晩餐
風呂から出てくると、食事がきれいに並んでいる。「美味しそう。早く食べましょう。ワインいかが?」ソフィに急かされて、バスローブのまま席についた。なんか、金持ちみたいだなと思いつつ、前に座ったソフィに目がいった。(多分、皆さん、笑顔にやられて結婚するんだろうな)ハジメは、ボンヤリそんな事考えながら、お昼を食べ始めた。
念のため姫様から、貸して貰った毒見スプーンで、チェックをする。大丈夫、ワインも大丈夫。とても美味しく、いただいた。「ソフィ、服を買うお店調べてあるの?地図を準備させようか?」土地勘が無いので、迷子になる可能性がある。それにハジメは方向音痴だった。「ん〜 なんと無くですけど、分かります。護衛が付くのなら、連れていってもらいます。」確かにソフィの意見がもっともだ。「明日、買い物に出かけますか。」
お腹が膨れると、朝早かった事もあり、睡魔が訪れた。食器を下げに来たボーイに、ルドルフさんへの伝言を頼み、ベットに横になるとそのまま寝てしまった。
ハジメは、突然目がさめた。ドアの外に人の気配がする。殺気は感じない。念のため枕の下に、置いてある拳銃を準備。左腕で横で寝ているソフィを抱き込む、何かあれば、ソフィの上に被さり応戦するつもりだった。 やがてノックがした。「お楽しみ中かい?時間だ。そろそろ準備してくれ。」ルドルフさんだった。「ルドルフさんでしたか。危うくピストルで打つ所でした」ルドルフの笑い声が聞こえる。
「後、一時間ほどある。風呂に入って着替えておいで。部屋で待ってるから」
風呂に入って、スーツ、ソフィはドレスに着替えて、ルドルフの部屋に急いだ。
晩餐会とやらは、このホテルの大統領専用の部屋で、行われるらしい。扉を開けて貰うと、女性が二人、大統領と思われる太った紳士が一人、後は紅い軍服姿の人達、少し若いスーツの男が数名 テーブルの周りで、雑談していた。「ルドルフ殿、元気で何より。良く来てくれました。」太った紳士が和かに出迎える。「これは大統領、御元気でなによりです。」ルドルフの挨拶でこの紳士が大統領だと解った。「彼がもしかして?」 「そう、我が国の新しい騎士殿でして、たいそう腕が立ちます。」「頼もしい限り。ダミア殿も喜んでおるでしょうな」形式ばった挨拶を聞きながら、(俺には、この世界あわね〜)など考えつつ、ルドルフの紹介で各大臣などと、挨拶を交わして行く。いい加減疲れた頃に、食事になった。「噂の姉妹いませんね、ちょっと見たかったのに。」ソフィは、料理を選ぶふりして、あたりを伺う。女性は、政府高官の奥様連中のみ、大統領婦人は、遅れての登場らしい。
食事も済み、グラスを片手に雑談が始まる。ハジメは、ヨハン マイバッハ陸軍大佐に話しかけられた。
「失礼、ハジメ カワモト殿、私はヨハン・マイバッハといいます。この国の陸軍大佐をしております。奥様、失礼します。旦那様少しお借りします。」
「ハジメ殿でよろしいですか」三十代ぐらいの陸軍大佐は、頭を下げると、「実は、我が国も飛行艦を一隻持っておるのですが、先日操縦士を勤めていた私の父が、他界いたしました。当然息子である私が、代わりを務めるのですが、操縦を訓練半ばの事でして、」ヨハンはそこで、言葉を濁した。階級、自分の立場がそうさせたのだろう。二人で新しいワイングラスを取ると、少し間をおいた。「申し訳ない。ここに滞在している間、教えて頂けないかと」
ハジメは、少し考えた後、「ルドルフの承諾が要ります。少しお時間頂きたいのですが」「分かります。良い返事お待ちしております」癖なのだろう、ヨハンは、敬礼して歩み去ろうとした。ハジメは思わず返礼してしまった。彼は少し驚いた顔を見せたが、和かに笑うと歩み去った。