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空の運送屋  作者: JUN
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敵艦

 ハジメは、鍛冶屋のドワーフと試作の爆弾を眺めていた。「どの位の火薬が入る?」鍛冶屋は、信管の調節をしながら、「ワインの小樽ぐらいかな、信管の調節は、心臓が五回動く位でイイ感じか?」鍛冶屋は、導火線をハサミで切り落とした。(本体50キロ火薬が入るから65キロ位か)ハジメが計算していると、「戦列艦相手だと寂しいが、かなりの損害が出る量の火薬じゃよ。釘を刺すには充分」後ろで見ていたルドルフが、近ずいてきた。「お友達からじゃ。国境を越える辺りで敵に捕捉された。姫様に抗議の手紙を出してもろうたので、引き返さぬ時には、撃沈して良い。」「国際問題にならないか?ヨハン達を追いかけてる奴らだろ?」ルドルフが不気味に笑った。「国境を越える事が出来るのは、商船と、許可のある軍艦じゃよ。」ハジメもつられて、ニヤニヤし、鍛冶屋の背中を叩いた。「こいつを積んでくれ。有るだけ全部。」鍛冶屋は、頭を書きながら、人を集めに行った。

 「どうだ?何か出来る事無いか?」不安そうに望遠鏡を覗いている船長にヨハンが声を掛けた。「これ以上速度が上がりません。重量物はもう有りませんし」速度を上げるために大砲と弾薬を捨て、オマケに予備の木材、キッチンの耐火レンガまで捨ててしまった。心無しか少し大きく見える敵艦に一瞥をくれると、傾きだした太陽を見上げた。(ハジメなら、あの方向から来るな。)「各士官を集めてくれ、相手が砲撃したらよんでくれ、士官食堂にいる。」ヨハンは、ジョセフに合図すると、階段を降りて行った。

 「現在、非常にマズイ状況を知らせるために、集まってもらった。」ヨハンが声を掛けた。「重量物を廃棄したので、追いつかれる時間帯が少し伸びたが、状況に変わりない。ハジメが攻撃してくれても、不意打ちで無い以上、この前みたいに上手く行かないだろう。銃剣での切り込みになりそうだ。ピストルと弾薬の準備をしてくれ。今から切り込みの手順を決めよう。」各小隊長は顔を見合わせ頷くと、紙に船の絵を書いて作戦を立て始めた。

 最初の砲撃が来たのは、お茶の時間少し後だった。望遠鏡を覗いていたヨハンは、となりで同じく望遠鏡を覗いていたジョセフに声を掛けた。「えらくのんびりして居たな。」「お茶の時間くれたのさ。連中余裕がある。」後ろで見ていた船長が「いや、多分、長身砲の射程より、確実に当たる有効射程まで近ずいて舵を破壊するつもりだったのでしょう。どうします?ジグザグに避けますか?」「いや、速力が落ちて追いつかれる。このまま走ろう。」

 ヨハンが、腰に付けている使い魔の石板が怪しく光った。「ハジメがこちらに向うらしい。破片に注意しろとの事だ。何するつもりだ?」

 

やがて、太陽を背に飛行艦がこちらに向かって来た。敵艦からも盛んにマスケット銃が発砲している。(無駄だ。訓練して居ない連中じゃ、当たら無い。)当然高価な飛行艦を飛ばして、対空訓練なんか出来る訳無い。やがて、水面を低く飛び敵艦に向かって黒いゴマ粒をばら撒いた。その黒い粒は水面をジャンプして、吸い込まれた。「今回は、身構えてる。パニックにならない。」ヨハンが一人呟いた時に、何回か爆発音が響き、敵艦が身震いしたように見えた。「なんてこった。あれじゃ助からない。」敵艦から行く筋も煙が上がり、マストが倒れた。船体が煙に包まれる。生き残った乗組員が水面に飛び込み、岸に泳ぎ始めた。「可哀想に。溺れ死んだ方が幸せかも知れん。」一部始終見て居た船長がゆっくり望遠鏡を収めた。飛行艦は、戦果を確認し、満足そうに翼をバンクさせると城の方角に引き上げて行った。

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