番外編2 ン・ケセラとリルリット
「こら、リルリット、起きなさいよぉ」
「んん……」
ここはン・ケセラに与えられた部屋。そこにはン・ケセラとリルリットがいた。リルリットは早く自分の部屋で寝たいと思っていたのだが、ン・ケセラに無理やり連れてこられたのだ。
「貴方も、さっきのケイ君を見たでしょぉ?」
「見たけど、何?」
「どうだった?」
「頼りなかった」
「そうよねえ? 言っちゃなんだけど、とても強い男性には見えないわよねえ? 私の色仕掛けで落ちそうになるしぃ……」
「どうせ、魅惑の魔法を、使ったんだろ」
「さぁ、どうかしらねぇ?」
お道化た調子で言いながらも、ン・ケセラは部屋の中に一つの魔法陣を描いていた。
「これがさっき使った魔方陣なわけだけどぉ」
「おう」
「私達は強い個体を呼ぶという前提で構築したわよねぇ?」
「おう」
「じゃあなんでケイ君が来るのぉ?」
「知らん」
リルリットはまるで興味なさそうに答えた。
「知らんってあなた……考案したの貴方でしょぉ? もうちょっと考えなさいよ」
「いいだろ、別に。呼んでしまったものは、仕方がない。どうせ、次に、召喚が出来るのは、百年後とかだ。今、考えても、無意味。めんどくさい。止めるべき」
「あ、貴方ねぇ……気にならないのぉ?」
「ならない」
これ以上リルリットと話すのは時間の無駄と考えたのか、ン・ケセラは一人で魔法陣と向き合い始めた。
「えぇとぉ、確か……『強い個体』の定義から考え始めたのよねぇ。たしか、放出しているエネルギーの量とか、熱量とか……」
そんなン・ケセラを見て、流石に申し訳なくなったのか、リルリットはその背中に助言を送る。
「直接、聞いてみたら、どうだ。ケイに」
「ケイ君にぃ? 何をぉ?」
「無論。何故、ケイが、呼ばれたかだ」
「あのねぇ。あの子は魔法に関しては多分素人よぉ? 何が分かるっていうのよぉ?」
「さてな。だが、研究とは、そう言うものだ。あらゆる情報を、仕入れ、吟味する。我々も、知り得ぬ情報が、手に入るやも」
「うぅん……無駄とは思うけどぉ、まあ、やらないよりはいいかもねぇ……」