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魔王の娘と逃亡生活!?  作者: 信示
閑話・転生前のお話し
4/7

閑話

「はぁ…はぁ…」


女性は夜の森の中を、息荒く走っていた。

冒険者といった格好ではなかった。

白銀の髪の毛に、美しい容姿、身につけれいるのはローブと高級そうな服のみだった。

そんな、この場にいることが似つかわしくない彼女は苦痛に顔を歪ませながら、止まることなく走り続けていた。

時折、後ろを振り向きながら追手の存在を確認しながら、走る。



「……絶対…殺させない」


彼女は自分自身に言い聞かせるように、小さくそうつぶやいた。

確固たる決意だ。どんな手段を使ったとしても、どんな相手だろうと、彼女の腕の中にいる自分の赤子は守り抜くと…

たとえ、その赤子が彼女の種族では恐れられている黒髪黒い瞳の『忌み子』としても

あの人との絆は、もうこの子しかなくなってしまったのだから…


「……っ!!……っ!」

「……!」


遠くの方で、追手の声が聞こえる。

もう、逃げたことをかぎつけたらしい。

古い考えばかりの大嫌いな村人たちが、彼女のことを見つけたらしく近づいてくることがわかった。


このままでは、捕まってしまうのも時間の問題だ。

彼女は自分の無力さにイライラした。

こんな時、愛した彼ならなんとかしてくれただろう。

そんなことを考えたが、すぐさま振り払った。

今は、この子をどうにかしないといけない、いないものに期待しても何もできない。


走りながら、いい案はないか必死に考える。

必死に考える。

そんなとき、彼女の視界に建物が映った。

本で知った、人族の建物、彼女が目指していた教会だ。


希望が湧いてきた。



「…」


できるだけ、気配を消して教会の中に侵入する。

運がよいのか、悪いのか教会の中には誰もいなかった。

それを確認できたら、すかさず抱いていた私たちの子供をおろす。

さすがに、赤子をそのまま置いていくのはダメだろうと思い、身に着けていたローブを巻き付けてあげる。

そして、赤子に手をかざす。人族は差別意識が高いと、本で読んでいた。

彼女の血が流れているので、彼女の種族のようになってしまうかもしれない。

そうなって、助からなかったら元も子もない。この子が自立できるまで持つように多くの魔力を込める。

それと同時に守護の魔法も使う。彼女のみ扱える魔法で母として唯一できることを行う。


「…ちゃんと…ご飯食べる」


自然と、言葉を理解できるはずのない赤子に話しかけていた。


「…ちゃんと…清潔に……女の子には…やさしく…守れるような…子になって」


いいたいことはいっぱいある。まだまだ、いっぱい教えたいこともある。

魔法のことや、剣術のこと、

そして、あなたのお父さんのこと


でも、もう、行かなければならない。

このまま、追手に捕まればいい、そして私が罪を受け入れればいい。

最も、幽閉はされど殺されはされないだろう。

この子が生きていてくれれば、会えることもあるだろうか…


大きくなったわが子を想像する。きっと、あの人に似てかっこいい男性になるはずだ。


「…ごめんね…”アレス”」


彼女は最初で最後になるわが子の名を呼んで、夜の森に再び消えていった。



同時刻


とある男は人がいなくなった教会の地下室で旅の疲れを取っていた。

この村はもともと、人族が住んでいたのだが魔界の土地は合わなかったのかいつの間にかいなくなっていた。

いくら遠くても、魔王がいる土地だ、安心しては暮らせないだろう。

仕方ないと思う…だが、恐れられるのは少し、悲しくなる。


そんなことを考えながら、眠りにつこうと瞼を閉じる。

が、上の部屋で魔力を使う反応が感じ取れた。

身の危険を感じて戦闘態勢に入る。

入り口をじっと睨みつける。

が、いっこうにこちらに来る気配がない。


「…おかしい」


しばらくすると、魔力を使う気配はなくなり使っていた人物もこの教会からいなくなった。

近くで何人かの気配が感じ取れたが、その気配もしばらくしたらどこかに消えていった。


「…俺を狙っていたわけじゃないんだな」


腰に下げている剣から手を放す。


「ふぅ……」


自分に匹敵するほどの魔力量だった。

いったい何をしようとしていたのか、気になり上の階に向かった。

罠かもしれないので慎重に向かう。


無事に、上の階にたどり着く。

礼拝堂だ。周りを見渡す。

やはり、なにも仕掛けられていなかった。


しかし、礼拝堂の端に魔力の塊があった。

ローブで包まれた何かが置いてあった。


「何だこれ」


恐る恐る、手に取る。

そこには、”赤ん坊”がくるまれていた。


「……どうしよう」

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