城その2
彼女は、優雅にソファーにくつろぎ、詩集を読んでいた。ワイングラスとフラスコが置いてあるテーブルには、水晶玉が置いてある。やがてノックの音とともに、水晶玉にルドルフの姿が現れた。「失礼致します。はじめ殿が部屋に入りました」「扉は開いてます。お入りなさいルドルフ」彼は礼をして、入って来た。「どう?彼の様子。すこし落ち着いたかしら?」ゆっくりとワイングラスを取ると、少し口に運ぶ。「寂しがってなかった?私が慰めてあげようかしら!」可笑しそうに赤い瞳が揺れた。
ウイスキーを飲んでいたルドルフが、顔をしかめた。「姫様、また悪い冗談を。お父上が聞けば悲しみますよ」
ダミアは、ワイングラスに新しいワインを注ぐと、ゆっくりと飲み干した。「はじめに航空艦浮かせる事が出来るかしら?お父様の悲願が叶うかしら?」
「先代様にお見せ出来れば、どれほど喜ばれるか。2.3日後はじめ殿に見せるとします。」ルドルフはまたゆっくりグラスを傾けた。「ねえ、ルドルフ、ハジメはまだ女性しらないみたいね」 「そうですな。私もうすうす感じていました」またゆっくりとグラスを傾けた。「穢れていない血。ある意味貴重ね、エルフや妖精族の娘がほっとかない。他の領国に行く時には、見てあげてね。折角の操縦士よ大事にしないと」
それぞれの思惑があるなか、ハジメは苦戦していた。ルドルフから紹介されたメイドさん、(確かソフィさんだったけ?)の運んで来た、ワインボトルの開け方が解らない。何とか開けたものの、コルクだらけでハンカチーフで濾すハメになった。(やれやれ。こんな事になるんならソフィさんにお願いするんだった。)若い女性がいると落ち着かなくて、生返事返したのが、そもそも失敗だった。
何とか注いだワインを堪能しながら、機体から持ち出した品々をテーブルに並べる。軍刀、26年式拳銃と弾、写真、弁当に付いていたドロップ。(着替えほしかったな)
写真を眺めながら、あれこれ考える内に眠気がやってきた。飛行服を手にとったものの、折角空襲もないし、白いベットを、シラミだらけにするのも忍びなくて、お風呂の時に借りたガウンで寝る。窓から月が見えた。(灯火管制で、カーテン開けた事なかったな。)ボンヤリそんな事を考える内に、眠りについた。