騎士
ルドルフさんに誘われて、ダミアやメイドさん達も集めての夕食会に、出席する事になった。実は、以前から誘われていたのだが、航空艦の整備を理由に、逃げていたのだ。今回は、逃げる理由が無くなってしまい、参加せざるを得ない状況に、追い込まれた。
太陽が沈み闇に変わる頃、新しい上着に袖を通す。
(まるで海賊船の船長みたいだ) 鏡を見ながら剣を吊るす為のベルトを襷掛けすると、軍刀を吊るした。
食堂の向かって歩きだす。何故か足が重い。理由は解っている。行かなくて済む言い訳を考えながら、それでも無理に歩みを進める。階段を上がろうとした時、迎えに来たソフィとあった。
「今、呼びに行く所でした。ダミアさま以外の人は揃ってますよ。」彼女はいつもの笑顔で答えた。いつもと違う所は、胸が開いたドレスを着ている事だ。ハジメは少し恥ずかしそうに、「スイマセン、では急ぎましょうか」と答えた。
夕食会は立食形式で、各自お皿を持って取り分ける。鎧の警備兵が飲み物を運んでいた。(鎧の中は空っぽらしい)ハジメは、鎧の兵士が運んで来たワイングラスを受け取り、少し飲んだ。
「今晩わ、よく来てくれたわ。騎士団に入団してもらわないと、話が進まなくてね。」いつの間にか、隣に来たダミアが話しかけて来た。薄い赤のドレスが素敵だった。「解りました。そのドレスよくお似合いですよ。」ハジメはダミアの手を取り、頭を少し下げた。「ここの生活も、お世辞も、慣れて来たわね、ありがとう。楽しんで。」ウインクしながらダミアがルドルフの所に行った。
ハジメがローストビーフを取ろうと、振り向いた時、斜め後ろについて来るソフィがいた。
「ソフィさんも、いかがですか。ドレス汚すといけないので、俺が取り分けましょう。」ハジメはお皿を受け取ると、料理を取り分けた。ソフィは、ハジメの差し出す皿を受け取り、少し困った。少しでも話したくて、後ろについて行ったのに、見事に腰砕けになってしまう。「有難うございます。」小声で答え、いそいそと、仲間の所に退散した。
「何やってんの!折角のチャンス。もしかすれば、玉の輿だよー」仲間内の方が、気合い入ってます。
第2次攻撃を仕掛け様と、ソフィの気分を高めている時に、思わぬ伏兵ルドルフが現れた。
「実は騎士に任名するのに、第三者が居るんだ。エルフの騎士団長が、そろそろ到着する。式の打合わせをしたいので、姫様の部屋に来てくれ。」ハジメはお皿を鎧に預けると、ルドルフの後ろについて行った。
「間もなく、御客の到着よ。妖精が悪魔の招待を受けるなんて、いつ以来かしら。」使い魔の報告を水晶玉で見ながら、ダミアが可笑しそうに赤い瞳を細めた。「それだけ飛行艦に関心あるんでしょう。」
ハジメは、少し考えてルドルフに聞いてみた。「何がそんなに関心の的になるのですか?」ルドルフは、ウイスキーで口を湿らすと、向き直った。「ここの世界では、航空艦を持っている国は数える程しかない。しかも、列強と言われ所でも3〜4艦だけだ。もしエンジンが発掘されて、建造出来たにしても、動かせる人物が居無い。壊せば後が無いだけに、練習が出来無い。代々決まった家系の騎士だけに、技術が受け継がれる。だから、操艦出来る人物は大変な重要人物になる。隣のエルフや妖精たちは、仲良くしておけば有事の際に、使用させて貰えると、考えていると思う。」
ハジメは大変な重要人物になる。その事実を聞いて胃がいたくなった。
「式の打合わせ何だけど、いいかしら。」ダミアが口を開いた。
何か喋るのか?と、少しビビっていたハジメだったが、名前を呼ばれた後、刀の刃を自分に向けて、膝まずくだけだと判ると、気分が良くなった。
「いいかしら?そろそろ頃合ね、みんなに出迎えの準備を。」ダミアは、使い魔に部屋の準備をさせる為、水晶玉に向き直った。