終章:明日のための玩具、あるいは永遠の誓い
終章:明日のための玩具、あるいは永遠の誓い
セントラル・コアを揺るがしたテロ未遂事件から数ヶ月。
かつて世界を影から操ろうとしたエクリプスのリーダーと副官は、厳重な警備の下で拘置所に収監されていた。奪われた命への償い、そして自らが犯した罪と向き合うための、長く険しい裁判が始まろうとしている。
「……結局、彼らもまた、戦場が生み出した悲しい『部品』だったのかもしれないわね」
友好国の平穏を取り戻した中央公園のベンチで、エレーナが静かに呟いた。
その視線の先では、平和な日常を取り戻した子供たちが、小型のトイ・ドローンを追いかけて走り回っている。
「ああ。だが、これからは法の裁きが下される。俺たちが銃を取る時間は、もう終わりだ」
颯真は、隣に座るエレーナの手をそっと握った。
二人は、この数ヶ月の逃亡劇を振り返った。廃空港の爆炎、高度三千メートルの空中戦、河川の防衛、そして豪華列車の静寂。
「颯真。私、あなたの隣にいたから、今日まで生きてこられた。……ありがとう」
「礼を言うのは俺の方だ。……君がいなければ、俺は今も暗い過去の中に閉じ込められたまま、ただの『壊し屋』で終わっていただろう。君がADUADSに、新しい命を吹き込んでくれたんだ」
二人は今後について語り合った。
エレーナは王女としての責務を果たし、復興を遂げる自国の未来を担うために。颯真は技術者として、あるいは軍人として、二度と「おもちゃ」が悪夢の種にならないよう、正しい技術の在り方を伝えるために。
「離れ離れになるけれど……これは『さよなら』じゃないわよね?」
「ああ。……約束する。すべてを全うした時、必ず会いに行く」
夕暮れの中、二人はそれぞれの母国へと向かう途に就いた。
鋼鉄の檻を降りた一人の男と、一人の女性として。
数年後:祝福の鐘
季節は巡り、数年の月日が流れた。
かつて戦場だった場所には花が咲き、鉄路には平和を運ぶ列車が走る。
そして今日、友好国の由緒ある大聖堂では、一つの祝祭が執り行われようとしていた。
「……緊張しているのかい、颯真?」
「……柄じゃないのはわかっているが、こればかりは慣れそうにない」
白いタキシードに身を包んだ颯真が、苦笑いしながらネクタイを整える。
かつての鋭い「兵士」の眼差しは消え、そこには愛する者を待つ一人の男の顔があった。
重厚な扉が開き、パイプオルガンの音色が聖堂を満たす。
純白のウェディングドレスを纏ったエレーナが、ゆっくりとバージンロードを歩んできた。その姿は、かつて戦火の中で泥にまみれていた時よりも、何倍も美しく、力強い光を放っている。
誓いの言葉を交わし、指輪を交換する二人。
その様子を、教会の外で見守る「一人の参列者」がいた。
ピカピカに磨き上げられ、平和の象徴としてリボンで飾られたADUADSだ。
武器を外し、本来の「トイ&アート」としての輝きを取り戻したその機体は、まるで二人を祝福するように、パノラマモニターを優しく明滅させた。
「……これからも、ずっと一緒よ。颯真」
「ああ。……俺たちの『最高の旅』は、ここから始まるんだ」
歓声と拍手の中、二人は新しい世界へと歩き出す。
その足取りは、かつて鋼鉄の脚が刻んだどの歩みよりも、未来に向かって力強く、確かな希望に満ち溢れていた。
[完]
作者あとがき
居られるか、どうか分かりませんが、最後まで読んでくれた方、ありがとう御座います。問題だらけですが、とにかく完結させる事が出来ました。
懲りずに、性懲りも無く、次回作を構想してます。
ADUADSMk-II-航空管理局小型無人機対策課
です。もし良かったら、読んで下さい。
もう一度、最後まで読んでくれた方、本当にありがとうございました




