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”風を操る力”特訓

それからの僕は、サンタランドでの、講義と実習の日が続いた。

講義の部分は、クラウス先輩の他、ミシェル先輩、時にはサンタ評議員も

きてくれた。


評議員の講義は、サンタの歴史や成り立ち、サンタランドの地理、それと

魔法の呪文に使う古語の基礎。

講師の先生には申し訳ないけど、時々、ちょくちょく、

講義の内容が、頭の中をつきぬけていく。

僕の頭の容量は、そう大きくないんだな、きっと。

ある一定量覚えると、それ以上は、最初のほうに覚えたほうから忘れていくみたいだ。


その講義内容の多さから、ギブアップしかけると、先輩に脅される。

”アカデミア・サンタクロース養成コースの講義の半分の量だから”

・・・・ 絶望的だ、僕の覚えの悪さ。


一日の勉強もひと段落し、僕は寮のホールで、落ち込みながら。

不思議にも思ってた。村長ななぜこんな頭の悪い僕を、この大学に推薦したのだろう。


寮のホールは、クラウス先輩とミシェル先輩の3人だけだった。

もともとは、サンタ養成コースの学生寮兼サンタ寮だったそうだけど、

何かと規制のある寮を嫌って、自活してる先輩サンタクロースも多いそうだ。

だから、この寮も閑散としてる。


「クラウス先輩、やっぱり、僕にはサンタクロースは無理かも。

もう、自分の記憶力のなさに、がっかりします」


「あのね、ニコ君、君がサンタにならないで、誰がなれるんだい?」

「残念ながら、ミシェルの言う通りだな。ニコは何かを勘違いしてる。

サンタクロースの適性がないと、養成コースには入れないんだ。

ニコの同期生は、コースにギリギリ入れたものの、

結局は転科することになった。」



え?皆、サンタになるのがイヤになって、転科したんじゃないんだ。


「もしかして、講義についていけなかったとか?」

「あのなニコ、前にも言った事があると思うのだが、サンタには天性の能力が

必要なんだ。わかるだろ?”人の感謝の心と言葉をプレゼントに変換する”

この能力がなければ、どうしようもないだろうが」


よくわからない。。”プレゼント”は、ポッケの中にいつの間にか

入っていたし、それが普通の事と思ってた。

他の人はそれが出来なかった?


「もっともニコの場合は、他に問題があるんだけどな。

それを克服するために、明日は屋外で実習な」

クラウス先輩は、僕の頭をポンとたたいて、部屋へ帰っていった。


「聞いたんだけど、ニコ君、僕の、正しくは、僕の地下アイドルが

理想なんだって?うれしいな。でも復帰出来ないんだ。ごめんね」

そういってミシェル先輩は、僕の手を握った。本当にうれしそうだった。


ミシェル先輩、本当に地下アイドル業、好きだったんだ・・


ー・-・-・--・・--・-・-・-・-・--・-・-・-・--・-・

次の日、実習を行う場所は、並木道でまわりは芝生だった。

芝生には、体操で練習に使うような大きなマットがおいてあった。

もうすぐ冬とはいえ、今日は小春日和ってやつで、そんなに寒くはなかったけど。

実習なら、もっと暖かい季節にしてほしかった。


ところで、先輩、なんの実習するつもりだろう。


「悪い、遅れた。じゃあ、始めよう、ニコ君。今日はマットもあるから、

そんなにひどい怪我にはならないだろうし」

「まって、何の実習ですか?怪我することあるんですか?」


クラウス先輩は、どちらかというとセッカチなのか、言葉が足りない。


「ああそうそう。まずは、ニコの持ってる風をあやつる力を、制御する

トレーニングだ。呪文を覚える前に、自分でどのくらい制御出来るかみる」


いやいや、僕は風にのることはできても、操ることは出来ないし。

それに、制御ってどういうことかな。


先輩の言う通り、風にのって2mの高さまであがる。次はマットまでの約5m

横に移動すれとの指示だけど、そういうやったことない。

 ”いいから、そうなるよう心の中で想像するんだ”

と言われ、恐る恐る挑戦。なんとかマットまで移動する事が出来た。


「次はマット上空2mを周りをまわれ」って・・

出来ないよ。15m四方のマットを周ってる自分を想像しながら、

フっと、その光景ってかなり笑える。

って、思った途端、落ちてしまった。


「今、何か別な事を考えただろ?ニコ。マットで寝てみたいなとか」

「そんな事は思ってません。ただ、まわりから見たら、こういう光景って

かなり滑稽なんじゃないかって・・」

「で、落ちたと。いいか、ミシェルを見習って”自分って素敵”って思え。

”空中でマットの周りをまわってる自分は、なんて素敵なんだ”って」


いや、どう考えても”素敵”じゃないし。

しかたない。”自分ってすごい”

って思う事にした。今度は上手くいった。


その後、マットの周辺を、旋回したり、上下運動したりと、ハタからみたら

意味不明だろうと、チラっと思ったら、風からすべりおち、マットに触れる寸前で

元の体制にもどった。

ふーー危ない。


「先輩、実習の意味がよくわかりません。僕が風にのらなければいいだけの

事じゃないかなって、思うのですけど・・」

1時間くらいの、空中運動@マットの上空 は、正直、疲れた。

ウッカリすると、よそ事を考えてしまう。


「ニコ。風にのれるって事は、風の力を無意識に調整しながら使ってるんだ。

それは、風を起こす事も出来るって事だ。

もし、風を起こす力が暴走したらどうする?

だから制御する方法を覚えるんだ。呪文でもできなくもないけど、

無意識で使うのなら、意識で止めるのほうが早いからな」



僕は自分の力の暴走は、考えたことなかった。

人に迷惑をかける突風付きなら さすがにまずい。


今は先輩の指示で10mの高さを ホールドだ。

10mまで上がった時、上のほうから、ゴーっという強い風の音がした。

遠くに竜巻おきてて、近づいてくる。

僕はあわてて、下に降りて、先輩に報告。


「ニコ、よく落ちなかったな。それだけレベルがあがったのかな。

なになに、竜巻がくるって?お前がおこしたのか?」

「まさか、僕じゃありません、

あ、空の上から何か落ちてきます。又、風に乗って見てきます」


竜巻に巻き込まれたものだろうか。小さいけど、僕は何か気にかかったんだ。


それは急速で落ちて来た。僕が慌てて近寄ると、それは、5歳くらいの子供だった。

え。どうして小さい子が?とか考える間もなかった。


その子供を抱きとめる事が出来たのは、運動神経が鈍い僕にしては、上出来。

ただし、マットの上に二人とも落ちたけれど。


その子供は、栗毛色の巻き毛のかわいい男の子で、この寒い季節に薄い白い

パジャマのようなものしか来てない。

竜巻にまきこまれたせいだろうか、左側が布が裂けてやぶれてる状態だ。


僕と先輩は、その子に上着をきせて、声をかけた。

子どもは、すぐ気がつくと同時に大声で泣きだした。


「僕の白服。やぶれちゃった~~」


悲しくて泣く所は、その事?その子供の声は大きくて、僕もクラウス先輩も、

いろいろご機嫌取りをしたけど、無駄だった。

 



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