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空の運送屋  作者: JUN
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ヨハンの危機

 ヨハンは、いつものように、朝早くから起き出し身支度を整えると、迎えに来た軍の馬車に乗り込んだ。いつものように、同じ道を通り、司令部に向かうはずであった。しかし、今日は違った、男が一人乗っていた。「おはよう。マイバッハ大佐。調子は如何かね?」黒い帽子を少し上げて、男が挨拶した。「悪くない。貴方は如何ですニーゼン局長?」

 ニーゼンは低く笑うと、癖のある声で話し始めた。

「飛行艦は、如何かな?カワモトのお陰で、降りられるようになったかな?」実は、先日の飛行で、進入速度が早く、機体を損傷させてしまったのだ。

「コツは、掴みましたよ。今度は上手く行きます」

「実は、飛行艦の貸し出しが決まってな、空軍陸戦隊の解散を検討しておる。」「ご冗談を、だれが飛ばすのです?」ニーゼンは心配無いと、手を振った。「サンパドルが飛行士を貸し出し、我が国民の為に働くそうだ。大統領の親族になってだ。」

 サンパドルの飛行士は皆が皇帝の親族だ、技術の流出を恐れて、親族で固めたのだ。「君の処遇は、後で面倒見させて貰うよ。あゝココで降ろしてくれ。」ニーゼンは、馬車から降りると軽く手を上げて、人混みに消えていった。

 「軍曹、すまんが、屋敷に戻ってくれ。あと、ジョセフを呼んでくれ。大佐が屋敷で待つ、と伝えてくれ。」


一時間ほど経ったころ、ドアを叩く人物がいた。

「フランクリン大尉がお見えです。」応接室にやって来た男は、不機嫌にバーカウンターにあったウイスキーを掴むとグラスに注いだ。「ジョセフ、思ったよりも早かったな。」「ふん!糞野郎が、俺の部隊動かしてくれれば、大統領官邸くらい占領してやるぞ!」数々の戦争を歩いて来た彼にとっては、たやすい事だ。「そう怒るなよ。ここに座って、落ち着けよ。」ジョセフの父親は傭兵隊の隊長で、ヨハンの親父の部下だった。なんでもジョセフの親父達が包囲されて、絶体絶命の時に単身、飛行艦の強行着陸、部隊を救ったとの事だった。

 「帝政からの軍人は俺とお前だけになった。俺たちが今まで残れたのも、親父さんの飛行艦があったからだ。どうするか?あのクソ野郎が動く前に叩くべきだ。」ヨハンはウイスキーを掴むとグラスに注いだ。「今動いても、ジリ貧だ。親衛隊の将校は能無しだが、命令に従う事にかけて、世界一だ。」ジョセフは身震いした。損害に構わず銃剣突撃を繰り返す新政府軍の姿を。「どうするか?このままじゃ、粛清されるぞ。」ジョセフは頭を掻いた。戦争慣れした彼でも、駆け引きは苦手だった。「信頼出来る部下を集めてくれ。後、帝政からの歩兵達も。」ジョセフは頭の中で計算する。「歩兵200騎兵30ぐらいか。とりあえず、二個小隊ほど連れてくる。」ジョセフは急いで出ていった。


ニーゼンは事務室で部下の報告を聞いていた。「思ったよりも早いな。監視を怠るな、俺は大統領に会ってくる。」

 カルロスはイライラとした顔で歩き回り、ニーゼンの話を聞いていた。「帝政からの軍人なんぞ、皆、消すべきだった。」「仕方ない。内外の目も有るし、始めの頃は防衛の要だった。素人だけでは戦争出来ん。それに、飛行艦の事もあったしな。」「その事に関しては、上手くいった。墜落事故を起こして立場が無いサンパドルの王子と、我が次女との結婚だ。条件が婿養子だが、喜んで乗ってきた。」カルロスはニヤリと笑った。「ニーゼン、芝居が上手くなったな。あと、ヨハンの飛行艦も押さえたか?」「ドックの工員に党員を混ぜてある。親衛隊も展開しておるよ。」ニーゼンはあくびをしながら、答えた。「後は、大統領、タイミングを見て、国家反逆罪でも出してくれればいい。」「相手は手強い。何とかなるのかな?」カルロスは以前目にした光景を思い出した。政府軍の死体の山。鉄壁の如く陣地を守り抜く帝政からの歩兵達。「今回は以前の様にいかん。時間をかけて、引き出してやる。」


ヨハンは、二通の手紙を書いた。ダニアと、ハジメに宛てた物だ。ダミアに国境を越える事。自分が行けなくても、兵士とその家族の保護。ハジメに飛行艦による救援の願いを書いた。無断で越境した場合、水魔の攻撃が有るかも知れなかった 

 庭に土嚢を揃えて、弾薬を揃える兵士達を見ながら、ヨハンは、どうすればいいか、悩んでいた。

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