初老の男
機体が崩れて行くのを眺めながら、これからの行動を考える。味方の戦線まで何キロ有るか分からず、ただ途方に暮れるしかなかった。
(取り敢えず、寝床確保して、明日に備えるか。)近くの藪から木の枝や枯れ草などで寝床を作り偽装も施した。出来栄えの確認をしていると、城の方から馬に乗った人物がやってきた。
それは初老の男だった。彼は近くまでやって来ると、話しかけてきた。判らない事を身振りで伝えると、和かに笑いながら指を鳴らした。すると、霞が眼の辺りに漂い男の声が聞こえた。
「どうだ?聞こえるか?」世の中こんな便利な事があっていいのか?少し頭を振りながら「聞こます」と答えた。「そいつは良かった。」初老の男はニヤッと笑った。「たいした献立じゃ無いですよ。もう少し早ければお分け出来たんですが。」負けじと返した。また男は、ニヤッと笑って、「食後に、ワインなんか如何かな?それに庭先で焚き火していたろ?城主に挨拶が筋だろ?」全くだ。埃を払い軍刀を握り締めると、胸を張る。「申し訳ない。案内宜しくお願いします。」初老の男は満足そうに微笑むと、ゆっくり歩き出した。