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魔王の娘と逃亡生活!?  作者: 信示
プロローグ
2/7

プロローグ2

ここは天国なのだろうか?

それにしては、殺風景過ぎると思う。


それとも、夢でも見ているのだろうか?

頬をつねろうと手を持っていこうとするとそこで気がつく。


手が透けていた。


「なっ!す、透けてる……」


驚いて、自分自身の体を見ると、手だけではなく足も透けていた。

童話でよくある幽霊のような状態だった。

これは自分ではどうにもできないので諦めて顔を上げる。


「それにしても……」


改めて周りを見渡すと本当に何もないところとわかる。

どこまで続いているかもわからない白い白い世界が広がっている。

方向音痴でなくても迷う自信がある。


「天国ってこんな殺風景なのか?」

「そんな訳ありませんよ」

「うへっ!」


返事なんて全く期待していなかったため、返事が返ってきたことに驚きヘンテコな声を出してしまう。

声のした方を見ると、そこには今までいなかった人が立っていた。

その人は純白の服を着ていて、とても整った顔をしていた。

彼女をみた人は十中八九、美人と言うだろう。

そのぐらい、美しかった。


「変な声出して……大丈夫ですか?」

「え、えぇ……大丈夫です」


さっきの自分を思い出して顔を紅潮させる。

そんな俺の姿を見て、目の前にいる女性は頬に手を当てて微笑む。

その姿すら世の男性を虜にするほどの美しさだった。

多分、目の前にいる人は女神か天使なのだろう。

俺が死んであの世にいるとすれば説明がつく。

だが、ついさっきここは天国ではないと言われたばかりということを思い出して、疑問に思う。

なら、ここはどこなのだろうか?

もしかしたら地獄なのだろうか、そう考えたが目の前にいる人が違うという証明となった。

俺の中の地獄は閻魔様がいるイメージしかないため、こんな美人がいるのはおかしいという考えだ。


「あ、あのここは?」


今の状況を整理するために目の前の女性に質問を投げかける。


「ここは、私の作り出したあの世と現世の狭間です」


もう既に頭が追いつかない答えが返ってきた。

なんだ、狭間ってなんで俺はそんな大層な場所に呼ばれたんだ?

一つの疑問が解決したにも関わらず次々と新たな疑問が湧いてくる。

考えていることが顔に出ていたのか、俺の質問を聞く前に女性が口を開く。


「あなたは、現世で……その……私たちのミスにより天命、あなたたちでいう、寿命がまだ残っているにも関わらず

 お亡くなりになってしまったので、お詫びとしてその別の世界に転生できるようにするように言われましたので

 この空間に招待しました」


そう言うと、女性は申し訳ありませんと言い、深く頭を下げた。


「い、いや、その……あ、頭を上げてください、え、えーと……」


頭を上げてもらおうと名前を言おうとするが、女性の名前がわからず言葉を詰まらせる。

すると、女性は頭を上げて笑顔を見せる。


「そういえば、自己紹介がまだでしたね、私は愛と美の女神、アフロディテと申します。」

「あ、俺は……」

「芳野 紡さんですよね」


俺が名乗る前に名前を呼ばれて少し驚くが、考えてみると招待されたのだから知っているに決まっている。

自己紹介を終え、本題に入るために俺は疑問に思ったことを質問する。


「アフロディテさん……俺は、具体的にどうなるんですか?」


さっき、転生と言われたけれども具体的には全くと言ってもわからない

転生といっても俺の知っている転生は二種類ある。

一つ目は元の世界の”芳野 紡”として別の世界に飛ばされる転生

二つ目は転生先の世界に一から生きていいく転生だ。

まさか、ライトノベルでの知識が役に立つとは思ってもみなかった。


「そうですね、私たちは基本、世界に干渉することはタブーとしてますのでそのままの姿での転生はできないことになってます

 で、でも、紡様が望むのならそれにできる限り答えるように言われておりますので、頑張ればできます」


アフロディテさんは頑張りますと言って豊かな胸に前で両手で握りこぶしを作る。可愛い

そんなことよりも、アフロディテさんが無理をしてまで転生してもらうこともないのでその申し出は断った。

殺されたのにお人好しだなと思われるかもしれないが、正直こうしていることで死んだという感覚がないためどっちでもよかった。


「そうですか……な、なら他に希望はありませんか?」

「あ、」


思い出したように声を上げる。

転生の醍醐味、記憶の引き継ぎはどうなのか。

俺が素っ頓狂な声を上げて黙り込んだままだったので、心配そうに狼狽するアフロディテさんがいた。


「ど、どしたんですか?」

「あ、その……記憶はどうなるんですか?」


俺の質問を聞くとニコリと笑顔を作り、話し出す。


「安心してください、それくらいは余裕で出来ますよ

 こちらから、あちらの世界……転生先の世界に行く際に加護が付与さしてもらいますのでそれの特典で記憶は引き継がれます」


アフロディテさんは俺の相槌を聞いて説明を続ける。


「あちらの世界では、魔物といわれる人類の天敵がいます。

 なので、身体能力を通常より数倍強くする加護に加えて、簡単には死なないように、傷が急速に治る『再生』の加護を付与さしていただきます。」


アフロディテさんは説明を終えると俺に微笑みかける。

要するに俺は、神様たちの何かしらのミスで死んでしまって記憶を引き継いだままチートの能力を携えて一から人生をスタートするということなのだろう。

小説なんかを読んでいる高校男子には夢にも見たシチュエーションだ。

もちろん、俺自身もそんなシチュエーションを望んだ者の一人だ。

だけど、気になることが一つあった。


「そういえば、みんな……クラスのみんなはどうなったんですか?」


一緒にバスに乗っていたクラスのみんなが心配になりアフロディテさんに聞いてみた。

だが、アフロディテさんはきょとんとした顔をして、予想外の返答をした。


「あの時、亡くなったのは……あなただけですよ」

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