『ボク』と『友達』との青春の思い出 4
なんだかんだあったけれど、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
こんなに騒がしくお昼休みを過ごしたのは初めてだったかもしれない。
なんだかすごく楽しかった……ような気がする。
くっつけていた机を元に戻すと、千里が自分のクラスへと戻る。
「みんなじゃーねー」
「ちー、まったねー」
あぁ、千里だけは別のクラスだったっけ。
ボクも片手を振って「またね」とだけ告げた。
千里はにっこり笑って手を振り返し、ボクらのクラスを後にした。
その後の授業はロングホームルームで、クラス委員を決めた。
クラス委員は男女1名ずつで、行事の際のまとめ役であったり、先生からの雑用なんかが主な仕事になる。
立候補制だったためなのか誰も手を上げないーーもちろんボクもやりたくないーーので、仕方なしに推薦も有りということにしたら、後ろの席の星奈がやらかしてくれた。
「はいはーい、南海さんがいいと思いまーす」
星奈は無駄に元気よく、手を上げてそう言った。
クラスの視線が佳奈に集まる。 ボクもつられて佳奈の方を向く。
佳奈は星奈を睨んでいた。うわぁ、めっちゃ怒ってる……。
担任の山本先生も、あの子なら適任だろうみたいな感じで佳奈を見ていた。
これは、もう詰んでるとしか思えない。心の中で佳奈に合掌をする。
「南海、引き受けてくれるか?」
「……わかりました。引き受けます」
佳奈は表情を隠しているけど、ボクと匠にはバレバレだった。あれは、すごく嫌そうな顔だ。
先生に促されて、佳奈は教壇に立って司会を始めた。
「では、男子のクラス委員を決めます。誰か立候補いませんか?」
佳奈の声は良く通る声だ。
否定はしていたけれど、小学校でも委員長はやっていたしやっぱり似合っている。
それにしても男子の委員かぁ、やりたくないなぁ。あ、今は女の子だから男子の委員にはなれないのか。
そう考えていると、後ろから星奈が小声で話しかけてきた。
「やっぱいーんちょはいーんちょだね」
ニコッと笑ってよくわからないことを言っていたけれど、なんとなくわかる。
確かにあれはあれで佳奈っぽい。
実によく似合う役目だと思う。
「うん、ボクもそう思うよ」
ボクも星奈に同意しておいた。
ところで男子側も立候補はいなかった。
だけど佳奈はそんなことは意にも介さずに話を進めた。
「では、男子も推薦で決めたいと思います。推薦がある方はいませんか?」
男子側はこれといった人がいないのだろうか、誰も手を上げなかった。
これも予想していたのかもしれない。佳奈はすぐさま行動に移す。
「誰もいないのであれば私から、河北くん、お願いできますか?」
えっ!?っとボクまで驚いた。
匠の方に目を向ければ、あちらもかなり驚いていたようだった。
他の男子たちも、「匠、頑張れ」ともう決まったかのように応援していた。
後ろの席の男の子が背中を叩いてドンマイと言っていた。
しょうがねーなーと言わんばかりに、やる気なく前へと出る匠。
ボクの席の角度からだと顔が見えなかったけれど、そんなに嫌というわけでもなさそうな気がする。
ボクの気のせいかも知れないけれど。
「では私たち2人がこのクラスのクラス委員となりました。今後の行事で何か決めることがあるときには、私たちが司会進行をしますので、よろしくお願いします」
「お願いしまーす」
匠と佳奈が挨拶し、クラスみんなが拍手でそれを受け入れた。
「よーし、クラス委員も決まったことだし、後はプリントとか配ったら解散なー、委員の2人に配ってもらうか、せっかく前に出てきたしな」
先生がそう締めくくり、今日の授業は全部終わった。
さて帰ろうかとスクールバックに荷物を詰めて持ち上げると、突然星奈がボクの腕を掴んで走り出した。
最初はボクも引きずられて走っていたけど、そこは元病人らしく体力がないので、もはや抱きかかえられていた。所謂お姫様抱っこの状態になっている。
同い年に女の子にこれをされるのはかなり恥ずかしいものがある。
しかもここはまだ校舎内。同級生たちからの視線もかなり浴びている。
乱れた息を整えてから、星奈に尋ねた。
「で?これはなんの騒ぎ?」
「ぜぇ、いーんちょが、はぁ、おっかない顔で、ぜぇ、追っかけてくる、ふぅ」
「自業自得だよ、後ボクを巻き込むな」
「ゆっきーも見ていただけで同罪だというから一緒につれてきた」
なんという横暴な!
あの状況をボクにどうしろってんだ。
自転車置き場まで逃げてくると、星奈は自転車の鍵を取り出して、ボクを自転車の後ろに乗せた。
ボクもなんとなく慣れた手つきでスカートをお尻に引きなおして横座りの態勢をとる。
「ゆっきー、しっかりつかまっててよっ」
そういうと星奈は、思いっきりペダルを漕いで、ぐんぐんと学校から離れていった。
佳奈がすぐ後ろにいたけれど、いつの間にか見えなくなっていた。
しばらく走ると、ちょっと広い公園があった。その公園の中に入り、星奈は自転車を停めた。
緑の絨毯に彩られたその公園に、ごろんと寝っころがる星奈。
「制服汚れるよ」
とボクはそれだけ言って、寝っころがる星奈の横に座る。
「ゆっきーもやって見なよ。気持ちいーよー」
ため息を1つ吐いてから、ボクも横になる。
春の風が寒くもなく、暑すぎず気持ちがいい。
静かだと思ったら、星奈は寝息を立てていた。よく寝る子だなこの子は。
思えば、こんなに強引に引っ張られたのは初めてかも知れない。
佳奈はもちろんだけど、匠はこんなに無理やり何かをするってことはなかった。
悠希は何かさせようとはするけど、こんなに活発ではなかった。
今までにいないタイプの知り合いはいなかったと思う。
とりあえずボクも目をつぶり、1つ息を吐くと、
パシャリ!
とカメラのシャッターを切る音が。
変質者が出たのかと思い、ガバッと起き上がると、スマホのカメラをこっちに向ける千里がいた。
「あー、起きてたー」
「……何時からいたの?」
本当に気配なく現れたのでびっくりした。
千里は何の気なしに、「ついさっきだよー」とだけ言ってスマホを操作した。
ボクのスマホにRIENというアプリのメッセージが届く。
『星奈と悠希ちゃん無事発見♡』
という文面とともに、2人で寝そべっている写真が添付されていた。
「千里っ、なんで写真もおくってるのっ」
ボクは千里に抗議をする。
すると千里は、こう答えた。
「うーん、写真もあった方が、佳奈ちゃんたちが喜ぶかなーって」
「だからってそんな写真送らなくても……」
「悠希ちゃんは照れ屋さんだねー。でもー、お友達の可愛い写真は消したくないからー」
ん?あれ?
「お友達って、ボクは、」
「悠希ちゃんももう友達でしょー?またね、って言ってくれたしー」
ボクは今まで友達らしい友達って言うのは匠とか佳奈とか幼馴染たちしか居なかったけれど、千里はボクを友達だと思ってくれているらしい。
星奈もそう思ってくれているだろうか。
そうだったら嬉しいな。
「んぁ、あ、ちーだ。おはおー」
間抜けずらで星奈が起きる。
それと同時に、佳奈もここまで来ていた。
「やっと、見つけた、ぜー、はー」
「いーんちょおっつー」
「ふっざけてんじゃないわよっ」
佳奈が星奈の頭をスパンと叩く。
千里がその様子を写真に撮っていた。
ボクもそれがおかしくて笑ってしまう。
なんだかとても楽しくて、この関係がいつまでも続いて欲しいと、そう願った。
その日の夜、千里からRIENのメッセージが入っていた。
『お友達の悠希ちゃんにプレゼント♡』
放課後の公園にいた時の、楽しそうな笑顔のボクの写真が一緒に送られてきた。
ボクはあまりの恥ずかしさに、その日はあまり寝られなかった。
いつの間にかブックマーク100件超えてました。
いつもありがとうございます。




