帰還
その日の夜、懐かしの古巣に到着した。滑走路に火が灯り、端にある高さの違う三本柱に色違いの火が灯る。降りるのに、この灯りが一つに見えれば角度が正解。スピードを殺して、進入する。重たい衝撃が来てギアが地面をとらえた。側面のエアブレーキを開き、車輪のブレーキをかける。城の格納庫に機体を引き込んで終了した。「お疲れ様。見事なもんだ。荷物を下ろしておくから、ハジメ殿は休んでおいてくれ。」ルドルフは、人手を集めに城の中に消えていった。「そんなに人手いたか?」ソフィに聞くと、「庭師 鍛冶屋 大工さん 普段余り会わない人、かなりいますよ」ハジメは、方向音痴なので、城の中を動き回る事がない。ここら辺に人に会わない原因が有るらしい。「今度私が、案内しますよ。」
部屋に入り、着替えてのんびりしていると、ソフィがやって来た。今日からココに引っ越して来るようだた。「ダミア姫様がお話が有るそうですよ。食堂に来て欲しいと」ハジメは刀を吊り、髪を整えると(なかなか伸びた。)急いで食堂に向かった。
「旅行如何でした?新婚旅行みたいだと、みんな言ってましたよ。」ダミアの言葉に、ハジメは頭を下げて照れ笑いするしか無かった。「危ない場面もあったみたいね、無事で何より」ダミアは優雅にグラスを受け取ると、ワインを注がせた。「ルドルフがお話したかしら?」ハジメは頭を振った。「実は、何件か交渉が上手く行かなくてね、近いうちにまた、サンペトロに飛んで欲しいの。その足で近くの数ヶ国巡りね。」ルドルフが隣で頷く。「例の錫の件で?」「それも有るんじゃが、世間がうるさくて、そろそろ戦争の匂いがしておるよ。この国は守りは万全じゃが、用心深く同盟国を増やすのが肝心じゃよ。」どこの世界でも争い事は絶えない。経済的、政治家の野心、迷惑な話だ。「サンペトロが採掘させろと言っておる。国境に近いし、貨物船が川を上れるからの。しかし、代々ドワーフの鉱脈じゃ。認める訳に行かん。しかも、錫を買占めに走っておる国も有って、皆が警戒しておる。」「鉄で出来ないものなのか?大砲なんか鉄で出来ていると思ってた」「砲身が上手くいかないそうじゃ。」ルドルフは、目の前の肉と格闘している。「あと、貴方に新居の準備してあげる。騎士が下宿住まいじゃ、おかしいもんね。そんなに大きくないけれど、ソフィと二人十分な広さよ。」
ハジメは少し、戸惑いながら返事した。結婚なんて考えてもいなかった。「考えるより、慣れるまで我慢じゃ。」ハジメの気持ちを察してか、ルドルフがアドバイスをくれた。ハジメは少し手を上げこたえると、食堂より退散した。