そのサイト
「ところでさ、『異世界への扉』ってサイトを知ってるか?」
友人の拓也がそう聞いてきた。いつものことだ。都市伝説とかが好きな拓也はこういう話が大好きだ。
「知らないな。どういうサイトなんだ?」
「最近SNS一部の界隈とかでも話題になってるやつだ。そのサイトからマジで異世界に行けるんだとか」
「へーそうなんだ」
「へーって、お前もうちょっと興味持てよな。」
「だってお前ついこの間もそんなこと言ってただろう。あの時だって結局偽もんだったし」
「この前って言ってももうだいぶの前のことだわ。それに今回はガチで本物っぽいんだよ」
「はあ」
「友達の友達のいとこの彼女の妹の友達もまじで行けたんだとか」
「遠すぎるわ。もうただの他人だろ。」
「ハハハ確かに、でもSNSでも行けたっていう人がいるとかいないとか」
「ふーん、じゃあさ具体的にどうすればいいんだ?」
「おっ気になってきたか、教えてやるな。まず『異世界への扉』って検索するんだ。そこで名前とか身長とか色々書くんだってさ。それでもし選ばれたら行けるんだって。」
「サイトにたどり着いたら必ずしも行ける、っていうわけじゃないのか。てか個人情報入れんの危なくね?」
「クレカの番号とか聞いてきたらもう確実に詐欺だよな。…じゃなくてな、まあそうすることで神様とかに見つけてもらうとかなんだろう」
「やっぱり嘘くさいサイトだな、どうせまた偽物だろ」
そこでチャイムが鳴った。
「ってあと5分しかない。急いで食わないと!」
「ああ」
そう言って俺たちは大急ぎで弁当を掻き込んだ。
その日の夕方、部活が終わって家に帰ってくるとやはり家には誰もいなかった。両親が共働きで兄弟もいない俺の家には俺しかいないことがしばしばだ。
今日はやけに顧問の機嫌が悪くいつもより練習がきつかった。そのせいでクタクタだった俺は何かを作る気も起きずレトルトのカレーと冷凍ご飯をレンジで温めて食べていた。
「そういえば『異世界への扉』だっけか。嘘くさいけど暇だし調べてみるか」
『異世界への扉』そう検索すると一番上に何やらそれらしいサイトがあった。好奇心に負けた俺はそのサイトを開いた。広告だらけだ、しかも大人向けの。広告を押さないように慎重にスクロールしていくと次のページへ行くために矢印があったのでそれを押した。すると広告は一切なくなり真っ黒な背景に赤い文字だけが浮かび上がってくる。
『あなたは本当に異世界へ行きますか』
▶︎はい
『元の世界に未練はありませんか』
▶︎はい
『本当にいいのですか』
▶︎はい
そして世界は反転し俺の目には見覚えのない天井が写った。
…なんてことはもちろん起こらず、再び真っ暗になったスマホの画面には少しだけがっかりした俺の顔だけが写っていた。
「行けるわけねえか。てか拓也の野郎嘘つきやがって、名前や身長なんて全く聞かれなかったぞ。」
そして俺は再びカレーを食い始めたのだった。
食べ終わった後俺はシャワーを浴びて寝室のベットに寝転んだ。時刻は22:05。まだ眠くない俺はSNSを見ていた。あのサイトのことが妙に気になった俺はそれを調べていた。拓也の言った通り少し話題になっているのかそこそこの件数がひっかかる。だがどの投稿のURLも俺が開いたあのサイトのもののようだ。中には本当に異世界に行けた、という投稿もあるが嘘だろう。実際行けなかったし。
「ちょっとトイレ」
そうしてダラダラとSNSを見ているうちに時間はあっという間に過ぎ時刻は23時近くになっていた。1時間近くも見ていたようだ。少し前に帰宅した両親も寝静まり、秒針の音だけが部屋に響く。窓の外には街灯も人も皆無な田舎の真っ暗な夜が広がっている。どこかから視線を感じる気がする。
「都市伝説なんか夜に調べなきゃよかった…」ちょっと怖くなりながらも無事トイレから帰ってきた。
「そろそろ寝るか」そう思ってSNSを閉じようとしたとき、一つの投稿が目に留まった。
「『異世界への扉』はこのサイトが本物。最近話題になっているやつは偽物。騙されるな。」
「どういうことだ…?」
不審に思いながら俺はURLからそのサイトへと飛んだ。
『あなたは本当に異世界へ行きますか』
▶︎はい
『元の世界に未練はありませんか』
▶︎はい
『本当にいいのですか』
▶︎はい
「って今までのサイトとおんなじかよ。」
結局夕飯の時に見たサイトと同じものだった…はずだった。真っ暗になった画面に再び文字が現れた。
『あなたの名前を記入してください』
「雨城快斗」
『あなたの身長を記入してください』
「約170cm」
『あなたの所在地を記入してください』
「山梨県甲斐市」
『あなたのいる惑星を記入してください』
え?
「地球」
とりあえずそう打ち込む。
『しばらくお待ちください』
それから5分ぐらいが経過した。心臓の音が大きくなっていく。
そして、
『おめでとうございます、あなたは異世界へ行く者に選ばれました。』
そう表示された。
すると突然頭に鋭い痛みが走り、視界にはぐにゃぐにゃになった自分お部屋が写った。気持ち悪くなった俺は目を咄嗟に閉じる。
そして目を開けてみると…
なんの変哲も無い俺の寝室だった。時間も23:00で変化はない。
「あれ?でも今変な感覚があった気がしたんだけどな。気のせいか…?いやだけど、それに」
『異世界へ到着しました』
画面には確かにそう書いてあった。
「でも何も変わって無いよな…スマホの見過ぎで疲れてんのかな。まあいいやどうせ期待してなかったし。もう寝るか」
内心結構がっかりしながら俺はスマホの画面を閉じ眠りに落ちていった。
翌朝、俺は寝坊した。
読んでくれてありがとうございます。初めてホラーを書きます。
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