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魔王の娘と逃亡生活!?  作者: 信示
プロローグ
1/7

プロローグ1

目を覚ますと、ただただ真っ白な空間が広がっていた。

右を向いても、左を向いても、もちろん上も下も真っ白だった。


「……どこだここ」


やっとでた言葉がそんな一言だった。




こんなことになる少し前

俺、芳野よしの 紡つむぐは耳にイヤホンをつけながらバスの窓側の席で流れる景色を楽しんでいた。

今は高校生活で一度きりであろうイベント修学旅行でバスに乗って目的地まで移動している。

初日ということもあって、周りのみんなはいつも以上にテンションが上がっていた。

先生も修学旅行の時ぐらいはと言いたげな表情で、羽目をはずして騒いでいる生徒を見守っている。


そんなクラスメイト達を横目に見ながら景色を見ていたら、肩を叩かれた。

叩いた主の方向に顔を向けるとその相手の人差指が俺の頬に刺さる。


「くははは、ひっかかってやんのー」

「歩、この野郎」


頬に人差指をさした本人はおかしそうに笑って指を退ける。

彼は、琴原 歩 同じクラスでよく一緒にいることが多い。

初めて会った頃は、お互い毛嫌いしていたが、今では親友だと思っている。


「ひっかかる方が悪いって」

「それでも俺の気が収まらない、デコピンさせろ!」


歩にデコピンをするためにつかみかかるが、ひらりとかわして、別の席の友人にも同じことをするために

笑いながら行ってしまった。

俺もいつものことなので笑って送り出す。

どうやら、歩も俺も修学旅行ということで自分も気づかずに浮かれているらしい。

別にいつも大人ぶっているわけではないが、性格が性格なのでどうも本当に親しい人以外とバカ騒ぎしないため

他の人から見るとクールと思われているらしい。

当の本人は、ただただ人見知りのヘタレなだけというわけなのだが


そんな俺でも修学旅行で浮かれて普段ではありえないくらい

羽目を外して楽しんでいるのだ、他の生徒も当然、俺以上に楽しんでいるはずだ。


「ねぇねぇ、芳野君」


歩が他の生徒にちょっかいを出しに行ったそのすぐ後で声がかかった。

その方向をみると、声をかけた本人は座席の背もたれから身を乗り出して

俺の方に顔を近づけていた。

まさか、顔が近くにあるなど考えてもいなかったので

少しびっくりしてしまう。


「な、なんだよ、守野」


守野と呼ばれた女性とは座席から身を乗り出した状態では話し難いと分かり

隣に座ってもいいかと聞いてくる。

隣はついさっきちょっかいを出しに行った歩の席だった。

俺はクラスメイトにイタズラしている歩はしばらく帰ってきそうにもないので

歩が帰ってくるまでならいいと告げた。

彼女の名前は守野 由 このクラスのアイドルだ。

文化祭の時に仲良くなった。メールアドレスをゲットできた時は、思わずガッツポーズしたくなった。

仲良くなってわかったことだったが、守野はこのクラス一番のイケメンで成績優秀、スポーツ万能、超いい人の神田 剣城の幼馴染らしい。

しかも、とてつもなく仲がよろしいようで付き合っていると噂されている。本人は否定していたが…

それを聞いて俺は早々に立ったフラグをへし折られいい友達として付き合わせてもらっている。


「で、なんのようだ」


そんな、守野が何の用で俺を呼び、隣の席まで来たのか

気になり理由を聞いてみた。


「いや、暇だったから」


何とも、あっさりした返答が返って来て

気が抜ける。


「なら、あそこであほみたいに騒いでる連中のところに行けよ」

「うるさすぎると、私リバースするよ」


一応、女の子がそんなこと言うんじゃありません

心の中で密かに突っ込む。

こいつに今更そんなことを言っても無駄ということは

このクラスになって学んだ。


「リバースするときはその袋に頼むぞ」

「勢い余って、芳野君のところにするよ」

「おい」


本気で心配する俺に冗談冗談と笑顔で返答する守野

冗談に聞こえないから本気で心配する。


「ねぇ、何か面白い話してよ」

「無茶振りにも限度があると思うぞ」

「そんなことないとおもうけどなー」


少し、考えて先日テレビでみた面白い話をすることにした。

どうやら守野はちょうど見てなかったらしく

興味津々で俺の話を聞いていた。

内心、俺は守野と話せてうれしい。


下心満載で守野と話していると

突然、衝撃が走る。

突然すぎて、なぜ衝撃が入ったのか全く分からなかった。

俺が衝撃を受けると同時にバスの車内から女子生徒の悲鳴が鳴り響いた。

何が起きたのか、その答えを考える前に、次に浮遊感に襲われた。

ジェットコースターに乗っている気分だ。

自然と叫び声が俺の口から洩れていた。

いや、俺だけでなくバスの中にいたほぼ全員が叫んでいただろうと思うが

不思議と、自分の声以外が入ってこなかった。

そうすると、なぜか冷静になって、隣にいる守野は大丈夫なのかと考える。

守野は隣で必死に振りほどかれまいと前の座席についている取っ手を握っていた。

助けようとするが、俺自身もこの浮遊感に耐えるのに必死だった。


そんなわけのわからない状況で窓の外を見た。

いや、見てしまった。

そして、どうゆう状況かを理解した。


バスは、宙に投げ出されていた。

ガードレールを突き破って崖に投げ出されて

ゆっくりと落ちていた。


あぁ、死んだな


そう確信したと同時に、隣にいた守野と目が合う。

守野が何か言った気がした。

でも、その言葉が聞こえる前に意識は落ちた。




そして、真っ白な空間で意識はよみがえった。

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