救援その2
「カトラスとピストルを集めろ、あとラッパ銃も」ジョセフとヨハンはなるべく、家族の居ない手練れの兵士を20名程揃え、装備を整え作戦を説明した。軍艦の砲門は夜閉じてしまうので、甲板のハッチから油の樽を投げ入れる必要があった。「俺と後、何名かで船尾から登る。残りのメンバーで乗り込み次第、騒ぎ立てくれ。くれぐれも無理はするな。ヤバくなれば装備を捨て水の中に飛び込んでくれ、途中で樽を流しておくから捕まれば溺れる心配も無い。」
夕焼けで空が紅く染まり、三本マストが浮かび上がる。「いたぞ、あれか。装填どうだ?」ハジメは、投下装置に取り付いている鍛冶屋の連中に、声を掛けた。「いいぞ、三十キロの砲弾を片方六個合計12個だ」ハジメは、ニヤリと笑うと、高度を落として、ドンドン加速していった。照準一杯に敵艦が広がり、ガラスの目盛りが、もう頃合いだと、告げていた。「撃て!!」足元に軽い振動が来る。ハジメは速度が落ちない様に気をつけて、敵艦の上を通り過ぎた。「どうだ?」窓から後ろを見ていた鍛冶屋に声を掛けた。「全部、敵艦に吸い込まれた。ア、今マストが、倒れる」「隣の少し小さめの軍艦も、潰しておこう。装填してくれ」ハジメは少し離れて、水平飛行にした。
ヨハン達は、ボートを黒く塗り、装備を布で繰るんだ。「夕日が落ちてから行くぞ。音を出すなよ。」
その時低空飛行で近ずいて来る、ハジメの飛行艦が見えた。「突っ込むつもりか?」ヨハン達が見守るなか、飛行艦から砲弾がばらまかれて、その砲弾は、水の上を跳ねながら敵艦に殺到した。「ひでー あれじゃ、艦内はひどい事になってるな」多数の砲弾が命中した船体には穴が空き、火災まで発生していた。「今の内に空いた穴から火を放つ。行くぞ!」ジョセフと兵士達が漕ぎ出してゆく。その時低空飛行でハジメが近ずいて来た。奥にいた少し小型の軍艦が、次の目標らしかった。
近くで見る攻撃は、凄まじく乗組員達の悲鳴が聞こえてくる。「あれじゃ、止めを刺すまでも無いな。伝令を港に。輸送船に来る様に伝えてくれ。潮と風が味方の内に。」
屋敷の中は、荷物を抱えた人たちで、一杯だった。何名かの兵士達が沢山の食料品などを、運んでいた。「三時間程で、到着するそうです。」伝令が息を切らせて戻って来た。「どうだ?撤退作戦を決めるか?」攻め込むより、逃げる方が難しい。二人ともその事は、身をもって経験している。「ハジメの援護は、どの位期待出来る?確認してみよう」信号を送るランタンを伝令に持たせると、ヨハンは高台に登って行った。