宴の後
すっかり酔い潰れたソフィを抱っこして、ハジメは部屋に帰った。気丈に振舞っていたが、流石に疲れたのだろう。抱っこして、部屋に帰ると、ルドルフが、待っていた。「済まんね、後で部屋に来てくれ、少し話がある。慌てんでいい、姫様寝かせておいで」ホホと、ルドルフは笑い声残して部屋に帰って行った。ハジメはソフィをベットに寝かしドレスを取ると布団を掛けた。
ドアをノックするよりも早くルドルフの声がした。「鍵はかけとらんよ」ハジメが中に入ると、ルドルフが笑って出迎えた。「地獄耳でな。」「ソフィに声を出さないように、言いますよ」ルドルフはグラスを差し出しながら、ホホと笑った「年寄りの楽しみが減るのう。冗談はそこらへんで、今日マイバッハ家のヨハンと話しておったの。」「なかなか気さくで、いい奴ぽいですよ。なんだか親父が死んで大変だと話していましたね」ハジメはウイスキーを少し飲んだ。親の顔を知っているのは、とても幸せだ。俺は二人とも知らない。「ヨハンも辛い立場じゃ。マイバッハ家は古い家柄で、帝政時代から代々軍人上がりじゃよ。親父とは古くからの友人での。ヨハンに頼まれたそうじゃの。操縦を教えて欲しいと。」ハジメはウイスキーグラスから、顔を上げた。このオッサン何でも知っている。「済まんが、儂の名前で、断ってくれ。カルロス大統領の動きが、胡散くさい。あまり良く無い事も起る。」
「そんな風に、見えなかったな。じゃそんなに長居はしないんだね、買い物の約束したんだが、怒られるな。」ソフィ怒ると怖そう、ハジメはウイスキーを少し飲んだ。本人は氣が付いていないが、徐々に尻に敷かれて行くタイプのハジメだった。「そういえば、ハジメ殿あまり戸惑う事が無いのう。」ルドルフはハジメにウイスキーを勧めながら、たずねた。「余りにも酷い戦争しか知らない。それが普通で、平和で命の危険が少ない。驚く事は有るけど、慌てる事は無いですよ。」ルドルフはハジメを眺めながら、「恐怖心は大切な、生きていく糧じゃ。忘れては困る。それに、涙を流す者もいる。」ルドルフは、詳しい話しはダミア姫様に相談してからする事にして、今日はもう休もうと言った。
部屋に帰って、服を脱ぐと体が軽くなった。随分と肩がこる服だ。風呂に入り、ボンヤリしていると、ソフィが入ってきた。「ごめんなさい寝てしまいました。余にも沢山の奥様連中がいて、疲れました。」体にバスタオルを巻いて、湯船に入ったソフィは肩をしきりに揉んでいる。「どんな感じ、ここの連中?」ハジメはソフィの豊かな胸元に目線が合い、思わずドキとしたが、平静を保つのに成功した。「あのカルロス大統領婦人とても怖くて、気にいらないと、すぐに旦那を左遷したり、ワザワザ恥かかせる状況にしたり、大変みたい。入ってきた瞬間、皆が押し黙って、ヒヤヒヤしてた。」ソフィは可笑しそうに答えた。「私は他の国の人間なんで、標的にならないけど、ここの人達大変」 ソフィ、頼むバスタオルを直して。足組み替えるのもやめてと、ハジメは思った。しかし、体に変化が現れたり、声が変になれば俺の負けだと言い聞かせ、平静を装う。「予定、ルドルフさんに聞いておくよ。観光と買い物に行きたいし。でもあまり自由に出来なさそうだよ。カルロス大統領が企んでいるらしい」ハジメはわざとではないが、ソフィから視線を外しつつ頑張っている。「いいよ。ハジメと一緒にいれれば。何か、飲み物とりましょうか?」立ち上がったソフィを見送りつつ、思わずお尻に目が行き、またドキドキしてしまう。「俺も修行が足りない。」と一人で、もぞもぞとするハジメだった。