけどね。奇跡的に誰かに拾われ、

サンタランドで育った子もいる。

そのうちの一人が、ニコ君。

君だよ。君は同じサンタでも、本来こちら側の子だった」


僕は、それを聞いて笑い飛ばした。アンドレアさん、頭がメルヘンしちゃってるね。

「残念でした。僕は父さんと母さんにそっくり。性格も声も似てるって

周りから言われる。誰かと間違えてるんじゃないですか?」


僕は、アンドレアさんの冗談か勘違いだと表ったけど

その様子で、そうじゃない事ようだ。


「うmm。これ以上は話せないけど、こちらの子が落ちて、

誰かに育てられたら、育て親に似てくるんだ。」


「ニコ、生みの親より育ての親 ってあるんだ。育ててるうちに、

拾い子の性格や仕草が、育ての親に似てくるってあることなんだ」

ミシェル先輩が、僕に耳うちした。


だから、どうだというんだ?僕は、その事を知っても、何か変わるわけじゃない。

急に頭がよくなったりとか、身長が伸びたりとかは、ない。


「仮に僕が、元はそちらの子供だったとして、だから、なんなんでしょう?」


「率直に言おう。ニコル君。こちらにきて、子供の面倒をみる仕事をやってみないかい?

実はこちら側も、全ての部署で人手不足なんだ。

だから、ニコル君のように、小さな子が落ちてしまう事故も起きる。


そちらでも、サンタ不足と聞いてるけど、こちらは、子供の生まれる数自体が

減って、大変なんだ。

アリエルを寝かしつけた君には、子供をなごませる才能がある。

どうか、こちら側で手伝ってもらえないだろうか?

それに、君はもともと、こちら側の者だし」


なんだ。やっぱり保父さんにならないかって事か・・

そりゃ、子供は可愛いけれど

「子供は大好きですけれど、僕はサンタクロースになる気持ちは、

変わりません。まあ、今は見習いですけど。

見習いで、東京という処で、少しの間でたくさんの人にかかわりました。

やるせない気持ちになる事もあったけど、サンタの仕事は楽しかった。


頑張って、一人前になって、たくさんプレゼントを集めます。

そうすれば、贈るプレゼントも増えて、みんな幸せになります。

それが僕の大きな目標です。」


アンドレアさんは、苦笑いして

「そんなニコル君だから、余計、来てほしかったんだけどな。

それにしても、”プレゼントを贈ることで人が幸せになる”

 って言いきったね。見た事あるのかい」

ちょっとイジワルな質問だ

僕は、貰うばかりで、贈ったことはないし、そういう場面も見た事がない。


「じゃあ、特別大サービス、プレゼントを贈る現場を再現して見せよう。

これで、もっとやる気がでるようにね」

そう言ったアンドレアさんの、肩の所に光る白い羽が見えた。

背広に似合ってなかったけど。

ー・-・-・-・-・--・-・-・--・-・--・-・-・-

アンドレアさんの見せてくれた映像は、サリュエルだった。

僕より年下な子でも一人前なんだ。

サリュエルは、夜空にポツンと浮かびながらラッパをとりだす。

そして、そこにプレゼントの箱一個をラッパの音の出るベルの部分に放り込んだ。


それから、彼が力一杯、ラッパを吹くと 小さな小さなサリュエルが、無数に出てきて

また、ラッパを吹いてる。そこからは、いろんな色の霧のようなのが

キラキラ光りながら出てくる。

場面は地上目線になって、上からおちてくる虹色の霧の粒子が人の体に

入って消えて行った。


「サンタのプレゼントは、幸福の種 ともいえる。貰ったから、

すぐ願いが叶うんじゃなくて

幸福な気分、希望の心が手にはいる。ただし、その人次第なんだ

知らずに過ごす人もいれば、望外の喜びに満たされる人もいる。

だから、幸福の種さ」


”こういう事だったんだ”先輩二人は、納得しつつも、

また、考え込んでる。


「ありがとう、アンドレアさん。これで、僕はますます、

サンタになりたい気持ちが強くなりました。

可哀想な子や不幸な人を見ると、”なぜサンタのプレゼントがあげられないか”

不思議で歯がゆく思ってたんだ。」


アンドレアさんからは、あの違和感や威圧感は感じなかった。

僕らに会うのに、緊張してたのかも。僕らに知られては

いけない事が、あちら側には多いのかもしれない。

姿は、変な違和感を僕は感じなくなった。

そして、まだボンヤリとした輪郭だけど、白い羽が見えるだけ。


「さすが、大人のアンドレアさんの羽は、大きくて白く輝いてますね。

サリュエル達二人にも羽はみえたけど、まだ小さかった。

ただ、やっぱり、その羽にその背広は、似合わないかもしれないですね」


”しまった。やりすぎた”とアンドレアさんは、慌てて映像を消した。

かなりあわてたのか、何もないホールの床で躓いて転びそうになった。

その時、羽毛が何枚が空中を舞った白く輝くそれは、床に落ちると溶けるように消えた。

これは先輩たちにも見えたようで、二人とも驚いてる。

先輩たちは背中の羽は見えなかったのかも。

だから、突然、羽毛が現れてびっくりしたんだ。


それから、アンドレアさんは、やっと落ち着き、先輩二人の肩を強く抱き


「・・・という事だから。ニコル君の指導のほう。くれぐれもよろしく

頼みます。」そうして彼は、深々と二人に頭を下げた。

「やっぱり・・・。僕たちで出来る限りの事はします。

今日は風を操る能力の制御の実習中だったんです。」


なんだか、3人で意気投合してる。

アンドレアさんは、用事はすんだのか、ホールの窓を開け、

”背広のアドバイスありがとう”といって、夜の空へ飛んで消えて行った。

だから、なぜ、窓から出て行くんだ・・


「「という事だからニコ」」

先輩二人が、僕の肩に手を置く。

「今、見た事は他言無用。もし、誰かに話したら、サンタはクビね。

サンタランドにもいれなくなるかも。それと、

”白い羽云々”も、ここだけの話しにする事。これは、先輩命令」

「さて、アンドレアさんに頼まれた事だし、明日からニコを特訓だな」


風の制御の練習の続きかな。ちょっと寒いけど、講義よりはいい。


「ニコには、”自分の見たものを、すぐ口に出していわない”って、

基本的な事から。 教えないといけないんだな。

まったく、アンドレアさん相手に、ヒヤヒヤしたぞ」


クラウス先輩、アンドレアさんについて、知ってる口ぶりだ。


「さて、その事はお終い。ニコが正式にサンタクロースになって経験を積んだら

いろいろ教えてあげるよ。それまでは秘密だ」


「そうだね、クラウス。他のサンタに 今回の事を詮索しないよう、

連絡をまわしておくよ。」


ミシェル先輩も、何か知ってそうだ。この中で僕一人が知らないって事か・・とほほ。

はやく、見習いを卒業しないと。


「佐田さんのこぶし寮のホールに、像があるんだけどな、見てないっていうか

眼中になかったんだな」


像って背中に羽のある白い像なら、僕も覚えてる。

アンドレアさんが、あの像のような服をきたら、似てるかな。

まあ、もういいや。とにかく僕はサンタクロースになる。

そのためにも、頑張って勉強する。

僕の決意は固い。


でも、次の日、講義の時間、疲れて爆睡して、講師の評議員の人に拳骨をはられた。

・・・サンタクロースへの道は遠いかもしれない。

読了、ありがとうございました。

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[良い点]  読みました。  一人前のサンタクロースになるための修行に、地上で良いことをして配るプレゼントを集めたり、それとは別にプレゼントを配るサンタがいたりと、いろんな設定がちりばめられており、発…
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