第5話-前兆-
「さっさと席に着けよ」
担任の連条静が少し怒ったような口調で言った。
静は美人ではあるが、男勝りの性格で
「鬼静」
(おにしず)と男子生徒から言われている。無論本人を目の前でそのあだ名を言ってしまうと翌日の朝は歯ブラシを持てないと言われている。
「席に着いたか?ならさっそくだが風紀検査といこうか」
「ギクッ!」
そのあまりにもわざとらしく声を上げたのは右京だった。
「そりゃそうだよな右京?おまえの頭は純粋の日本男児の色じゃないもんな」
「これは祖父の遺伝でして。。」
「ほぅ、ついこの前までは黒だったのにいきなり茶髪になるのか?」
「さぁ、なんででしょうね?」
右京が見苦しい言い訳を言っていると、横から楓が助け船をだした。
「ティーチャー!同志右京が嘘を言うと思ってるのか!見損なったぞ!」
それは普段温厚な楓とも思えない言い方だった。
「楓、おまえが熱くなるなよ。先生、明日直してきますから」
右京が気まずくなった場を一言で断ち切った。
「約束したぞ右京」
そう静は言うと、不機嫌な様子で教室から出ていった。
「ありがとな楓」
右京は小さな声でそう言うと、笑みを浮かべた。
「友をかばうのは当然のことだ、気にするな同志」
楓は笑顔でそう言った。
「天気も良いし、一限目からサボりますか。楓と伸もどうだ?」
「了解した」
「ったく。夏花、先こーには三人とも保健室に居るって言っといてくれ」
「テスト大丈夫なの?」
「俺には山勘の神がついているから心配するな」
おれはそう言うと二人と共に教室から出た。
なんでもないいつものこの行動が俺たちの絆に亀裂を入れることになる。