【ラブコメ昔話】あなたが落としたのは義理チョコですか?友チョコですか?それとも……
むかしむかしあるところに、とっても可愛くて超おっぱいがでかい、可憐な女の子がいました。
女の子は頑張り屋な上に優しいので、毎年バレンタインの日には、幼なじみの男の子に、手作りのチョコを贈っています。
けれど今年はちょっと悩んでいるみたい。女の子は、出来上がったチョコを前に、顔を曇らせています。
思春期を迎えた女の子は、近頃幼なじみの男の子のことを男性として意識してしまっているのです。
男の子の顔を見ると心臓の鼓動が速くなったり、男の子と交わした言葉を思い出すと顔が熱くなったりしてしまいます。
しかし女の子は、その感情をなんと呼べばいいのか、まだ分かりません。
どうやって渡せばいいのでしょう。綺麗にラッピングしたチョコを片手に、女の子は思い詰めた顔で歩いていました。
そのときです。手がつるりと滑って、なんと、持っていたチョコを池に落としてしまいました。
「どうしよう……」
頑張って作ったチョコなのに。
女の子がしょんぼりしていると、池の中から、なにやら音がします。
ぼこぼこ、と池から現れたのは、女の子には劣りますがそれでもとっても美人な女神様でした。女神様は手に何か持っています。
「あっ、それはっ」
女神様が持っているのは、先程女の子が落としたチョコでした。
女神様はチョコを手に、女の子に問います。
「あなたが落としたのは、義理チョコですか?」
女の子は首を横に振りました。
「いいえ、あたしが落としたのは、義理チョコではありません」
女神様は尋ねます。
「では、あなたが落としたのは、友チョコですか?」
女の子は少し考えます。女の子は、男の子と友達でいたいのでしょうか。
十数秒経ってから、女の子はゆっくり首を横に振りました。
「いいえ、あたしが落としたのは友チョコでもありません」
女神様は尋ねます。
「では、あなたが落としたのは本命チョコですか?」
女の子の頬が真っ赤に色づきます。
男の子に伝えたい、本当の気持ち。女の子は、男の子とどんな関係になりたいのでしょうか。どんなことをしてみたいのでしょうか。
男の子の顔が脳裏に浮かびます。女のコの胸がきゅんと弾みました。
女の子は、そこで、自分の抱いている感情に、やっと気づきます。
「そっか、あたし……」
女の子は力強く頷きました。
「はい。あたしが落としたのは本命チョコです。本命チョコを、落としたんです」
女神様は、にんまりと笑って、満足気に頷きました。
「そうですか。では、さっさと告白したらよろしい」
女神様がそう言った直後、女の子の後ろで、どさっと音がしました。
女の子が慌てて振り向くと、そこには腰をさすっている幼なじみの男の子が。
「なんでここに!?」
「分からない。歩いてたら、いきなりここに飛ばされて……」
池の方を見ました。女神様の姿はもうありません。
女の子の手には、いつの間にかチョコが握られていました。
女の子は大きく息を吸いました。
そして、男の子にチョコを差し出しました。
「これ、本命チョコなの。君のことがすきなの。……受け取ってくれますか?」
女の子はぎゅっと目を閉じます。
男の子を見るのが怖いのです。どんな顔、してるんだろう。
ほんの数秒の沈黙が、女の子には永遠のように思えました。
ダメなのかな。女の子がそう思った瞬間です。男の子は、女の子をぎゅっと抱きしめました。女の子は驚いて目を見開きました。
「俺もだよ。うれしい」
女の子は嬉しさのあまり、男の子を強く強く抱きしめました。
その後二人は八年くらいイチャイチャしてから結婚し、夫婦になってもずっとイチャイチャし、子どもは三人産み、そして死ぬまでイチャイチャして幸せに暮らしましたとさ。
***
「そういう話があるんだよ」
横に座る幼なじみが自慢げに言う。
「はあ……」
なんだそのふざけた創作昔話は。
俺の反応が気に入らないのか、幼なじみは不満そうにぷくっと頬を膨らませた。
「なにその呆れた顔は。この昔話から読み取れる教訓、あるでしょ?」
「教訓なんてあったか?……あと一応聞くが、主人公の、とっても可愛くて超おっぱいがでかい、可憐で頑張り屋で優しい女の子ってのは……」
「もちろんあたしがモデルだよ。そんなの聞いたらすぐ分かるでしょ?」
んなアホな……。
「まぁたため息なんてついちゃって。やれやれ系は時代錯誤だよ?いつの時代も正直者の頭に神様が宿るの。だから、」
幼なじみはカバンから、丁寧にラッピングされたチョコを取り出した。
「十秒以内に答えてね。あなたが欲しいのは、義理チョコですか?友チョコですか?それとも、本命チョコですか?」




