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序章
紅蓮に染まる世界を、泥で汚れた手で汗を拭いながら見上げれば。
夜を知らせる、白銀星が天空に大きく登っていた。
もうそろもろ切り上げて戻るかと想いつつも、薄い茶色の髪から覗く、その絶景に時を忘れていると、
背後の巨大な鐘楼が何かを知らせるように鳴り出す。
思わず、その巨大な音に驚き、振り返ると……
其処には、子供が居た。
萌葱色の髪に新緑の瞳を持った子供は、泣き腫らした目を懸命に擦り、肩を揺らしていた。
善良なる神の僕たる男は、思わず眉尻を下げ、手を伸ばす。
其れが全ての始まりとも知らず。