救援
経験が無い事は、愚かしい。ゆっくり近ずいて来る戦列艦を、望遠鏡で見ていたヨハンとジョセフは共に吹き出した。近すぎるのだ。砲の角度が取れないので、打ち上げる時は、離れないといけない。「舐められたもんだ。射程に入り次第、教育してやれ。」屋敷に置かれて有る野戦砲の射撃が始まると。慌てて射程外に逃げ出した。「クソ、あのまま居座られたら、段取り狂うぞ。切り込み隊送るか?」砲撃の様子を見ていたヨハンは、首を振った。「歩兵だけは、沢山積んでいる。両方の大砲が引き出されている。」軍艦は風で走る為に、すべての砲を引き出すのは無理がある。補充の砲兵を入れても、3分の2がいいトコだった。全部砲門が空いている事からして、かなり乗組員に余裕がある。「夜焼き打ちでもするか、」ジョセフとヨハンが睨んでいると、伝令がやってきた「輸送船確保したとのこと。現在沖合に退避中です。」ジョセフは、しかめっ面で、射程外に居座る戦列艦を見た。「ますます面倒な奴だ。」
ハジメは、河に置き去りにされている廃船に向かって、爆撃訓練をしていた。イギリスの戦闘爆撃機の投弾方法を真似て似たが、意外に難しく、コツを掴むのに三日間飛び回りなんとか会得した。「苦労しとるの、お茶を持って来た。」一息入れに降りてきたハジメに、ルドルフが話しかけた。「少し速度が足りないんです。」「ヨハンの所は、夕方強い風が吹く。風上から行けばもう少し速度もあがるの」ルドルフが手紙を差し出した。「友人からじゃ、余り時間が無い様じゃな。今から出れば、風の時間帯に間に合うじゃろ。」手紙はヨハンからだった。弾薬庫の壁が見えそう。持ってあと二日ほどと、書かれていた。「今から出ます。ソフィを頼みます。」ハジメは、飛行眼鏡を掴むと、飛行艦に乗り込んだ。
ヨハン達は、かなり有利に防衛していた。正面の政府軍のラインが下がったので、大砲による突破は無くなった。しかし、依然弾薬の不足は深刻で、あと二日ほど無くなるとの報告が来ていた。「後ろの軍艦を何とかならんか?脱出したくても、あいつが邪魔で仕方がない」ジョセフは深刻な顔で、望遠鏡を覗き込んだ。「ハジメに、使い魔を送り出した。もう少し待ってくれ」ジョセフは望遠鏡で睨みながら、「もう少し待って返事がこなきゃ、夜間に切り込んで火を放つ。」ジョセフは望遠鏡をしまうと、人選にむかった。