出発
月曜日、朝から城は大騒ぎだった。朝から?時間は、まだ4時である。ハジメは少し緊張した顔で、各種点検していた。ソフィは、とても眠そうだ。大きなスーツケースに腰掛け、ボンヤリしていた。
ルドルフは、ダミアから、品物を受け取り、こちらに歩いて来た。「姫様からの餞別じゃ。使い方は、飛んだ後で。」ハジメとソフィは、指輪を受け取ると指にはめた。
皆が見守るなか、轟音を上げて飛行艦が離陸して行った。ダミアは、飛行艦が消え行くまで見送り、そして眠そうに城に帰って行った。
水平飛行になり、エンジンの出力を絞ると、随分と静かになった。「向かい風なんで、少しかかりそうです。ソフィさん御茶にしませんか?」ハジメの声に、耳まで赤くなったソフィが、お茶を運んで来た。まだ妄想から抜け出せて、いないようだ。ルドルフはクッキーをかじりながら、「二三説明しておかないと、まずは指輪じゃが、ソフィがピンチの時に、ハジメ殿の指輪が熱くなる。ハジメ殿が出てこいと念じれば、ソフィの指輪から剣士が出てくる。逆に、ソフィが念じればハジメ殿の指輪から剣士が出てくる。剣士の強さは念じた者の強さに比例する。ハジメ殿が二人おれば、大丈夫じゃろ?」
河にそっての飛行は、とても快適で殆ど揺れなかった。自動操縦があれば、と思ったがどうすれば作れるのか、解らなかった。4時間ほど飛んだ所で、海が見えて来た。「あと一息ですな。着いたら、一息入れてもらって、夕刻より晩餐会。堅苦しいじかんじゃが、そこらへんは勘弁してもらって。」「ルドルフさん、街に繰り出す暇あるのかい?新しい銃見に行きたいし、ソフィも買い物に行きたいだろう?」後ろで座っていたソフィも、ウンウンとうなずく。「相手方からも、警備兵が出る。それと相談じゃな。」「重要人物か、突然偉くなってもな〜、ピンとこないな。」突然ルドルフが笑出した。「エルフの騎士叩き斬った時から、ハジメ殿は有名人じゃよ。」「そんなに有名人?人切りとか陰口叩かれそう」ハジメは少し嫌な顔をした。「いやいや、暗殺しようとする輩が減って、安心じゃよ。少々退屈じゃがの。」「それは退屈だね、適当に来ないと腕が鈍る。」二人とも、声をだして笑っている。(この人達、ネジ抜けてるの?会話オカシイ)ソフィは、頭が痛くなった。
それから、1時間ほどで、サン・ペトロの空港に着陸した。
俺達の船でかいんだな。思わずハジメの漏らした感想だった。13隻駐機しているが、同じ位のは、3隻、後はみんなひとまわり小型だった。三人は荷物を持ち、迎えに来た馬車に乗り替えて、ホテルに向かった。「飛行艦、鍵を掛けなくても良いのか?」ルドルフに尋ねると、「開けた事、死んで後悔する事になりますよ」ルドルフの言葉を聞いて、全て納得した。